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第111話 久しぶりの農園
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さて、開業から七日目、本日は休業日です。朝のパンも昼からの食堂もお休みです。
休みなので遅くまで起きてこないかと思われたのですが、イリスはともかくとして、他の方々もきっちり朝早くに目が覚めているんですよ。なんでしょうか、ワーカホリックでしょうか。
「おはようございます、みなさん。お休みですのに朝が早いですね」
起きている皆さんに対して、私はびっくりしています。
そういう私も、しっかり朝早くに目が覚めてしまいましたよ。習慣となってしまったのだと、認識させられる瞬間です。
「おはようございます、レチェ様」
イリスたちから挨拶が返ってきます。
「今日の営業はお休みです。みなさんは思うように過ごしてよろしいですからね。街に出て買い物をしてもよろしいですし、一日部屋で寝ていても構いません。何かあればイリスに尋ねて下さい」
「あれ、レチェ様。レチェ様に聞いてはいけないのですか?」
私がした話の内容に、引っ掛かりを覚えたティルさんが質問をしてきます。
「はい。私は今日は農園の方へと行ってまいります。食材の減りが激しいですので、発注とは別に、私が直々に確保に行ってこようかと思います」
そう、すべてはパンの売れが絶好調のためです。
日に一千個も用意したパンが、朝のほぼ一時間もしない間に完売するんですから恐ろしいですよね。
街の人口を考えると、全員がうちのパンを二個ずつ食べたとしても余る計算なのですが……。公爵領とはいっても、ここはもう国境にも近い辺鄙な街です。人口なんて本当に知れていますからね。
なので、食材全体を見てみても、小麦の減りだけが異常なのですよ。
そんなわけですので、私は食堂のことをイリスとギルバートに任せて、今回は自分で農園へと向かいます。
前回私が倒れそうになった翌日にはギルバートに向かわせましたが、何度も大事な取引を他人任せにはしていられません。それに、農園のオーナーは私なのです。直々に確認をしなくてはいけません。
そんなわけでして、今回はスターに乗って、私は農園へと駆けていったのでした。
久しぶりにやって来た農園は、相変わらずのんびりとした雰囲気です。
私もイリスもギルバートもいませんので、完全にこちらに来てから雇った方ばかりで経営されています。
ですが、さすが精霊のノームが管理していますので、特に問題があるようには見えませんね。
「キサラさん、お久しぶりです」
「ああ、レチェ様。いつおいでになられたのですか?」
ラッシュバードの生態を研究し始めたキサラさんに声をかけます。ものすごくびっくりされていますね。
「つい先ほどです。どうでしょうか、キララたちの様子に代わりはございませんか?」
「はい、特に病気もあるようには見えませんし、元気いっぱいですよ」
「ブェーッ!」
私を見つけたラッシュバードたちが、まだまだ小さな子たちも含めて私に突撃してきます。
私は優しく受け止めようとしますが、そこにスターがざっと立ちはだかりました。
「ブフェーッ!」
大きな声で鳴くと、キララたちがぴたりと動きを止めます。
スターの剣幕にすっかりびびってしまっているようです。キララたちにとってスターは母親ですし、体が大きいですから迫力があります。
魔物たちにとって、力関係は絶対です。スターは私のことは渡すまいと、キララたちにわからせるつもりだったようですね。
「スター、あまり脅しちゃダメよ。みんなあなたの子どもたちなんですから、もう少し優しくしてあげませんと」
「ブェー……」
私に叱られたと思って、スターは分かりやすく落ち込んでしまいました。ふふっ、まったく可愛い子ですね。
私はスターを慰めながら、キサラさんに話をしておきます。
「卵が採れるようになりましたら、私の方に運んできて下さい。調理しますので」
「承知致しました。キララたちが渡してくれたものだけですよね?」
「その通りです。ですが、数を増やすのが先決ですからね。渡してくる卵は子どもが生まれないことが分かっているものですので、野菜などと一緒に運搬をお願いしますね」
「はい!」
私はキサラさんと話を終えると、今度は畑の方で働くマックスさんたちに声をかけます。こちらも問題はないようですので、ギルバートが不在の間の警備についても、再度お願いしておきました。
最後にサリナさんとマリナさんの姉妹にも声をかけておきます。二人は小屋の中で掃除などの家事を行っていました。二人もすっかり元気そうでなによりです。
ただ、二人は母親であるカリナさんのことを気にかけていらっしゃいましたので、元気であることを伝えておきます。あと、食堂が順調であることもです。これにはほっとした表情を見せてくれましたね。子どもたちの笑顔はやはりいいものです。
……私も今年で十五ですから、まだ子どもといえば子どもでしょうけれどね。
とりあえず、こちらの近況も確認し終わりましたし、最後はノームに会っていきましょう。
ノームは相変わらずのんびりした様子でしたが、私が声をかけると嬉しそうにわらわらと集まってきました。
いくらか話をしてから、小麦と野菜を準備してもらいます。
『順調そうでよかったよ』
『主がいなくなっても、こちらは特に変わりはないよ』
『怪しいのが来ても、全部ボクらが追い返してやるさ』
実に頼もしいかぎりですね。
こうして無事に終わりました農園のチェックですけれど、最後に野菜と小麦粉を持って帰って終了です。ちなみに、持ち運びに使う魔法かばんの関係で、キサラさんにはご同行頂きました。
「ありがとうございます、キサラさん。これ、食堂で出しているパンですので、みなさんと分け合って召し上がって下さい」
「ありがとうございます。ありがたく頂戴いたします」
キサラさんはそう言ってパンを受け取りますと、キララに乗って農園へと戻っていかれました。
さあ、明日からはまた食堂が始まります。今度は倒れないように裏方に徹して過ごしましょう。
私はむんと気合いを入れて、翌日からの営業に備えたのでした。
休みなので遅くまで起きてこないかと思われたのですが、イリスはともかくとして、他の方々もきっちり朝早くに目が覚めているんですよ。なんでしょうか、ワーカホリックでしょうか。
「おはようございます、みなさん。お休みですのに朝が早いですね」
起きている皆さんに対して、私はびっくりしています。
そういう私も、しっかり朝早くに目が覚めてしまいましたよ。習慣となってしまったのだと、認識させられる瞬間です。
「おはようございます、レチェ様」
イリスたちから挨拶が返ってきます。
「今日の営業はお休みです。みなさんは思うように過ごしてよろしいですからね。街に出て買い物をしてもよろしいですし、一日部屋で寝ていても構いません。何かあればイリスに尋ねて下さい」
「あれ、レチェ様。レチェ様に聞いてはいけないのですか?」
私がした話の内容に、引っ掛かりを覚えたティルさんが質問をしてきます。
「はい。私は今日は農園の方へと行ってまいります。食材の減りが激しいですので、発注とは別に、私が直々に確保に行ってこようかと思います」
そう、すべてはパンの売れが絶好調のためです。
日に一千個も用意したパンが、朝のほぼ一時間もしない間に完売するんですから恐ろしいですよね。
街の人口を考えると、全員がうちのパンを二個ずつ食べたとしても余る計算なのですが……。公爵領とはいっても、ここはもう国境にも近い辺鄙な街です。人口なんて本当に知れていますからね。
なので、食材全体を見てみても、小麦の減りだけが異常なのですよ。
そんなわけですので、私は食堂のことをイリスとギルバートに任せて、今回は自分で農園へと向かいます。
前回私が倒れそうになった翌日にはギルバートに向かわせましたが、何度も大事な取引を他人任せにはしていられません。それに、農園のオーナーは私なのです。直々に確認をしなくてはいけません。
そんなわけでして、今回はスターに乗って、私は農園へと駆けていったのでした。
久しぶりにやって来た農園は、相変わらずのんびりとした雰囲気です。
私もイリスもギルバートもいませんので、完全にこちらに来てから雇った方ばかりで経営されています。
ですが、さすが精霊のノームが管理していますので、特に問題があるようには見えませんね。
「キサラさん、お久しぶりです」
「ああ、レチェ様。いつおいでになられたのですか?」
ラッシュバードの生態を研究し始めたキサラさんに声をかけます。ものすごくびっくりされていますね。
「つい先ほどです。どうでしょうか、キララたちの様子に代わりはございませんか?」
「はい、特に病気もあるようには見えませんし、元気いっぱいですよ」
「ブェーッ!」
私を見つけたラッシュバードたちが、まだまだ小さな子たちも含めて私に突撃してきます。
私は優しく受け止めようとしますが、そこにスターがざっと立ちはだかりました。
「ブフェーッ!」
大きな声で鳴くと、キララたちがぴたりと動きを止めます。
スターの剣幕にすっかりびびってしまっているようです。キララたちにとってスターは母親ですし、体が大きいですから迫力があります。
魔物たちにとって、力関係は絶対です。スターは私のことは渡すまいと、キララたちにわからせるつもりだったようですね。
「スター、あまり脅しちゃダメよ。みんなあなたの子どもたちなんですから、もう少し優しくしてあげませんと」
「ブェー……」
私に叱られたと思って、スターは分かりやすく落ち込んでしまいました。ふふっ、まったく可愛い子ですね。
私はスターを慰めながら、キサラさんに話をしておきます。
「卵が採れるようになりましたら、私の方に運んできて下さい。調理しますので」
「承知致しました。キララたちが渡してくれたものだけですよね?」
「その通りです。ですが、数を増やすのが先決ですからね。渡してくる卵は子どもが生まれないことが分かっているものですので、野菜などと一緒に運搬をお願いしますね」
「はい!」
私はキサラさんと話を終えると、今度は畑の方で働くマックスさんたちに声をかけます。こちらも問題はないようですので、ギルバートが不在の間の警備についても、再度お願いしておきました。
最後にサリナさんとマリナさんの姉妹にも声をかけておきます。二人は小屋の中で掃除などの家事を行っていました。二人もすっかり元気そうでなによりです。
ただ、二人は母親であるカリナさんのことを気にかけていらっしゃいましたので、元気であることを伝えておきます。あと、食堂が順調であることもです。これにはほっとした表情を見せてくれましたね。子どもたちの笑顔はやはりいいものです。
……私も今年で十五ですから、まだ子どもといえば子どもでしょうけれどね。
とりあえず、こちらの近況も確認し終わりましたし、最後はノームに会っていきましょう。
ノームは相変わらずのんびりした様子でしたが、私が声をかけると嬉しそうにわらわらと集まってきました。
いくらか話をしてから、小麦と野菜を準備してもらいます。
『順調そうでよかったよ』
『主がいなくなっても、こちらは特に変わりはないよ』
『怪しいのが来ても、全部ボクらが追い返してやるさ』
実に頼もしいかぎりですね。
こうして無事に終わりました農園のチェックですけれど、最後に野菜と小麦粉を持って帰って終了です。ちなみに、持ち運びに使う魔法かばんの関係で、キサラさんにはご同行頂きました。
「ありがとうございます、キサラさん。これ、食堂で出しているパンですので、みなさんと分け合って召し上がって下さい」
「ありがとうございます。ありがたく頂戴いたします」
キサラさんはそう言ってパンを受け取りますと、キララに乗って農園へと戻っていかれました。
さあ、明日からはまた食堂が始まります。今度は倒れないように裏方に徹して過ごしましょう。
私はむんと気合いを入れて、翌日からの営業に備えたのでした。
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