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第77話 シスコンというのも困ります
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翌日、おじさまのところに向かったはずのアマリス様とルーチェが、再び農園を訪れました。何をしにいらしたのでしょうか。
「避暑といえばやはり湖は避けられませんね」
「この近くには湖がありますので、ここでお世話になりますよ、お姉様」
なんてことでしょう。
夏休みの休暇を私の農園で過ごすつもりのようです。
待って下さい。今は家に余裕がありませんよ。
「どうなさるおつもりですか、レチェ様」
「どうするもこうするも……。あの二人、居座るつもりですよ。どうにかしないといけません」
アマリス様もルーチェも、まったく帰るような気配がありません。この分では学園の夏休み中、ここにいることは確定です。
まったく、困ったものですね。
ひとまず、私は二人に確認をします。ええ、お父様たちの許可があるのかどうかですよ。
警備はたくさんいますけれど、どう見たって二人しかいませんからね。
「アマリス様、ルーチェ」
「なんでしょうか、お姉様」
私が声をかけると、畑を眺めていた二人が揃って振り返ってきます。
声をかけられた二人の顔が、にこにことした期待の顔をしています。なんなんですか、この表情は……。
「あなたたち、国王陛下やお父様たちの許可は得ていますかしら」
「はい、もちろんですよ」
即答でしたわ。
「お兄様の説得が難しいのは分かっています。なので、最初からお兄様には内緒でやってきました」
「アマリス様……」
にこにこと笑顔でいうことですか、それは。
ルーチェまでこちらに来てしまって、アンドリュー殿下ってば可哀想ですわね。
二人とも、私のことを慕っていますものね。
でも、今年はよくても来年からは厳しいと思います。王族の婚約者というものが、そんなに自由に動けるわけがないのです。なので、今年のところは私はもう目をつぶることにしました。
「ラ・ギア・ルド!」
農園の近くの空き地に、私は魔法で家を建てます。ないのなら作ってしまえというやつです。
私が一瞬で家を建ててしまったので、アマリス様もルーチェもびっくり仰天です。
「はあ……。付与魔法についてちゃんと勉強していればよかったですのに……」
「お姉様の魔法、こんなことができましたのね」
二人はしばらく呆然として、私の建てた家を眺めていました。
「来客用の家なので設備は質素ですけれど、これで我慢して下さいね」
「お姉様ご用意して下さったのでしたら、文句のひとつもありませんわよ」
私が断りを入れると、即座にアマリス様から言葉が返ってきました。早すぎません?
まあそれでいいのでしたら、これ以上のことはしませんけれど。
いろいろと思いながら、二人を建てた家の中に案内します。
最低限の家具くらいが同時に作ってあります。ただし、土魔法ですから、硬いんですよ、これが。
「土魔法で同時に作ったので、とても落ち着けるものではないと思いますが、そこはまあ我慢して下さい」
「確かに、落ち着ける気はしませんね」
ベッドやテーブルなどを叩きながら、アマリス様は苦笑いをしています。なにせこつこつという音がするのですからね。
「ベッドが固いのは想定内ですから、布団は自分たちで用意してありますよ。ね、ルーチェ」
「はい、アマリス様」
首を傾げていると、扉が開いて使用人たちがぞろぞろと入ってきます。
そして、無機質なベッドやテーブルに、すぐさま装飾を施していきます。
なんてことでしょう。硬い土魔法のベッドやテーブルが、あっという間におしゃれなものに変わってしまったではないですか。
「……用意、されていたのですか」
「お姉様、私には去年の経験がありますのよ?」
「あ……」
そうでした。アマリス様は去年も半年くらいご一緒にいらっしゃったのでしたね。
なるほど、その経験から自分で用意していたというわけですか。抜け目がないといいますか、なんといいましょうか。
それ以外も含めて、あっという間に殺風景だった家の中がきれいに飾り付けられました。すっかり客人用の家になってしまいましたね。
「さて、一通り終わりましたから、フォレとラニをスピードやスターたちと会わせてやってくださいませ、お姉様」
両手を合わせながら、満面の笑みで頼み込んでくるアマリス様。やめて下さい、その笑顔に弱いんです。
というわけでして、私はアマリス様とルーチェが乗ってきたフォレとラニを連れて、鳥小屋へと移動します。
「ブェーッ!」
「ブフェーッ!」
鳥小屋に入るなり、フォレとラニはダッシュでスピードとスターに近付いていきます。互いに分かるらしく、スピードとスターの方も翼を広げて二羽を受け入れていました。
「ずいぶん増えましたね、こちらも」
「四回目まで生みましたからね。今月中にも、おそらく産卵はあると思われます」
「そうですか。では、こちらも気をつけないといけませんね。こちらも四回目の産卵が終わってふ化するところですから」
どうやら、ラッシュバードの産卵のペースはほぼ同じように行われているようですね。
これだけ環境が違うというのに、同じように過ごせるとはすごい話です。頭が悪いだけなのか、それとも環境に左右されない強さがあるのか、それは私たちには分からないですけれどもね。
というわけでして、アマリス様とルーチェは、半月ほど私たちと生活を共にすることになります。基本的にはお手伝いはしませんが、この近くを散策して過ごすそうです。
そういえば、私自身は近くの街との往復ばかりで、あまりこのご近所を見ておりませんでしたね。狩りに行くギルバートの情報頼りです。
まあ、ミサエラさんやおじさまが普通に来られるような場所です。きっと大丈夫でしょう。
私は、二人との生活を楽しみにすることにしたのでした。
「避暑といえばやはり湖は避けられませんね」
「この近くには湖がありますので、ここでお世話になりますよ、お姉様」
なんてことでしょう。
夏休みの休暇を私の農園で過ごすつもりのようです。
待って下さい。今は家に余裕がありませんよ。
「どうなさるおつもりですか、レチェ様」
「どうするもこうするも……。あの二人、居座るつもりですよ。どうにかしないといけません」
アマリス様もルーチェも、まったく帰るような気配がありません。この分では学園の夏休み中、ここにいることは確定です。
まったく、困ったものですね。
ひとまず、私は二人に確認をします。ええ、お父様たちの許可があるのかどうかですよ。
警備はたくさんいますけれど、どう見たって二人しかいませんからね。
「アマリス様、ルーチェ」
「なんでしょうか、お姉様」
私が声をかけると、畑を眺めていた二人が揃って振り返ってきます。
声をかけられた二人の顔が、にこにことした期待の顔をしています。なんなんですか、この表情は……。
「あなたたち、国王陛下やお父様たちの許可は得ていますかしら」
「はい、もちろんですよ」
即答でしたわ。
「お兄様の説得が難しいのは分かっています。なので、最初からお兄様には内緒でやってきました」
「アマリス様……」
にこにこと笑顔でいうことですか、それは。
ルーチェまでこちらに来てしまって、アンドリュー殿下ってば可哀想ですわね。
二人とも、私のことを慕っていますものね。
でも、今年はよくても来年からは厳しいと思います。王族の婚約者というものが、そんなに自由に動けるわけがないのです。なので、今年のところは私はもう目をつぶることにしました。
「ラ・ギア・ルド!」
農園の近くの空き地に、私は魔法で家を建てます。ないのなら作ってしまえというやつです。
私が一瞬で家を建ててしまったので、アマリス様もルーチェもびっくり仰天です。
「はあ……。付与魔法についてちゃんと勉強していればよかったですのに……」
「お姉様の魔法、こんなことができましたのね」
二人はしばらく呆然として、私の建てた家を眺めていました。
「来客用の家なので設備は質素ですけれど、これで我慢して下さいね」
「お姉様ご用意して下さったのでしたら、文句のひとつもありませんわよ」
私が断りを入れると、即座にアマリス様から言葉が返ってきました。早すぎません?
まあそれでいいのでしたら、これ以上のことはしませんけれど。
いろいろと思いながら、二人を建てた家の中に案内します。
最低限の家具くらいが同時に作ってあります。ただし、土魔法ですから、硬いんですよ、これが。
「土魔法で同時に作ったので、とても落ち着けるものではないと思いますが、そこはまあ我慢して下さい」
「確かに、落ち着ける気はしませんね」
ベッドやテーブルなどを叩きながら、アマリス様は苦笑いをしています。なにせこつこつという音がするのですからね。
「ベッドが固いのは想定内ですから、布団は自分たちで用意してありますよ。ね、ルーチェ」
「はい、アマリス様」
首を傾げていると、扉が開いて使用人たちがぞろぞろと入ってきます。
そして、無機質なベッドやテーブルに、すぐさま装飾を施していきます。
なんてことでしょう。硬い土魔法のベッドやテーブルが、あっという間におしゃれなものに変わってしまったではないですか。
「……用意、されていたのですか」
「お姉様、私には去年の経験がありますのよ?」
「あ……」
そうでした。アマリス様は去年も半年くらいご一緒にいらっしゃったのでしたね。
なるほど、その経験から自分で用意していたというわけですか。抜け目がないといいますか、なんといいましょうか。
それ以外も含めて、あっという間に殺風景だった家の中がきれいに飾り付けられました。すっかり客人用の家になってしまいましたね。
「さて、一通り終わりましたから、フォレとラニをスピードやスターたちと会わせてやってくださいませ、お姉様」
両手を合わせながら、満面の笑みで頼み込んでくるアマリス様。やめて下さい、その笑顔に弱いんです。
というわけでして、私はアマリス様とルーチェが乗ってきたフォレとラニを連れて、鳥小屋へと移動します。
「ブェーッ!」
「ブフェーッ!」
鳥小屋に入るなり、フォレとラニはダッシュでスピードとスターに近付いていきます。互いに分かるらしく、スピードとスターの方も翼を広げて二羽を受け入れていました。
「ずいぶん増えましたね、こちらも」
「四回目まで生みましたからね。今月中にも、おそらく産卵はあると思われます」
「そうですか。では、こちらも気をつけないといけませんね。こちらも四回目の産卵が終わってふ化するところですから」
どうやら、ラッシュバードの産卵のペースはほぼ同じように行われているようですね。
これだけ環境が違うというのに、同じように過ごせるとはすごい話です。頭が悪いだけなのか、それとも環境に左右されない強さがあるのか、それは私たちには分からないですけれどもね。
というわけでして、アマリス様とルーチェは、半月ほど私たちと生活を共にすることになります。基本的にはお手伝いはしませんが、この近くを散策して過ごすそうです。
そういえば、私自身は近くの街との往復ばかりで、あまりこのご近所を見ておりませんでしたね。狩りに行くギルバートの情報頼りです。
まあ、ミサエラさんやおじさまが普通に来られるような場所です。きっと大丈夫でしょう。
私は、二人との生活を楽しみにすることにしたのでした。
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