101 / 200
第101話 気が付いたら終わっていました
しおりを挟む
食堂開業日の結果から申しましょう。
はい、疲れました。起き上がる気力すら起きません。
商業ギルドが気を利かせて応援を寄こして下さいましたが、それでも回りませんでした。
みなさん、新しいものが大好きすぎませんか?
よく見るとよその食堂の方もお祝いと敵情視察のために来られてましたよ?
「み、みなさん、初日お疲れ様でした」
「は、はい……」
イリスたちも返事で精一杯という感じです。
これで翌日から朝の営業が始まるんです。見通しが甘かったといえばそれまででしょうけれど、私の予想をはるかに超えていました。
「ミサエラ様にかなり助けられてしまいましたね、レチェ様」
「はい、まったくです。さすが商業ギルドの副マスターをされているだけあって違います」
私たちが突っ伏していると、ギルバートたちがやってきました。
「これは……、これで夕食を作ってくれというのは酷か?」
「あははは、いいですよ。私がやりますので、みなさんを部屋まで送り届けて下さい」
「そ、そんな、レチェ様」
私の言葉に、カリナさんたちは揃えて声をあげます。
「いいんですよ。みなさんは明日の朝の営業から頑張っていただかなければなりません。私はまだやることが残っています。私にしかできない仕事ですから、お気になさらず先に休んで下さい」
私にしかできない仕事という点を強調したこともあって、みなさん渋々ギルバートたちに支えられて部屋に戻っていきました。これではお風呂は無理そうですから、起きてからですね。
みなさんが部屋に戻られていくのを確認すると、残った材料を使ってギルバートたち護衛の食事を作り始めます。
一日の感謝を込めて、しっかりとした料理を作って差し上げませんとね。ああ、あと私の夜食もでした。
ちなみにこのあとの私の仕事ですが、一日の売上の計算と、在庫を確認してからの発注です。食材を補充しませんと、あさって以降の営業が厳しくなりますからね。
無事に夕食を終えた私は、厨房奥の事務所のようなところで仕事を再開します。
うずたかく積まれた注文書から割り出した金額と、実際の金銭箱の中身とを照らし合わせていきます。
ギルドカード支払いの方もいらっしゃいましたが、それは商業ギルドから貸し出して頂けました装置がありますので、それでチェックできます。
結果としましては、誤差なしでした。みなさん優秀ですね。
食堂としてはかなり多い気もしますが、これだけあれば当面の経営は困りそうにありませんね。
ちょっとほくほくとした気持ちになりながら、売り上げをすぐに金庫の中にしまいます。
売り上げを確認すれば、食材の確認。減った分をすぐにまとめて、今日の消費量から見込まれる使用量を予測して発注書を作ります。
予測通りなら、三日目まではなんとかなりそうだとは思うのですが、その後は六日目まで、農園から追加物資を持ってきてもらわないといけない感じです。さて、誰に頼みましょうか。
手が空いているのはラッシュバードのお世話が仕事のジルくんだけですが、彼は幼すぎます。やはり、ここもギルドを頼るしかありませんか……。
あまり秘密を外部に漏らしたくないので、ギルドの手を借りるのは正直戸惑います。でも、食堂の大事な新規開店の一週間ですから、背に腹は代えられません。明日の営業が落ち着いた時に頼みましょう。
「ふわぁ……」
いけませんね、あくびが出てしまいます。
まだやることはありますのに。
それにしても、今日の営業中のことがうまく思い出せませんね。私、最初にやって来ていたお客様の対応をした後、ずっと厨房にいましたからね。
うう、これなら反省会をすべきでしたし、護衛の方からお話をちゃんと伺うべきでした。相変わらず抜けていますね、私。
今さら反省しても遅いですので、最後はパンの最初の仕込みをしておきます。起きたら焼けるようにしておきますと、自分たちの朝食にもできますからね。
「今日の混雑具合からして、全自動食器洗浄機を作っておいて正解でしたね。皿洗いなんてとてもできる状況にありませんでしたよ」
コンロにオーブン、食洗器にフライヤーと、結構作っておきましたからね。厨房設備を。
どれもこれもフル稼働でしたから、魔石の状態などをチェックしておかないといけません。使用中に魔石の魔力切れとなったら交換で時間が取られますもの。
フライヤーは明日の朝起きましたら、魔石を投じて浄化をしませんとね。真っ黒になるくらい揚げましたし、油の量もかなり減っていますからね。
それ以外には、やはりお酒ですね。閉店の近づいてきた夕方になると、仕事上がりの方々が結構注文されていましたね。時折ギルバートたちに入ってもらいながら全部断りましたが。
お酒は現状を考えるとどうしても提供できないのですよね。やはり、女性と子どもだけが働くお店というのが大きいですから。
「ふう……。確認作業と問題の洗い出しはこんなところでしょうか。今日はさすがに面食らいましてだいぶ忘れちゃってますから、また明日チェックし直しませんと」
ようやく仕事が一段落しました。
もうすっかり真夜中ですね。
「さて、せめてお風呂だけは入ってから寝ましょうかね。明日も頑張りませんと」」
私は大きく背伸びをして、生活スペースへと移動していきます。
始まったばかりの食堂経営。必ず成功させてみせますよ。
はい、疲れました。起き上がる気力すら起きません。
商業ギルドが気を利かせて応援を寄こして下さいましたが、それでも回りませんでした。
みなさん、新しいものが大好きすぎませんか?
よく見るとよその食堂の方もお祝いと敵情視察のために来られてましたよ?
「み、みなさん、初日お疲れ様でした」
「は、はい……」
イリスたちも返事で精一杯という感じです。
これで翌日から朝の営業が始まるんです。見通しが甘かったといえばそれまででしょうけれど、私の予想をはるかに超えていました。
「ミサエラ様にかなり助けられてしまいましたね、レチェ様」
「はい、まったくです。さすが商業ギルドの副マスターをされているだけあって違います」
私たちが突っ伏していると、ギルバートたちがやってきました。
「これは……、これで夕食を作ってくれというのは酷か?」
「あははは、いいですよ。私がやりますので、みなさんを部屋まで送り届けて下さい」
「そ、そんな、レチェ様」
私の言葉に、カリナさんたちは揃えて声をあげます。
「いいんですよ。みなさんは明日の朝の営業から頑張っていただかなければなりません。私はまだやることが残っています。私にしかできない仕事ですから、お気になさらず先に休んで下さい」
私にしかできない仕事という点を強調したこともあって、みなさん渋々ギルバートたちに支えられて部屋に戻っていきました。これではお風呂は無理そうですから、起きてからですね。
みなさんが部屋に戻られていくのを確認すると、残った材料を使ってギルバートたち護衛の食事を作り始めます。
一日の感謝を込めて、しっかりとした料理を作って差し上げませんとね。ああ、あと私の夜食もでした。
ちなみにこのあとの私の仕事ですが、一日の売上の計算と、在庫を確認してからの発注です。食材を補充しませんと、あさって以降の営業が厳しくなりますからね。
無事に夕食を終えた私は、厨房奥の事務所のようなところで仕事を再開します。
うずたかく積まれた注文書から割り出した金額と、実際の金銭箱の中身とを照らし合わせていきます。
ギルドカード支払いの方もいらっしゃいましたが、それは商業ギルドから貸し出して頂けました装置がありますので、それでチェックできます。
結果としましては、誤差なしでした。みなさん優秀ですね。
食堂としてはかなり多い気もしますが、これだけあれば当面の経営は困りそうにありませんね。
ちょっとほくほくとした気持ちになりながら、売り上げをすぐに金庫の中にしまいます。
売り上げを確認すれば、食材の確認。減った分をすぐにまとめて、今日の消費量から見込まれる使用量を予測して発注書を作ります。
予測通りなら、三日目まではなんとかなりそうだとは思うのですが、その後は六日目まで、農園から追加物資を持ってきてもらわないといけない感じです。さて、誰に頼みましょうか。
手が空いているのはラッシュバードのお世話が仕事のジルくんだけですが、彼は幼すぎます。やはり、ここもギルドを頼るしかありませんか……。
あまり秘密を外部に漏らしたくないので、ギルドの手を借りるのは正直戸惑います。でも、食堂の大事な新規開店の一週間ですから、背に腹は代えられません。明日の営業が落ち着いた時に頼みましょう。
「ふわぁ……」
いけませんね、あくびが出てしまいます。
まだやることはありますのに。
それにしても、今日の営業中のことがうまく思い出せませんね。私、最初にやって来ていたお客様の対応をした後、ずっと厨房にいましたからね。
うう、これなら反省会をすべきでしたし、護衛の方からお話をちゃんと伺うべきでした。相変わらず抜けていますね、私。
今さら反省しても遅いですので、最後はパンの最初の仕込みをしておきます。起きたら焼けるようにしておきますと、自分たちの朝食にもできますからね。
「今日の混雑具合からして、全自動食器洗浄機を作っておいて正解でしたね。皿洗いなんてとてもできる状況にありませんでしたよ」
コンロにオーブン、食洗器にフライヤーと、結構作っておきましたからね。厨房設備を。
どれもこれもフル稼働でしたから、魔石の状態などをチェックしておかないといけません。使用中に魔石の魔力切れとなったら交換で時間が取られますもの。
フライヤーは明日の朝起きましたら、魔石を投じて浄化をしませんとね。真っ黒になるくらい揚げましたし、油の量もかなり減っていますからね。
それ以外には、やはりお酒ですね。閉店の近づいてきた夕方になると、仕事上がりの方々が結構注文されていましたね。時折ギルバートたちに入ってもらいながら全部断りましたが。
お酒は現状を考えるとどうしても提供できないのですよね。やはり、女性と子どもだけが働くお店というのが大きいですから。
「ふう……。確認作業と問題の洗い出しはこんなところでしょうか。今日はさすがに面食らいましてだいぶ忘れちゃってますから、また明日チェックし直しませんと」
ようやく仕事が一段落しました。
もうすっかり真夜中ですね。
「さて、せめてお風呂だけは入ってから寝ましょうかね。明日も頑張りませんと」」
私は大きく背伸びをして、生活スペースへと移動していきます。
始まったばかりの食堂経営。必ず成功させてみせますよ。
76
あなたにおすすめの小説
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
転生してきた令嬢、婚約破棄されたけど、冷酷だった世界が私にだけ優しすぎる話
タマ マコト
ファンタジー
前世の記憶を持って貴族令嬢として生きるセレフィーナは、感情を見せない“冷たい令嬢”として王都で誤解されていた。
王太子クラウスとの婚約も役割として受け入れていたが、舞踏会の夜、正義を掲げたクラウスの婚約破棄宣言によって彼女は一方的に切り捨てられる。
王都のクラウスに対する拍手と聖女マリアへの祝福に包まれる中、何も求めなかった彼女の沈黙が、王都という冷酷な世界の歪みを静かに揺らし始め、追放先の辺境での運命が動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる