伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第三章 学園編

第147話 王都へひとっ飛び

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 スタンピードの翌日、なんと学園の夏合宿は中止になってしまった。スタンピードは連続で起きないとはいっても、魔物が残っていないとは限らないので、安全は確保できないためである。馬車の手配などがあるために、スタンピードの翌日となったのだ。
「とんでもない事になってしまいましたね」
 そう呟くのはサクラである。帰りの馬車の中にはアンマリアとモモを除く令嬢たちが乗り込んでいた。
「ギガンテスはさすがに予想外が過ぎるわよ。本当はケルピーだったんでしょ?」
「ケルピー? でしたら、5年前にアンマリア様が倒されてますわよ?」
「はい?!」
 ラムの言葉に衝撃を受けるエスカ。そこでラムから話を聞いたエスカは、頭を抱えていた。
「いや、規格外とは言っても、さすがに限度があるんじゃないの? 8歳の段階で広範囲魔法を使ってケルピー倒しちゃうって……。そりゃギガンテスの攻撃に耐えちゃうわ……」
 エスカはお姫様言葉をすっかり使うのを忘れてしまっている。そのくらいにはアンマリアの魔法は規格外なのである。さすがヒロイン。
「そういえば、アンマリア様はいらっしゃらないのですね」
 サキがエスカに確認を取っている。
「ええ、モモと一緒に別の手段で王都に戻っているはずです。私たちが王都に着く頃には、サーロイン国王はすべてを知っているはずですよ」
 エスカはもやもやとした感覚を覚えながら、サキの質問に答えていた。
(瞬間移動魔法とか、なんで使えるんですかね、あの人はーっ!)
 エスカは冷や汗を流しながら、心の中で絶叫していた。
「しかし、合宿が中止になってしまうとは、私としては残念でした。もっと筋肉の素晴らしさをお伝えできるかと思ったのですが……」
 サクラが頬に手を当てながら、本当に残念そうに呟いている。この令嬢はどこまでいっても筋肉ひと筋なのである。それこそ、ドレス越しでもはちきれんばかりの腕の筋肉がはっきり見えるくらいである。
「いえ、サクラ様。確かに筋肉は素晴らしいですけれど、みなさんがそうとは限りませんので自重して下さいませ」
 サクラがむんと気合いを入れていると、ダイエットに成功してすっかり痩せたラムが呆れて止めようとしていた。ラムが痩せた理由がバッサーシ式のダイエットだったから、あまり強く言えないのである。
 こうして、あーだこーだとわいわいと話をしながら、エスカたちは一路王都へ向けて馬車に揺られていったのだった。

 一方の私の話よ!
 私とモモは一足先に、瞬間移動魔法で王都まで戻っていた。家には寄らず、そのままお城へ直行よ。荷物である鞄は収納魔法に放り込んであるので、当然ながら手ぶら。合宿用にカジュアルな装いだけど、今回は仕方ないわね、緊急な話だもの。
「これは、ファッティ伯爵令嬢。今日はどうされましたか?」
 門の入口で門兵に止められる私たち。彼らは仕事だものね、これは仕方ないわね。
「ちょっと緊急の知らせがありますゆえに、国王陛下に謁見を願えないでしょうか」
「陛下にですか?」
「バッサーシ領内にてスタンピードが発生しまして、その事でご報告がございます」
「す、スタンピード?! か、畏まりました。すぐにご案内致します。おい、お前。陛下にすぐ連絡を!」
 門兵は慌てて同僚を走らせる。そして、私たちに対応した門兵は、私たちを連れて城の中へと入っていった。
「おお、アンマリア。どうしたんだ。合宿に行ってたのではないのか?」
 国王が謁見の間で出迎えてくれる。
「スタンピードの話はお耳に入っていると存じます。それがゆえに、急いで帰って参りました次第です」
 私は淡々と答える。
「ああ、聞いておる。バッサーシ領でのスタンピードなど、それほど珍しいものでもなかろう。フィレンが居るので気にはなったが、精鋭の騎士たちが居るのだ、何も問題なかったであろう?」
 国王はかなり楽観視した事を言っている。まあ、間違いではないので、それを否定するつもりはないわ。
 ただ、今回のスタンピードはちょっと様相が違っていたのだからこそ、こうやって報告に来たのよ。
「ええ、5年前にも起こっておりますので、その事については私も否定しません。ですが、今回はいくつかおかしな点がございました」
「おかしな事?」
 私の言葉に、国王が興味を示した。
「まずは、最初の一点が発生した後に、別の点が現れた事です。まあ、これもそれなりにある事ですので、特筆すべき事ではないでしょう」
「確かにそうだ。記録によれば10か所くらいから出現したという事もあるらしいからな」
 私の最初の報告に、国王は冷静に思い出しながら言葉を返してきた。やっぱり、複数箇所の同時出現っていうのはあったのね。
「今回一番おかしかったのはその後です。私が一か所を出現前に潰すと、魔物たちが集まって別の魔物を呼び出したのです。まるでいけにえになるかのように」
「なんだと?!」
 国王がかなり大げさな反応をするので、これは過去になかった事なのだろう。
「そうやって現れたのはギガンテスという巨大な魔物でした」
「ギガンテスだと?! こうしてはおれん、今すぐ……」
「いえ、陛下。ギガンテスは私たちの手で討伐済みでございます。とどめを刺したのはフィレン殿下とサクラ様でございます」
 国王がガタッと立ち上がって命令を出そうとしたのだが、私はそれを遮って報告を続けた。すると、国王たちは揃いも揃って目を点にして、じっと私たちの方を見ているのだった。
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