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師匠と死神と最強と
第10話 八つ当たりには十分
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メルの後をついて、エトワールは町を歩いた。メルは一直線にデナーロ地区を目指していた。どうやら本当に道場を燃やした犯人……ライヒトゥームを討伐に行くつもりらしかった。
メルと町を歩いていると、かなり目立つ。メルは左腕がなく右足も義足……さらに美人と来ているので、人々の注目を集めるのはいわば当然だった。あるいは……最近住み着いた謎の女剣士を警戒しているのかもしれない。
そんなメルの背中に、エトワールは声をかける。
「やっぱり危険ですよ……せめて誰かに手伝ってもらうとか……」
「……大丈夫」
「そうはいっても……ほら、ルスルスさんとか強そうだったじゃないですか。手伝ってもらうとか……」
「心配しないで。大丈夫だから」
無表情な感じからは想像できなかったが、どうやメルは相当な自信家であるらしい。ルスルスといいメルといい、エトワールからすれば羨ましい限りだった。
メルはエトワールの忠告を無視して、町を歩いて行く。そしてデナーロ地区に到着して、ライヒトゥームのアジトの情報を酒場で仕入れた。結局エトワールはメルを止めることができなかった。
デナーロ地区はルスルスの忠告通り、治安が悪そうな地区だった。メルの道場がある地区も治安が悪い……というより、この町は全体的に治安が悪いのだが、その中でも治安が悪い部類に入りそうだった。
道にはゴミが散乱しており、浮浪者や酔っぱらいの姿も見える。通常ならエトワールが近寄らないタイプの場所だった。
そんな場所も、メルはお構いなしに進んでいく。というより、なんだか治安の悪い地区が似合う人物であった。そちらのほうが慣れているかのような足取りであった。
そのまま、メルはとある入口の前にたどり着く。酒場で教えてもらったライヒトゥームのアジト、その入口であった。
なんとも朽ち果てた入り口だった。おそらく手入れの類は何一つされていないのだろう。アジトというより、チンピラのたまり場のような様子であった。まぁ今のメルの道場よりはキレイだけど、などという趣味の悪いジョークを思いついてしまって、エトワールは首を振って考えを追い出す。
入口の前には、酔っ払った若い男が3人いた。見張り……だろうか。あるいは、この場所がたまり場なのかもしれない。
「お……」男の1人がメルに気づくなり、「なんだ……? うちに興味があんのか?」
「こりゃ上玉だが……」隣の男が言う。「どうした、その腕と足。戦争でやられたのか?」
「戦争は一応終わってた時期」律儀にも、メルは答える。「あんまり答えたくない。どうしても聞きたいなら、実力で聞いて」
「いや……別にそこまで興味はないけどよ……」そこまで言って、男は何かを思い出したようだった。「お前……もしかしてメル・キュールってやつか?」
メルが頷いたのを見て、男たちが一斉に笑い出す。
「道場燃やされて、復讐に来たのか? だったらやめときなって……残ってる身体は大事にしろよ」
その後も男たちはメルを嘲笑するように笑い続けた。その男たちに向かって、
「ここにいる人たちは、全員共犯?」
「あ? 何が?」
「私の道場を燃やしたのは……私の八つ当たり相手は、この場所にいる全員でいいの? 関係してない人がいるなら言って。その人には手を出さないから」
「関係してないやつ? たぶんいねぇよ。リーダーの発案で、全員が了承した。うちの仲間がやられて黙ってるほど、俺たちは甘いグループじゃないってことだ」
「……全部で何人?」
「俺たちの組織か? ここにいるのは30人くらいだが……」
「そう。なら……まぁ 」
それを聞いて、男が吹き出した。
「お前……まさかたった2人で俺たちのアジトに乗り込むつもりか?」エトワールは戦力にならないので、事実上メル1人である。「やめとけよ……そんなことより俺たちと良いことしないか?」
男たちは立ち上がって、メルを取り囲む。
「俺は欠損があっても気にしないからよ。ケンカで30人相手にするより、その身体で――」
言葉の途中で男の体が、宙に舞う。義足による蹴りが炸裂したのが、開戦の合図だった。
メルと町を歩いていると、かなり目立つ。メルは左腕がなく右足も義足……さらに美人と来ているので、人々の注目を集めるのはいわば当然だった。あるいは……最近住み着いた謎の女剣士を警戒しているのかもしれない。
そんなメルの背中に、エトワールは声をかける。
「やっぱり危険ですよ……せめて誰かに手伝ってもらうとか……」
「……大丈夫」
「そうはいっても……ほら、ルスルスさんとか強そうだったじゃないですか。手伝ってもらうとか……」
「心配しないで。大丈夫だから」
無表情な感じからは想像できなかったが、どうやメルは相当な自信家であるらしい。ルスルスといいメルといい、エトワールからすれば羨ましい限りだった。
メルはエトワールの忠告を無視して、町を歩いて行く。そしてデナーロ地区に到着して、ライヒトゥームのアジトの情報を酒場で仕入れた。結局エトワールはメルを止めることができなかった。
デナーロ地区はルスルスの忠告通り、治安が悪そうな地区だった。メルの道場がある地区も治安が悪い……というより、この町は全体的に治安が悪いのだが、その中でも治安が悪い部類に入りそうだった。
道にはゴミが散乱しており、浮浪者や酔っぱらいの姿も見える。通常ならエトワールが近寄らないタイプの場所だった。
そんな場所も、メルはお構いなしに進んでいく。というより、なんだか治安の悪い地区が似合う人物であった。そちらのほうが慣れているかのような足取りであった。
そのまま、メルはとある入口の前にたどり着く。酒場で教えてもらったライヒトゥームのアジト、その入口であった。
なんとも朽ち果てた入り口だった。おそらく手入れの類は何一つされていないのだろう。アジトというより、チンピラのたまり場のような様子であった。まぁ今のメルの道場よりはキレイだけど、などという趣味の悪いジョークを思いついてしまって、エトワールは首を振って考えを追い出す。
入口の前には、酔っ払った若い男が3人いた。見張り……だろうか。あるいは、この場所がたまり場なのかもしれない。
「お……」男の1人がメルに気づくなり、「なんだ……? うちに興味があんのか?」
「こりゃ上玉だが……」隣の男が言う。「どうした、その腕と足。戦争でやられたのか?」
「戦争は一応終わってた時期」律儀にも、メルは答える。「あんまり答えたくない。どうしても聞きたいなら、実力で聞いて」
「いや……別にそこまで興味はないけどよ……」そこまで言って、男は何かを思い出したようだった。「お前……もしかしてメル・キュールってやつか?」
メルが頷いたのを見て、男たちが一斉に笑い出す。
「道場燃やされて、復讐に来たのか? だったらやめときなって……残ってる身体は大事にしろよ」
その後も男たちはメルを嘲笑するように笑い続けた。その男たちに向かって、
「ここにいる人たちは、全員共犯?」
「あ? 何が?」
「私の道場を燃やしたのは……私の八つ当たり相手は、この場所にいる全員でいいの? 関係してない人がいるなら言って。その人には手を出さないから」
「関係してないやつ? たぶんいねぇよ。リーダーの発案で、全員が了承した。うちの仲間がやられて黙ってるほど、俺たちは甘いグループじゃないってことだ」
「……全部で何人?」
「俺たちの組織か? ここにいるのは30人くらいだが……」
「そう。なら……まぁ 」
それを聞いて、男が吹き出した。
「お前……まさかたった2人で俺たちのアジトに乗り込むつもりか?」エトワールは戦力にならないので、事実上メル1人である。「やめとけよ……そんなことより俺たちと良いことしないか?」
男たちは立ち上がって、メルを取り囲む。
「俺は欠損があっても気にしないからよ。ケンカで30人相手にするより、その身体で――」
言葉の途中で男の体が、宙に舞う。義足による蹴りが炸裂したのが、開戦の合図だった。
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