ドラゴニックプラネット

未羊

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第44話 時間操作は危険な香り

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 カチッ!

 妙な音が響くと同時に、周りの世界が止まったのだ。

「こ、これは?」

「うそっ、私の能力ってまさか……」

 クロノが驚いている。

「クロノ、この能力ってまさか」

「今はそれどころじゃないわ。いつまで止まっているか分からないから、早くこっち来てよ、アーツ!」

「お、おう!」

 クロノの叫びに、アーツは恐竜の足元から一目散に脱出する。

「うっ!」

 クロノが苦しんだ瞬間、止まっていた時が動き出した。

「ふぅ~、間一髪……」

 アーツは安心したように喋っているが、まだ危険な状態に変わりはない。

「早くこっち来てよ、アーツ!」

「えっ、アーツ?」

 時が動き出した直後にアーツのいた場所は火に包まれてしまっていたので、レンクスたちは驚いてしまっている。

「詳しい事情は後だ。とにかく穴の中に逃げ込むぞ」

「お、おう!」

 アーツの声に我に返ったレンクスたちは、再び山に開いた横穴に向かって走っていく。
 恐竜たちはその場にいたはずのアーツがいなくなって、どこに行ったとあちこちへときょろきょろとしている。
 間一髪危機を脱したアーツたちは、どうにか山に開いた穴の中へと逃げ込めたのだった。

「ふぅー……、助かったぜ」

「ねえ、一体何があったのよ。なんでアーツは無事なのかしら」

 ブランが怒った様子でアーツを問い詰めている。
 なんで怒っているのか分からないアーツは、困惑しながらもブランを何とか落ち着かせようとしている。

「ブラン、そんな剣幕で詰め寄っては、言いたいことも言えないでしょう。落ち着いたらどうですか」

 ニックにも責められたブランは、ようやく落ち着きを取り戻していた。

「ご、ごめんなさい。無茶をするものだから、つい……」

「なあに、心配が極まってなのは分かっているさ。ただ、ちょっと怖かっただけだ」

 普段がおとなしいブランゆえに、怒った時の怖さといったら想像以上だった。そのため、アーツは怖いと言っているのである。

「でも、どうしてあの状況でアーツは無事だったんだ? 普通ならもうあの場所で真っ黒こげになってるはずだぞ?」

 レンクスが疑問をぶつけている。

「そうよ。どうして無事だったのよ、アーツ。答えてちょうだい」

 ブランは険しい表情を崩さずに、レンクスと一緒にアーツに疑問をぶつけている。まったくあのブランとは思えないくらいの表情である。

「待って待って。それは私が説明するわよ」

 アーツとの間に、クロノが割って入る。
 クロノの登場に二人はびっくりしている。

「あの時、アーツが恐竜たちの火に巻かれそうになった瞬間、私の能力が発動したのよ」

「クロノの能力が?」

 レンクスとブランが同時に首を捻る。

「そういえばそうですね。僕たちとあまり離れていなかったのに、気が付いたら二歩くらいアーツの方に移動していました」

 ニックが口を挟んでいる。
 少女の二歩など、距離にして一メートルちょっとだ。あの状況下ではあまり気が付かない程度の距離だろう。

「よくそんな細かいところ見てるな……」

 レンクスが気持ち悪がっている。

「教えて下さい、クロノ。一体何があったのですか」

 ニックは眼鏡のブリッジを押さえながら、クロノへと強く迫った。

「どうやら、私の能力は回復じゃなくて時間を操る能力だったみたい」

「なんだって!」

 レンクスが大声で叫ぶものだから、クロノはつい体を硬直させてしまう。

「レンクス、声大きすぎ」

 ブランがレンクスを叱ると、レンクスはクロノに対して謝っていた。

「なるほど……。瞬間的に移動したというのは、クロノが時間を止めて、その間に移動したからですか。なんとも不思議ですね」

「ああ、助かったのは事実だ」

 ニックとアーツが話をしながら一度頷いている。

「でも、マザーからあの話を聞いた後で時間を操る能力だったなんて知りたくなかった。使い続ければ、よぼよぼのおばあちゃんになって死んじゃうってことだよね?」

 クロノは自分の両手を見ながら体を震わせている。
 能力が判明したのはいいが、いかんせんタイミングが悪すぎた。
 地下で眠っていたマザーコンピュータから、時を戻そうとした人物が一気に老化して死んでしまったという話を聞いてしまったからだ。

「あの話からすると、時を戻すという行為は、自分の時間を他者に分け与えるということなのでしょうね。だから、時を戻そうとした人物はその分の自分の時間が進んでしまい、老衰してしまったのでしょう」

「なるほどなぁ……。時間を操るっていうのは、それだけ特殊な能力ってことか」

「おそらくは」

 ニックの推測で間違いないと思われる、

「ってことは、時間を進めてしまえば、逆に若返るってわけか?」

「いや、それもそれで危険でしょう。やりすぎると赤ん坊よりも前に戻って消滅する可能性だってあるんですから」

「あ、そっか……」

 アーツがもしかしてと挙げた内容は、ニックによってあっさりと斬り捨てられてしまった。
 時間が進み過ぎて死んでしまったのなら、戻りすぎて消滅も十分ありえるのである。

「とりあえず、クロノの能力は慎重に使った方がいいようですね。今のところ影響は出ていないようですが」

「わ、分かったわ。むやみに使わないわ」

 クロノはぐっと拳を握りしめたのだった。

「それでは、マザーの言っていたもうひとつの調査と参りましょうか」

 ニックの言葉によって、この山に隠された航宙船を見つけ出す調査が始まったのだった。
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