伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第三章 学園編

第148話 報告ですよ

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 それにしても、『ギガンテス』という単語に反応したあたり、国王たちはその存在を知っていたという事になる。スタンピードの過去の詳細な記録は、王国としても持っているという事なのだろうか。まあ、そうでなければ10か所以上とかいう単語だって出てこないので、それは間違いないだろう。
「ギガンテスは過去にも出現した記録がある。現領主であるヒーゴ・バッサーシ辺境伯の祖父のアソッツァ・バッサーシの時だから、もうかれこれ4~50年前にはなるか」
 おっと、相当昔の話だったようだ。だけども、このまま放っておくと国王の昔語りが始まりそうなので、私は話に割り込んだ。
「陛下、その話はとりあえず置いておいて、スタンピードの詳細を報告致します」
「おお、そうだったな。すまんな、続けてくれ」
 私は隣でガチガチになっているモモを尻目に、続きの報告を始めた。
 とにかく、私がスタンピードの詳細を話すと、国王たちは突然首を傾げ始めた。一体どうしたというのだろうか。
「いや、アンマリアよ。おぬし、昨日までクッケン湖に居ったと申しておるよな?」
「はい、正確には今朝まで居ました」
 国王の質問に私が答えると、さらに謁見の間の中に「?」が飛び交っている。おかしな説明をしたのだろうか。
「お姉様、王都とクッケン湖の間の距離を考えて下さい。それに、お姉様の瞬間移動魔法を、国王陛下方はご存じでしたか?」
 モモにこう言われて、私はハッと思い出した。そうだった。瞬間移動魔法はまだモモにしか教えていなかったのだ。とんだおまぬけである。
「こほん、これは失礼致しました。実は言いますと、私にはとある魔法があるのです」
 ちょっと意地悪にもったいぶった言い方をする私。
「そ、それは何だと言うのだ?!」
 当然のように国王が食いついてきた。
「僕も教えてもらいたいですね」
 リブロ王子も反応する。というか、まだ車椅子生活なのか。まあ、彼の魔力循環障害は重度だったし、手遅れ気味だったから仕方ないわね。
 そう思いながら、私は意地悪そうに人差し指を立てて唇に当てる。
「できれば他言無用でお願いしますね」
 私はそう言うと、魔力を集中させる。そして、次の瞬間、私の姿は謁見の間から掻き消えた。
「き、消えた?!」
 国王たちが騒いでいる。
 ちなみにだけど、私は謁見の間の中に居るのよね。見えないところに居るだけで。そして、もう一度転移して元の場所に戻った。
「いかがでしたでしょうか」
 私はちょっと意地悪に笑ってみる。国王たちの顔は慌てたような表情で固まっている。
「あ、アンマリア。今のは一体?」
「はい、瞬間移動魔法と申しまして、思い浮かべた他の場所へと一瞬で移動できる魔法なんです」
「な、なんだと!?」
 私が告げた魔法の正体に、国王は目を剥き出しにして驚き、この場に残っていた王妃やリブロ、それに宰相と父親もものすごく驚いていた。
「ですので、私は今朝方学生たちの出発を見送ってから、瞬間移動でこの城の前までやって来たのです。現状では私ともう一人が限界でして、モモが居るのはそのおかげなのです」
 すると、どうした事だろうか。誰も黙り込んでしまって、私もどうしたらいいか困ってしまった。お願いだから何か反応してよ、もう。
 さすがにここまで沈黙が続くと、王族を目の前に固まるモモはもちろんだけれど、私だってどうしていいのか分からない。
 しばらく沈黙が続いていたものの、ようやく国王が我に返って私に視線を向けてきた。
「い、いやはや、恐ろしい魔法だな」
 ずいぶんと貧相な感想を向けられてしまった。もうどうしたらいいのよ、これ……。
「はい、ただこの魔法の弱点は、私ともう一人しか運べない事、行った事のあるなどしてイメージができる場所にしか飛べない事、それと消費魔力がとんでもない事ですね」
「と言うと?」
「多分、私以外だと、使う事はほぼ不可能という事ですね。一度使うだけで半分近く持ってかれますから」
 私が困ったような笑顔を見蹴ると、国王は再び黙り込んでしまった。
 ちなみに魔力が半分くらいというのは、私は自分のパラメータを覗けるから分かるのだ。例えば最大を100とするなら、45くらい持ってかれるのである。規格外の私の魔力でそれなのだから、この世界の一般人でこれが使えるなんていったら、多分だけれど、転生者以外だとサキくらいなものだと思う。そういえば、エスカは瞬間移動魔法って使えるのかしら。
 国王はしばらく考え込んでいたものの、途中でため息を吐いた。多分、考えるのを止めたのだと思う。
「アンマリアよ、報告ご苦労だった。天災級のギガンテスを討伐してくれた学生諸君にも、何か褒美を取らせないとな」
「それでしたら、リブロ殿下の誕生日パーティーの際にでも、大々的にした方がよろしいかと思われます。ギガンテスなんて私ですらぺちゃんこにされかねない化け物でしたから」
「う、うむ……。考えておこう」
 私がにっこりとして提案すると、国王はどういうわけか渋っていた。その後にリブロ王子に視線を送っていたので、おそらく父親として気を遣っているのだろう。確かに優秀な兄と婚約者を持つとどうしても比べがちになってしまうから、この判断は間違っていないかも知れない。でも、リブロ王子だってそんなに弱い子だとは思っていないので、私はその方がいいと思うんだけどな。ま、国王の判断に任せましょうか。
 そんなわけで、スタンピードの報告を終えた私はモモを連れて帰ろうとしたのだが、国王に呼び止められてしまった。
「今帰ったら屋敷の連中にも説明せねばなるまい。しばらく城に泊まっていくといいぞ」
 あー確かにそうね。秘密にしておいてといった私がそれを破るような真似はすべきじゃないか。
 そんなわけで、今日から3日間、つじつまを合わせるために私とモモはお城に泊まる事になってしまったのだった。
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