102 / 500
第三章 学園編
第102話 誕プレって悩むんですよ
しおりを挟む
さて、そんな初の魔法実演を終えたものの、その感動にも長く浸っていられなかった。
なぜならフィレン王子の誕生日が目の前だったからだ。私は、贈ろうと思っていた剣を先に取り上げられてしまったために、改めて新しい誕生日プレゼントを贈ろうと考えていた。さすがに婚約者として手ぶらというのはあり得ない話だからだ。
さすがに魔石剣の事でかなり怒られた私は、魔石を魔力加工するのはやめておいた。これ以上怒られるのはさすがに嫌なのだ。
だったら何を作ろうかと悩んだ私は、収納魔法からトレント木材を取り出した。これで何かしらのアクセサリーを作ろうと思ったのだ。さすがに一国の王子ともなるといろいろな事が身の回りに起きる。そういった事から守ってくれるアクセサリーがいいだろうと考えたのが理由である。
すると、部屋の扉がノックされる。一体誰が来たというのだろうか。
「はい、誰かしら」
「お姉様、私です、モモです」
どうやら部屋をノックしたのはモモのようである。
「開いてるから入ってらっしゃい」
「分かりました。失礼します」
私が返事をすると、モモが部屋の中に入ってきた。何か改まった態度をしているので、私は気になってしまった。
「一体、どうしたのかしら、モモ」
気になるからには直接聞いてみる。私は椅子に座ったまま、モモの方へと振り向いた。
「いえ、私もフィレン殿下に何か贈り物をした方がよろしいかと思いまして……」
モモはもじもじとしながら上目遣いで私を見てくる。何この可愛い生き物。
「そうね。でも、モモは特に何も用意しなくてもいいわよ。私は婚約者だから用意しなければならないと思うけれど、一令嬢であるなら、家族との共同で出せば問題ないと思うわ」
困っているモモではあるけれど、私は甘やかすつもりはない。ここは一般論でモモに言い聞かせる事にする。
しかしまぁ、このモモの行動にはちょっと不安を覚えるものだわ。これって、前世で読んだ小説や漫画でよく見た展開だもの。上目遣いで情に訴えてくる行動は、腹黒妹キャラによく見られる行動だものね。警戒しちゃうわ。うちのモモに限ってそんな事はないとは思いたいけれど、はてさてどうなのやら……。
モモの目の前で、私は額に指先を当てながらため息を吐く。そして、
「モモ、婚約者ではないのだから、お父様やお母様と相談して贈り物を決めなさい。これは貴族としては常識よ。婚約者ではない殿方に個人的な贈り物をするのは、あらぬ疑いを掛けられましてよ」
私は椅子から立ち上がって、モモの頭に手を乗せて優しく諭す。さすがに抱き締めるには私の体格がご立派過ぎるのでね。私のその言葉に、
「分かりました。お姉様がそこまで仰るのでしたら」
モモは渋々諦めたようである。それにしても、態度を見る限り油断はできなさそうね。
モモが私の部屋を出ていくと同時に、お茶菓子を持ったスーラが入れ替わりで入ってきた。その際にスーラにぶつかりそうになったので、モモは頭を下げてから走り去っていった。うん、ああいうところはいい子なんだけどね。うーん、何か引っかかるわね。
私はモモの事がものすごく心配になってきた。なにせ今日の授業まではそういった感じをまったく見せなかったわけだもの。さっきの行動は本当に私の頭の中に引っ掛かってしまっている。婚約者も居るし、そのための努力だってしているもの。
「アンマリアお嬢様、どうかされましたか?」
「うーん、モモの事が気になってね」
「それはどういう事ですか?」
「あの子、フィレン殿下への誕生日プレゼントを贈ろうとしているのよ、個人で。私が個人としては止めるように伝えておいたから、思いとどまるだろうけど、どうにも引っ掛かるのよね」
「それは確かに、妙でございますね」
スーラは私の意見に賛同してくれた。スーラの反応を見て、私はトレント木材を使ってとあるものを作る事を決めた。
「何をされているのですか?」
「内緒よ。今の段階ではスーラにも教えられないわ」
私は唇に人差し指を立てて当てた。
丸くした魔石を核として、その周りをトレント木材で囲み込む。そして、小さな穴を開けた状態でそれをテーブルに置いた。
「さて、うまくいくかしらね」
私はエスカからもらったスマホを取り出して、魔力を流す。そして、同時にちょっとした改造を施した。しばらくすると、みるみるうちにスマホの画面に、テーブルの上の様子が映し出されたではないか。
『「お嬢様、これは一体?」』
スーラの声が二重に聞こえる。なんと、スマホからもスーラの声が聞こえてきたのだった。
「やった、成功だわ」
なんと、先程魔石を包み込んだトレント木材は隠しカメラとなってしまったのだった。
「これで、モモの様子を監視しましょう。踏み外そうっていうのなら、矯正するだけよ」
悪い顔をして笑う不気味な私の姿が、そこにはあった。
頼むから杞憂で済んでちょうだいね。そう願う私は、そのトレント木材を持ってモモの部屋へと早速足を運んだのであった。
なぜならフィレン王子の誕生日が目の前だったからだ。私は、贈ろうと思っていた剣を先に取り上げられてしまったために、改めて新しい誕生日プレゼントを贈ろうと考えていた。さすがに婚約者として手ぶらというのはあり得ない話だからだ。
さすがに魔石剣の事でかなり怒られた私は、魔石を魔力加工するのはやめておいた。これ以上怒られるのはさすがに嫌なのだ。
だったら何を作ろうかと悩んだ私は、収納魔法からトレント木材を取り出した。これで何かしらのアクセサリーを作ろうと思ったのだ。さすがに一国の王子ともなるといろいろな事が身の回りに起きる。そういった事から守ってくれるアクセサリーがいいだろうと考えたのが理由である。
すると、部屋の扉がノックされる。一体誰が来たというのだろうか。
「はい、誰かしら」
「お姉様、私です、モモです」
どうやら部屋をノックしたのはモモのようである。
「開いてるから入ってらっしゃい」
「分かりました。失礼します」
私が返事をすると、モモが部屋の中に入ってきた。何か改まった態度をしているので、私は気になってしまった。
「一体、どうしたのかしら、モモ」
気になるからには直接聞いてみる。私は椅子に座ったまま、モモの方へと振り向いた。
「いえ、私もフィレン殿下に何か贈り物をした方がよろしいかと思いまして……」
モモはもじもじとしながら上目遣いで私を見てくる。何この可愛い生き物。
「そうね。でも、モモは特に何も用意しなくてもいいわよ。私は婚約者だから用意しなければならないと思うけれど、一令嬢であるなら、家族との共同で出せば問題ないと思うわ」
困っているモモではあるけれど、私は甘やかすつもりはない。ここは一般論でモモに言い聞かせる事にする。
しかしまぁ、このモモの行動にはちょっと不安を覚えるものだわ。これって、前世で読んだ小説や漫画でよく見た展開だもの。上目遣いで情に訴えてくる行動は、腹黒妹キャラによく見られる行動だものね。警戒しちゃうわ。うちのモモに限ってそんな事はないとは思いたいけれど、はてさてどうなのやら……。
モモの目の前で、私は額に指先を当てながらため息を吐く。そして、
「モモ、婚約者ではないのだから、お父様やお母様と相談して贈り物を決めなさい。これは貴族としては常識よ。婚約者ではない殿方に個人的な贈り物をするのは、あらぬ疑いを掛けられましてよ」
私は椅子から立ち上がって、モモの頭に手を乗せて優しく諭す。さすがに抱き締めるには私の体格がご立派過ぎるのでね。私のその言葉に、
「分かりました。お姉様がそこまで仰るのでしたら」
モモは渋々諦めたようである。それにしても、態度を見る限り油断はできなさそうね。
モモが私の部屋を出ていくと同時に、お茶菓子を持ったスーラが入れ替わりで入ってきた。その際にスーラにぶつかりそうになったので、モモは頭を下げてから走り去っていった。うん、ああいうところはいい子なんだけどね。うーん、何か引っかかるわね。
私はモモの事がものすごく心配になってきた。なにせ今日の授業まではそういった感じをまったく見せなかったわけだもの。さっきの行動は本当に私の頭の中に引っ掛かってしまっている。婚約者も居るし、そのための努力だってしているもの。
「アンマリアお嬢様、どうかされましたか?」
「うーん、モモの事が気になってね」
「それはどういう事ですか?」
「あの子、フィレン殿下への誕生日プレゼントを贈ろうとしているのよ、個人で。私が個人としては止めるように伝えておいたから、思いとどまるだろうけど、どうにも引っ掛かるのよね」
「それは確かに、妙でございますね」
スーラは私の意見に賛同してくれた。スーラの反応を見て、私はトレント木材を使ってとあるものを作る事を決めた。
「何をされているのですか?」
「内緒よ。今の段階ではスーラにも教えられないわ」
私は唇に人差し指を立てて当てた。
丸くした魔石を核として、その周りをトレント木材で囲み込む。そして、小さな穴を開けた状態でそれをテーブルに置いた。
「さて、うまくいくかしらね」
私はエスカからもらったスマホを取り出して、魔力を流す。そして、同時にちょっとした改造を施した。しばらくすると、みるみるうちにスマホの画面に、テーブルの上の様子が映し出されたではないか。
『「お嬢様、これは一体?」』
スーラの声が二重に聞こえる。なんと、スマホからもスーラの声が聞こえてきたのだった。
「やった、成功だわ」
なんと、先程魔石を包み込んだトレント木材は隠しカメラとなってしまったのだった。
「これで、モモの様子を監視しましょう。踏み外そうっていうのなら、矯正するだけよ」
悪い顔をして笑う不気味な私の姿が、そこにはあった。
頼むから杞憂で済んでちょうだいね。そう願う私は、そのトレント木材を持ってモモの部屋へと早速足を運んだのであった。
7
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる