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第125話 かつての自分の部屋を見せる元魔王
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アリエスは大きなため息をつきながら、部屋の扉を開ける。
実に十三年ぶりとなる、かつての自分が住んでいた部屋だ。
当時のままに保管してあるということなので、かつての自分のことをみんなに知られてしまう。アリエスは扉を開けることを思わず躊躇してしまう。
「アリエス様?」
カプリナの声に、思わずドキッとしてしまう。
「あははは……。魔王時代の自分の部屋ですのですね、自分でも緊張してしまうのです。魔族のみなさんは知っていますが黙ってくれていました。……私が覚悟を決めなければいけませんね」
照れ笑いをしながらも、アリエスは覚悟を決めたようだ。
扉に手をかけて、ゆっくりと自分の部屋への続く障害を開いていく。
部屋の中は、意外にもきちんと整理整頓のされたきれいな部屋だった。
アリエスは魔王時代から几帳面だったのである。
「これが魔王の部屋なのですか? もっとこう、ドクロのひとつやふたつはあるかと思ったのですが」
「わ、私を何だと思っているんですか。仲良しこよしというわけではありませんが、私は魔族全体を家族だと思っていますから、そんなドクロを飾るなんていう恐ろしい真似はできませんよ。ヴァコル様ってばひどい偏見ですね」
アリエスは本気でヴァコルに対して怒っているようだった。
「私もそうだと思っていたんですけれど、アリエス様が元いらした部屋だというのなら、納得がいくというものです」
カプリナは、今のアリエスの状態から無理やり納得しているようだった。
やはり、人間たちからすれば魔族というものがどのようなイメージで固まっているのかが、よく分かる証言なのである。
「私も確かに、力で魔王の座に成り上がった身ではあります。ですが、力で支配するというのは否定しませんが、それだけでは魔王軍をまとめ上げられないと感じていたんですよね」
「そうなのですね。お優しいアリエス様らしい発想だと思います」
ものすごく納得しているカプリナである。
と、その時、カプリナは思わぬものを見つけてしまった。
「うわぁ、可愛いですね。これはなんですか?」
「カプリナ様、それに触らないで下さい」
「えっ?」
カプリナが部屋の中にあったぬいぐるみのようなものに触れようとしていたので、アリエスは慌てて止めていた。
「ダメですよ、それは。ニードルラビットのはく製ですが、下手に触れると逆立った毛に串刺しにされてしまいます。ちゃんとした触れ方があるんですよ」
アリエスが説明をすると、カプリナは慌てて手を引っ込めていた。
「このニードルラビットは、私の初めての友だちでもありました。ですが、まだ弱かった私の身代わりとなって、人間たちの手により命を落としたのです。私が魔王となるための一歩を歩み出した、すべての原点なのです」
アリエスはニードルラビットの耳を撫でながら話をしている。
魔王になる前のアリエスの話から察するに、相当昔の話だろう。その時に死んだ魔物が、当時の形のまま残っているとは、とても信じがたい話である。
「アリエス様にそのような過去があったのですね……」
「しかし、そのような昔の魔物が、いまだにこうやってしっかりとした形で残っているとは……。ボクですらも不可能な魔法を使っているとは驚きですね」
「私も、なぜ使えたのかは分かりませんけれどね。おそらく、その時の私の複雑な感情が、そのようなことを可能にしたのでしょう。多分、今の私が再現しようとしても不可能だと思いますよ」
ヴァコルの話に、アリエスは優しい笑顔を浮かべて話をしている。
部屋の中を見回していると、アリエスがなぜ魔王でありながらも聖女へと転生したのかという理由がなんとなく分かってくる。
「その辺りのソファーに腰掛けておいて下さい。私は寝床の準備をさせていただきますから」
アリエスはそう言うと、壁際にある箪笥の上にニードルラビットのはく製を置いて、ベッドの準備を始める。
魔王らしく天蓋のあるベッドではあるものの、飾り気は少なく禍々しさもきらびやかさもない。
「この部屋、魔族の中でも入ったことのある方は少ないのですよ。それこそパイシズや使用人の一部だけです。たいていは隣にある執務室か謁見の間でお会いしますからね」
ベッドメイキングをしながら、アリエスは自分の過去話をしている。
「っと、さすがにヴァコル様はベッドで一緒に寝るわけにはまいりませんね。ソファーでよろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ。さすがにあなた方のような幼い女性と同衾するような愚か者ではありませんからね」
ヴァコルは淡々と話をしている。
ところが、ちらりと部屋にあった本棚に目を向けてしまい、思わず目を留めてしまっていた。
「あれは、もしや魔導書ですか?」
「ええ、そうですよ。ですが、魔族の使う魔法ですから、人間のヴァコル様にはどうかと思います。ですが、読むくらいでしたら、いくらでもして頂いて構いませんよ。もちろん、合法的に手に入れたものです。私は奪うのは嫌いですからね」
「それは助かる」
アリエスの言葉に、ヴァコルは目をキラキラと輝かせていた。さすがは王宮魔術師といったところだろう。
しばらく部屋でくつろいでいると、扉が叩かれる。
「魔王様、お食事の支度ができました。人間の口に合うかは分かりませんが、お越し願えますでしょうか」
「分かりました。すぐに参ります」
アリエスが返事をすると、扉の向こうからは呼びに来た使用人が歩き去っていく音が聞こえたきた。
「それでは、カプリナ様、ヴァコル様、食堂に向かいましょうか」
「はい、アリエス様」
ヴァコルは魔導書に集中していたが、さすがに食事をしないとまずいだろうということで、アリエスが無理やり中断させていた。
せっかくの魔導書を楽しんでいたのに邪魔をされたヴァコルは少々不機嫌そうにしていたが、食事とあれば仕方がない。
アリエスたちは、魔王城の中にある食堂へと向かっていくのだった。
実に十三年ぶりとなる、かつての自分が住んでいた部屋だ。
当時のままに保管してあるということなので、かつての自分のことをみんなに知られてしまう。アリエスは扉を開けることを思わず躊躇してしまう。
「アリエス様?」
カプリナの声に、思わずドキッとしてしまう。
「あははは……。魔王時代の自分の部屋ですのですね、自分でも緊張してしまうのです。魔族のみなさんは知っていますが黙ってくれていました。……私が覚悟を決めなければいけませんね」
照れ笑いをしながらも、アリエスは覚悟を決めたようだ。
扉に手をかけて、ゆっくりと自分の部屋への続く障害を開いていく。
部屋の中は、意外にもきちんと整理整頓のされたきれいな部屋だった。
アリエスは魔王時代から几帳面だったのである。
「これが魔王の部屋なのですか? もっとこう、ドクロのひとつやふたつはあるかと思ったのですが」
「わ、私を何だと思っているんですか。仲良しこよしというわけではありませんが、私は魔族全体を家族だと思っていますから、そんなドクロを飾るなんていう恐ろしい真似はできませんよ。ヴァコル様ってばひどい偏見ですね」
アリエスは本気でヴァコルに対して怒っているようだった。
「私もそうだと思っていたんですけれど、アリエス様が元いらした部屋だというのなら、納得がいくというものです」
カプリナは、今のアリエスの状態から無理やり納得しているようだった。
やはり、人間たちからすれば魔族というものがどのようなイメージで固まっているのかが、よく分かる証言なのである。
「私も確かに、力で魔王の座に成り上がった身ではあります。ですが、力で支配するというのは否定しませんが、それだけでは魔王軍をまとめ上げられないと感じていたんですよね」
「そうなのですね。お優しいアリエス様らしい発想だと思います」
ものすごく納得しているカプリナである。
と、その時、カプリナは思わぬものを見つけてしまった。
「うわぁ、可愛いですね。これはなんですか?」
「カプリナ様、それに触らないで下さい」
「えっ?」
カプリナが部屋の中にあったぬいぐるみのようなものに触れようとしていたので、アリエスは慌てて止めていた。
「ダメですよ、それは。ニードルラビットのはく製ですが、下手に触れると逆立った毛に串刺しにされてしまいます。ちゃんとした触れ方があるんですよ」
アリエスが説明をすると、カプリナは慌てて手を引っ込めていた。
「このニードルラビットは、私の初めての友だちでもありました。ですが、まだ弱かった私の身代わりとなって、人間たちの手により命を落としたのです。私が魔王となるための一歩を歩み出した、すべての原点なのです」
アリエスはニードルラビットの耳を撫でながら話をしている。
魔王になる前のアリエスの話から察するに、相当昔の話だろう。その時に死んだ魔物が、当時の形のまま残っているとは、とても信じがたい話である。
「アリエス様にそのような過去があったのですね……」
「しかし、そのような昔の魔物が、いまだにこうやってしっかりとした形で残っているとは……。ボクですらも不可能な魔法を使っているとは驚きですね」
「私も、なぜ使えたのかは分かりませんけれどね。おそらく、その時の私の複雑な感情が、そのようなことを可能にしたのでしょう。多分、今の私が再現しようとしても不可能だと思いますよ」
ヴァコルの話に、アリエスは優しい笑顔を浮かべて話をしている。
部屋の中を見回していると、アリエスがなぜ魔王でありながらも聖女へと転生したのかという理由がなんとなく分かってくる。
「その辺りのソファーに腰掛けておいて下さい。私は寝床の準備をさせていただきますから」
アリエスはそう言うと、壁際にある箪笥の上にニードルラビットのはく製を置いて、ベッドの準備を始める。
魔王らしく天蓋のあるベッドではあるものの、飾り気は少なく禍々しさもきらびやかさもない。
「この部屋、魔族の中でも入ったことのある方は少ないのですよ。それこそパイシズや使用人の一部だけです。たいていは隣にある執務室か謁見の間でお会いしますからね」
ベッドメイキングをしながら、アリエスは自分の過去話をしている。
「っと、さすがにヴァコル様はベッドで一緒に寝るわけにはまいりませんね。ソファーでよろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ。さすがにあなた方のような幼い女性と同衾するような愚か者ではありませんからね」
ヴァコルは淡々と話をしている。
ところが、ちらりと部屋にあった本棚に目を向けてしまい、思わず目を留めてしまっていた。
「あれは、もしや魔導書ですか?」
「ええ、そうですよ。ですが、魔族の使う魔法ですから、人間のヴァコル様にはどうかと思います。ですが、読むくらいでしたら、いくらでもして頂いて構いませんよ。もちろん、合法的に手に入れたものです。私は奪うのは嫌いですからね」
「それは助かる」
アリエスの言葉に、ヴァコルは目をキラキラと輝かせていた。さすがは王宮魔術師といったところだろう。
しばらく部屋でくつろいでいると、扉が叩かれる。
「魔王様、お食事の支度ができました。人間の口に合うかは分かりませんが、お越し願えますでしょうか」
「分かりました。すぐに参ります」
アリエスが返事をすると、扉の向こうからは呼びに来た使用人が歩き去っていく音が聞こえたきた。
「それでは、カプリナ様、ヴァコル様、食堂に向かいましょうか」
「はい、アリエス様」
ヴァコルは魔導書に集中していたが、さすがに食事をしないとまずいだろうということで、アリエスが無理やり中断させていた。
せっかくの魔導書を楽しんでいたのに邪魔をされたヴァコルは少々不機嫌そうにしていたが、食事とあれば仕方がない。
アリエスたちは、魔王城の中にある食堂へと向かっていくのだった。
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