神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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74 岩城家3(岩城家当主夫人)

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 訓練を見守っていた佳乃が、すっとこちらに近づいてきた。
「一時の方向から、侵入者が近づいてきています」

 それとなく視線を向けると、一見なにも見えない。だが神気を込めて凝らすと、隠蔽の術で姿を消した四人の影が、じりじりとこちらに迫っているのがわかった。

 口元を手で隠し、二人にだけ聞こえるほどの小声で告げる。
「二人とも、見えた?」
 組手を止めぬまま、すぐに返事が返ってきた。
「「はい!」」
 ――いい判断だ。刺客には、こちらが気づいていることを悟られてはいけない。

「遥、合図をしたら浅井殿と光矢君を呼んできなさい。二人とも今は樹と執務室にいるはずよ」

「はい」

 夫は今朝早くから、決まっていた禍憑討伐に討伐隊を率いて出ている。それでも昨日、浅井殿の助言を受けて晴れやかな顔で出発したのを思い出す。浅井殿と光矢君は、今日も執務室で樹と共に書類整理をしてくれていた。

「瑞葉さん、射程に入ったら結界で囲める?」

「はい。……もうすぐ射程内に入ります」

「遥は結界を張ったらすぐに呼びに走って」
 思わず口元がほころぶ。
「ちょうどいいわね。昨日、浅井殿が話していたことをさっそく試してみましょう。岩城家にここまで入れるなんて、そうとうな手練に違いないわ」

「お母様、悪い顔をしてますよ」

「ふふ、あなたも楽しそうじゃない?」

「射程に入りました。結界を張ります」

 二人は組手を止め、それぞれの役割へ移った。

 瑞葉さんは、一見なにもない空間を半球状の結界で包み込む。キラキラと輝く、濁りひとつない美しい結界だった。

 遥は身体強化を施し、風を裂く勢いで屋敷へ駆け出す。

 結界が顕現した瞬間、黒ずくめの大人が四人、姿を現した。
「なにっ……気づかれていたのか!?」

 隠蔽の術が解けたことに狼狽し、結界を破ろうと一斉に攻撃を仕掛ける。神気を纏った刀が振るわれ、神気の弾が叩き込まれる。だが、どれほどの攻撃を受けても結界は揺るがなかった。

 瑞葉さんは涼しい顔で結界を維持している。

「浄化は待ってちょうだいね。浅井殿と光矢君が来てからにしましょう。検証が必要だもの」

「はい。……先にやってしまうと、光矢がうるさいのが目に見えてますから」
 瑞葉さんは苦笑しつつも、弟を思う眼差しはやわらかかった。

 さて、昨夜の件からすると、やはり別荘を襲ったのはあの組織と見てよさそうね。標的は瑞葉さんと光矢君――鉱山の不正を暴かれた腹いせに違いないわ。
 我が岩城家の客人、しかも透子様のお子さまたちに手を出すなど、ただじゃ済まさないわ。
 絞れるだけ絞り尽くしましょう。
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