伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
196 / 500
第四章 学園編・1年後半

第196話 国王への報告

しおりを挟む
 その日のうちに瞬間移動魔法を使って王都に戻った私は、ヒーゴから聞いた事をすぐさま書き起こしておいた。その一方でキャピルの事も商会に通すべく、とにかく寝るまでの間にまとめるだけまとめておいた。
(さすがに野菜関連は生ものだけに、ちょっと取引に向かないわね。腐らせずにとなると冷凍冷蔵は必須だし、収納魔法となると難易度が高すぎますからね)
 ベジタリウス王国との関係を良好にさせる事で、いろいろと可能性が広がりそうだと私は考えていた。何と言っても南のミール王国との関係も良くすると、海産物が結構手に入るようになったからだ。エスカが頑張ってくれたのもあるけれど、海の幸を食べられるのは大きいものね。
 いろいろと準備を済ませた私は、翌日の学園が終わるとフィレン王子の馬車に同行させてもらう事になった。国王にキャピルの取り扱いについて許可を貰いに行くためである。ヒーゴにも話を通すように言われたのだから、話をしないわけにはいかなかった。
「アンマリア、今日はどういう用件なのかな」
 フィレン王子が気になるらしく、私に問い掛けてきた。
「バッサーシ辺境伯様からベジタリウス王国についてお話を伺って参りました。それに関連した事でございますよ、殿下」
 正直に答える私。ベジタリウス王国となると来年からはうちの王国の学園に王子と王女が通う事になるので、フィレン王子も無関係ではないからだ。すると、フィレン王子は深く考え始めた。
「ベジタリウス王国ですか……。私も気になりますね。私も同席したいと思いますので、ぜひともお聞かせ下さい」
「しょ、承知致しましたわ」
 フィレン王子の勢いに、つい押されてしまった私である。

 なんだかんだとしているうちに、私はフィレン王子と一緒に国王の前に居た。そこには王妃とリブロ王子、ついでに宰相までが居る。なんでこんなに人が揃ってるんでしょうかね。
「アンマリアよ、ベジタリウス王国について情報を仕入れたらしいな。ぜひとも聞かせてくれ」
 国王がめちゃくちゃ食い気味に聞いてくるんですけど? えっ、外交なんだから国王もそれくらい情報持ってないわけ?
 私はそんな事を思いながら宰相の顔を見る。そしたら、宰相であるバラクーダも興味津々である。ちょっと待ってよ、なんであなた方が知らないんですか?!
「さあ、アンマリア。報告をしてもらいましょうか」
 宰相が圧を掛けてくる。
 私はむむむと唸りながらも、やれやれといった感じでヒーゴから聞いたベジタリウス王国の情報を話したのだった。
 それを聞き終えた国王と宰相がものすごく唸っている。さすがにバッサーシ辺境伯からの情報とはいえ、どこまで信じていいのか分からないのかも知れない。もしかしたら、黙っていた事に怒っているのかも知れない。どちらにしても、その扱いにものすごく困っているように見える。
「国王陛下、さすがにこれだけの情報、陛下に報告しなかった事は罰しておいた方がよろしいのでは?」
「うむ、とりあえずそうだな」
(あ、やっぱりそうなるかな。うわー、どういう罰則になっちゃうのかしら)
 私はちょっと慌てた。なので、話題を逸らそうと次の話題を持ち出す。
「あの、失礼致します、国王陛下」
「うん、どうした、アンマリア」
 私が声を掛けると国王が振り向く。
「キャピルという布についてご存じでしょうか」
「キャピル? ああ、このマントに使われておる布地の事か。それがどうかしたか?」
 確かにキャピルは王族の衣装に使われているようである。
「実は、私の家が支援するボンジール商会で取り扱わさせて頂きたく存じます。どうか、ご許可頂けますでしょうか」
 伯爵である父でも、商会長であるギーモでもない。一介の伯爵令嬢に過ぎない私がこう発言するのは、実に出過ぎた真似である事は重々承知だ。でも、この布を広めない手はない。
「よし分かった。許可しよう」
 そしたらば、ものの数秒で許可が下りた。早すぎない?!
「いいのですか?」
 思わず確認してしまう私。
「うむ、今までの功績を見ている限り、アンマリアに任せれば大丈夫な気がするからな。友好の証として取扱量を増やしても問題あるまい」
 思わず口をパクパクとさせてしまう私である。
「というわけだ、アンマリア。ボンジール商会によるキャピルの取り扱い、許可したからな。しっかりとそれに見合う結果を出してくれたまえ」
「しょ、承知致しました」
 国王に言われてしまえば承諾するしかなかった。目的は達成されたものの、恐れ多いとかという気持ちよりもあっさり過ぎてそっちの方が怖かった。だけども、王妃にフィレン王子、リブロ王子が揃って笑顔を向けてくれたので、少しは気持ちが楽になった気がした。
 そんなわけで、キャピルの取り扱いを始めるからにはやってやろうじゃないのよ。デザインは苦手だけど、作るならドレスと寝間着ってところかしらね。これで商会の商売の幅がいろいろと広がるわね。
 私がやる気になったところに、国王が別の話を振ってくる。
「そうだ。来年から王族が新たに四人も学園に通う事になる。アンマリアにはそのうちエスカ・ミール王女の相手を頼みたい。仲が良さそうだからな」
「学年は違いますが、よろしいのですか?」
「構わん、ファッティ邸で暮らしたいという要望が来ているのでな、それを飲まないわけにはいかないだろう?」
 国王の言葉に私は虚無になる。
 そうだよ、今年も散々うちに泊まっていったんだっけか、あの王女……。
 ま、私としても同じ異世界出身者として本音を言える相手なので別に構わないけど、なんかこう、どこか嫌なのよね。
「しょ、承知致しました……」
 だけども、キャピルの件もあったので、私はやむなくその件を飲む事にしたのだった。
 ……3年間は地獄になりそうね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...