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第34話 部下にからかわれる元魔王
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乗馬の初体験をした翌日のこと、アリエスには異変が襲い掛かっていた。
「あたたた……。今さらなんで体が痛いのですか……」
ベッドから起き上がるのも一苦労といったところだった。
「やれやれ、筋肉痛ですな。昨日の間は楽しい気持ちが続いていて平気だったのでしょうが、眠ったことで気持ちが切れて、今さらながらに痛みが襲ってきたのでしょう」
育ての親である牧師は、アリエスにそう説明している。
牧師の説明を聞いて、アリエスはショックを隠し切れなかった。
馬にあの程度乗っただけで、全身が痛くて立ち上がれなくなったことにショックを受けているのだ。
(この俺が、筋肉痛だと? そんなもの、一度も体験したことがないというのに!)
内なる魔王は白目をむきそうな勢いだった。
「心配しなくてもよろしいですよ。アリエス様の魔法を使えば、この程度の痛みなど消し去れますからね。ただし、これは本格的に体を鍛えねばなりませんね。司祭様に本気で掛け合ってみますよ」
「は、はい。よろしくお願いしますね……」
動こうとするたびに痛みに襲われて、アリエスは魔法に対してあまり集中できずにいた。
なにせ、身体強化の魔法を使って暴れた時だってなんともなかったのだから、今の状況がどれだけ衝撃的なのかは計り知れない。
いくつもの状況が重なって、アリエスは痛みを消す魔法を使うことができず、結局育ての親である牧師の魔法でなんとか動けるようになったのだった。
―――
「というわけです。サハー、私を鍛えなさい」
「何がというわけなんですか。間を端折り過ぎですよ、アリエス様」
お祈りの時間が終わったアリエスは、司祭の許可が下りたこともあって、サハーに鍛えてもらうことにしたようだった。
だが、経緯をすっ飛ばして頼みこんできただけに、サハーはいまいち事情がのみ込めずにいるようだった。
「いいですか、笑わないで下さいね?」
あまりにも理解の悪いサハーに対し、アリエスは事情を話すことにした。
自分としては情けなさすぎる話なので、アリエスはこのような前置きをしている。
サハーはごくりと息をのんで、アリエスから告げられる事情というものに身構えている。
「実はですね。昨日の乗馬の影響が今朝出てきまして、体中が痛くて起きれなかったのです」
「へ?」
サハーの元々丸い目がさらに丸くなっていた。
「いやいや、何の冗談ですか? アリエス様ともあろう方が、筋肉痛でございますか?」
サハーは混乱している。
なにせ、魔王軍に所属していた時には、サハーはアリエスの前世である魔王によって鍛えられていたのだから。
その屈強たる魔王であった人物が、馬に乗ったくらいで筋肉痛を起こしていたのだ。それは混乱するというものである。
「と、とにかく。今の私の体はとても貧弱なのです。これでは聖女としての務めが果たせません。ですから、あなたに命じます。私を鍛えなさい」
アリエスは両足を肩幅に開き、両手を腰に当て、胸を大きく張って、大きく目を見開いた状態でサハーに命令している。
やれやれと思いつつも、アリエスは自分の尊敬する魔王様だった人物だ。
サハーはアリエスの命令を聞き届けることにした。
「分かりました。でも、人間の鍛え方がよく分かりませんからね。とりあえず、魔王様から言い渡されて実践していたことの規模を弱めればいいのですかね」
「……耐えられる気がしませんが、まあいいでしょう。あの時とは立場が逆になりましたが、頼みますよ、サハー」
「合点ですよ、まお……じゃなかったアリエス様」
気合十分に、アリエスはサハーの特訓に臨む。
だが、ものの数分もしないうちに、アリエスは限界を迎えていた。
「だ、ダメですね……。この体、貧弱すぎます」
「根本的に体力がなさすぎますね。これじゃ、教会の建物の周りを走るこむところから始めませんとね。筋肉をつけようにも体力からですな」
「うう、情けないかぎりです」
アリエスはショックを隠し切れなかった。
「アリエス様、とりあえず、教会の敷地内の建物の周りを二周しましょう。一周走ったら、折り返して一周です」
「分かりました。そのくらいやってみせますよ」
アリエスはトータルで二周、なんとか走り切っていた。
「お疲れ様です、アリエス様。しかし、こんなんでよくカプリナっていうこととの合同練習を乗り越えてこれましたね」
「ちょっと、ずるをしてましたからね。聖女として情けないところを見せるわけにはいきませんから」
「そういう見栄っ張りなところは、やっぱりアリエス様ですね」
アリエスの態度を見ていて、サハーは懐かしく感じたのか両腕を組んで笑っている。
その姿を見て、アリエスは不機嫌そうに頬を膨らませている。やはり、かつての部下に笑われるのは耐えられないようだ。
「み、見てなさいよ。魔法なしでもサハーのことを倒せるようになってあげるんですからね」
「それは楽しみでございますね」
両手を下に思いっきり突き出して肩ひじを張るアリエスに対して、サハーは余裕の表情だった。それがさらにアリエスの怒りを買っているようだった。
そんなこんなで始まったアリエスの体力づくり。はたしてまともに続けられるのだろうか……。
「あたたた……。今さらなんで体が痛いのですか……」
ベッドから起き上がるのも一苦労といったところだった。
「やれやれ、筋肉痛ですな。昨日の間は楽しい気持ちが続いていて平気だったのでしょうが、眠ったことで気持ちが切れて、今さらながらに痛みが襲ってきたのでしょう」
育ての親である牧師は、アリエスにそう説明している。
牧師の説明を聞いて、アリエスはショックを隠し切れなかった。
馬にあの程度乗っただけで、全身が痛くて立ち上がれなくなったことにショックを受けているのだ。
(この俺が、筋肉痛だと? そんなもの、一度も体験したことがないというのに!)
内なる魔王は白目をむきそうな勢いだった。
「心配しなくてもよろしいですよ。アリエス様の魔法を使えば、この程度の痛みなど消し去れますからね。ただし、これは本格的に体を鍛えねばなりませんね。司祭様に本気で掛け合ってみますよ」
「は、はい。よろしくお願いしますね……」
動こうとするたびに痛みに襲われて、アリエスは魔法に対してあまり集中できずにいた。
なにせ、身体強化の魔法を使って暴れた時だってなんともなかったのだから、今の状況がどれだけ衝撃的なのかは計り知れない。
いくつもの状況が重なって、アリエスは痛みを消す魔法を使うことができず、結局育ての親である牧師の魔法でなんとか動けるようになったのだった。
―――
「というわけです。サハー、私を鍛えなさい」
「何がというわけなんですか。間を端折り過ぎですよ、アリエス様」
お祈りの時間が終わったアリエスは、司祭の許可が下りたこともあって、サハーに鍛えてもらうことにしたようだった。
だが、経緯をすっ飛ばして頼みこんできただけに、サハーはいまいち事情がのみ込めずにいるようだった。
「いいですか、笑わないで下さいね?」
あまりにも理解の悪いサハーに対し、アリエスは事情を話すことにした。
自分としては情けなさすぎる話なので、アリエスはこのような前置きをしている。
サハーはごくりと息をのんで、アリエスから告げられる事情というものに身構えている。
「実はですね。昨日の乗馬の影響が今朝出てきまして、体中が痛くて起きれなかったのです」
「へ?」
サハーの元々丸い目がさらに丸くなっていた。
「いやいや、何の冗談ですか? アリエス様ともあろう方が、筋肉痛でございますか?」
サハーは混乱している。
なにせ、魔王軍に所属していた時には、サハーはアリエスの前世である魔王によって鍛えられていたのだから。
その屈強たる魔王であった人物が、馬に乗ったくらいで筋肉痛を起こしていたのだ。それは混乱するというものである。
「と、とにかく。今の私の体はとても貧弱なのです。これでは聖女としての務めが果たせません。ですから、あなたに命じます。私を鍛えなさい」
アリエスは両足を肩幅に開き、両手を腰に当て、胸を大きく張って、大きく目を見開いた状態でサハーに命令している。
やれやれと思いつつも、アリエスは自分の尊敬する魔王様だった人物だ。
サハーはアリエスの命令を聞き届けることにした。
「分かりました。でも、人間の鍛え方がよく分かりませんからね。とりあえず、魔王様から言い渡されて実践していたことの規模を弱めればいいのですかね」
「……耐えられる気がしませんが、まあいいでしょう。あの時とは立場が逆になりましたが、頼みますよ、サハー」
「合点ですよ、まお……じゃなかったアリエス様」
気合十分に、アリエスはサハーの特訓に臨む。
だが、ものの数分もしないうちに、アリエスは限界を迎えていた。
「だ、ダメですね……。この体、貧弱すぎます」
「根本的に体力がなさすぎますね。これじゃ、教会の建物の周りを走るこむところから始めませんとね。筋肉をつけようにも体力からですな」
「うう、情けないかぎりです」
アリエスはショックを隠し切れなかった。
「アリエス様、とりあえず、教会の敷地内の建物の周りを二周しましょう。一周走ったら、折り返して一周です」
「分かりました。そのくらいやってみせますよ」
アリエスはトータルで二周、なんとか走り切っていた。
「お疲れ様です、アリエス様。しかし、こんなんでよくカプリナっていうこととの合同練習を乗り越えてこれましたね」
「ちょっと、ずるをしてましたからね。聖女として情けないところを見せるわけにはいきませんから」
「そういう見栄っ張りなところは、やっぱりアリエス様ですね」
アリエスの態度を見ていて、サハーは懐かしく感じたのか両腕を組んで笑っている。
その姿を見て、アリエスは不機嫌そうに頬を膨らませている。やはり、かつての部下に笑われるのは耐えられないようだ。
「み、見てなさいよ。魔法なしでもサハーのことを倒せるようになってあげるんですからね」
「それは楽しみでございますね」
両手を下に思いっきり突き出して肩ひじを張るアリエスに対して、サハーは余裕の表情だった。それがさらにアリエスの怒りを買っているようだった。
そんなこんなで始まったアリエスの体力づくり。はたしてまともに続けられるのだろうか……。
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