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第29話 ラッシュバードのいる生活
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「あははは、可愛いですね」
アマリス様が笑っていらっしゃいます。
ラッシュバードのヒナが無事にかえりまして、私とアマリス様はかえったばかりのヒナを抱きかかえています。もちろん、べたべたは魔法できれいに取り除きましたよ。そのままでは触れませんからね。
「すっかり懐かれてしまっていますね、お二方とも」
「はい、鳥類に多く見られる刷り込みという現象です。生まれて最初に見た動くものを親として認識するというものですね」
「そのようなことがあるのですね。ラッシュバードは人に懐かない魔物で有名ですが、このような方法があるとは思いませんでした」
私たちの姿に、イリスもハンナも驚きを隠せない様子です。
ちなみにですが、私たちに懐くラッシュバードたちは、ちょうどオスメスが一羽ずつになっています。もちろん鑑定魔法にかけてそうなるように仕向けたのですが、狙い通りになるとつい笑ってしまいますね。
これで成鳥となって繁殖の時期を迎えると、無事に増やすことができそうです。
問題があるとすれば、アマリス様に懐かれた二羽の方でしょうね。このままですとアマリス様と一緒に城に戻ることになりますから、いろいろとお世話が大変そうです。せめて、ハンナにだけでも懐かせておきませんとね。
「ハンナも抱えてみますか?」
私がいろいろと気になっている中、アマリス様がハンナに自分の抱えているラッシュバードを抱かせようとしています。これはナイスです。
「よ、よろしいのでしょうか」
「はい、私が学園に通う様になれば、世話を任せることになるかもしれませんからね。もしこの子たちが私についてくれば、そうなる可能性が高いんです」
「畏まりました。それでは、失礼致します」
ハンナはおそるおそるラッシュバードのヒナをアマリス様から受け取ります。
まだ小さなヒナとあってか、思った以上におとなしいですね。
抱きかかえたハンナの顔が一瞬で緩んでいますね。
「これが魔物だなんて、信じられませんね」
「はい、本当にです」
私たちがラッシュバードに構っていると、ノームたちがやって来る。
『無事にかえったようだね』
『餌なら僕たちに任せる』
餌、そういえば忘れていました。
小さい頃は地中の虫なんかを食べるんでしたっけか。どうにも記憶が曖昧過ぎてはっきりとは分かりませんね。
『小さな虫で合ってる。土の中は僕たちの領域、任せるー』
言うことだけ言うと、ノームたちはさっさと部屋から出て行ってしまいました。まったく、慌ただしいですね。
ふっとため息をついた私は、じっと見つめる視線に気が付きます。
「イリス?」
「はっ! な、なんでしょうか、レチェ様」
私が声をかけると、慌てたように姿勢を正していますね。
そのおかげで、何を考えていたのか、手に取るように分かりますよ。自分も抱きたいのですよね、そうですよね?
「イリスもどうですか?」
「よ、よろしいのでしょうか」
「はい、どうぞ」
「そ、それでは抱かせて頂きます」
私がそっと手渡すと、イリスはおそるおそる受け取っています。
「可愛い……」
イリスの顔も、いつにもなく緩みきっていますね。
魔物であっても、子どもなら可愛いのですよ。
さて、この子たちですけれど、どのくらいで成鳥になるのでしょうかね。
普通のダチョウと同じだとするならば、大きくなるのはそう時間がかからないでしょうが、繁殖はまだまだ先になります。
まあ、この子たちは魔物なので同じと考えてはいけないのでしょうが、参考にはできます。
アマリス様が王都に戻られるまではまだ五か月ほどの日数がありますから、その時のことはその時に考えましょう。
勉強を教える時になったら、私かイリスかハンナの誰かが面倒を見るようにすればいいでしょうね。
ギルバートですか?
彼でしたら、ラッシュバードのヒナたちから嫌われたようですので、近寄らせないことに決まりましたよ。
巣の襲撃を受けた時は卵だったというのに、分かっているみたいです。これも動物の神秘というものでしょうか。
「さて、将来的には私たちから離さなければなりませんから、今から小屋の改良をしてきましょう」
「何をなさるおつもりですか、お姉様」
私が小屋から出て行こうとすると、アマリス様に呼び止められます。
くるりと振り返った私は、笑顔でにっこりと微笑みます。
「この子たちが将来的に住むことになる小屋に、寝床となる小部屋を作ってくるんです」
「見せて頂いてもよろしいですか?」
「もちろんですよ。ヒナたちも連れて行きましょう」
私たちは小屋を出て、建てたばかりの鳥小屋へと移動していきます。
ここには囲いだけのスペースと私たち用の屋根付きの作業スペースだけしかありません。すっかり寝床のことを忘れていたんですよ。
それで、今思い出して追加しに来たというわけです。
「ここら辺でいいでしょうか」
私は私たちの作業用スペースの横に寝床用のスペースをあっという間に作り上げます。
魔法を使えば一瞬ですからね。すっごく便利ですよ。
「お姉様の魔法って、本当にすごいですね。普通はこんな一瞬で完成しませんよ……」
「これを見せられると、理由は分かっていても落ちた現実に納得できませんね……」
アマリス様もハンナも呆れていました。
とにもかくにも、こうして私たちとラッシュバードの生活が始まったのです。
アマリス様が笑っていらっしゃいます。
ラッシュバードのヒナが無事にかえりまして、私とアマリス様はかえったばかりのヒナを抱きかかえています。もちろん、べたべたは魔法できれいに取り除きましたよ。そのままでは触れませんからね。
「すっかり懐かれてしまっていますね、お二方とも」
「はい、鳥類に多く見られる刷り込みという現象です。生まれて最初に見た動くものを親として認識するというものですね」
「そのようなことがあるのですね。ラッシュバードは人に懐かない魔物で有名ですが、このような方法があるとは思いませんでした」
私たちの姿に、イリスもハンナも驚きを隠せない様子です。
ちなみにですが、私たちに懐くラッシュバードたちは、ちょうどオスメスが一羽ずつになっています。もちろん鑑定魔法にかけてそうなるように仕向けたのですが、狙い通りになるとつい笑ってしまいますね。
これで成鳥となって繁殖の時期を迎えると、無事に増やすことができそうです。
問題があるとすれば、アマリス様に懐かれた二羽の方でしょうね。このままですとアマリス様と一緒に城に戻ることになりますから、いろいろとお世話が大変そうです。せめて、ハンナにだけでも懐かせておきませんとね。
「ハンナも抱えてみますか?」
私がいろいろと気になっている中、アマリス様がハンナに自分の抱えているラッシュバードを抱かせようとしています。これはナイスです。
「よ、よろしいのでしょうか」
「はい、私が学園に通う様になれば、世話を任せることになるかもしれませんからね。もしこの子たちが私についてくれば、そうなる可能性が高いんです」
「畏まりました。それでは、失礼致します」
ハンナはおそるおそるラッシュバードのヒナをアマリス様から受け取ります。
まだ小さなヒナとあってか、思った以上におとなしいですね。
抱きかかえたハンナの顔が一瞬で緩んでいますね。
「これが魔物だなんて、信じられませんね」
「はい、本当にです」
私たちがラッシュバードに構っていると、ノームたちがやって来る。
『無事にかえったようだね』
『餌なら僕たちに任せる』
餌、そういえば忘れていました。
小さい頃は地中の虫なんかを食べるんでしたっけか。どうにも記憶が曖昧過ぎてはっきりとは分かりませんね。
『小さな虫で合ってる。土の中は僕たちの領域、任せるー』
言うことだけ言うと、ノームたちはさっさと部屋から出て行ってしまいました。まったく、慌ただしいですね。
ふっとため息をついた私は、じっと見つめる視線に気が付きます。
「イリス?」
「はっ! な、なんでしょうか、レチェ様」
私が声をかけると、慌てたように姿勢を正していますね。
そのおかげで、何を考えていたのか、手に取るように分かりますよ。自分も抱きたいのですよね、そうですよね?
「イリスもどうですか?」
「よ、よろしいのでしょうか」
「はい、どうぞ」
「そ、それでは抱かせて頂きます」
私がそっと手渡すと、イリスはおそるおそる受け取っています。
「可愛い……」
イリスの顔も、いつにもなく緩みきっていますね。
魔物であっても、子どもなら可愛いのですよ。
さて、この子たちですけれど、どのくらいで成鳥になるのでしょうかね。
普通のダチョウと同じだとするならば、大きくなるのはそう時間がかからないでしょうが、繁殖はまだまだ先になります。
まあ、この子たちは魔物なので同じと考えてはいけないのでしょうが、参考にはできます。
アマリス様が王都に戻られるまではまだ五か月ほどの日数がありますから、その時のことはその時に考えましょう。
勉強を教える時になったら、私かイリスかハンナの誰かが面倒を見るようにすればいいでしょうね。
ギルバートですか?
彼でしたら、ラッシュバードのヒナたちから嫌われたようですので、近寄らせないことに決まりましたよ。
巣の襲撃を受けた時は卵だったというのに、分かっているみたいです。これも動物の神秘というものでしょうか。
「さて、将来的には私たちから離さなければなりませんから、今から小屋の改良をしてきましょう」
「何をなさるおつもりですか、お姉様」
私が小屋から出て行こうとすると、アマリス様に呼び止められます。
くるりと振り返った私は、笑顔でにっこりと微笑みます。
「この子たちが将来的に住むことになる小屋に、寝床となる小部屋を作ってくるんです」
「見せて頂いてもよろしいですか?」
「もちろんですよ。ヒナたちも連れて行きましょう」
私たちは小屋を出て、建てたばかりの鳥小屋へと移動していきます。
ここには囲いだけのスペースと私たち用の屋根付きの作業スペースだけしかありません。すっかり寝床のことを忘れていたんですよ。
それで、今思い出して追加しに来たというわけです。
「ここら辺でいいでしょうか」
私は私たちの作業用スペースの横に寝床用のスペースをあっという間に作り上げます。
魔法を使えば一瞬ですからね。すっごく便利ですよ。
「お姉様の魔法って、本当にすごいですね。普通はこんな一瞬で完成しませんよ……」
「これを見せられると、理由は分かっていても落ちた現実に納得できませんね……」
アマリス様もハンナも呆れていました。
とにもかくにも、こうして私たちとラッシュバードの生活が始まったのです。
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