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第一章 転生アンマリア
第25話 山岳の地、バッサーシ辺境伯領へ
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そんな折、私はサクラのお誘いでバッサーシ領へ招かれる事になった。ちょうどバッサーシ辺境伯が領地に視察に戻るという事で、それに同行させてもらえる事になったのだ。
ただ、この視察はなかなかににぎやかな面子となってしまった。私はそのせいで少し憂鬱になっている。私の両親は王都での仕事が忙しく離れられず、私の付き添いはメイドのスーラだけ。あとはなぜかゲームに関連した面子がついて来ていた。
辺境伯の状況の調査という事で、宰相であるブロック侯爵と騎士団の要職に居るミノレバー男爵がついて来ているのだ。となれば、その息子であるタカーとタンとついて来ているわけなのだ。ただ、二人とも父親と同じ馬車なのでまだ顔は合わせていない。私はマートン公爵の馬車に相乗りさせてもらっている。ラムも仲良くなったものだから、バッサーシ領の事が気になっていたようなのだ。それで今回ついて来ているというわけである。
「お父様、バッサーシ辺境伯領とは、一体どのような場所なのでしょうか」
ある程度聞いてはいるはずなのに、ラムは私に気遣ってあえて馬車の中で再度尋ねているようである。マートン公爵の顔ですぐに分かってしまう。ああ、なんていい子なんでしょうね。
時期的には洗礼式からふた月ほどが経過した時期で、初夏に当たる頃だ。バッサーシ辺境伯領は領土の半分が山となっており、そこが隣国との国境に当たる。隣国に向けてはその山に広い峠道が整備されており、ここを通って商人たちは隣国とを行き来しているそうだ。
このサーロイン王国は面白い地形をしていて、北側が全部山、東西は川が流れていて、それらが国境となっているという。往来に地形的な障害がないのは南側だけだけど、そこには長い壁が築かれているそうな。ちなみに南側にもバッサーシとは別の辺境伯領があるそうだ。ゲームの中ではあまり国の背景については語ってくれなかったものだから、こうやって転生して実際に見てみるとなかなか面白いものだわ。私はマートン公爵親子の話をもの凄く楽しんで聞く事ができた。
王とは国のほぼ真ん中にあるので、バッサーシ辺境伯領までは馬車で3日で着く程度の距離らしい。移動速度と時間から考えるに100kmちょっとってところかしらね。そう思うと、サーロイン王国の国土は思ったより広い感じかな。
外の景色を時々楽しんでいる私だけど、馬車の外には思ったよりも起伏の無い地形にのどかな景色が広がっている。どういえばいいのか、日本で言うならば関東平野を北上している感覚? バッサーシ辺境伯領は、それでいうなら群馬県に当たるような位置になる。いや、サクラに馬刺しって、それはさすがにねぇ?
とかなんとか、アホみたいな事も考えながら馬車に揺られている。それにしてもさすがは公爵家の馬車。振動が少なくて乗り心地がいい。休憩の際に尋ねてみたら、馬車にはバネが使われているとの事。サスペンションってこの世界にあったんだ。
野営の際にはサクラにも少し話を聞く事ができた。そしたらば、
「バッサーシ辺境伯領では、馬の飼育が盛んですよ。こう見えても私も馬に乗れますので、領地に着いた際にはお見せ致しますとも」
なんだか格好いい事をサクラは言っていた。8歳で乗馬もできるって、さすがは辺境伯。それにしても、やっぱり馬産地だったか。おのれ、開発め。
「バッサーシ領での産業は、何も馬だけではありませんよ」
そう言って割り込んできたのはタカー・ブロックだった。
「話に寄れば蚕と呼ばれる虫を飼っていて、その吐き出す糸を使った繊維産業も盛んなそうなのです。僕たちの着ている服も、多くはバッサーシ領産の糸を使ったものなんですよ」
まるで世界遺産になったような場所みたいな話まで出てきたよ。これじゃまるでますます群馬県じゃないのよ。うどんまであったら笑うところだわ。
「ほぉ、バッサーシ領はなかなかに面白そうな場所だな。おい、俺も馬に乗れたりするのか?」
「これはタン様。そうですね、タン様ほどの身長があれば可能かと。詳しくは我が家の厩務員たちに聞いてみませんと何とも言えませんね」
タン・ミノレバーの方は馬に興味津々のようである。さすがは騎士団に所属する家系。騎馬隊というのにも憧れを抱いているようだった。
「私の家の領地は半分が山岳地帯です。ですので、移動にはどうしても馬が必要なのです。多少の段差や溝のようなものは簡単に越えてしまいますよ」
「なるほどな。俺は父上が乗っているの見た事があってな、俺も早く乗ってみたいという気持ちが強いのだ。向こうに着いたらよろしく頼むぞ、サクラ嬢」
「ええ、分かりましたわ。ですが、その前にタン様には少々別なお勉強が必要のようですね」
「ほお、それは何だ」
タンが堂々としたままそう言い放つと、
「身分が上の者に対しての態度ですね。私の方は辺境伯家、タン様は男爵家です。もう少し礼儀について学んで下さいませ」
サクラは突き放すように言葉を返した。だが、タン自体はまったく理解していないようである。この頃から脳筋だったのか、この男。
「おーい、そろそろ寝るぞ。明日にはバッサーシ本邸に到着するからな。ちゃんと寝ておきなさい」
「はーい」
バッサーシ辺境伯が声を掛けてきたので、私たちはおとなしく言葉に従って眠る事にした。私は眠る前に野営地を覆うように結界を張っておく。さすがにしっかりと勉強しておいたので、割とすんなりと結界を張れるようになっていた。
(うん、これで一安心)
私は見えないように握り拳を作り、バッサーシ辺境伯領がどのような場所なのか楽しみにしつつ眠りに就いたのだった。
ただ、この視察はなかなかににぎやかな面子となってしまった。私はそのせいで少し憂鬱になっている。私の両親は王都での仕事が忙しく離れられず、私の付き添いはメイドのスーラだけ。あとはなぜかゲームに関連した面子がついて来ていた。
辺境伯の状況の調査という事で、宰相であるブロック侯爵と騎士団の要職に居るミノレバー男爵がついて来ているのだ。となれば、その息子であるタカーとタンとついて来ているわけなのだ。ただ、二人とも父親と同じ馬車なのでまだ顔は合わせていない。私はマートン公爵の馬車に相乗りさせてもらっている。ラムも仲良くなったものだから、バッサーシ領の事が気になっていたようなのだ。それで今回ついて来ているというわけである。
「お父様、バッサーシ辺境伯領とは、一体どのような場所なのでしょうか」
ある程度聞いてはいるはずなのに、ラムは私に気遣ってあえて馬車の中で再度尋ねているようである。マートン公爵の顔ですぐに分かってしまう。ああ、なんていい子なんでしょうね。
時期的には洗礼式からふた月ほどが経過した時期で、初夏に当たる頃だ。バッサーシ辺境伯領は領土の半分が山となっており、そこが隣国との国境に当たる。隣国に向けてはその山に広い峠道が整備されており、ここを通って商人たちは隣国とを行き来しているそうだ。
このサーロイン王国は面白い地形をしていて、北側が全部山、東西は川が流れていて、それらが国境となっているという。往来に地形的な障害がないのは南側だけだけど、そこには長い壁が築かれているそうな。ちなみに南側にもバッサーシとは別の辺境伯領があるそうだ。ゲームの中ではあまり国の背景については語ってくれなかったものだから、こうやって転生して実際に見てみるとなかなか面白いものだわ。私はマートン公爵親子の話をもの凄く楽しんで聞く事ができた。
王とは国のほぼ真ん中にあるので、バッサーシ辺境伯領までは馬車で3日で着く程度の距離らしい。移動速度と時間から考えるに100kmちょっとってところかしらね。そう思うと、サーロイン王国の国土は思ったより広い感じかな。
外の景色を時々楽しんでいる私だけど、馬車の外には思ったよりも起伏の無い地形にのどかな景色が広がっている。どういえばいいのか、日本で言うならば関東平野を北上している感覚? バッサーシ辺境伯領は、それでいうなら群馬県に当たるような位置になる。いや、サクラに馬刺しって、それはさすがにねぇ?
とかなんとか、アホみたいな事も考えながら馬車に揺られている。それにしてもさすがは公爵家の馬車。振動が少なくて乗り心地がいい。休憩の際に尋ねてみたら、馬車にはバネが使われているとの事。サスペンションってこの世界にあったんだ。
野営の際にはサクラにも少し話を聞く事ができた。そしたらば、
「バッサーシ辺境伯領では、馬の飼育が盛んですよ。こう見えても私も馬に乗れますので、領地に着いた際にはお見せ致しますとも」
なんだか格好いい事をサクラは言っていた。8歳で乗馬もできるって、さすがは辺境伯。それにしても、やっぱり馬産地だったか。おのれ、開発め。
「バッサーシ領での産業は、何も馬だけではありませんよ」
そう言って割り込んできたのはタカー・ブロックだった。
「話に寄れば蚕と呼ばれる虫を飼っていて、その吐き出す糸を使った繊維産業も盛んなそうなのです。僕たちの着ている服も、多くはバッサーシ領産の糸を使ったものなんですよ」
まるで世界遺産になったような場所みたいな話まで出てきたよ。これじゃまるでますます群馬県じゃないのよ。うどんまであったら笑うところだわ。
「ほぉ、バッサーシ領はなかなかに面白そうな場所だな。おい、俺も馬に乗れたりするのか?」
「これはタン様。そうですね、タン様ほどの身長があれば可能かと。詳しくは我が家の厩務員たちに聞いてみませんと何とも言えませんね」
タン・ミノレバーの方は馬に興味津々のようである。さすがは騎士団に所属する家系。騎馬隊というのにも憧れを抱いているようだった。
「私の家の領地は半分が山岳地帯です。ですので、移動にはどうしても馬が必要なのです。多少の段差や溝のようなものは簡単に越えてしまいますよ」
「なるほどな。俺は父上が乗っているの見た事があってな、俺も早く乗ってみたいという気持ちが強いのだ。向こうに着いたらよろしく頼むぞ、サクラ嬢」
「ええ、分かりましたわ。ですが、その前にタン様には少々別なお勉強が必要のようですね」
「ほお、それは何だ」
タンが堂々としたままそう言い放つと、
「身分が上の者に対しての態度ですね。私の方は辺境伯家、タン様は男爵家です。もう少し礼儀について学んで下さいませ」
サクラは突き放すように言葉を返した。だが、タン自体はまったく理解していないようである。この頃から脳筋だったのか、この男。
「おーい、そろそろ寝るぞ。明日にはバッサーシ本邸に到着するからな。ちゃんと寝ておきなさい」
「はーい」
バッサーシ辺境伯が声を掛けてきたので、私たちはおとなしく言葉に従って眠る事にした。私は眠る前に野営地を覆うように結界を張っておく。さすがにしっかりと勉強しておいたので、割とすんなりと結界を張れるようになっていた。
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