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第五章 2年目前半
第252話 ドキドキ、ダブルデート(後編)
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ラムとカービル、それとサクラとタンの四人となった一行は、ひとまずはわいわいと昼食を取っていた
サクラとタンが食べていたものを見て、ラムとカービルは呆気に取られていたのは言うまでもない。なにせこの脳筋コンビ、かなりの量の肉を食べていたのだから。さすがは脳筋コンビと言える。
「お二人とも、そんなに食べて大丈夫なのですか?」
「平気ですよ」
ラムからの質問に、ひとまず口の中を空にしたサクラが答える。
「いや、財布的に大丈夫かっていうのもあるんだけどね……」
カービルが追撃の質問をぶつける。
「大丈夫ですよ。このくらいならいつもの量ですし、それくらいの想定をして持ち歩いていますからね」
これにもサクラはにっこりと答えていた。
だが、さすがにタンの食べている量が計算に入っていなかったようだ。会計の時にタンを睨んで、自分の分を払わせていた。その光景にラムとカービルは苦笑いをしていた。
「うっかりしてましたね。自分だけではなく、タン様が居る事を失念しておりました」
「なんでそうなるんだよ! 今日に限ってはずっと一緒に居ただろうが!」
サクラが頬に手を当てて失敗したという態度を取っていると、タンがすぐさま大声でツッコミを入れていた。やっぱりこの二人はなんだかんだで合うようである。
そんな夫婦漫才のようなやり取りを見せられて、ラムとカービルは揃って笑いっぱなしになっていた。
飲食店を出ると、ラムは改めてサクラたちを見る。
「それでは、どこへ向かいましょうか」
デートプランの確認である。カービルにエスコートさせるつもりだったので、ラムは最初から今日の予定は考えていなかったのだ。
「それでしたら、あそこがよろしいと思います。ちょっと行くのが大変ですけれど」
サクラが手を合わせながら話している。はて、一体どこへと行こうというのだろうか。
一行がたどり着いた場所は王都を一望できるだけの場所、王城の尖塔だったのだ。辺境伯令嬢としての権限を使ったのである。普通ならば入れない場所ではあるものの、サーロイン王国の三大辺境伯のひとつであるバッサーシ辺境伯の名を使ったのだ。
王家に多大な貢献をしてきたバッサーシ辺境伯の名の力は絶大で、簡単に尖塔に昇る許可が下りたのである。本来なら宰相クラスの許可が必要なのだが、そこはそこである。
「ぜえ……ぜえ……。ちょ、頂上は……まだなのか?」
尖塔に昇る真っ最中、カービルはただ一人息が上がっていた。他の三人はまったく平気のようである。ちなみに、ゲーム中のラムだったら、昇る事すらできなかっただろう。だが、ここに居るラムはバッサーシ流運動術で健康的になった姿だ。この程度の運動でへばるような事はなかった。
「ら、ラム嬢。なんでそんなに、元気なのですか?」
「鍛えているからですよ。ほら」
カービルの質問に答えたラムは、途中にあった踊り場に到着すると、カービルを軽々と持ちあげてしまった。マジですか、この公爵令嬢。
あまりの光景に目を白黒とさせてしまうカービル。その様子を、タンとカービルはにやにやとした様子で眺めていた。カービルとしては恥ずかしいのだが、尖塔の中の階段は手すりがないので暴れられなかった。結局、尖塔の頂上までそのまま抱きかかえられていた。
「さあ、着きましたわね」
尖塔の頂上にたどり着いたラムたち。
「うわぁ……」
尖塔から見る王都の景色は格別だった。
「王都ってこんなに大きかったのですわね」
「大体はあっちの方向しか行った事なかったな。俺の家のミノレバー領もバッサーシ辺境伯領と同じ方向だからな」
ラムたちは王都の街並みを見て感動している。ただ一人、カービルを除いて。
「カービル様、ご一緒にご覧になりましょう。大丈夫ですわよ、落っこちたりはしませんわ」
「わ、私は、高いところが、だ、ダメなんだ……」
ラムの誘いに、なんとそんな事を言って断ろうとするカービルだった。高所恐怖症とは、意外な弱点である。
「はははっ、普段は落ち着いた感じで分からなかったが、そんな弱点があったとはな。人は何かしら不得手も持ち合わせているという事か、わははははっ、あがっ!」
「タン様、笑い過ぎです。そんな事だから脳筋だとか言われるのですよ。もう少し気遣って差し上げて下さい」
タンの首筋に、サクラのチョップが決まる。そんな事をしながらも、淡々と喋れるサクラも大概だった。
それを見ながら笑うラムに、体力のなさと高所恐怖症のダブルパンチで青ざめるカービル。四人はそれぞれに、しばらく尖塔でのひと時を過ごしたのだった。
「カービル様、わたくしはいつでもそばに居て支えてさし上げますから、どうぞいつでも甘えて下さいませ」
「ラム嬢……」
最後の最後で甘々な状況を見せられたサクラとタンは、顔を真っ赤にしてその姿を見ていたのだった。
余談だが、尖塔を降りたところで宰相バラクーダに待ち構えられていて、こっぴどく怒られたのは言うまでもなかった。それでも、ラムたちは満足そうに帰っていったわけだが、立入禁止箇所に入るなら、ちゃんとしかるべき相手から許可をもらおう。
サクラとタンが食べていたものを見て、ラムとカービルは呆気に取られていたのは言うまでもない。なにせこの脳筋コンビ、かなりの量の肉を食べていたのだから。さすがは脳筋コンビと言える。
「お二人とも、そんなに食べて大丈夫なのですか?」
「平気ですよ」
ラムからの質問に、ひとまず口の中を空にしたサクラが答える。
「いや、財布的に大丈夫かっていうのもあるんだけどね……」
カービルが追撃の質問をぶつける。
「大丈夫ですよ。このくらいならいつもの量ですし、それくらいの想定をして持ち歩いていますからね」
これにもサクラはにっこりと答えていた。
だが、さすがにタンの食べている量が計算に入っていなかったようだ。会計の時にタンを睨んで、自分の分を払わせていた。その光景にラムとカービルは苦笑いをしていた。
「うっかりしてましたね。自分だけではなく、タン様が居る事を失念しておりました」
「なんでそうなるんだよ! 今日に限ってはずっと一緒に居ただろうが!」
サクラが頬に手を当てて失敗したという態度を取っていると、タンがすぐさま大声でツッコミを入れていた。やっぱりこの二人はなんだかんだで合うようである。
そんな夫婦漫才のようなやり取りを見せられて、ラムとカービルは揃って笑いっぱなしになっていた。
飲食店を出ると、ラムは改めてサクラたちを見る。
「それでは、どこへ向かいましょうか」
デートプランの確認である。カービルにエスコートさせるつもりだったので、ラムは最初から今日の予定は考えていなかったのだ。
「それでしたら、あそこがよろしいと思います。ちょっと行くのが大変ですけれど」
サクラが手を合わせながら話している。はて、一体どこへと行こうというのだろうか。
一行がたどり着いた場所は王都を一望できるだけの場所、王城の尖塔だったのだ。辺境伯令嬢としての権限を使ったのである。普通ならば入れない場所ではあるものの、サーロイン王国の三大辺境伯のひとつであるバッサーシ辺境伯の名を使ったのだ。
王家に多大な貢献をしてきたバッサーシ辺境伯の名の力は絶大で、簡単に尖塔に昇る許可が下りたのである。本来なら宰相クラスの許可が必要なのだが、そこはそこである。
「ぜえ……ぜえ……。ちょ、頂上は……まだなのか?」
尖塔に昇る真っ最中、カービルはただ一人息が上がっていた。他の三人はまったく平気のようである。ちなみに、ゲーム中のラムだったら、昇る事すらできなかっただろう。だが、ここに居るラムはバッサーシ流運動術で健康的になった姿だ。この程度の運動でへばるような事はなかった。
「ら、ラム嬢。なんでそんなに、元気なのですか?」
「鍛えているからですよ。ほら」
カービルの質問に答えたラムは、途中にあった踊り場に到着すると、カービルを軽々と持ちあげてしまった。マジですか、この公爵令嬢。
あまりの光景に目を白黒とさせてしまうカービル。その様子を、タンとカービルはにやにやとした様子で眺めていた。カービルとしては恥ずかしいのだが、尖塔の中の階段は手すりがないので暴れられなかった。結局、尖塔の頂上までそのまま抱きかかえられていた。
「さあ、着きましたわね」
尖塔の頂上にたどり着いたラムたち。
「うわぁ……」
尖塔から見る王都の景色は格別だった。
「王都ってこんなに大きかったのですわね」
「大体はあっちの方向しか行った事なかったな。俺の家のミノレバー領もバッサーシ辺境伯領と同じ方向だからな」
ラムたちは王都の街並みを見て感動している。ただ一人、カービルを除いて。
「カービル様、ご一緒にご覧になりましょう。大丈夫ですわよ、落っこちたりはしませんわ」
「わ、私は、高いところが、だ、ダメなんだ……」
ラムの誘いに、なんとそんな事を言って断ろうとするカービルだった。高所恐怖症とは、意外な弱点である。
「はははっ、普段は落ち着いた感じで分からなかったが、そんな弱点があったとはな。人は何かしら不得手も持ち合わせているという事か、わははははっ、あがっ!」
「タン様、笑い過ぎです。そんな事だから脳筋だとか言われるのですよ。もう少し気遣って差し上げて下さい」
タンの首筋に、サクラのチョップが決まる。そんな事をしながらも、淡々と喋れるサクラも大概だった。
それを見ながら笑うラムに、体力のなさと高所恐怖症のダブルパンチで青ざめるカービル。四人はそれぞれに、しばらく尖塔でのひと時を過ごしたのだった。
「カービル様、わたくしはいつでもそばに居て支えてさし上げますから、どうぞいつでも甘えて下さいませ」
「ラム嬢……」
最後の最後で甘々な状況を見せられたサクラとタンは、顔を真っ赤にしてその姿を見ていたのだった。
余談だが、尖塔を降りたところで宰相バラクーダに待ち構えられていて、こっぴどく怒られたのは言うまでもなかった。それでも、ラムたちは満足そうに帰っていったわけだが、立入禁止箇所に入るなら、ちゃんとしかるべき相手から許可をもらおう。
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