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第76話 賑やかな夏の始まり
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全部で九人となって、新しい体制で農園は夏を迎えます。
あれからラッシュバードはさらに十一個の卵を産み、かえったのは五個でした。
産んだ卵の半分に満たないですが、それでもラッシュバードの数は確実に増えてきています。たった二羽だったのが、一年の半分の時点で十二羽増えて十四羽となっていました。
この調子であるのなら、最初の卵からかえった四羽も組み合わせ次第では来年は卵を産んでいきます。
野生環境であるなら、ここから他の魔物に襲われるなどして数を減らすのでしょうが、私たちが飼育する安全な環境の中にあるのですから、きっと増えていくことになるでしょう。
そうなると、数の抑制のために卵のすべてを取り上げなければならなくなるかもしれません。食堂を開くとなると、卵もかなり使うことになるでしょうしね。
ちょっと心苦しいですが、これも仕方ないことですね。
「ねえ、あなたたち」
私はスピードやスターたちに話し掛けます。
「ブェ?」
私の様子がおかしいことを感じ取ったのか、スピードたちは私のそばに寄ってきます。
「もし、あなたたちの卵を全部と取り上げるようになったとしたら、あなたたちは私を許してくれますか?」
私はスピードたちを撫でながら、涙声になりながら問いかけます。こんな質問をするのも心苦しいのです。
ラッシュバードは頭はよくありませんが、この子たちは私の眷属とあって、それほど悪くはありません。おそらく私の質問を理解しています。
「ブェブェ!」
鳴きながら、私の顔に頭を擦りつけてきます。
『主が望むのなら、自分たちは構わない。そう言っているよ』
反応に困っていると、ノームから通訳が入りました。
「本当にいいの?」
「ブフェフェッ!」
スピードもスターも、翼を広げて大きな声で返事をしています。
「そっか……。ありがとうございます、二人とも」
私は、スピードとスターをぎゅっと抱き締めました。
理解力のある二羽のラッシュバードに、私は感謝しかありません。
しばらく抱き締めていたのですが、唐突にスピードとスターの顔が外の方へ向きます。
何かを感じ取ったらしく、じっと真剣な表情で外を見ています。
「ブェブェ」
『主、フォレとラニが来たみたいだよ』
「えっ!? ということは、アマリス様かしら」
どうやら同じ時に生まれたラッシュバードの気配を感じ取ったようですね。
でも、その二羽が関わっているということは、アマリス様が間違いなくいるということです。
私はスピードとスターの二羽だけを連れて、キサラさんとサリナさんに声をかけた上で出迎えに向かいます。
農園の入口に到着すると、そこには確かにフォレに乗ったアマリス様と……ラニに乗ったルーチェがいました。
なんでルーチェなのですかね。
王女と公爵令嬢が、なんでそんな無防備な状態でやって来るのか、私にはまったく理解できませんでした。
いや、私だって確かにラッシュバードに乗って一人で移動しますけれどね?
それは私の転生によるちょっとしたチートがあるからできるわけであって、この世界の住民である二人にそれができるわけがないのですよ。
でも、二人は無事にこうやって私のところまでやってきました。それだけこのウィズタリア王国の中が平和だということなのでしょうね。
「お久しぶりですわ、お姉様」
「お姉様、元気そうでなによりです」
二人は丁寧にカーテシーをしてきます。
私は確かに本来は公爵令嬢で二人より年上ですけれど、今はただの農園の主レチェなのです。
ほら、私の後ろの方で事情を知らない従業員の方々が驚いているではないですか。特にマリナさんが持っていたものを落っことすくらいですよ。
「あら、従業員が増えていますのね、お姉様」
「ええ、事業の拡大を見越して、先手を打っておきました。将来的にはここで採れたものなどを使って食堂を開こうと思いますからね」
「まあ、お姉様のお料理ですか? それは開業した暁には味わいに参りませんと」
ルーチェ、頼むから来ないで下さいません?
貴族の方が来られたら、一般の方々がびっくりしてしまいますよ。
心の中ではそう思いますが、可愛い妹のいうことです。私に否定できるわけがありません。
「二人とも、学園は勉強は順調ですか?」
「はい、ばっちりです」
私が学業のことを心配すると、二人揃ってにっこりと笑っています。さすがは優秀なだけありますね。
立ち話もなんですし、仕方ないので二人を家に案内します。
その途中、ラッシュバードの小屋に寄りますが、スピードとスターはもちろん、今年生まれたヒナたちまで二人にはとても懐いていました。
ラッシュバードたちには分かるのでしょうね。これも眷属効果なのでしょうか。まだ分からないことが多いです。
それで、アマリス様とルーチェですが、互いの近況報告もあって、この日はよりにもよってうちに泊まっていくことになりました。
その際に従業員の方々に紹介をしたら、耳が痛いくらいに大声で驚かれていましたね。一国の王女と公爵令嬢ですもの、無理もありません。
ついでですが、私の正体もばれました。
ひっそりと暮らしたいのですが、そううまくはいかないようですね。
意外と動じなかったのはキサラさんで、ラッシュバードのことで積極的に話をしていたようです。そういえば、学園でも飼うような流れになっていた気がしますからね。
その日は結局、夜遅くまで話が続いてしまいました。
翌日、二人はおじさまの屋敷へと移動していきました。どうやらおじさまよりも私のところに先に来たようです。まったく、困った妹たちですね。
今年の夏も、なかなかににぎやかになりそうです。
あれからラッシュバードはさらに十一個の卵を産み、かえったのは五個でした。
産んだ卵の半分に満たないですが、それでもラッシュバードの数は確実に増えてきています。たった二羽だったのが、一年の半分の時点で十二羽増えて十四羽となっていました。
この調子であるのなら、最初の卵からかえった四羽も組み合わせ次第では来年は卵を産んでいきます。
野生環境であるなら、ここから他の魔物に襲われるなどして数を減らすのでしょうが、私たちが飼育する安全な環境の中にあるのですから、きっと増えていくことになるでしょう。
そうなると、数の抑制のために卵のすべてを取り上げなければならなくなるかもしれません。食堂を開くとなると、卵もかなり使うことになるでしょうしね。
ちょっと心苦しいですが、これも仕方ないことですね。
「ねえ、あなたたち」
私はスピードやスターたちに話し掛けます。
「ブェ?」
私の様子がおかしいことを感じ取ったのか、スピードたちは私のそばに寄ってきます。
「もし、あなたたちの卵を全部と取り上げるようになったとしたら、あなたたちは私を許してくれますか?」
私はスピードたちを撫でながら、涙声になりながら問いかけます。こんな質問をするのも心苦しいのです。
ラッシュバードは頭はよくありませんが、この子たちは私の眷属とあって、それほど悪くはありません。おそらく私の質問を理解しています。
「ブェブェ!」
鳴きながら、私の顔に頭を擦りつけてきます。
『主が望むのなら、自分たちは構わない。そう言っているよ』
反応に困っていると、ノームから通訳が入りました。
「本当にいいの?」
「ブフェフェッ!」
スピードもスターも、翼を広げて大きな声で返事をしています。
「そっか……。ありがとうございます、二人とも」
私は、スピードとスターをぎゅっと抱き締めました。
理解力のある二羽のラッシュバードに、私は感謝しかありません。
しばらく抱き締めていたのですが、唐突にスピードとスターの顔が外の方へ向きます。
何かを感じ取ったらしく、じっと真剣な表情で外を見ています。
「ブェブェ」
『主、フォレとラニが来たみたいだよ』
「えっ!? ということは、アマリス様かしら」
どうやら同じ時に生まれたラッシュバードの気配を感じ取ったようですね。
でも、その二羽が関わっているということは、アマリス様が間違いなくいるということです。
私はスピードとスターの二羽だけを連れて、キサラさんとサリナさんに声をかけた上で出迎えに向かいます。
農園の入口に到着すると、そこには確かにフォレに乗ったアマリス様と……ラニに乗ったルーチェがいました。
なんでルーチェなのですかね。
王女と公爵令嬢が、なんでそんな無防備な状態でやって来るのか、私にはまったく理解できませんでした。
いや、私だって確かにラッシュバードに乗って一人で移動しますけれどね?
それは私の転生によるちょっとしたチートがあるからできるわけであって、この世界の住民である二人にそれができるわけがないのですよ。
でも、二人は無事にこうやって私のところまでやってきました。それだけこのウィズタリア王国の中が平和だということなのでしょうね。
「お久しぶりですわ、お姉様」
「お姉様、元気そうでなによりです」
二人は丁寧にカーテシーをしてきます。
私は確かに本来は公爵令嬢で二人より年上ですけれど、今はただの農園の主レチェなのです。
ほら、私の後ろの方で事情を知らない従業員の方々が驚いているではないですか。特にマリナさんが持っていたものを落っことすくらいですよ。
「あら、従業員が増えていますのね、お姉様」
「ええ、事業の拡大を見越して、先手を打っておきました。将来的にはここで採れたものなどを使って食堂を開こうと思いますからね」
「まあ、お姉様のお料理ですか? それは開業した暁には味わいに参りませんと」
ルーチェ、頼むから来ないで下さいません?
貴族の方が来られたら、一般の方々がびっくりしてしまいますよ。
心の中ではそう思いますが、可愛い妹のいうことです。私に否定できるわけがありません。
「二人とも、学園は勉強は順調ですか?」
「はい、ばっちりです」
私が学業のことを心配すると、二人揃ってにっこりと笑っています。さすがは優秀なだけありますね。
立ち話もなんですし、仕方ないので二人を家に案内します。
その途中、ラッシュバードの小屋に寄りますが、スピードとスターはもちろん、今年生まれたヒナたちまで二人にはとても懐いていました。
ラッシュバードたちには分かるのでしょうね。これも眷属効果なのでしょうか。まだ分からないことが多いです。
それで、アマリス様とルーチェですが、互いの近況報告もあって、この日はよりにもよってうちに泊まっていくことになりました。
その際に従業員の方々に紹介をしたら、耳が痛いくらいに大声で驚かれていましたね。一国の王女と公爵令嬢ですもの、無理もありません。
ついでですが、私の正体もばれました。
ひっそりと暮らしたいのですが、そううまくはいかないようですね。
意外と動じなかったのはキサラさんで、ラッシュバードのことで積極的に話をしていたようです。そういえば、学園でも飼うような流れになっていた気がしますからね。
その日は結局、夜遅くまで話が続いてしまいました。
翌日、二人はおじさまの屋敷へと移動していきました。どうやらおじさまよりも私のところに先に来たようです。まったく、困った妹たちですね。
今年の夏も、なかなかににぎやかになりそうです。
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