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第八章 3年生後半
第405話 これで最後です
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「殿下、お体は大丈夫ですか!」
バーンと闘技場内の救護室の扉を開ける私。……とサキである。
「あ、アンマリア様?」
「サキ様? いらしてたのですか?」
ここで初めて、私はサキも観戦に来ていたことに気が付いた。
試合の方に集中していたし、隣には厄介な王女も座っていたので、私は情けないことにまったく気が付いていなかったというわけね。
「アンマリア様ったら、気が付いてらっしゃらなかったんですね。それだけ試合に集中してらしたってことですね」
サキはにっこりと笑っている。
「ま、まあ、そんな事より」
私は気を取り直してフィレン王子の方を向く。
「殿下、大丈夫でいらっしゃいますか?」
改めてその体を心配する。すると、フィレン王子はにこっと笑っている。
「大丈夫だよ。動きすぎて体が限界を迎えかけただけなんでね。しばらく休んでいれば問題ないよ」
「そうですか」
私たちはほっと胸を撫で下ろしていた。
「でも、心配してくれてありがとう」
フィレン王子はそう言って笑うと、タンへと視線を向ける。
「さて、タン。これで今年も決勝でサクラ嬢と対戦するわけだけど、今年は勝てそうかい?」
フィレン王子の質問に、タンを腕組みをして唸り始める。
「そうだな……。俺も鍛錬は積んでいるし、強くなったとは思うんだが……」
どうにもタンの歯切れが悪い。
「どうしたんだ、タン」
「いやまぁ、先日のアンマリア嬢を含めた鍛錬の中であいつの相手もしたんだが、俺が成長している以上に腕を上げているようでな。やる前からこう言うのもなんだが、勝てる可能性ははっきり言って低い」
なんともまあ、タンにしては弱気な発言というものである。
「ということは、夏休み中に魔族と戦ったのが大きく影響しているということでしょうかね。サクラ様ったら結構活躍してらしたものですからね」
「た、確かにそうですね……」
私が可能性として挙げた内容に、サキは目を泳がせていた。そういえば、サキもその現場に居たんだったわね。
「な、なるほどな……。それなら俺も納得がいくってもんだ」
腕を組んだまま苦い表情をするタンである。
しばらく唸っていたタンだったが、急に腕組みを解く。
「まっ、やれるだけやってみるか。俺はあいつの婚約者だ。情けない姿だけは見せられないからな」
「うん、そうだね。よし、私もだいぶ回復してきたから、試合前の腹ごしらえをしておこうじゃないか」
タンが腹を括ると、フィレン王子の言葉で私たちはそろって昼食を取る事となった。
泣いても笑っても、次が剣術大会の決勝戦、最後の試合だ。
タンが会場へと向かう中、私たちは観客席へと移動するのだった。
観客席に戻ると、そこは今までで最高の人数が集まっていた。
「うわぁ、もう座る場所がないじゃないのよ」
あまりの観客の数に、立ち見まで出る始末。いや、結構収容人数多いはずなんだけど、よく埋まったわね。
私たちがぼーっとその様子を見ていると、前の方から声が聞こえてきた。
「フィレン殿下、アンマリア、サキ~。こっちこっち」
声の主はエスカだった。隣にはテールもしっかり陣取っていた。
エスカの呼ぶ声に、そこに座っていた人たちがそそくさと場所を空けている。さすがに王子の場所を空けないと不敬罪になる可能性があるからだ。
こういう時に王族特権というのは威力を発揮するのね。多分エスカが座っているのもそれのせいでしょうね。
「さあ、せっかくの決勝戦ですもの、特等席で味わいませんとね」
エスカがものすごく興奮している。
にしては、王子たちが出てきた試合はかなり後ろから見てたんだけど……。それはいいのかしらね。
でも、さすがに野暮ったいかと思った私は、思うだけで聞く事はやめておいた。本当に野暮だと思ったんだもの。
私たちがドキドキしながら会場を眺めていると、審判役の教師が出てくる。
「ちょっと、なんでミスミ教官が?!」
思わずその審判の姿を見てツッコミを入れてしまう私。すると、ミスミ教官がその声に反応してこちらを見てきた。
「姪とその婚約者の戦いだぞ。ここは叔母として、しっかり目の前で見届けてやるのが筋というものではないのかな?」
いや、その理屈はなんなのよ。どっちも身内になるからって、平等に判断できるとでも思っているのかしら。
私が周りにいる他の剣術大会の運営の面々を見る。私の視線に気が付いた人たちは、しきりに首を横に振っている。うん、これは間違いなくミスミ教官が直前で申し入れて強引に押し通しているわね。
まったく、めちゃくちゃな人だわね。さすがバッサーシの血筋ってところかしら。
「叔母様……、少しは自重して頂けませんかね」
「まったくですね。とにかくこれはあくまでも試合です。ちゃんと公平に判定して下さい」
「私がいつ自重した事があろうか。だが、公平に判定することは約束しよう。これでも騎士団の一員なのだからな」
ミスミ教官は自信たっぷりに言い切っていた。とはいえ、どこまで信用していいのやら。
会場内の熱気が高まる中、いよいよその決勝戦の火ぶたが切って落とされようとしていた。
バーンと闘技場内の救護室の扉を開ける私。……とサキである。
「あ、アンマリア様?」
「サキ様? いらしてたのですか?」
ここで初めて、私はサキも観戦に来ていたことに気が付いた。
試合の方に集中していたし、隣には厄介な王女も座っていたので、私は情けないことにまったく気が付いていなかったというわけね。
「アンマリア様ったら、気が付いてらっしゃらなかったんですね。それだけ試合に集中してらしたってことですね」
サキはにっこりと笑っている。
「ま、まあ、そんな事より」
私は気を取り直してフィレン王子の方を向く。
「殿下、大丈夫でいらっしゃいますか?」
改めてその体を心配する。すると、フィレン王子はにこっと笑っている。
「大丈夫だよ。動きすぎて体が限界を迎えかけただけなんでね。しばらく休んでいれば問題ないよ」
「そうですか」
私たちはほっと胸を撫で下ろしていた。
「でも、心配してくれてありがとう」
フィレン王子はそう言って笑うと、タンへと視線を向ける。
「さて、タン。これで今年も決勝でサクラ嬢と対戦するわけだけど、今年は勝てそうかい?」
フィレン王子の質問に、タンを腕組みをして唸り始める。
「そうだな……。俺も鍛錬は積んでいるし、強くなったとは思うんだが……」
どうにもタンの歯切れが悪い。
「どうしたんだ、タン」
「いやまぁ、先日のアンマリア嬢を含めた鍛錬の中であいつの相手もしたんだが、俺が成長している以上に腕を上げているようでな。やる前からこう言うのもなんだが、勝てる可能性ははっきり言って低い」
なんともまあ、タンにしては弱気な発言というものである。
「ということは、夏休み中に魔族と戦ったのが大きく影響しているということでしょうかね。サクラ様ったら結構活躍してらしたものですからね」
「た、確かにそうですね……」
私が可能性として挙げた内容に、サキは目を泳がせていた。そういえば、サキもその現場に居たんだったわね。
「な、なるほどな……。それなら俺も納得がいくってもんだ」
腕を組んだまま苦い表情をするタンである。
しばらく唸っていたタンだったが、急に腕組みを解く。
「まっ、やれるだけやってみるか。俺はあいつの婚約者だ。情けない姿だけは見せられないからな」
「うん、そうだね。よし、私もだいぶ回復してきたから、試合前の腹ごしらえをしておこうじゃないか」
タンが腹を括ると、フィレン王子の言葉で私たちはそろって昼食を取る事となった。
泣いても笑っても、次が剣術大会の決勝戦、最後の試合だ。
タンが会場へと向かう中、私たちは観客席へと移動するのだった。
観客席に戻ると、そこは今までで最高の人数が集まっていた。
「うわぁ、もう座る場所がないじゃないのよ」
あまりの観客の数に、立ち見まで出る始末。いや、結構収容人数多いはずなんだけど、よく埋まったわね。
私たちがぼーっとその様子を見ていると、前の方から声が聞こえてきた。
「フィレン殿下、アンマリア、サキ~。こっちこっち」
声の主はエスカだった。隣にはテールもしっかり陣取っていた。
エスカの呼ぶ声に、そこに座っていた人たちがそそくさと場所を空けている。さすがに王子の場所を空けないと不敬罪になる可能性があるからだ。
こういう時に王族特権というのは威力を発揮するのね。多分エスカが座っているのもそれのせいでしょうね。
「さあ、せっかくの決勝戦ですもの、特等席で味わいませんとね」
エスカがものすごく興奮している。
にしては、王子たちが出てきた試合はかなり後ろから見てたんだけど……。それはいいのかしらね。
でも、さすがに野暮ったいかと思った私は、思うだけで聞く事はやめておいた。本当に野暮だと思ったんだもの。
私たちがドキドキしながら会場を眺めていると、審判役の教師が出てくる。
「ちょっと、なんでミスミ教官が?!」
思わずその審判の姿を見てツッコミを入れてしまう私。すると、ミスミ教官がその声に反応してこちらを見てきた。
「姪とその婚約者の戦いだぞ。ここは叔母として、しっかり目の前で見届けてやるのが筋というものではないのかな?」
いや、その理屈はなんなのよ。どっちも身内になるからって、平等に判断できるとでも思っているのかしら。
私が周りにいる他の剣術大会の運営の面々を見る。私の視線に気が付いた人たちは、しきりに首を横に振っている。うん、これは間違いなくミスミ教官が直前で申し入れて強引に押し通しているわね。
まったく、めちゃくちゃな人だわね。さすがバッサーシの血筋ってところかしら。
「叔母様……、少しは自重して頂けませんかね」
「まったくですね。とにかくこれはあくまでも試合です。ちゃんと公平に判定して下さい」
「私がいつ自重した事があろうか。だが、公平に判定することは約束しよう。これでも騎士団の一員なのだからな」
ミスミ教官は自信たっぷりに言い切っていた。とはいえ、どこまで信用していいのやら。
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