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90 告白
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叔父様と光矢は、おじいさんと孫を村へ送り届けると言って、一旦ここで別れることとなった。
私と佳乃、そしてアオ君の三人で神殿まで戻る。
「瑞葉様、私はいち早く今回のことをご当主様と奥様に伝えなければなりません。先に神殿に戻りますので、碧人様とゆっくりいらしてください。幸い、碧人様の護衛の方たちがいらっしゃるようなので」
佳乃が自然な口調でそう言った。
「わかったわ。気をつけてね」
「はい。碧人様、瑞葉様をよろしくお願いいたします」
そう言って、佳乃は軽やかに走っていった。
「ははっ、影の気配を感じ取れるんだな。さすが、瑞葉の侍女だ」
……アオ君と二人きりだ。少しどぎまぎしてしまう。
「鉱山はどうだった?不正は暴いたんだろう?」
「ええ!そうなの。それでね、アオ君に絶対話したいと思ってたことがあるの。上月先生に会ったのよ」
「え?あの上月先生に?鉱山で?」
アオ君の目が大きく開かれた。
「うん。鉱山の近くの神殿の神官様だったの。まさか、あの上月先生が神官様だなんて!ほんとにびっくりしたわ。叔父様と話がすごく弾んでいたの」
「うらやましいよ」
「本にサインをしてもらえたわ。それと、アオ君のことも話したら、アオ君の分のサイン本もいただけたのよ。今度、渡すわね」
アオ君は言葉にならないような顔をしていた。
「俺の分も?ありがとう」
「そんなに喜んでもらえたら私もうれしいわ」
だが、すぐに表情が曇った。
「……でも、危ない目にも遭ってたんだよな。全人教絡みで」
少しだけ歩調を落とし、私の方へ向き直った。
「俺、ずっと不安だった。瑞葉が危険な目にあっていないかって」
真剣な声色に、胸が微かに跳ねる。
「鉱山ではなんの危険もなかったわよ。今日のことは…アオ君が助けに来てくれて、ほんとに感謝してる」
軽く言ったつもりなのに、声がどこか震えてしまった。やはり報復というのが私の心に影を落としている。
するとアオ君は、深く息を吸った。
「だから……余計に、伝えなきゃって思ったんた」
「……?」
アオ君の手がわずかに震えている。彼がこんなふうに迷うのは珍しい。その緊張が、私の心臓を早く打たせる。
「瑞葉。俺は――」
言葉を探すように、視線を彷徨わせ、そして真正面から私を見た。
「……好きだ。ずっと前から。お前のことが好きで、すべての危険から守りたい」
風の音さえ止まったようだった。
「でも、無理に気持ちに答えてくれとは言わない。ただ……嫌じゃなければ、俺と婚約してほしい」
「……婚約……?」
思わず繰り返すと、アオ君は慌てて続ける。
「もし、将来俺が嫌になったり、他に好きな人ができたら……いつでも解消する。契約書にもちゃんと書く。俺だけが急いでるのもわかってる。でも……」
その必死さが、とてもまっすぐで。
まるで追い詰められたような声が、胸の奥にまっすぐ届く。
「瑞葉はとても魅力的だ。もう少ししたら婚約の打診が山のように来るだろう。他の誰かが婚約者になる姿なんて、想像したくないんだ。瑞葉の隣に、俺以外のやつがいるなんて、絶対嫌だ」
そんなふうに言われたら――。胸の奥が、ほわっと熱くなる。
もしアオ君が他の女の子と婚約したら……?
……嫌だ。そんなの、すごく嫌だ。
私はそっと息を吸い、アオ君を見つめた。これはきちんと答えなければ。
「私で良ければ。喜んで」
言った途端、アオ君の目が大きく見開かれた。
「……え、今……喜んでって言った……!? 本当に!?嘘じゃなくて!?」
「う、嘘じゃないよ。そんなに驚かなくても……」
言い終わらないうちに、アオ君は弾かれたように笑った。
「っ……っしゃあぁぁぁぁぁ……っ!!」
「ちょ!? 声、大きい……!」
「無理!!無理だ!!嬉しすぎる!!」
いつの間にかもう神殿の近くに来ていた。神殿の前で本気の喜びを爆発させるアオ君に、私は思わず笑ってしまう。
――こんなに喜んでくれるなんて。
「実は父上と母上に婚約の打診をしてほしいと頼んだら、政略結婚でもないんだからまず自分で言って瑞葉の承諾を得てこいと言われていたんだ。すぐにうちから正式な婚約の申込が行くと思う。よろしくな」
その言葉に、少し思考停止してしまった。
そういえばアオ君のおうちって確か……
私と佳乃、そしてアオ君の三人で神殿まで戻る。
「瑞葉様、私はいち早く今回のことをご当主様と奥様に伝えなければなりません。先に神殿に戻りますので、碧人様とゆっくりいらしてください。幸い、碧人様の護衛の方たちがいらっしゃるようなので」
佳乃が自然な口調でそう言った。
「わかったわ。気をつけてね」
「はい。碧人様、瑞葉様をよろしくお願いいたします」
そう言って、佳乃は軽やかに走っていった。
「ははっ、影の気配を感じ取れるんだな。さすが、瑞葉の侍女だ」
……アオ君と二人きりだ。少しどぎまぎしてしまう。
「鉱山はどうだった?不正は暴いたんだろう?」
「ええ!そうなの。それでね、アオ君に絶対話したいと思ってたことがあるの。上月先生に会ったのよ」
「え?あの上月先生に?鉱山で?」
アオ君の目が大きく開かれた。
「うん。鉱山の近くの神殿の神官様だったの。まさか、あの上月先生が神官様だなんて!ほんとにびっくりしたわ。叔父様と話がすごく弾んでいたの」
「うらやましいよ」
「本にサインをしてもらえたわ。それと、アオ君のことも話したら、アオ君の分のサイン本もいただけたのよ。今度、渡すわね」
アオ君は言葉にならないような顔をしていた。
「俺の分も?ありがとう」
「そんなに喜んでもらえたら私もうれしいわ」
だが、すぐに表情が曇った。
「……でも、危ない目にも遭ってたんだよな。全人教絡みで」
少しだけ歩調を落とし、私の方へ向き直った。
「俺、ずっと不安だった。瑞葉が危険な目にあっていないかって」
真剣な声色に、胸が微かに跳ねる。
「鉱山ではなんの危険もなかったわよ。今日のことは…アオ君が助けに来てくれて、ほんとに感謝してる」
軽く言ったつもりなのに、声がどこか震えてしまった。やはり報復というのが私の心に影を落としている。
するとアオ君は、深く息を吸った。
「だから……余計に、伝えなきゃって思ったんた」
「……?」
アオ君の手がわずかに震えている。彼がこんなふうに迷うのは珍しい。その緊張が、私の心臓を早く打たせる。
「瑞葉。俺は――」
言葉を探すように、視線を彷徨わせ、そして真正面から私を見た。
「……好きだ。ずっと前から。お前のことが好きで、すべての危険から守りたい」
風の音さえ止まったようだった。
「でも、無理に気持ちに答えてくれとは言わない。ただ……嫌じゃなければ、俺と婚約してほしい」
「……婚約……?」
思わず繰り返すと、アオ君は慌てて続ける。
「もし、将来俺が嫌になったり、他に好きな人ができたら……いつでも解消する。契約書にもちゃんと書く。俺だけが急いでるのもわかってる。でも……」
その必死さが、とてもまっすぐで。
まるで追い詰められたような声が、胸の奥にまっすぐ届く。
「瑞葉はとても魅力的だ。もう少ししたら婚約の打診が山のように来るだろう。他の誰かが婚約者になる姿なんて、想像したくないんだ。瑞葉の隣に、俺以外のやつがいるなんて、絶対嫌だ」
そんなふうに言われたら――。胸の奥が、ほわっと熱くなる。
もしアオ君が他の女の子と婚約したら……?
……嫌だ。そんなの、すごく嫌だ。
私はそっと息を吸い、アオ君を見つめた。これはきちんと答えなければ。
「私で良ければ。喜んで」
言った途端、アオ君の目が大きく見開かれた。
「……え、今……喜んでって言った……!? 本当に!?嘘じゃなくて!?」
「う、嘘じゃないよ。そんなに驚かなくても……」
言い終わらないうちに、アオ君は弾かれたように笑った。
「っ……っしゃあぁぁぁぁぁ……っ!!」
「ちょ!? 声、大きい……!」
「無理!!無理だ!!嬉しすぎる!!」
いつの間にかもう神殿の近くに来ていた。神殿の前で本気の喜びを爆発させるアオ君に、私は思わず笑ってしまう。
――こんなに喜んでくれるなんて。
「実は父上と母上に婚約の打診をしてほしいと頼んだら、政略結婚でもないんだからまず自分で言って瑞葉の承諾を得てこいと言われていたんだ。すぐにうちから正式な婚約の申込が行くと思う。よろしくな」
その言葉に、少し思考停止してしまった。
そういえばアオ君のおうちって確か……
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