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第八章 3年生後半
第406話 真・婚約者決戦
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会場のど真ん中では、サクラとタンが向かい合って立っている。よりにもよって、3年連続まったく同じ顔合わせの決勝戦である。
代わり映えしないのは問題ではあるものの、現在の王国の中でこの二人に敵う者はほぼ居ない。なので、観客はほぼすべてこの対戦に納得しているのよね。
「さて、過去2年間はサクラ様の勝利でしたけれど、今年はどうなりますでしょうかね」
私は冷静に二人の姿を眺めている。
「どうだろうね。タンもずいぶんと弱気な発言をしていたのが気になるところだよ。でも、負けるにして簡単には負けないだろうね」
「これだけ戦ってきての決勝戦ですもの。白熱した試合を期待してしまうわ」
顎を抱えるフィレン王子と、拳を乱暴に突き出すエスカ。まったく、同じ王族という立場にあって、どうして行動にこうも違いが出るのかしらね。
転生者かそうでないかという違いはあるけれども、サーロイン王国とミール王国の国の違いというのもあるのでしょうね。
「あっ、モモ様」
「はあはあ、決勝戦はまだ始まってませんかね」
考え事をしていた私がテールの声で顔を上げると、妹のモモが息を切らせて現れた。
「あら、モモ。どうしてここに?」
意外だったのでつい尋ねてしまう私。空けられた席に座ったモモは、呼吸を整えてから私の顔を見る。
「お姉様と一緒に決勝戦を見てきなさいって、ラム様たちから無理やり部屋を追い出されました。おかげでメイド服のままですよ」
モモはスカートを軽くつまんで服装をアピールしている。確かに着ているのはメイド服だった。
「意外と似合ってらっしゃいますね。そういえば、3年生の魔法型は喫茶店でしたね」
「ええ、その制服というわけですよ、この格好は」
私たちが話し込んでいると、フィレン王子が口を挟んできた。
「もう始まるようだよ。それはとりあえず置いておこうか」
その言葉に会場を見ると、確かに二人が向かい合って構えを取っている。
いよいよ始まる決勝戦。私たちはその様子を固唾を飲んで見守った。
「始め!」
会場中の注目が集まる中、ミスミ教官の声が響き渡る。
それと同時に、サクラもタンも同時に踏み込んでいく。
会場に響き渡った激しい金属音が、二人の衝突の威力の凄まじさを物語っている。
「これって、身体能力強化なしなんですよね……」
あまりの音の大きさに、耳を塞いでしまったテールがおそるおそる確認している。
「ああ。剣にもそんなものは使えない。一切の魔法の使用ができないようになっているからね」
しっかりと二人の衝突を瞬きもしないで見つめていたフィレン王子。冷や汗を流しながらその状況を説明していた。
二人の攻撃の激しさは、過去の2年とは比べ物にならないくらいに跳ね上がっていたのだ。
「ずいぶんと激しくぶつかり合っているわね」
「多分、こうやって剣を交わすのが最後になるからでしょうね」
「あら、そうなのですか?」
私の呟きにフィレン王子が反応すると、テールが疑問を呈していた。
「二人の関係は婚約者同士です。婚約者が決まっている場合、学園を卒業すると同時に結婚ということも少なくありません」
「ああ、そういうことですか」
そう、学園を卒業してしまえば、タンが婿としてバッサーシ家に入ることになっている。結婚をしてしまえば、いくらバッサーシ家とはいえど、夫婦が互いに剣を交えるという機会がなくなる。
つまり、本気で剣をぶつけ合えるのは、今しかないというわけだ。
その上、去年おととしとタンはサクラに負け続けている。だからこそ、余計に気合いが入っている。それがこのぶつかり合いの原因というわけだった。
「それにしても、魔法を使っていないというのにこの衝撃波だ。結界魔法がなければ、周りに相当被害が出ているね」
フィレン王子が冷静に語っているものの、会場のど真ん中ではサクラとタンによる凄まじい打ち合いが続いている。その度に凄まじい衝撃波が周りへと飛んでいっている。
さすがにその凄まじさは、会場に仕掛けられた魔封じの結界と、会場と観客席の間に設けられた結界魔法の両方を吹き飛ばそうとしているくらいだった。
(まったく、このままで結界が吹き飛んでしまいそうですね。ここはこっそり対応しておきましょうかね)
あまりにも心もとない状態がゆえに、私は気が付かれないように結界に手を加えておく。あまりにも自然にこっそりと行ったものだから、誰もそれには気が付いていなかった。……ただ一人を除いては。
唯一気が付いたエスカにちらりと視線を向けられる私。こういう時はさすがというものだわね。
しかし、目の前で行われている激しい戦いに、とてもではないけれど言葉を交わすような余裕はなかった。
私たちは、サクラとタンの間で行われている勝負の行方を、息をのんで見守り続けていた。
3年目の剣術大会を締めくくる決勝戦。勝つのは2年連続の覇者であるサクラか、それとも3度目の正直となるタンなのだろうか。私たちの誰もが目を離す事ができなくなっていた。
代わり映えしないのは問題ではあるものの、現在の王国の中でこの二人に敵う者はほぼ居ない。なので、観客はほぼすべてこの対戦に納得しているのよね。
「さて、過去2年間はサクラ様の勝利でしたけれど、今年はどうなりますでしょうかね」
私は冷静に二人の姿を眺めている。
「どうだろうね。タンもずいぶんと弱気な発言をしていたのが気になるところだよ。でも、負けるにして簡単には負けないだろうね」
「これだけ戦ってきての決勝戦ですもの。白熱した試合を期待してしまうわ」
顎を抱えるフィレン王子と、拳を乱暴に突き出すエスカ。まったく、同じ王族という立場にあって、どうして行動にこうも違いが出るのかしらね。
転生者かそうでないかという違いはあるけれども、サーロイン王国とミール王国の国の違いというのもあるのでしょうね。
「あっ、モモ様」
「はあはあ、決勝戦はまだ始まってませんかね」
考え事をしていた私がテールの声で顔を上げると、妹のモモが息を切らせて現れた。
「あら、モモ。どうしてここに?」
意外だったのでつい尋ねてしまう私。空けられた席に座ったモモは、呼吸を整えてから私の顔を見る。
「お姉様と一緒に決勝戦を見てきなさいって、ラム様たちから無理やり部屋を追い出されました。おかげでメイド服のままですよ」
モモはスカートを軽くつまんで服装をアピールしている。確かに着ているのはメイド服だった。
「意外と似合ってらっしゃいますね。そういえば、3年生の魔法型は喫茶店でしたね」
「ええ、その制服というわけですよ、この格好は」
私たちが話し込んでいると、フィレン王子が口を挟んできた。
「もう始まるようだよ。それはとりあえず置いておこうか」
その言葉に会場を見ると、確かに二人が向かい合って構えを取っている。
いよいよ始まる決勝戦。私たちはその様子を固唾を飲んで見守った。
「始め!」
会場中の注目が集まる中、ミスミ教官の声が響き渡る。
それと同時に、サクラもタンも同時に踏み込んでいく。
会場に響き渡った激しい金属音が、二人の衝突の威力の凄まじさを物語っている。
「これって、身体能力強化なしなんですよね……」
あまりの音の大きさに、耳を塞いでしまったテールがおそるおそる確認している。
「ああ。剣にもそんなものは使えない。一切の魔法の使用ができないようになっているからね」
しっかりと二人の衝突を瞬きもしないで見つめていたフィレン王子。冷や汗を流しながらその状況を説明していた。
二人の攻撃の激しさは、過去の2年とは比べ物にならないくらいに跳ね上がっていたのだ。
「ずいぶんと激しくぶつかり合っているわね」
「多分、こうやって剣を交わすのが最後になるからでしょうね」
「あら、そうなのですか?」
私の呟きにフィレン王子が反応すると、テールが疑問を呈していた。
「二人の関係は婚約者同士です。婚約者が決まっている場合、学園を卒業すると同時に結婚ということも少なくありません」
「ああ、そういうことですか」
そう、学園を卒業してしまえば、タンが婿としてバッサーシ家に入ることになっている。結婚をしてしまえば、いくらバッサーシ家とはいえど、夫婦が互いに剣を交えるという機会がなくなる。
つまり、本気で剣をぶつけ合えるのは、今しかないというわけだ。
その上、去年おととしとタンはサクラに負け続けている。だからこそ、余計に気合いが入っている。それがこのぶつかり合いの原因というわけだった。
「それにしても、魔法を使っていないというのにこの衝撃波だ。結界魔法がなければ、周りに相当被害が出ているね」
フィレン王子が冷静に語っているものの、会場のど真ん中ではサクラとタンによる凄まじい打ち合いが続いている。その度に凄まじい衝撃波が周りへと飛んでいっている。
さすがにその凄まじさは、会場に仕掛けられた魔封じの結界と、会場と観客席の間に設けられた結界魔法の両方を吹き飛ばそうとしているくらいだった。
(まったく、このままで結界が吹き飛んでしまいそうですね。ここはこっそり対応しておきましょうかね)
あまりにも心もとない状態がゆえに、私は気が付かれないように結界に手を加えておく。あまりにも自然にこっそりと行ったものだから、誰もそれには気が付いていなかった。……ただ一人を除いては。
唯一気が付いたエスカにちらりと視線を向けられる私。こういう時はさすがというものだわね。
しかし、目の前で行われている激しい戦いに、とてもではないけれど言葉を交わすような余裕はなかった。
私たちは、サクラとタンの間で行われている勝負の行方を、息をのんで見守り続けていた。
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