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第三章 学園編
第146話 体重落ちずも株は落ちる
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ギガンテスを討伐して、満身創痍のように呼吸を荒げているエスカたち。しかし、そこには笑顔なんてものは存在していなかった。
「ううう……、アンマリア様……」
「君が居ないのは、……考えられないよ、アンマリア」
そこにはまるでお通夜のような重苦しい空気が漂っていた。私ってそんな風にまで思われていたのね。沈み込み、涙まで流すみんなの姿に、私は正直心苦しくなった。
(なんか……、出て行きづらいわね)
近くの茂みの裏まで近付きながらも、空気が重すぎてかえって顔が出しづらい。ストレートに顔を出せないと判断した私は、ちょっと演出を入れてみる事にした。
フィレン王子やエスカたちの居る場所に、光の玉をほわほわと浮かせ始める私。これなら警戒させる事はあまりないと思うのよ。魔物で光属性を持つものはほぼ皆無だもの。
私の目論見は当たり、フィレン王子たちの抱える雰囲気が少し和んだように思う。これなら出て行けるかしら。
私は茂みから出る際、わざとガサガサと音を立てる。その音に反応して、フィレン王子たちが剣を構えて振り向いている。うん、いい反応ね。
「じゃーん!」
私はとぼけた効果音を口にしながら、みんなの前に飛び出た。しかし、うっかり飛び散った塩湖の水たまりに足を突っ込んでしまう。
「ありゃ?!」
地味にぬかるんでいたらしくて、足を取られて滑ってしまう私。くうう、なんとも締まらない。
「アンマリア!」
倒れたと思ったら、私は誰かに受け止められていた。ついつぶってしまった目をゆっくり開けると、そこにはフィレン王子の顔があった。
「無事だったのか、アンマリア!」
目の前に現れたフィレン王子の顔に、私はつい赤面してしまう。
「だ、大丈夫ですよ。わ、私はなんといっても全属性が使える反則的な女なんですから、おほほほほ!」
強がって喋る私だけれども、フィレン王子の顔を直視する事はできなかった。かっこよく登場しようとして足を滑らせるという間抜けな事をしてしまった上に、うっかりフィレン王子の顔にときめいてしまうという失態まで犯してしまったのだ。穴があったら入りたいわね。……あっ、ちょうどいい穴があったわね。
しかし、私はしっかりとフィレン王子に抱き締められてしまっていて、動く事は叶わなかった。そこへ、他の面々も集まってきていた。
「お姉様っ!!」
モモが泣きながら駆け寄ってくる。そして、失礼にもフィレン王子から強引に私を奪い取って抱きついてきた。
「あはは、やっぱり無事だったのね。アンマリアの魔力なら耐えきれてると思ったけど、私たちを奮い立たせるためにわざと死んだふりしてたわね」
モモにぐしゃぐしゃに泣きつかれながらも、エスカのその言葉に私は真顔になる。そして、そろ~っと目を逸らし始める。
「まあ、そうだったのですね。アンマリア様ったら人が悪いですわよ!」
「そうですよ。どれだけ私たちが悲しんだと思われたのですか!」
ラムとサキからも責められる始末。ええ……、これって私が悪くなるわけ? 私はちょっと納得がいかなかった。
そこへ、別の魔物の群れと対峙していた兵士たちが駆け寄ってくる。
「サクラお嬢様。ご無事でしょうか!」
「ご苦労。見ての通り全員無事です。あそこにギガンテスの魔石が落ちていますので、すぐさまお父様たちの所へ運ぶ準備を始めて下さい」
「畏まりました! おい、すぐに荷馬車を準備しろ!」
サクラからの号令で、バッサーシ辺境伯の私兵たちがきびきびと動き始める。国境警備隊もそれを手伝い始めた。
「さて、ちょっと調べさせてもらいますわよ」
エスカはギガンテスの魔石へと近付く。そして、鑑定魔法を使っている。
「ふんふん、なるほど……」
人の背丈の倍はあろうかという大きさの魔石を前に、エスカはどんな鑑定結果を見ているのだろうか。
「これは、最終的には国に献上した方がよろしいかと思います。ちょうどリブロ殿下の誕生日が控えていましたわよね?」
「ああ、6日後ですね」
そういえばそうだった。今日は合宿4日目。あれ、これって間に合わないんじゃ?
私は合宿の日数と王都との距離を計算してみてふと思ってしまった。
「弟の誕生日はそうですが、パーティー自体は翌週にずらして行いますから、十分間に合いますね。私が合宿に参加しているので、特殊な措置なのですけれどね」
私が疑問に思っていると、フィレン王子から驚愕の事実を告げられた。まさかの誕生日からの一週間ずらし! これにはびっくり驚いた。
「ああ、そうでしたのね」
「あれ、アンマリア様、ご存じなかったのですか?」
「合宿の事で頭がいっぱいだったので、つい……」
私は笑ってごまかしておく。
「急に決まった事だから仕方ないよ。兄も婚約者も居ない状態でパーティーをしても、リブロが寂しい思いをするだけだからね」
すかさず入ったフィレン王子からのフォロー。そして、リブロ王子への気遣い。なんとも優しいお兄ちゃんムーブ。……推せる!
「サクラお嬢様、それとみなさん。本当にスタンピードの対応感謝致します。残りの事は我々に任せて、宿舎に戻ってゆっくりお休み下さい」
「ええ、お願いしますよ」
「はっ! バッサーシの兵として、全力を尽くします!」
そんなわけで、とんでもない事態になったスタンピードも無事に解決した。残された魔石などの処理は兵士たちに任せて、私たちはその日は宿舎で休む事になったのだった。
「ううう……、アンマリア様……」
「君が居ないのは、……考えられないよ、アンマリア」
そこにはまるでお通夜のような重苦しい空気が漂っていた。私ってそんな風にまで思われていたのね。沈み込み、涙まで流すみんなの姿に、私は正直心苦しくなった。
(なんか……、出て行きづらいわね)
近くの茂みの裏まで近付きながらも、空気が重すぎてかえって顔が出しづらい。ストレートに顔を出せないと判断した私は、ちょっと演出を入れてみる事にした。
フィレン王子やエスカたちの居る場所に、光の玉をほわほわと浮かせ始める私。これなら警戒させる事はあまりないと思うのよ。魔物で光属性を持つものはほぼ皆無だもの。
私の目論見は当たり、フィレン王子たちの抱える雰囲気が少し和んだように思う。これなら出て行けるかしら。
私は茂みから出る際、わざとガサガサと音を立てる。その音に反応して、フィレン王子たちが剣を構えて振り向いている。うん、いい反応ね。
「じゃーん!」
私はとぼけた効果音を口にしながら、みんなの前に飛び出た。しかし、うっかり飛び散った塩湖の水たまりに足を突っ込んでしまう。
「ありゃ?!」
地味にぬかるんでいたらしくて、足を取られて滑ってしまう私。くうう、なんとも締まらない。
「アンマリア!」
倒れたと思ったら、私は誰かに受け止められていた。ついつぶってしまった目をゆっくり開けると、そこにはフィレン王子の顔があった。
「無事だったのか、アンマリア!」
目の前に現れたフィレン王子の顔に、私はつい赤面してしまう。
「だ、大丈夫ですよ。わ、私はなんといっても全属性が使える反則的な女なんですから、おほほほほ!」
強がって喋る私だけれども、フィレン王子の顔を直視する事はできなかった。かっこよく登場しようとして足を滑らせるという間抜けな事をしてしまった上に、うっかりフィレン王子の顔にときめいてしまうという失態まで犯してしまったのだ。穴があったら入りたいわね。……あっ、ちょうどいい穴があったわね。
しかし、私はしっかりとフィレン王子に抱き締められてしまっていて、動く事は叶わなかった。そこへ、他の面々も集まってきていた。
「お姉様っ!!」
モモが泣きながら駆け寄ってくる。そして、失礼にもフィレン王子から強引に私を奪い取って抱きついてきた。
「あはは、やっぱり無事だったのね。アンマリアの魔力なら耐えきれてると思ったけど、私たちを奮い立たせるためにわざと死んだふりしてたわね」
モモにぐしゃぐしゃに泣きつかれながらも、エスカのその言葉に私は真顔になる。そして、そろ~っと目を逸らし始める。
「まあ、そうだったのですね。アンマリア様ったら人が悪いですわよ!」
「そうですよ。どれだけ私たちが悲しんだと思われたのですか!」
ラムとサキからも責められる始末。ええ……、これって私が悪くなるわけ? 私はちょっと納得がいかなかった。
そこへ、別の魔物の群れと対峙していた兵士たちが駆け寄ってくる。
「サクラお嬢様。ご無事でしょうか!」
「ご苦労。見ての通り全員無事です。あそこにギガンテスの魔石が落ちていますので、すぐさまお父様たちの所へ運ぶ準備を始めて下さい」
「畏まりました! おい、すぐに荷馬車を準備しろ!」
サクラからの号令で、バッサーシ辺境伯の私兵たちがきびきびと動き始める。国境警備隊もそれを手伝い始めた。
「さて、ちょっと調べさせてもらいますわよ」
エスカはギガンテスの魔石へと近付く。そして、鑑定魔法を使っている。
「ふんふん、なるほど……」
人の背丈の倍はあろうかという大きさの魔石を前に、エスカはどんな鑑定結果を見ているのだろうか。
「これは、最終的には国に献上した方がよろしいかと思います。ちょうどリブロ殿下の誕生日が控えていましたわよね?」
「ああ、6日後ですね」
そういえばそうだった。今日は合宿4日目。あれ、これって間に合わないんじゃ?
私は合宿の日数と王都との距離を計算してみてふと思ってしまった。
「弟の誕生日はそうですが、パーティー自体は翌週にずらして行いますから、十分間に合いますね。私が合宿に参加しているので、特殊な措置なのですけれどね」
私が疑問に思っていると、フィレン王子から驚愕の事実を告げられた。まさかの誕生日からの一週間ずらし! これにはびっくり驚いた。
「ああ、そうでしたのね」
「あれ、アンマリア様、ご存じなかったのですか?」
「合宿の事で頭がいっぱいだったので、つい……」
私は笑ってごまかしておく。
「急に決まった事だから仕方ないよ。兄も婚約者も居ない状態でパーティーをしても、リブロが寂しい思いをするだけだからね」
すかさず入ったフィレン王子からのフォロー。そして、リブロ王子への気遣い。なんとも優しいお兄ちゃんムーブ。……推せる!
「サクラお嬢様、それとみなさん。本当にスタンピードの対応感謝致します。残りの事は我々に任せて、宿舎に戻ってゆっくりお休み下さい」
「ええ、お願いしますよ」
「はっ! バッサーシの兵として、全力を尽くします!」
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