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第五章 2年目前半
第264話 合宿の地に着いて
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今年の合宿の地は、サングリエ辺境伯領の領都タボンから東側にあるウーリンの街の郊外だった。そこには大きな森が存在しており、近くにはウーリンがその産出量の多くを占めるお茶の畑がある。
そこにはたくさんのログハウスのような小屋がたくさん建っていた。どうやら去年の事を受けて、サングリエ辺境伯に話がいっていたようである。そこはまるで一つの村のような状態になっていて、サングリエ辺境伯の兵士たちが警戒にあたっていた。
まあ、これだけ家が建っていれば、盗賊たちのようなならず者たちの拠点にされかねないものね。人が普段居ないような場所でも、警備するのは当たり前というわけである。とはいえ、国の命令で造った集落なので、辺境伯任せもどうかという考えがつい浮かんでしまう私だった。
「よし、ここが今日からの合宿の拠点になる。家一軒には馬車の振り分けがそのまま適応される。扉に木の板が下げられているから、それに従うのだぞ」
合宿担当の教師が私たちに大声で伝達していた。
その声に従い、私たちはたくさんあるログハウスのような小屋を一軒一軒確認していく。
そして、ようやく私たちは自分たちの使う小屋を探し当てた。
「ここなんですね」
「予想していたけど、やっぱりって感じですね」
そう、私たちの割り当てられた小屋は、集落のど真ん中だった。さすが王族たちが集まっている班である。ちなみにその隣の建物にはフィレン王子たちである。謀りましたね!?
「ものの見事に、私たちがど真ん中だね。まあ予想はしていたけれどね」
そう笑うのはフィレン王子だった。
「殿下、もしかして、この集落の事をご存じでおられたのですか?」
「サングリエ辺境伯の使いの者が城に来た事があってね、そこでここの話は聞いていたんだ。な、リブロ」
「はい、兄上」
私の質問に、フィレン王子は笑いながら答えていた。話を振られたリブロ王子も同じような様子だった。
さて、部屋割りも分かった事で、学生たちは自分たちの小屋へと荷物を置いていく。それが終わると、集落の入口へと集まって引率の教師から説明が始まった。
それによると、近くにある茶畑の手伝いをするというのが、今回の合宿の内容らしい。普段は自分たちが何気なく飲んでいる紅茶が、どうやって作られているのかを知る事が目的のようだ。
ちなみにだけど、この茶畑の近くには時々魔物が出現する事があるので、その退治というのもおまけ要素としてある模様。まあ、それ自体は滅多にないので、そこまで警戒しないでいいという話だった。
……なんか盛大にフラグっぽい気がしてきた。
「アンマリア?」
急にエスカが声を掛けてくる。
「えっと、どうかしたの、エスカ」
「どうしたもこうしたも、なに、そんなに難しい顔をしているのよ」
小声でボソボソと話をする私とエスカ。って、私ってば、そんな難しい顔をしていたのだろうか。
私が驚いた顔をしていると、
「してましたよ。眉間にしわを寄せて」
ミズーナ王女からもツッコミを入れられる始末だった。これは相当に厳しい顔をしていたようだ。
「いやあ……、先生の言葉がなんかフラグのような気がしてね……」
私が苦笑いをしながら答えると、エスカもミズーナ王女もじっと私の事を睨むように見てきた。まったく、なんだっていうのよ。
「考えすぎだと思うわ、アンマリア」
「そうですよ。そんなに気にしてしまうと、現実になりかねません。さらっと聞き流せばいいんです」
エスカとミズーナ王女は、もっと楽観的に考えろと私に迫ってきたのだった。
「そ、そうね。考え過ぎは……よくないわよね」
二人の圧が強すぎて、私は顔を引きつらせながら、笑ってごまかしておいた。それに対して、エスカもミズーナ王女も呆れたような反応を示していた。どうしろっていうのよ。
そんな私たちの様子を見ながら、フィレン王子やリブロ王子、それとモモがくすくすと笑っていた。これにはさすがの私も言葉を失っていた。
はてさて、そんなこんなのあった初日だけれども、当たりが少しずつ暗くなっていく。
夕食は集落の中に四か所ある炊事場で作られる事になる。しかし、貴族の子女たちにそんな事ができるわけもなく、食事を作るのはウーリンの街から出向いてきた人たちだった。
しかし、そんな中で厨房に立つ変わった貴族が居た。
言わずもがな、私たちである。私はおろか、王族であるエスカとミズーナ王女も炊事場に立っているのだ。この光景にはウーリンの街の人たちは呆然と立ち尽くしていた。
無理もない話だ。貴族である私はもちろんの事、まさか王女たちまで料理をしているのだから。これに驚くなという方が無理だ。
「うふふ、お構いなく」
ミズーナ王女は王女スマイルを振り撒くが、平民たちには破壊力が強すぎた。
いろいろとサプライズのぶつけ合いっこをした2年生の夏合宿の現地へ到着した日である。はたして今年は、一体どんなイベントが待ち構えているというのだろうか。
そして、私が感じたフラグは無事にへし折られてくれるのだろうか。
実に、期待よりも不安の大きな夏合宿の本番となったのだった
そこにはたくさんのログハウスのような小屋がたくさん建っていた。どうやら去年の事を受けて、サングリエ辺境伯に話がいっていたようである。そこはまるで一つの村のような状態になっていて、サングリエ辺境伯の兵士たちが警戒にあたっていた。
まあ、これだけ家が建っていれば、盗賊たちのようなならず者たちの拠点にされかねないものね。人が普段居ないような場所でも、警備するのは当たり前というわけである。とはいえ、国の命令で造った集落なので、辺境伯任せもどうかという考えがつい浮かんでしまう私だった。
「よし、ここが今日からの合宿の拠点になる。家一軒には馬車の振り分けがそのまま適応される。扉に木の板が下げられているから、それに従うのだぞ」
合宿担当の教師が私たちに大声で伝達していた。
その声に従い、私たちはたくさんあるログハウスのような小屋を一軒一軒確認していく。
そして、ようやく私たちは自分たちの使う小屋を探し当てた。
「ここなんですね」
「予想していたけど、やっぱりって感じですね」
そう、私たちの割り当てられた小屋は、集落のど真ん中だった。さすが王族たちが集まっている班である。ちなみにその隣の建物にはフィレン王子たちである。謀りましたね!?
「ものの見事に、私たちがど真ん中だね。まあ予想はしていたけれどね」
そう笑うのはフィレン王子だった。
「殿下、もしかして、この集落の事をご存じでおられたのですか?」
「サングリエ辺境伯の使いの者が城に来た事があってね、そこでここの話は聞いていたんだ。な、リブロ」
「はい、兄上」
私の質問に、フィレン王子は笑いながら答えていた。話を振られたリブロ王子も同じような様子だった。
さて、部屋割りも分かった事で、学生たちは自分たちの小屋へと荷物を置いていく。それが終わると、集落の入口へと集まって引率の教師から説明が始まった。
それによると、近くにある茶畑の手伝いをするというのが、今回の合宿の内容らしい。普段は自分たちが何気なく飲んでいる紅茶が、どうやって作られているのかを知る事が目的のようだ。
ちなみにだけど、この茶畑の近くには時々魔物が出現する事があるので、その退治というのもおまけ要素としてある模様。まあ、それ自体は滅多にないので、そこまで警戒しないでいいという話だった。
……なんか盛大にフラグっぽい気がしてきた。
「アンマリア?」
急にエスカが声を掛けてくる。
「えっと、どうかしたの、エスカ」
「どうしたもこうしたも、なに、そんなに難しい顔をしているのよ」
小声でボソボソと話をする私とエスカ。って、私ってば、そんな難しい顔をしていたのだろうか。
私が驚いた顔をしていると、
「してましたよ。眉間にしわを寄せて」
ミズーナ王女からもツッコミを入れられる始末だった。これは相当に厳しい顔をしていたようだ。
「いやあ……、先生の言葉がなんかフラグのような気がしてね……」
私が苦笑いをしながら答えると、エスカもミズーナ王女もじっと私の事を睨むように見てきた。まったく、なんだっていうのよ。
「考えすぎだと思うわ、アンマリア」
「そうですよ。そんなに気にしてしまうと、現実になりかねません。さらっと聞き流せばいいんです」
エスカとミズーナ王女は、もっと楽観的に考えろと私に迫ってきたのだった。
「そ、そうね。考え過ぎは……よくないわよね」
二人の圧が強すぎて、私は顔を引きつらせながら、笑ってごまかしておいた。それに対して、エスカもミズーナ王女も呆れたような反応を示していた。どうしろっていうのよ。
そんな私たちの様子を見ながら、フィレン王子やリブロ王子、それとモモがくすくすと笑っていた。これにはさすがの私も言葉を失っていた。
はてさて、そんなこんなのあった初日だけれども、当たりが少しずつ暗くなっていく。
夕食は集落の中に四か所ある炊事場で作られる事になる。しかし、貴族の子女たちにそんな事ができるわけもなく、食事を作るのはウーリンの街から出向いてきた人たちだった。
しかし、そんな中で厨房に立つ変わった貴族が居た。
言わずもがな、私たちである。私はおろか、王族であるエスカとミズーナ王女も炊事場に立っているのだ。この光景にはウーリンの街の人たちは呆然と立ち尽くしていた。
無理もない話だ。貴族である私はもちろんの事、まさか王女たちまで料理をしているのだから。これに驚くなという方が無理だ。
「うふふ、お構いなく」
ミズーナ王女は王女スマイルを振り撒くが、平民たちには破壊力が強すぎた。
いろいろとサプライズのぶつけ合いっこをした2年生の夏合宿の現地へ到着した日である。はたして今年は、一体どんなイベントが待ち構えているというのだろうか。
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