93 / 96
92 婚約2
しおりを挟む
食堂にて、三人で温かい飲み物を囲んで話していると、表の方からドタバタと賑やかな足音が近づいてきた。
「戻りましたよ~。あっ、みんな何か飲んでる。俺も飲もうっと」
と、祥太朗さんがのほほんと戻ってくる。
だが、椅子に座ろうとする祥太朗さんの腕を、アオ君が素早くつかんだ。
「祥太朗、そんな時間はない!帰るぞ! 父上と母上に、すぐに報告しなければ!」
「ええ!ちょっと休憩させてくださいよ~!」
と叫びながらも、抵抗虚しくアオ君に引きずられていく。
その姿を見送りながら、私は苦笑した。
「碧人様、ずいぶんはりきっておられますね。……おめでとうございます」
隣で見ていた佳乃が、穏やかに微笑んで言った。
「うん……ありがとう。……佳乃はどう思う?」
私の問いに、佳乃は一瞬だけ真面目な顔をして、すぐに柔らかな表情に戻った。
「僭越ながら、私は小さな頃から瑞葉様にお仕えしてまいりましたので……瑞葉様の婚約者となられる方については、どうしても厳しく見てしまうものです。しかし――」
そこで言葉を区切り、いつになく早口で続ける。
「碧人様なら大賛成です。もちろん、水無瀬家と釣り合う家格であることは大前提ですが、それだけではございません。碧人様は人柄がすばらしい。瑞葉様のピンチには迷わず駆けつけ、そして何より……瑞葉様のことを、心の底から大切にしているのが、あのお姿から強く伝わってきます。これこそが一番重要なことです」
佳乃の言葉が胸の奥にしみこんでいく。
「……ありがとう。もしかして、佳乃は、アオ君の気持ち…わかってた?」
「ええ。なんとなく、ですが」
とくすりと笑う佳乃。
その笑顔を見て、胸の中の不安がすっと軽くなる。
そこへ、食堂の入り口から明るい声がした。
「ただいま~。無事送り届けてきたよ」
叔父様と光矢が戻ってきた。
「叔父様、光矢、お疲れ様です。おじいさんとお孫さんの様子はどうでした?」
「問題ないよ。二人とも肝が据わってて、ケロッとしてた。お孫さんなんか、僕たちのこと“かっこいい”って言ってね。訓練して強くなるんだって、張り切ってたよ」
叔父様も笑みを浮かべながら続ける。
「村長さんにまた感謝されたけど、むしろ我々の問題に巻き込んでしまったから謝ってきたよ」
「そうよね。私たちへの報復に巻き込まれた被害者ですものね……」
光矢が私の顔をじっと見て、首をかしげた。
「姉さま、碧人様は?」
「あ、あのね。アオ君は用事があるから、先に帰ったわ」
「姉さま、赤くなってどうしたの? 告白でもされた? それとも、婚約の申込とか?」
「えぇ!なんでわかるの? 聞いてた?」
「……やっぱりね」
光矢は肩をすくめ、そして穏やかに微笑む。
「まあ、碧人様なら僕は反対しないよ。姉さまのこと、大事にしてくれそうだし。おめでとう」
「……光矢……ありがとう」
叔父様も目を細めた。
「瑞葉ちゃん、おめでとう。碧人様なら私も安心だよ。でも、何かあったらすぐ両親や私たちを頼りなさいね」
「はい。叔父様、ありがとう」
「じゃあ、兄さんと義姉さんに早く伝えなきゃね。帰ろうか」
佳乃も静かに頷く。
「瑞葉様、依頼達成の報告は済んでおりますので、戻りましょう」
「佳乃、ありがとう。行きましょうか」
そうして、四人で馬車に乗り込んだ。
「戻りましたよ~。あっ、みんな何か飲んでる。俺も飲もうっと」
と、祥太朗さんがのほほんと戻ってくる。
だが、椅子に座ろうとする祥太朗さんの腕を、アオ君が素早くつかんだ。
「祥太朗、そんな時間はない!帰るぞ! 父上と母上に、すぐに報告しなければ!」
「ええ!ちょっと休憩させてくださいよ~!」
と叫びながらも、抵抗虚しくアオ君に引きずられていく。
その姿を見送りながら、私は苦笑した。
「碧人様、ずいぶんはりきっておられますね。……おめでとうございます」
隣で見ていた佳乃が、穏やかに微笑んで言った。
「うん……ありがとう。……佳乃はどう思う?」
私の問いに、佳乃は一瞬だけ真面目な顔をして、すぐに柔らかな表情に戻った。
「僭越ながら、私は小さな頃から瑞葉様にお仕えしてまいりましたので……瑞葉様の婚約者となられる方については、どうしても厳しく見てしまうものです。しかし――」
そこで言葉を区切り、いつになく早口で続ける。
「碧人様なら大賛成です。もちろん、水無瀬家と釣り合う家格であることは大前提ですが、それだけではございません。碧人様は人柄がすばらしい。瑞葉様のピンチには迷わず駆けつけ、そして何より……瑞葉様のことを、心の底から大切にしているのが、あのお姿から強く伝わってきます。これこそが一番重要なことです」
佳乃の言葉が胸の奥にしみこんでいく。
「……ありがとう。もしかして、佳乃は、アオ君の気持ち…わかってた?」
「ええ。なんとなく、ですが」
とくすりと笑う佳乃。
その笑顔を見て、胸の中の不安がすっと軽くなる。
そこへ、食堂の入り口から明るい声がした。
「ただいま~。無事送り届けてきたよ」
叔父様と光矢が戻ってきた。
「叔父様、光矢、お疲れ様です。おじいさんとお孫さんの様子はどうでした?」
「問題ないよ。二人とも肝が据わってて、ケロッとしてた。お孫さんなんか、僕たちのこと“かっこいい”って言ってね。訓練して強くなるんだって、張り切ってたよ」
叔父様も笑みを浮かべながら続ける。
「村長さんにまた感謝されたけど、むしろ我々の問題に巻き込んでしまったから謝ってきたよ」
「そうよね。私たちへの報復に巻き込まれた被害者ですものね……」
光矢が私の顔をじっと見て、首をかしげた。
「姉さま、碧人様は?」
「あ、あのね。アオ君は用事があるから、先に帰ったわ」
「姉さま、赤くなってどうしたの? 告白でもされた? それとも、婚約の申込とか?」
「えぇ!なんでわかるの? 聞いてた?」
「……やっぱりね」
光矢は肩をすくめ、そして穏やかに微笑む。
「まあ、碧人様なら僕は反対しないよ。姉さまのこと、大事にしてくれそうだし。おめでとう」
「……光矢……ありがとう」
叔父様も目を細めた。
「瑞葉ちゃん、おめでとう。碧人様なら私も安心だよ。でも、何かあったらすぐ両親や私たちを頼りなさいね」
「はい。叔父様、ありがとう」
「じゃあ、兄さんと義姉さんに早く伝えなきゃね。帰ろうか」
佳乃も静かに頷く。
「瑞葉様、依頼達成の報告は済んでおりますので、戻りましょう」
「佳乃、ありがとう。行きましょうか」
そうして、四人で馬車に乗り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。
健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。
父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。
白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――
ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない
ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。
復讐は、冷やして食すのが一番美味い
Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。
1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。
2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。
3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。
狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。
「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。
-----
外部サイトでも掲載を行っております
【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
月森かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい
しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる