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第160話 再びマソルの商業ギルドへ
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昼食を終えますと、私は再び商業ギルドを訪れます。何をしに向かったかといえば、先程作った塩や酢じめの売り込みですね。
宿屋のおかみさんが知らなかったのですから、おそらくいけると思ったから突撃しています。
「おや、誰かと思ったら、さっきのお嬢ちゃんたちかい。どうしたんだい?」
先程話をさせていただいた、商業ギルドのベテラン女性と話をします。お会いしたのが先程でしたから、私のことをよく覚えていらっしゃるようですね。
「はい、ちょっと見て頂きたいものがございましてやって参りました」
私はにこやかに女性の前に移動します。ですが、次の瞬間にはかなり近づいて話を始めます。
「それで、ちょっと秘密にしたいことがありまして、人目につかないところでお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「なんだいなんだい。ずいぶんと改まって」
私がずいっと顔を近付けますと、女性はとても驚いていました。ということは、こういうことはあまりないということなのでしょうかね。疑問に感じますよ。
「まあ、仕方ないね。商人たる者、秘密のひとつやふたつ珍しくあるまいて。ちょっと待ちなさいな。こういうことはギルドマスターにも見てもらわないといけないからね」
女性はゆっくりと立ち上がると、ギルドの奥へと姿を消していきました。
しばらく待っていると、違うところから私たちを呼んできました。どうやら来客用の入口のようですね。
でも、そんな場所から呼ばれたということは、話を聞いていただけるということです。私はアマリス様とルーチェを連れて、一緒に移動していきます。
それにしても、ルーチェはまだ分かるのですが、アマリス様もまったく喋ろうとしておりませんね。
口を開けば身分が分かるからでしょうか。ちょっと意外な状況に、私は戸惑っています。ギルドマスターと顔を合わせるよりも想定外の事態です。
私は黙り込んだアマリス様に疑問を感じながらも、ベテラン女性の案内でギルドの奥の部屋へとやってきました。
「ギルドマスター、例の商人を連れて来ました」
「ええ、入って下さい」
扉の中からは女性の声が聞こえてきました。どうやらマソルの街は、冒険者ギルド、商業ギルドともに女性がマスターのようです。これはびっくりですね。
部屋の中に入ると、そこに座っていたのはベテラン女性よりも明らかに若い方です。私はびっくりして、つい二人の女性を見比べてしまいます。
「気持ちは分かるね。だけど、とりあえずギルドマスターに挨拶しなさいな」
ベテラン女性に言われて、私はその通りにします。
「マソルの商業ギルドマスター様、初めまして。レチェ商会の商会長、レイチェル・ウィルソンと申します。わざわざ時間を割いていただき、誠にありがとうございます」
カーテシーをしながら、丁寧に挨拶をします。貴族仕草は簡単には抜けませんね。
「こちらこそ初めまして。マソルの商業ギルド、ギルドマスターのネイドと申します。あなたが噂のレチェ商会の商会長様ですか。まだお若いですね」
「は、はい。今年で十五となりました」
「おやまぁ、あたしの娘よりも若いね」
ベテラン女性がそんなことを言っています。ということは、少なくとも三十後半以上……。いわゆるアラフォーですか、この方。
「そちらのお二方も、自己紹介をお願いできますでしょうか」
ネイド様が話を振ってこられます。アマリス様もルーチェも、困った顔をしていますね。本当のことを言うべきかどうか、迷っているようです。
ですが、私が本名を名乗りましたので、二人には同じように本名を名乗るように伝えました。
「ウィズタリア王国王女アマリス・ウィズタリアと申します」
「ルーチェ・ウィルソン公爵令嬢でございます。レイチェルお姉様の妹でございます」
「なんともまあ。高貴な方だとは感じておりましたが、まさか王女様とは思いませんでしたね」
驚いているようですが、とても落ち着かれています。これがギルドマスターなのでしょうね。
自己紹介も終わりまして、いよいよ本題に入ります。
「これをご覧いただきたく思います」
私は魔法かばんから、先程作った海水塩と酢じめの魚を取り出します。
「こちらは海水を蒸発させて作った塩でして、こちらは魚をワインビネガーに漬けたものでございます。実は私、ウィズタリア王国内で食堂を営んでおりまして、そこにこちらで獲れる魚を提供したいと考えているのです」
「ふむふむ、なるほど。それにしても、海水から塩ですか。こういうのは思いつきませんでしたね」
海水塩に興味を示しているようですね。やっぱり、海水から塩を作るということは、こちらにはない発想だったようですね。
「詳しく話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」
「はい、構いませんよ。今回私がこちらに赴いたのは、塩と海産物を手に入れるためですからね」
私とネイド様は、ともににこやかに笑っています。
「なんだかお姉様、怖いですね」
「あれは間違いなく何か企んでいますよ、アマリス様」
「これほど楽しそうなギルドマスターの姿は久しぶりだわい」
周りは様々な反応を示しているようですね。
さあ、今日はここからが本番です。なんとしても、ここで取引を成立させてみましょう。
宿屋のおかみさんが知らなかったのですから、おそらくいけると思ったから突撃しています。
「おや、誰かと思ったら、さっきのお嬢ちゃんたちかい。どうしたんだい?」
先程話をさせていただいた、商業ギルドのベテラン女性と話をします。お会いしたのが先程でしたから、私のことをよく覚えていらっしゃるようですね。
「はい、ちょっと見て頂きたいものがございましてやって参りました」
私はにこやかに女性の前に移動します。ですが、次の瞬間にはかなり近づいて話を始めます。
「それで、ちょっと秘密にしたいことがありまして、人目につかないところでお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「なんだいなんだい。ずいぶんと改まって」
私がずいっと顔を近付けますと、女性はとても驚いていました。ということは、こういうことはあまりないということなのでしょうかね。疑問に感じますよ。
「まあ、仕方ないね。商人たる者、秘密のひとつやふたつ珍しくあるまいて。ちょっと待ちなさいな。こういうことはギルドマスターにも見てもらわないといけないからね」
女性はゆっくりと立ち上がると、ギルドの奥へと姿を消していきました。
しばらく待っていると、違うところから私たちを呼んできました。どうやら来客用の入口のようですね。
でも、そんな場所から呼ばれたということは、話を聞いていただけるということです。私はアマリス様とルーチェを連れて、一緒に移動していきます。
それにしても、ルーチェはまだ分かるのですが、アマリス様もまったく喋ろうとしておりませんね。
口を開けば身分が分かるからでしょうか。ちょっと意外な状況に、私は戸惑っています。ギルドマスターと顔を合わせるよりも想定外の事態です。
私は黙り込んだアマリス様に疑問を感じながらも、ベテラン女性の案内でギルドの奥の部屋へとやってきました。
「ギルドマスター、例の商人を連れて来ました」
「ええ、入って下さい」
扉の中からは女性の声が聞こえてきました。どうやらマソルの街は、冒険者ギルド、商業ギルドともに女性がマスターのようです。これはびっくりですね。
部屋の中に入ると、そこに座っていたのはベテラン女性よりも明らかに若い方です。私はびっくりして、つい二人の女性を見比べてしまいます。
「気持ちは分かるね。だけど、とりあえずギルドマスターに挨拶しなさいな」
ベテラン女性に言われて、私はその通りにします。
「マソルの商業ギルドマスター様、初めまして。レチェ商会の商会長、レイチェル・ウィルソンと申します。わざわざ時間を割いていただき、誠にありがとうございます」
カーテシーをしながら、丁寧に挨拶をします。貴族仕草は簡単には抜けませんね。
「こちらこそ初めまして。マソルの商業ギルド、ギルドマスターのネイドと申します。あなたが噂のレチェ商会の商会長様ですか。まだお若いですね」
「は、はい。今年で十五となりました」
「おやまぁ、あたしの娘よりも若いね」
ベテラン女性がそんなことを言っています。ということは、少なくとも三十後半以上……。いわゆるアラフォーですか、この方。
「そちらのお二方も、自己紹介をお願いできますでしょうか」
ネイド様が話を振ってこられます。アマリス様もルーチェも、困った顔をしていますね。本当のことを言うべきかどうか、迷っているようです。
ですが、私が本名を名乗りましたので、二人には同じように本名を名乗るように伝えました。
「ウィズタリア王国王女アマリス・ウィズタリアと申します」
「ルーチェ・ウィルソン公爵令嬢でございます。レイチェルお姉様の妹でございます」
「なんともまあ。高貴な方だとは感じておりましたが、まさか王女様とは思いませんでしたね」
驚いているようですが、とても落ち着かれています。これがギルドマスターなのでしょうね。
自己紹介も終わりまして、いよいよ本題に入ります。
「これをご覧いただきたく思います」
私は魔法かばんから、先程作った海水塩と酢じめの魚を取り出します。
「こちらは海水を蒸発させて作った塩でして、こちらは魚をワインビネガーに漬けたものでございます。実は私、ウィズタリア王国内で食堂を営んでおりまして、そこにこちらで獲れる魚を提供したいと考えているのです」
「ふむふむ、なるほど。それにしても、海水から塩ですか。こういうのは思いつきませんでしたね」
海水塩に興味を示しているようですね。やっぱり、海水から塩を作るということは、こちらにはない発想だったようですね。
「詳しく話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」
「はい、構いませんよ。今回私がこちらに赴いたのは、塩と海産物を手に入れるためですからね」
私とネイド様は、ともににこやかに笑っています。
「なんだかお姉様、怖いですね」
「あれは間違いなく何か企んでいますよ、アマリス様」
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