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第三章 学園編
第103話 できる事とできない事
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「モモ、入っていいかしら」
私はモモの部屋の扉をノックして声を掛ける。
「お姉様、ええ構いませんよ」
中から返事があった。うん、モモは真っすぐ部屋に戻っていたようだ。とりあえず返事が聞けたので、私はモモの部屋へと入っていく。
よく思えば、モモの部屋に入った記憶がなかった。基本的には不干渉だし、食事の時の会話だけで十分な上に、モモはよく私の部屋へやって来ていた。だから、私がモモの部屋に出向く必要がなかったのだった。
そうやって初めて入ったモモの部屋。普段の様子からすると想像できないくらいに、飾り立てる事もなくまとまって落ち着いた部屋になっていた。うん、よくある義理の腹黒妹とは明らかに違った感じの部屋である。にしても、他人の事を言えた義理ではないが、令嬢としてこの飾り気のなさは正直どうかと思う。ま、他人の事は言えないけれど。
「モモ、さっきはちょっときつく言い過ぎたわね。でも、これは大事な事よ。個人としての贈り物をする際には、相手とタイミングを見極める事が重要よ。ただでさえ娯楽が少ない貴族なんですから、人の噂話にはすぐに飛びつきますわよ」
「はい、お姉様。申し訳ありませんでした。気を付けます」
私の言葉を受けて、素直に謝罪をするモモ。やっぱり思い過ごしかしらね。
しかし、どうにもさっきの様子が引っ掛かる私は、モモの様子を見ながら隠しカメラを仕掛けるタイミングと場所を探す。ちなみにこの隠しカメラ、魔石に光魔法と風魔法をちょちょいっと作用させて完成させた。闇魔法も組み合わせれば録画保存だってできるのだ。ホント、魔法って便利よね。まあ、こんな事ができるのも、私の前世知識があってこそなんだけど。イメージができるから、魔法を思うように操れるのだ。
「とはいえども、私に相談をしてくれたのは嬉しいわ。あとでお父様たちとも相談しましょう。日数はもうないけれど、(反則的な私の魔法で)まだ間に合うと思うから」
「はい、お姉様」
私がモモを慰めていると、モモは軽く拳を握って、私の方を見ながら笑顔を見せてくれた。やっぱり可愛いわ。姉バカと言われようとも、この笑顔は守りたいわね。
っと、忘れちゃいけない隠しカメラの設置。可愛い妹とはいえども、一度浮かんだ疑惑の払拭は難しいのよ。こんな姉を許してちょうだいね。
「それにしても、モモの部屋って思ったよりも簡素な飾りつけなのね。てっきり可愛く飾り付けてるかと思ったわ」
私は部屋を見回る振りをして、ベッド横の台に隠しカメラを魔法で取り付ける。同化させてので、相当の魔法感知能力が無ければ見つけるのはほぼ不可能だ。私の反則的な魔力だからこそできる、規格外の魔法なのである。
「はい。私の元の両親のせいでテトリバー男爵家には迷惑をお掛けしましたし、ファッティ伯爵家に引き取られた手前、わがままなどすべきではないと思っています。なので、飾りつけも極力しないようにしたんです。自分が傲慢にならないためにも」
私の疑問に、思いつめた表情で答えるモモ。その考えは実に律儀で謙虚だった。やっぱり、私の勘違いだったのだろうか。
それでも、『傲慢にならないために』という単語が引っ掛かった。普通ならそんなに気にはならないかも知れないだろうけれど、こういうところは無駄に前世知識が邪魔をしてくるのである。前世知識っていうのは良いようにも悪いようにも作用するのだ。
(とりあえずは、隠しカメラでしばらく監視ね。モモが転生者じゃなくて、ただの素直な子である事を祈るばかりだわ)
私はそう思いながら、すっとモモの腕で包み込んだ。自分が太っているせいで、背中にうまく手が回らないけれど、モモは驚きながらも安心したような表情を見せてくれたのでとりあえずヨシ!
「では、そろそろ夕食の時間ですから、食堂に向かいましょうか」
「はい、お姉様」
私たちは手を取り合って、にこやかに食堂へ向かう事にしたのだった。
夕食の席では、私はフィレン王子への誕生日の贈り物について、両親と相談をした。モモが贈りたがっているので、家族連名での贈り物をしてはどうかという話だ。すると、両親は私と同じような事を言っていた。やっぱり、令嬢が単独で殿方に贈り物をするのは、婚約者以外へは避けた方がいいという意見だった。
「やはり、お父様とお母様もそう思われますわよね?」
「うむ。さすがに殿下が相手とあれば構わないかも知れないが、やはりここは無難に家族連名で贈っておく方がいいだろう。ただ、贈り物の内容に関しては個人的なものを反映させられる。家族連名とはいっても、何も贈るのはひとつとは限らないからね」
さすがは大臣たる父親。それは盲点だったわ。そうよ、複数個をまとめて一家族からの贈り物として贈る事も可能なのだわ。これでごまかしが効くというものである。父親の言葉にモモも安心したような表情を見せていた。
「でも、さすがにもう1週間を切っているから、手の込んだ物の用意はできないと思うよ。明日にでも商店に出向くとしようか」
そんなわけで、モモもプレゼントを用意できる事になって、その日の夕食は賑やかな雰囲気となったのだった。
私はモモの部屋の扉をノックして声を掛ける。
「お姉様、ええ構いませんよ」
中から返事があった。うん、モモは真っすぐ部屋に戻っていたようだ。とりあえず返事が聞けたので、私はモモの部屋へと入っていく。
よく思えば、モモの部屋に入った記憶がなかった。基本的には不干渉だし、食事の時の会話だけで十分な上に、モモはよく私の部屋へやって来ていた。だから、私がモモの部屋に出向く必要がなかったのだった。
そうやって初めて入ったモモの部屋。普段の様子からすると想像できないくらいに、飾り立てる事もなくまとまって落ち着いた部屋になっていた。うん、よくある義理の腹黒妹とは明らかに違った感じの部屋である。にしても、他人の事を言えた義理ではないが、令嬢としてこの飾り気のなさは正直どうかと思う。ま、他人の事は言えないけれど。
「モモ、さっきはちょっときつく言い過ぎたわね。でも、これは大事な事よ。個人としての贈り物をする際には、相手とタイミングを見極める事が重要よ。ただでさえ娯楽が少ない貴族なんですから、人の噂話にはすぐに飛びつきますわよ」
「はい、お姉様。申し訳ありませんでした。気を付けます」
私の言葉を受けて、素直に謝罪をするモモ。やっぱり思い過ごしかしらね。
しかし、どうにもさっきの様子が引っ掛かる私は、モモの様子を見ながら隠しカメラを仕掛けるタイミングと場所を探す。ちなみにこの隠しカメラ、魔石に光魔法と風魔法をちょちょいっと作用させて完成させた。闇魔法も組み合わせれば録画保存だってできるのだ。ホント、魔法って便利よね。まあ、こんな事ができるのも、私の前世知識があってこそなんだけど。イメージができるから、魔法を思うように操れるのだ。
「とはいえども、私に相談をしてくれたのは嬉しいわ。あとでお父様たちとも相談しましょう。日数はもうないけれど、(反則的な私の魔法で)まだ間に合うと思うから」
「はい、お姉様」
私がモモを慰めていると、モモは軽く拳を握って、私の方を見ながら笑顔を見せてくれた。やっぱり可愛いわ。姉バカと言われようとも、この笑顔は守りたいわね。
っと、忘れちゃいけない隠しカメラの設置。可愛い妹とはいえども、一度浮かんだ疑惑の払拭は難しいのよ。こんな姉を許してちょうだいね。
「それにしても、モモの部屋って思ったよりも簡素な飾りつけなのね。てっきり可愛く飾り付けてるかと思ったわ」
私は部屋を見回る振りをして、ベッド横の台に隠しカメラを魔法で取り付ける。同化させてので、相当の魔法感知能力が無ければ見つけるのはほぼ不可能だ。私の反則的な魔力だからこそできる、規格外の魔法なのである。
「はい。私の元の両親のせいでテトリバー男爵家には迷惑をお掛けしましたし、ファッティ伯爵家に引き取られた手前、わがままなどすべきではないと思っています。なので、飾りつけも極力しないようにしたんです。自分が傲慢にならないためにも」
私の疑問に、思いつめた表情で答えるモモ。その考えは実に律儀で謙虚だった。やっぱり、私の勘違いだったのだろうか。
それでも、『傲慢にならないために』という単語が引っ掛かった。普通ならそんなに気にはならないかも知れないだろうけれど、こういうところは無駄に前世知識が邪魔をしてくるのである。前世知識っていうのは良いようにも悪いようにも作用するのだ。
(とりあえずは、隠しカメラでしばらく監視ね。モモが転生者じゃなくて、ただの素直な子である事を祈るばかりだわ)
私はそう思いながら、すっとモモの腕で包み込んだ。自分が太っているせいで、背中にうまく手が回らないけれど、モモは驚きながらも安心したような表情を見せてくれたのでとりあえずヨシ!
「では、そろそろ夕食の時間ですから、食堂に向かいましょうか」
「はい、お姉様」
私たちは手を取り合って、にこやかに食堂へ向かう事にしたのだった。
夕食の席では、私はフィレン王子への誕生日の贈り物について、両親と相談をした。モモが贈りたがっているので、家族連名での贈り物をしてはどうかという話だ。すると、両親は私と同じような事を言っていた。やっぱり、令嬢が単独で殿方に贈り物をするのは、婚約者以外へは避けた方がいいという意見だった。
「やはり、お父様とお母様もそう思われますわよね?」
「うむ。さすがに殿下が相手とあれば構わないかも知れないが、やはりここは無難に家族連名で贈っておく方がいいだろう。ただ、贈り物の内容に関しては個人的なものを反映させられる。家族連名とはいっても、何も贈るのはひとつとは限らないからね」
さすがは大臣たる父親。それは盲点だったわ。そうよ、複数個をまとめて一家族からの贈り物として贈る事も可能なのだわ。これでごまかしが効くというものである。父親の言葉にモモも安心したような表情を見せていた。
「でも、さすがにもう1週間を切っているから、手の込んだ物の用意はできないと思うよ。明日にでも商店に出向くとしようか」
そんなわけで、モモもプレゼントを用意できる事になって、その日の夕食は賑やかな雰囲気となったのだった。
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