伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第五章 2年目前半

第265話 茶畑見学

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 翌日は朝食を済ませると、茶畑へと赴く事になった私たち。自分たちが普段飲んでいる紅茶がどのようにして作られているのかを知るための見学である。
 前世で緑茶の生産光景はたまに見た事があるんだけど、この異世界でも同じなのか気になるところだわね。そんなわけで、私はとても心躍らせていた。
 よく見ると、私と同じ異世界出身であるエスカとミズーナ王女も、心なしかそわそわしているように見える。まあ、話を聞く限り、私と同じ日本人もしくは日本在住者だったみたいだし、そうなるのも分からなくはないわね。
 でもまぁ、一部の学生の中には不満そうな顔をしているのも居るわけで、やっぱり貴族ってそんなものなのかと思う。
 移動距離にしてそんな時間は掛かっていないものの、一部の学生は既に疲れている感じだった。貴族って思ったより体力ないのね。でも、よく見てみれば。そのほとんどが魔法型の学生だった模様。やっぱり、魔法使いっていうのは体力がないものなのね。
「これは学生の皆さん、よくぞウーリンの茶畑へいらして下さいました。私はこの茶畑の管理人であるカクニールと申します。ここではサーロイン王国、そしてミール王国で消費される茶葉の多くを生産しております。心行くまで見学していって下さい」
 こう話しをした管理人カークニルだけど、私は角煮という名前に思わず吹き出しそうになってしまった。サングリエという名前以外はことごとく猪だっただけに、とどめのような名前についに私のツボが貫かれてしまったのだった。
「アンマリア、さすがに失礼よ」
 小声で言いながら私の脇腹を肘で突くエスカ。さすがにその通りだと、私は必死に耐えていた。
 それはさておき、私たちは茶畑の見学を始める。
 そこで見たお茶の木は、前世で見たものとよく似ていて、私たちの腰丈程度の高さしかない低木だった。
 今は収穫の時期から外れているらしいので、主に雑草を引っこ抜いたり、ついた虫を払ったりといった程度の雑用のみらしい。
「お茶の収穫時期は大体14週目~17週目になります。ですので、今は畑で作業する人員は限られています」
 カークニルの説明は続く。
 しかし、肝心の紅茶を作る過程は見せてもらう事ができなかった。なにせいろいろと繊細なので、これだけ人数が居る状態で見学を認めてしまえば、茶葉の品質に大きな影響が出てしまう可能性があるからだ。死活問題となってしまうので、こればかりは認められないというわけだった。
 だが、そんな事を知らない学生たちの一部からは見学させろという文句が出てくる始末だ。貴族というのはわがままだから、そうなるわよね。
「あらあら、そんな事を言っていいのですか?」
 声を上げる学生たちに声を掛けたのはミズーナ王女だった。
「それを認めてしまった場合、紅茶が完成しない可能性だってあるのですよ? 紅茶がダメになればここの方たちは収入を失いますし、私たちだって紅茶が飲めなくなってしまう可能性がありますの。あなたたちはそれでもよろしいのですか?」
 優しく厳しく言うミズーナ王女の言葉に、学生たちは黙る事しかできなかった。なにせ、ここら一帯の生産量は、サーロイン王国の紅茶の生産の大部分を占めているのだから。影響が出る範囲が大きすぎるのである。
 おとなしくなった学生たちの姿に、ミズーナ王女は満足そうに笑っていた。
「さすがは一国の王女様」
「このくらいするのは当然ですわよ」
 私が褒めると、ミズーナ王女は笑顔を見せていた。
 ところが、茶畑の見学が終わったと思ったら、次の問題が発生する。
「た、大変だ! 魔物が現れたぞ!」
 茶畑を荒らす魔物が出現したようである。
 方向として東側からのようだ。この報告を聞いて、私たちの中から戦えるメンバーが出向く事になる。
 合宿の目的として実戦経験を積む事もあるので、学生たちも一部は積極的に戦闘に参加するのである。
「ふふ、腕が鳴りますね」
「ああ、そうだな」
 その代表格がこの脳筋コンビ、タンとサクラの二人だ。当然のように先頭に立って魔物へ向かっていく。
 それに続くのが、サーロイン王国の王子の二人フィレン王子とリブロ王子である。
「やれやれ、みんな血気盛んだわね」
「それがまたいいんですけれどね」
 私やエスカもその後ろに続く。
「ミズーナ王女はこっちの方を頼みます。さすがに主力が全員出ていくのは避けた方がいいでしょうから」
「分かりました。こちらはお任せ下さい」
 役割分担を終えて、私たちは出現した魔物たちの討伐へと向かう。
 ところがどっこい、私たちが着いた頃には、すでにタンとサクラの二人の手でほぼ全滅した状態だった。
「はーっはっはっはっ! ぬるい、ぬるすぎるぞ!」
「ふふふっ、バッサーシ領の魔物に比べると弱すぎますね」
 さすがは脳筋の二人。戦闘力が恐ろしく高かった。これには茶畑の人たちもあんぐりである。魔物の襲撃でこれだけ早く討伐が終わった事は見た事がないのである。
 魔物の討伐が終われば解体。そして、解体が終われば、労いのために今年作られたばかりの紅茶が学生たちに振る舞われたのである。
 うん、実に香りがいいわね。
 こうして、茶畑見学はティータイムで締めて、無事に終わる事が出来たのだった。
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