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第177話 海産物には可能性がある
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休業日の翌々日のこと、私は再び商業ギルドに呼び出されます。
何かと思いまして訪れますと、またマソルの商業ギルドマスターであるネイド様がいらしていました。
「やあ、レイチェルさん。お久しぶりですね」
「お久しぶりでございます、ネイド様」
私はなぜかカーテシーをしてしまいます。
いけませんね。貴族令嬢としての癖がなかなか抜けません。ミサエラさんは困った顔をしていますし、ネイド様は笑っていらっしゃいます。
「それで、本日はどのようなご用件でしょうか」
私はひとまず本題に切り込みます。これが一番重要ですからね。
ネイド様と話をしようとしますと、ミサエラさんから座るように言われます。なので、対面に座ります。
ネイド様はかばんを出してきましたので、どうやら、今回も取引のようです。
……困りましたね。二回目の取引をいつにするか決めていなかったせいで、私の方は準備ができておりません。どういたしましょうか。
少し慌ててしまいますが、お二人から落ち着くように言われてしまいます。私は深呼吸をします。
「今回は金銭だけで構いませんよ。事情はお聞きしました。大変なことになっていたようですね」
「はい。自業自得ですので、反省をしております」
ネイド様から同情の声をかけられてしまいます。
まったく、私ときたら、いろいろ軽率なことをしてしまってますね。公爵令嬢としてしっかり反省せねばなりません。……できますでしょうか。
気持ちを入れ替えようとしますが、自分で言っててものすごく不安になってきます。今までの自分のやらかしを振り返れば、無理もないですね。
私がため息をついていますと、ミサエラさんとネイド様が笑っている姿が目に入ります。やっぱりそうなのですね。
反省することばかりですが、ここはひとつ提案を出すべきでしょうね。
かばんの中を確認しますと、やはり生のお魚が入っています。
「ネイド様、おひとつよろしいでしょうか」
「はい、何でしょうか」
私が声をかけますと、ネイド様がじっと見てきます。
「私のところに送ってくるお魚ですけれど、凍らせていただくことはできませんか?」
「魚を、凍らせる、ですか?」
なんとも不思議そうな顔をしています。
「はい。獲れたてをカチコチに凍らせてほしいのです。鮮度を保つためですね」
「ふむふむ、なるほど」
私の言葉に、ネイド様は理解をしていらっしゃるようですね。さすが商業ギルドのマスターです。
ですが、言葉だけでは伝わらないだろうと、私はかばんから一匹の魚を取り出します。
机の上に置いて、すぐさま私は魔法を使います。
「ラ・ズミ・コル」
コルはコールドでも凍るでも、どのように取っていただいて構いません。ともかく、私は魚をすぐに凍らせました。
あっという間に冷凍の魚が、机の上に出現です。
「これは、見事に凍ってしまっていますね」
ネイド様は魚を叩いていますが、コツコツという音とともに、冷たそうな表情をしています。どれだけの低温で凍らせたかがよく分かりますね。
ところが、これを見たネイド様は、かなり困った表情をしています。
「こちらに届ける魚の量を考えますと、それだけすべてを一気に凍らせることのできる魔法使いがいなければなりませんね。現在の漁獲高を考えますと、現実的ではないでしょう」
なるほど、それだけの魔法が使える人がいないというわけのようですね。
そうなれば、私の出番というわけです。
「承知致しました。それでは、私のレチェ商会と取引する分だけをすぐに凍らせられる魔道具を作ればよいのです。この手の類は得意ですので、お任せ下さい」
そう、人がいないのなら、代わるものを用意してしまえばいいのです。
なんといっても、私の経営する食堂にはたくさんの魔道具がありますからね。
私がにこにこと宣言していますが、ネイド様は驚いて固まっていますし、ミサエラさんは顔を押さえながら悩ましい表情をしています。私、何か変なことを言いましたでしょうか。
「まあ、好きにおやりなさい。ただし、国王陛下には全部報告しますからね」
「ううっ。できれば勘弁してほしいですけれど……。王命ですものね、仕方ありませんか」
ジト目を向けられまして、私は勢いよく立ち上がったわりに、しょぼくれながら椅子に座り直したのでした。
そんなこんなで、今回の取引は完了いたしました。
ネイド様は本日泊まられていくということですので、せっかくですので、夕食は私の食堂へとご招待いたしました。
それはとてもおいしそうに食べられている姿が印象的でしたね。
魚のフライは意外だったのか、とても驚いておられるようでした。油がなければ、揚げ物の文化がありませんものね。大量に使いますし。
翌日の出発の際には、私のお店のパンを持たせておきます。
「レイチェルさんの発想は面白いですね。これからの取引も実に楽しみですよ」
「はい。冷凍魔道具もですけれど、海産物がこれだけ手に入りましたので、新しい料理を頑張って開発して参りますよ」
「ええ、応援しております」
私たちはがっちりと握手をします。
その後、マソルへと戻っていかれるネイド様をしっかりと見送らせて頂きました。
私には当面の新しい目標ができました。
海鮮料理を広めるためにも、ここは一肌脱がせて頂きますよ。
何かと思いまして訪れますと、またマソルの商業ギルドマスターであるネイド様がいらしていました。
「やあ、レイチェルさん。お久しぶりですね」
「お久しぶりでございます、ネイド様」
私はなぜかカーテシーをしてしまいます。
いけませんね。貴族令嬢としての癖がなかなか抜けません。ミサエラさんは困った顔をしていますし、ネイド様は笑っていらっしゃいます。
「それで、本日はどのようなご用件でしょうか」
私はひとまず本題に切り込みます。これが一番重要ですからね。
ネイド様と話をしようとしますと、ミサエラさんから座るように言われます。なので、対面に座ります。
ネイド様はかばんを出してきましたので、どうやら、今回も取引のようです。
……困りましたね。二回目の取引をいつにするか決めていなかったせいで、私の方は準備ができておりません。どういたしましょうか。
少し慌ててしまいますが、お二人から落ち着くように言われてしまいます。私は深呼吸をします。
「今回は金銭だけで構いませんよ。事情はお聞きしました。大変なことになっていたようですね」
「はい。自業自得ですので、反省をしております」
ネイド様から同情の声をかけられてしまいます。
まったく、私ときたら、いろいろ軽率なことをしてしまってますね。公爵令嬢としてしっかり反省せねばなりません。……できますでしょうか。
気持ちを入れ替えようとしますが、自分で言っててものすごく不安になってきます。今までの自分のやらかしを振り返れば、無理もないですね。
私がため息をついていますと、ミサエラさんとネイド様が笑っている姿が目に入ります。やっぱりそうなのですね。
反省することばかりですが、ここはひとつ提案を出すべきでしょうね。
かばんの中を確認しますと、やはり生のお魚が入っています。
「ネイド様、おひとつよろしいでしょうか」
「はい、何でしょうか」
私が声をかけますと、ネイド様がじっと見てきます。
「私のところに送ってくるお魚ですけれど、凍らせていただくことはできませんか?」
「魚を、凍らせる、ですか?」
なんとも不思議そうな顔をしています。
「はい。獲れたてをカチコチに凍らせてほしいのです。鮮度を保つためですね」
「ふむふむ、なるほど」
私の言葉に、ネイド様は理解をしていらっしゃるようですね。さすが商業ギルドのマスターです。
ですが、言葉だけでは伝わらないだろうと、私はかばんから一匹の魚を取り出します。
机の上に置いて、すぐさま私は魔法を使います。
「ラ・ズミ・コル」
コルはコールドでも凍るでも、どのように取っていただいて構いません。ともかく、私は魚をすぐに凍らせました。
あっという間に冷凍の魚が、机の上に出現です。
「これは、見事に凍ってしまっていますね」
ネイド様は魚を叩いていますが、コツコツという音とともに、冷たそうな表情をしています。どれだけの低温で凍らせたかがよく分かりますね。
ところが、これを見たネイド様は、かなり困った表情をしています。
「こちらに届ける魚の量を考えますと、それだけすべてを一気に凍らせることのできる魔法使いがいなければなりませんね。現在の漁獲高を考えますと、現実的ではないでしょう」
なるほど、それだけの魔法が使える人がいないというわけのようですね。
そうなれば、私の出番というわけです。
「承知致しました。それでは、私のレチェ商会と取引する分だけをすぐに凍らせられる魔道具を作ればよいのです。この手の類は得意ですので、お任せ下さい」
そう、人がいないのなら、代わるものを用意してしまえばいいのです。
なんといっても、私の経営する食堂にはたくさんの魔道具がありますからね。
私がにこにこと宣言していますが、ネイド様は驚いて固まっていますし、ミサエラさんは顔を押さえながら悩ましい表情をしています。私、何か変なことを言いましたでしょうか。
「まあ、好きにおやりなさい。ただし、国王陛下には全部報告しますからね」
「ううっ。できれば勘弁してほしいですけれど……。王命ですものね、仕方ありませんか」
ジト目を向けられまして、私は勢いよく立ち上がったわりに、しょぼくれながら椅子に座り直したのでした。
そんなこんなで、今回の取引は完了いたしました。
ネイド様は本日泊まられていくということですので、せっかくですので、夕食は私の食堂へとご招待いたしました。
それはとてもおいしそうに食べられている姿が印象的でしたね。
魚のフライは意外だったのか、とても驚いておられるようでした。油がなければ、揚げ物の文化がありませんものね。大量に使いますし。
翌日の出発の際には、私のお店のパンを持たせておきます。
「レイチェルさんの発想は面白いですね。これからの取引も実に楽しみですよ」
「はい。冷凍魔道具もですけれど、海産物がこれだけ手に入りましたので、新しい料理を頑張って開発して参りますよ」
「ええ、応援しております」
私たちはがっちりと握手をします。
その後、マソルへと戻っていかれるネイド様をしっかりと見送らせて頂きました。
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