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第五章 2年目前半
第251話 ドキドキ、ダブルデート(中編)
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装飾品店を出ていったラムとカービル。それを追うようにサクラとタンも出ていく。人気のお店だから常にマンツーマン商売ができないのでできる芸当だった。
そのままラムとカービルのペアは、通りを雑談をしながら歩いている。その様子は楽しそうに見えるが、後方で尾行するサクラの目には違って映っているようだった。
「カービル様ったら、ものすごく緊張してますね。意外と令嬢とお話するのは慣れていない感じなのかしら」
様子を見ながら冷静に分析しているサクラに、タンははっきり言って呆れていた。
「正直、こうやって人の後をこそこそとつけるのは主義ではないのだが」
タンはそう言って離脱しようとする。だが、
「あら、警備を担当するようになると、こういった事もする事はございますよ。怪しい人の後をつけて拠点を見つけるとか……ね」
サクラにこう言われてしまえば、タンは髪の毛を軽くたくし上げて首を軽く横に振っていた。そんなわけで、サクラとタンはこっそりとラムたちの後を追いかけていくのである。
次にラムたちがやって来たのは、服屋さんだった。
「これはいけませんね。順番が逆です」
サクラが建物の陰から覗きながらツッコミを入れていた。
「どういう事だ?」
訳が分からないタンがサクラに尋ねる。
「装飾品というのは服に合わせるものです。だというのに、先に装飾品を見てから服を見るというのは、通常ではありえない順序なんですよ」
脳筋系女子かと思ったが、そこはさすが貴族令嬢である。
「本人の容姿に合わせて服を決めて、それから装飾品を合わせるというのが基本です。一緒に着ないという話なら構いませんが、普通の令嬢はいい顔をしません」
サクラはかなり怒っているようだった。
「だが、俺たちがここで出ていくわけにはいかねえだろ。ついて来てるなんて知れたら、間違いなく怒られるぞ」
「だからこそ、私がもどかしいのですよ」
ゲームでは脳筋令嬢として通っているサクラが頬を膨らませている。実に珍しい光景だ。しかし、その光景をアンマリアもエスカもミズーナも見る事ができなかった。後で知ればきっと三人とも地団太を踏んで悔しがる事だろう。
それはさておき、しばらくするとラムとカービルの二人が出てきた。何も持っていないのは普通の事なのだが、時間が思ったより短かったので、おそらく何も購入する事はなかったのだろう。買う服が決まれば寸法を測るためにどうしても時間がかかってしまうからだ。
「どうやら、服は購入なさらなかったようですわね。さあ、ついて行きますよ」
「お、おう」
サクラがぐいぐいと引っ張るので、タンは仕方なくその流れに乗るしかなかったのだった。
次にラムたちがやって来たのは飲食店だった。もうそんな時間になったらしい。
「あら、もうそんな時間になってしまいましたか。タン様、私たちも何か食べましょう」
「あ、ああ。そうだな」
「お金の心配は要りませんよ。私がちゃんと持ってきておりますから」
戸惑うタンに、サクラはにこりと微笑んでいた。その笑顔に、タンは思わずやられそうになってしまった。
そうやって、サクラがタンを連れて飲食店へと入ろうとした時、サクラは目の前の光景に思わず驚いて動きを止めてしまった。
「尾行とは、感心致しませんわよ、サクラ様? タン様?」
そう、ラムが両手を腰に当てて立っていたのである。その表情は完全に怒っている顔である。
「あはは、ラム様、偶然ですね」
サクラは笑ってごまかそうとしている。だが、ラムが簡単にそれに乗ってくれるわけがなかった。
「何を仰いますか。最初の装飾品店へ向かう前からずっと後をつけてきていたのは知っています。尾行をなさるのでしたら、もう少し静かに行えませんこと?」
ガミガミとラムの説教が続く。これはさすがの脳筋コンビもただただ黙って聞いている事しかできなかった。
「ま、まあ、ラム嬢。それくらいにしておきましょう。店員も他の客たちもこっちを見ていますからね。それに、ここはお店の入口ですよ」
「あら、そうでしたわね。これは失礼致しましたわ」
カービルが口を挟んだ事で、ようやくラムの説教から解放されたサクラとタンである。
「というわけですので、ここはお二人のおごりという事でよろしいですわね?」
「ええ?!」
ところが、これで素直に解放してはもらえなかった。四人で食事する代わりに、食事代を払えと要求してきたのである。
さすがの脳筋コンビも怒り心頭のラムには逆らえず、これを渋々了承したのだった。
「それと、午後はお二人もご一緒なさらない? カービル様ったら、こういう事には疎いようでしてまったくプランが練られておりませんの。もちろん、断りませんわよね?」
席に着いたところで、ラムから更なる圧力を加えられるサクラとタン。これには二人は顔を合わせながらため息を吐く。
「はい、そうさせて頂きます」
しょぼんと項垂れながら了承したのだった。
はてさて、このデートはこの後どうなってしまうのだろうか。脳筋コンビに任せて本当に大丈夫なのか、心配なのである。
そのままラムとカービルのペアは、通りを雑談をしながら歩いている。その様子は楽しそうに見えるが、後方で尾行するサクラの目には違って映っているようだった。
「カービル様ったら、ものすごく緊張してますね。意外と令嬢とお話するのは慣れていない感じなのかしら」
様子を見ながら冷静に分析しているサクラに、タンははっきり言って呆れていた。
「正直、こうやって人の後をこそこそとつけるのは主義ではないのだが」
タンはそう言って離脱しようとする。だが、
「あら、警備を担当するようになると、こういった事もする事はございますよ。怪しい人の後をつけて拠点を見つけるとか……ね」
サクラにこう言われてしまえば、タンは髪の毛を軽くたくし上げて首を軽く横に振っていた。そんなわけで、サクラとタンはこっそりとラムたちの後を追いかけていくのである。
次にラムたちがやって来たのは、服屋さんだった。
「これはいけませんね。順番が逆です」
サクラが建物の陰から覗きながらツッコミを入れていた。
「どういう事だ?」
訳が分からないタンがサクラに尋ねる。
「装飾品というのは服に合わせるものです。だというのに、先に装飾品を見てから服を見るというのは、通常ではありえない順序なんですよ」
脳筋系女子かと思ったが、そこはさすが貴族令嬢である。
「本人の容姿に合わせて服を決めて、それから装飾品を合わせるというのが基本です。一緒に着ないという話なら構いませんが、普通の令嬢はいい顔をしません」
サクラはかなり怒っているようだった。
「だが、俺たちがここで出ていくわけにはいかねえだろ。ついて来てるなんて知れたら、間違いなく怒られるぞ」
「だからこそ、私がもどかしいのですよ」
ゲームでは脳筋令嬢として通っているサクラが頬を膨らませている。実に珍しい光景だ。しかし、その光景をアンマリアもエスカもミズーナも見る事ができなかった。後で知ればきっと三人とも地団太を踏んで悔しがる事だろう。
それはさておき、しばらくするとラムとカービルの二人が出てきた。何も持っていないのは普通の事なのだが、時間が思ったより短かったので、おそらく何も購入する事はなかったのだろう。買う服が決まれば寸法を測るためにどうしても時間がかかってしまうからだ。
「どうやら、服は購入なさらなかったようですわね。さあ、ついて行きますよ」
「お、おう」
サクラがぐいぐいと引っ張るので、タンは仕方なくその流れに乗るしかなかったのだった。
次にラムたちがやって来たのは飲食店だった。もうそんな時間になったらしい。
「あら、もうそんな時間になってしまいましたか。タン様、私たちも何か食べましょう」
「あ、ああ。そうだな」
「お金の心配は要りませんよ。私がちゃんと持ってきておりますから」
戸惑うタンに、サクラはにこりと微笑んでいた。その笑顔に、タンは思わずやられそうになってしまった。
そうやって、サクラがタンを連れて飲食店へと入ろうとした時、サクラは目の前の光景に思わず驚いて動きを止めてしまった。
「尾行とは、感心致しませんわよ、サクラ様? タン様?」
そう、ラムが両手を腰に当てて立っていたのである。その表情は完全に怒っている顔である。
「あはは、ラム様、偶然ですね」
サクラは笑ってごまかそうとしている。だが、ラムが簡単にそれに乗ってくれるわけがなかった。
「何を仰いますか。最初の装飾品店へ向かう前からずっと後をつけてきていたのは知っています。尾行をなさるのでしたら、もう少し静かに行えませんこと?」
ガミガミとラムの説教が続く。これはさすがの脳筋コンビもただただ黙って聞いている事しかできなかった。
「ま、まあ、ラム嬢。それくらいにしておきましょう。店員も他の客たちもこっちを見ていますからね。それに、ここはお店の入口ですよ」
「あら、そうでしたわね。これは失礼致しましたわ」
カービルが口を挟んだ事で、ようやくラムの説教から解放されたサクラとタンである。
「というわけですので、ここはお二人のおごりという事でよろしいですわね?」
「ええ?!」
ところが、これで素直に解放してはもらえなかった。四人で食事する代わりに、食事代を払えと要求してきたのである。
さすがの脳筋コンビも怒り心頭のラムには逆らえず、これを渋々了承したのだった。
「それと、午後はお二人もご一緒なさらない? カービル様ったら、こういう事には疎いようでしてまったくプランが練られておりませんの。もちろん、断りませんわよね?」
席に着いたところで、ラムから更なる圧力を加えられるサクラとタン。これには二人は顔を合わせながらため息を吐く。
「はい、そうさせて頂きます」
しょぼんと項垂れながら了承したのだった。
はてさて、このデートはこの後どうなってしまうのだろうか。脳筋コンビに任せて本当に大丈夫なのか、心配なのである。
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