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69 鉱山5
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用意していただいた一室で、光矢と並んで腰を下ろす。取り調べが終わってから慌ただしく事が進んでしまい、結界での浄化の成果をいまのうちに確かめておこうと思った。
「ねえ、光矢。さっき結界に浄化の力を込めたら、彼らは苦しみ出して自白したわよね。嘘をつくと余計に苦しんで、本当のことを言うと楽になっていたように見えたわ」
「うん。僕もそう思ったよ。全部吐き出すと、浄化の苦しみから解放されるみたいだった」
「でも……もし本人が何も知らされていなかった場合はどうなるのかしら?今回は、全員がある程度の情報を持っていたから解放されたのよね?」
「何も知らずに悪事に加担していた場合ってこと?」
「ええ」
「そういう人なら、まず黒い靄が出てないだろうし、今回のやり方じゃ引っかからないかもしれないね」
「そうね……じゃあ、指示されて悪いことをしていて、本人は楽しんでいても、裏の事情までは知らされていなかった場合は?」
「うーん……それは、僕にもわからないなあ」
「やっぱり、まだまだ未知の部分が多いわね。今回の首謀者まできちんと捕らえられればいいのだけれど」
「大丈夫だと思うよ。やつらが名前を吐いたんだし。それより、その上にさらに指示を出している連中にたどり着けるかどうか、だね」
「光矢は、さらに黒幕がいると思っているのね」
「うん」
そのとき、コンコンコン、と扉が叩かれた。
「お客様がお見えです」
「まあ、どなたかしら。どうぞお通しください」
「失礼いたします」
年若い神官に案内されて入ってきたのは、岩城家の御息女・遥様と、嫡男の樹様であった。
「お久しぶりでございます、瑞葉様、光矢様」
二人から優雅に一礼される。
「まあ!遥様、樹様。このたびは別荘をお貸しくださり、本当にありがとうございます」
「別荘のほうはいかがですか?快適にお過ごしいただけていますでしょうか?」
「ええ、お心遣いに感謝しております。わざわざ本邸から執事長をはじめ、優秀な侍女の方々までお送りくださって、おかげさまでとても快適に過ごしております」
「それを聞いて安心いたしました。母も『どうかご不便がないように』と気にかけておりましたの。もっと早くにご挨拶に伺いたかったのですが、母から『皆さまは遊びに来られているのではないのだから、軽々しく伺ってはならない』と釘を刺されまして。ですが、一段落つかれたと小耳にはさんだもので」
「えっ……一段落ついたのは、つい先ほどのことなのに。耳が速いですね」
光矢が驚いてそう言うと、樹様が小声でぼそっと呟いた。
「近くで待機していましたから」
遥様は、ほほほと上品に笑われたあとで、言葉を継がれた。
「これからは、より詳しい取り調べなどでお時間を取られることでしょう。いつまでもここでお待ちいただくのも退屈かと思いまして。もしよろしければ、これから本邸のほうへいらっしゃいませんか?もちろん、浅井殿と神官様には必ずお伝えいたします」
「確かに、ここに居続けるのも気が引けますし……姉さま、どうなさいますか?」
光矢に問われ、私は遥様に微笑み返した。
「せっかくお誘いいただいたのですもの。ぜひお言葉に甘えて伺わせていただきますわ。お願いしてもよろしいでしょうか?」
「まあ、うれしいです。こちらですべてご用意いたしますので、どうぞ身一つで構いませんわ。さっそく参りましょう」
こうして、岩城家の本邸へと足を運ぶことになった。
「ねえ、光矢。さっき結界に浄化の力を込めたら、彼らは苦しみ出して自白したわよね。嘘をつくと余計に苦しんで、本当のことを言うと楽になっていたように見えたわ」
「うん。僕もそう思ったよ。全部吐き出すと、浄化の苦しみから解放されるみたいだった」
「でも……もし本人が何も知らされていなかった場合はどうなるのかしら?今回は、全員がある程度の情報を持っていたから解放されたのよね?」
「何も知らずに悪事に加担していた場合ってこと?」
「ええ」
「そういう人なら、まず黒い靄が出てないだろうし、今回のやり方じゃ引っかからないかもしれないね」
「そうね……じゃあ、指示されて悪いことをしていて、本人は楽しんでいても、裏の事情までは知らされていなかった場合は?」
「うーん……それは、僕にもわからないなあ」
「やっぱり、まだまだ未知の部分が多いわね。今回の首謀者まできちんと捕らえられればいいのだけれど」
「大丈夫だと思うよ。やつらが名前を吐いたんだし。それより、その上にさらに指示を出している連中にたどり着けるかどうか、だね」
「光矢は、さらに黒幕がいると思っているのね」
「うん」
そのとき、コンコンコン、と扉が叩かれた。
「お客様がお見えです」
「まあ、どなたかしら。どうぞお通しください」
「失礼いたします」
年若い神官に案内されて入ってきたのは、岩城家の御息女・遥様と、嫡男の樹様であった。
「お久しぶりでございます、瑞葉様、光矢様」
二人から優雅に一礼される。
「まあ!遥様、樹様。このたびは別荘をお貸しくださり、本当にありがとうございます」
「別荘のほうはいかがですか?快適にお過ごしいただけていますでしょうか?」
「ええ、お心遣いに感謝しております。わざわざ本邸から執事長をはじめ、優秀な侍女の方々までお送りくださって、おかげさまでとても快適に過ごしております」
「それを聞いて安心いたしました。母も『どうかご不便がないように』と気にかけておりましたの。もっと早くにご挨拶に伺いたかったのですが、母から『皆さまは遊びに来られているのではないのだから、軽々しく伺ってはならない』と釘を刺されまして。ですが、一段落つかれたと小耳にはさんだもので」
「えっ……一段落ついたのは、つい先ほどのことなのに。耳が速いですね」
光矢が驚いてそう言うと、樹様が小声でぼそっと呟いた。
「近くで待機していましたから」
遥様は、ほほほと上品に笑われたあとで、言葉を継がれた。
「これからは、より詳しい取り調べなどでお時間を取られることでしょう。いつまでもここでお待ちいただくのも退屈かと思いまして。もしよろしければ、これから本邸のほうへいらっしゃいませんか?もちろん、浅井殿と神官様には必ずお伝えいたします」
「確かに、ここに居続けるのも気が引けますし……姉さま、どうなさいますか?」
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「せっかくお誘いいただいたのですもの。ぜひお言葉に甘えて伺わせていただきますわ。お願いしてもよろしいでしょうか?」
「まあ、うれしいです。こちらですべてご用意いたしますので、どうぞ身一つで構いませんわ。さっそく参りましょう」
こうして、岩城家の本邸へと足を運ぶことになった。
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