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第123話 懐かしき魔王城と元魔王
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魔王城。
それは、代々の魔王が住みし、魔族たちの拠点である。
周囲には濃い瘴気が漂い、普通の人間であればその場で立っていることもかなわないような場所である。
「さあ、見えてきましたよ。あれが、かつての私の居城でした魔王城です」
目の前には、実に禍々しいまでの雰囲気を放つ城が建っている。
周囲をどす黒い植物のつたに覆われた近寄りがたい雰囲気を持った城、それが魔王城なのである。
「アリエス様が、あそこで暮らしていた魔王だなんて、この状況になっても信じられません」
「それはそうでしょう。でも、私の方から言わせていただきますと、自分が聖女であることの方が信じられないのです」
「それにしても、元魔王だからというのに、立ち振る舞いや言葉遣いは聖女らしくなっていますね。どういうことなのでしょうか」
「ふふっ、私の努力の結果なのですよ。魔族でも環境によって変わることはあるんですからね」
カプリナやヴァコルの質問に、アリエスはそれぞれ答えている。
「やれやれ。魔王城に聖女が足を踏み入れるなど、実に十三年ぶりでしょうかね。あの時に私は城にはいませんでしたが、相当な激戦が繰り広げられたと聞き及んでおります」
ピスケースがアリエスに話しかけている。
「そうですね。それはとても凄惨な戦いでしたよ。当時のキャサリーン様はまだ未熟な聖女でしたが、魔法に関してはそれは恐ろしい方でよっつほどのバフを同時に展開して、兵士たちを強化しておりました」
「よっつ……。このボクですらもみっつまでが限界だというのに、それ以上の魔法を同時に行使していたのですか。さすがは世界最強の聖女と呼ばれるだけはありますね」
「まったくです。今となっては、私が負けたのも納得がいくというものですよ」
当時を思い出しながら、アリエスはすっと目を閉じていた。
だが、すぐに目を見開くと、決意を固めたような凛々しい表情になる。
「さあ、今は城に入り、中の者たちにラースとディサイトという、魔王軍を牛耳っていた者たちがいなくなったことを伝えませんと。ラースによる圧政に苦しんでいた者も多いことです。きっと、喜ぶことでしょう」
「おーっ!」
アリエスの言葉に、一緒に行動している魔族たちが声を上げている。
満足そうに微笑むアリエスだが、一緒にペガサスに乗せている魔族の兄妹のことが気になっているようだ。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ。俺たちも……俺たちのような弱い魔族でも一緒に暮らすことができるのかと考えてたんです」
アリエスが尋ねると、兄の方が素直に答えていた。
さすがに元魔王ということを知った状況では、隠し事をするほどの勇気はないらしい。
「無理に魔王城で暮らさなくてもいいのですよ。なんでしたら、ゾディアーク伯爵領で暮らせばいいのです。カプリナ様のところにはスラリーがいますし、ライラのところで一緒に過ごしてもいいですし、選択肢は多いですからね」
アリエスはにこやかに兄妹に話しかけている。
しかし、なかなか心が決まらないのか、二人からの回答はなかった。
「まだ時間はあります。心が決まりましたら、私に仰って下さい。伯爵様も教会も説得してみせますから」
「わ、分かりました」
アリエスの優しい心遣いに、とても戸惑っているようだった。
アリエスたちが城門に到着すると、城の中に残っていた魔族たちが出迎えていた。
「聖女がいるとはな。しかも、魔族を引き連れているとは……」
一番前にいる魔族が、アリエスの方を見ながら驚いた様子で話している。
さすがにカプリナとヴァコルは身構えるが、アリエスは二人の前に手を差し出して御していた。
「ただいま戻りましたよ、パイシズ。長らく私の留守を任せて申し訳ありませんでした」
アリエスは両手を胸の前で組み、軽く頭を下げながら謝罪をする。
事態の理解できない魔族たちは、そろって驚いたように互いの顔を見合っている。
「やはりこの感じ、あなた様でございましたか。よくお戻りになられました、魔王様」
パイシズがアリエスに跪いている。
「パイシズ、私に跪く必要はありません。本日はあなた方と話があってここまで出向いてきたのです。ラースのせいで数は減ってしまいましたが、無事に戻ってきた彼らをまずは受け入れてもらえますでしょうか」
「そのくらいお安い御用ですぞ。ピスケース、お前が面倒を見てくれ」
「分かりました、父上。さあ、みんな、城に入って休むぞ」
パイシズの指示に従い、ピスケースは連れてきた魔族たちを連れて城の中へと入っていく。残っていた魔族たちも、同胞との再会に喜んでいたようだ。
その場には、パイシズとアリエスたちだけが残る。
「さて、パイシズ、魔王の執務室でお話しましょうか」
「はっ。では、私自らがご案内致しましょう。魔王様のご友人方、こちらは手を出しませんゆえ、おとなしくついてきて下さい」
パイシズの視線に、カプリナは少し怯えているようだった。ヴァコルはさすがに耐えてはいたが、パイシズがどのくらいの実力者かということ身をもって知ったようである。
(実に懐かしいな。またここに足を踏み入れることになろうとはな……)
聖女キャサリーン率いる兵士たちとの戦いで命を落とした魔王。聖女に生まれ変わってやってきた魔王城に、つい涙を浮かべて感動してしまうのだった。
それは、代々の魔王が住みし、魔族たちの拠点である。
周囲には濃い瘴気が漂い、普通の人間であればその場で立っていることもかなわないような場所である。
「さあ、見えてきましたよ。あれが、かつての私の居城でした魔王城です」
目の前には、実に禍々しいまでの雰囲気を放つ城が建っている。
周囲をどす黒い植物のつたに覆われた近寄りがたい雰囲気を持った城、それが魔王城なのである。
「アリエス様が、あそこで暮らしていた魔王だなんて、この状況になっても信じられません」
「それはそうでしょう。でも、私の方から言わせていただきますと、自分が聖女であることの方が信じられないのです」
「それにしても、元魔王だからというのに、立ち振る舞いや言葉遣いは聖女らしくなっていますね。どういうことなのでしょうか」
「ふふっ、私の努力の結果なのですよ。魔族でも環境によって変わることはあるんですからね」
カプリナやヴァコルの質問に、アリエスはそれぞれ答えている。
「やれやれ。魔王城に聖女が足を踏み入れるなど、実に十三年ぶりでしょうかね。あの時に私は城にはいませんでしたが、相当な激戦が繰り広げられたと聞き及んでおります」
ピスケースがアリエスに話しかけている。
「そうですね。それはとても凄惨な戦いでしたよ。当時のキャサリーン様はまだ未熟な聖女でしたが、魔法に関してはそれは恐ろしい方でよっつほどのバフを同時に展開して、兵士たちを強化しておりました」
「よっつ……。このボクですらもみっつまでが限界だというのに、それ以上の魔法を同時に行使していたのですか。さすがは世界最強の聖女と呼ばれるだけはありますね」
「まったくです。今となっては、私が負けたのも納得がいくというものですよ」
当時を思い出しながら、アリエスはすっと目を閉じていた。
だが、すぐに目を見開くと、決意を固めたような凛々しい表情になる。
「さあ、今は城に入り、中の者たちにラースとディサイトという、魔王軍を牛耳っていた者たちがいなくなったことを伝えませんと。ラースによる圧政に苦しんでいた者も多いことです。きっと、喜ぶことでしょう」
「おーっ!」
アリエスの言葉に、一緒に行動している魔族たちが声を上げている。
満足そうに微笑むアリエスだが、一緒にペガサスに乗せている魔族の兄妹のことが気になっているようだ。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ。俺たちも……俺たちのような弱い魔族でも一緒に暮らすことができるのかと考えてたんです」
アリエスが尋ねると、兄の方が素直に答えていた。
さすがに元魔王ということを知った状況では、隠し事をするほどの勇気はないらしい。
「無理に魔王城で暮らさなくてもいいのですよ。なんでしたら、ゾディアーク伯爵領で暮らせばいいのです。カプリナ様のところにはスラリーがいますし、ライラのところで一緒に過ごしてもいいですし、選択肢は多いですからね」
アリエスはにこやかに兄妹に話しかけている。
しかし、なかなか心が決まらないのか、二人からの回答はなかった。
「まだ時間はあります。心が決まりましたら、私に仰って下さい。伯爵様も教会も説得してみせますから」
「わ、分かりました」
アリエスの優しい心遣いに、とても戸惑っているようだった。
アリエスたちが城門に到着すると、城の中に残っていた魔族たちが出迎えていた。
「聖女がいるとはな。しかも、魔族を引き連れているとは……」
一番前にいる魔族が、アリエスの方を見ながら驚いた様子で話している。
さすがにカプリナとヴァコルは身構えるが、アリエスは二人の前に手を差し出して御していた。
「ただいま戻りましたよ、パイシズ。長らく私の留守を任せて申し訳ありませんでした」
アリエスは両手を胸の前で組み、軽く頭を下げながら謝罪をする。
事態の理解できない魔族たちは、そろって驚いたように互いの顔を見合っている。
「やはりこの感じ、あなた様でございましたか。よくお戻りになられました、魔王様」
パイシズがアリエスに跪いている。
「パイシズ、私に跪く必要はありません。本日はあなた方と話があってここまで出向いてきたのです。ラースのせいで数は減ってしまいましたが、無事に戻ってきた彼らをまずは受け入れてもらえますでしょうか」
「そのくらいお安い御用ですぞ。ピスケース、お前が面倒を見てくれ」
「分かりました、父上。さあ、みんな、城に入って休むぞ」
パイシズの指示に従い、ピスケースは連れてきた魔族たちを連れて城の中へと入っていく。残っていた魔族たちも、同胞との再会に喜んでいたようだ。
その場には、パイシズとアリエスたちだけが残る。
「さて、パイシズ、魔王の執務室でお話しましょうか」
「はっ。では、私自らがご案内致しましょう。魔王様のご友人方、こちらは手を出しませんゆえ、おとなしくついてきて下さい」
パイシズの視線に、カプリナは少し怯えているようだった。ヴァコルはさすがに耐えてはいたが、パイシズがどのくらいの実力者かということ身をもって知ったようである。
(実に懐かしいな。またここに足を踏み入れることになろうとはな……)
聖女キャサリーン率いる兵士たちとの戦いで命を落とした魔王。聖女に生まれ変わってやってきた魔王城に、つい涙を浮かべて感動してしまうのだった。
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