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第五章 2年目前半
第250話 ドキドキ、ダブルデート
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そんなわけで、まだアンマリアたちがミール王国に出向いている週末の事だ。
公爵令嬢ラムは、カービルとお出かけをする事になった。何気にこうやって二人でお出かけというのは、驚いた事に初めてになる。
それというのも、カービルがゲームの設定どおりにふくよかな方が好みだからである。
この世界のラムは、サクラから教えられた運動を続けており、筋肉質とまではいかなくても、それなりにしっかりとした体つきになっていた。あと、地味に胸がでかい。ちなみに公式絵では、明らかに太っているというのにそれでもはっきりと大きさが分かるという巨体だったのだ。痩せてもそこだけはきっちり変わらないようだった。
その上で、公爵令嬢としての所作もしっかり身に付いており、勉学もできるという完璧超人っぷりだ。何を持ってカービルはラムを拒否するのだろうか。周りから見れば理解に苦しむ状況である。
「うふふ、今日はカービル様とお出かけなのですね。楽しみですわ」
待ち合わせの場所へとやって来たラムは、とても楽しみにしているようだった。
しばらく遅れて、カービルがやって来た。その顔はどことなく不服なところがあるように見える。
「あら、カービル様。おはようございますわ」
「ああ、ラム嬢、おはよう」
「うふふ、婚約者を前にその表情は頂けませんわね。カービル様、こういう時は嘘でも笑顔を見せるものですよ」
現れたカービルに対して苦言を呈するラムである。公爵令嬢として厳しく鍛えられてきているので、世渡りに関しても結構知識があるのである。
「カービル様はお母様が大好きですものね。そのせいで太った方にしか興味を持たれない事も重々承知しております。ですが、包容力というのでしたら、太っている事が必要とは限りませんわよ」
ラムはカービルの前に人差し指を突き出しながら、諭すように話し掛けている。
「ともかく、今日はしっかりとエスコートを頼みますわよ、カービル様」
最後は後ろ手に手を組んでにこりと笑うラムである。普通の男性ならころっとやられそうな笑顔なのだが、カービルは手強かった。
「こほん、私があなたと付き合うのは、婚約者としての立場があるからです。あなたを好きになるかどうかとは、また別の話ですからね」
だが、微動だにしていないカービルかと思ったが、発言を聞く限りは動揺しているようだった。実はちょろいのではないのだろうか。
「さあ、どこに参りましょうか」
ラムがカービルに話し掛ける。
「そうだな。最近、学園の中でも噂になっている装飾品店などどうだろうか」
「あら、悪くはないですわね。では、早速参りましょう」
少し前に出たラムは、くるりと振り向いてカービルに笑顔を向ける。この笑顔に、カービルは思わずドキッとしてしまうのだった。
「ふっふっふっ、カービル様も照れてますね」
「おい、なんで俺たちはこんな事をしているんだ?」
その姿を隠れて見守るのは、タンとサクラの脳筋コンビだった。ちなみにこれの発案はサクラである。先日の様子をタンから聞いて思い立ったのである。
「何を言っているの。友人の恋路は、ちゃんと見守るのが友人たる役目なんですよ」
「本気で何を言っているんだ。よく分からないから説明してくれ」
「説明なんて要りません。というか今説明したじゃないですか!」
あまりに理解力のないタンを叱るサクラ。これだけ大声で叫ぶと気付かれてしまいそうなものである。案の定ラムには気付かれていたが、ラムは気遣いができるのでスルーしているようである。できる女は違うのである。
「あっ、移動を始めるわ。追いかけますよ、タン様」
「お、おう」
サクラに引っ張られるようにして、タンも一緒になって駆けていった。
やって来たのは王都でも有名な装飾品店である。貴族の御用達と言われているそれは高いお店である。
ちなみに誕生日はどちらもまだまだ先の話だ。カービルは31ターン目、ラムにいたっては40ターン目だ。今はまだフィレン王子の誕生日パーティーが終わったばかりの16ターン目である。季節的には初夏だ。
しかし、ラムがいいと言ったが、正直この時期に装飾品店というのはむしろマイナスポイントになりかねない。大体の場合、貴族にとっての装飾品というのはジャラジャラとした宝石や貴金属なのだから。
ところが、別に装飾品といってもそういったものばかりではなかった。頭に着ける髪飾りなどのワンポイントだってある。別に悪い判断ではないと思われる。
店内を見て回るラムとカービルを、客に紛れながらサクラとタンは見守っている。ばれそうな感じだというのに、カービルは二人にまったく気が付いていないようだった。令嬢とのデートに緊張しているようである。
(まったく、あの二人はあれで気付かれてないと思っているのかしら。筋肉質のせいで目立ちますわよ)
一方のラムは、すっかりサクラとタンの姿を捉えていた。それを言わないあたり、ラムはしっかり配慮できる令嬢なのである。
はてさて、こんな状態のラムとカービルのデート。カービルはデブ専という立ち位置を維持できるのか、それともラムに本格的に魅せられるのか、緊張の一日はまだ始まったばかりである。
公爵令嬢ラムは、カービルとお出かけをする事になった。何気にこうやって二人でお出かけというのは、驚いた事に初めてになる。
それというのも、カービルがゲームの設定どおりにふくよかな方が好みだからである。
この世界のラムは、サクラから教えられた運動を続けており、筋肉質とまではいかなくても、それなりにしっかりとした体つきになっていた。あと、地味に胸がでかい。ちなみに公式絵では、明らかに太っているというのにそれでもはっきりと大きさが分かるという巨体だったのだ。痩せてもそこだけはきっちり変わらないようだった。
その上で、公爵令嬢としての所作もしっかり身に付いており、勉学もできるという完璧超人っぷりだ。何を持ってカービルはラムを拒否するのだろうか。周りから見れば理解に苦しむ状況である。
「うふふ、今日はカービル様とお出かけなのですね。楽しみですわ」
待ち合わせの場所へとやって来たラムは、とても楽しみにしているようだった。
しばらく遅れて、カービルがやって来た。その顔はどことなく不服なところがあるように見える。
「あら、カービル様。おはようございますわ」
「ああ、ラム嬢、おはよう」
「うふふ、婚約者を前にその表情は頂けませんわね。カービル様、こういう時は嘘でも笑顔を見せるものですよ」
現れたカービルに対して苦言を呈するラムである。公爵令嬢として厳しく鍛えられてきているので、世渡りに関しても結構知識があるのである。
「カービル様はお母様が大好きですものね。そのせいで太った方にしか興味を持たれない事も重々承知しております。ですが、包容力というのでしたら、太っている事が必要とは限りませんわよ」
ラムはカービルの前に人差し指を突き出しながら、諭すように話し掛けている。
「ともかく、今日はしっかりとエスコートを頼みますわよ、カービル様」
最後は後ろ手に手を組んでにこりと笑うラムである。普通の男性ならころっとやられそうな笑顔なのだが、カービルは手強かった。
「こほん、私があなたと付き合うのは、婚約者としての立場があるからです。あなたを好きになるかどうかとは、また別の話ですからね」
だが、微動だにしていないカービルかと思ったが、発言を聞く限りは動揺しているようだった。実はちょろいのではないのだろうか。
「さあ、どこに参りましょうか」
ラムがカービルに話し掛ける。
「そうだな。最近、学園の中でも噂になっている装飾品店などどうだろうか」
「あら、悪くはないですわね。では、早速参りましょう」
少し前に出たラムは、くるりと振り向いてカービルに笑顔を向ける。この笑顔に、カービルは思わずドキッとしてしまうのだった。
「ふっふっふっ、カービル様も照れてますね」
「おい、なんで俺たちはこんな事をしているんだ?」
その姿を隠れて見守るのは、タンとサクラの脳筋コンビだった。ちなみにこれの発案はサクラである。先日の様子をタンから聞いて思い立ったのである。
「何を言っているの。友人の恋路は、ちゃんと見守るのが友人たる役目なんですよ」
「本気で何を言っているんだ。よく分からないから説明してくれ」
「説明なんて要りません。というか今説明したじゃないですか!」
あまりに理解力のないタンを叱るサクラ。これだけ大声で叫ぶと気付かれてしまいそうなものである。案の定ラムには気付かれていたが、ラムは気遣いができるのでスルーしているようである。できる女は違うのである。
「あっ、移動を始めるわ。追いかけますよ、タン様」
「お、おう」
サクラに引っ張られるようにして、タンも一緒になって駆けていった。
やって来たのは王都でも有名な装飾品店である。貴族の御用達と言われているそれは高いお店である。
ちなみに誕生日はどちらもまだまだ先の話だ。カービルは31ターン目、ラムにいたっては40ターン目だ。今はまだフィレン王子の誕生日パーティーが終わったばかりの16ターン目である。季節的には初夏だ。
しかし、ラムがいいと言ったが、正直この時期に装飾品店というのはむしろマイナスポイントになりかねない。大体の場合、貴族にとっての装飾品というのはジャラジャラとした宝石や貴金属なのだから。
ところが、別に装飾品といってもそういったものばかりではなかった。頭に着ける髪飾りなどのワンポイントだってある。別に悪い判断ではないと思われる。
店内を見て回るラムとカービルを、客に紛れながらサクラとタンは見守っている。ばれそうな感じだというのに、カービルは二人にまったく気が付いていないようだった。令嬢とのデートに緊張しているようである。
(まったく、あの二人はあれで気付かれてないと思っているのかしら。筋肉質のせいで目立ちますわよ)
一方のラムは、すっかりサクラとタンの姿を捉えていた。それを言わないあたり、ラムはしっかり配慮できる令嬢なのである。
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