リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
125 / 415
第六節 リアラルト訓練学校編

第123幕 押し寄せてくる心配

しおりを挟む
「はぁー……一時期は本当にどうなるかと思ったけど……意外になんとかなったわねぇ」

 みんなと別れ、自室に戻ったシエラはそそくさと風呂に入って身を清めた後、ベッドに寝っ転がりながら思いっきり腕を伸ばしてリラックスの姿勢を取っていた。

 本当に相変わらずな奴だけれど、それが彼女の良いところなのかもしれない。

 俺も意識を切り替えて……というわけにもいかない。
 汗を流した俺の方もベッドに座るが、とてもじゃないがシエラのようにリラックスは出来ない。

「どうしたの? グレリア」
「ん、ちょっとな……」

 俺の表情がどうにも優れないのが気になったのか、シエラは両手を後ろに回して、自分の上半身を支えるようにして起き上がってこちらの様子を伺っている。

「もしかして、エセルカのこと?」
「ああ……ソフィアはアリッカルで保護しているって言っていたが……」

 正直なところ、あの場面で放たれた言葉を鵜呑みに出来るほど、俺は純粋でも愚者でもない。
 はったりだとしたらそもそもエセルカが囚われていないだろう。
 だけどもし……もし、本当に『保護』されているのだったら……。

「心配?」
「……当たり前だろう」

 今まではレグルたちに気を使ってたこともあったおかげで、まだエセルカのことを考えずに済んでいた。
 遠くの彼女よりも、彼らをしっかりと送り届ける必要があったからだ。

 だが、それももう解き放たれ……残ったのは彼女と……セイル、くずはの三人のことだった。
 アリッカルが『保護』しているのはソフィアだけということは、残った二人はどうなったんだろうか……?

「セイルもくずはも……どうなったんだろうね……」
「わからない」

 一度気になったら嫌な方向にばかり気持ちが向いてきて、どうにもそればっかりを考えてしまう。
 そういうものは纏わり付いたら中々消えやしない。

 そして……それがシエラにも伝播したのだろう。
 彼女の方もまた、不安な表情で顔を伏せてしまった。

「もしかしたら、セイルたちは……」
「違う!」

 そんな弱音を聞いてしまったからだろう。
 俺はつい、強い口調ではっきりとそれを否定した。

 セイルたちにもしものことがあったら……なんて信じたくなかったからだ。

「でも……」
「あいつらは俺を信じてくれた。他でもない、隠し事をしていた俺を、だ。
 だったら、セイルたちを信じるのも……俺が一番最初にしなくちゃならないことだ」

 セイルもくずはも、最後に別れたときからずっと強くなっているはずだ。
 だから……俺はあいつらの無事を信じている。

 ……本当なら今すぐにでもアリッカルに飛んでいきたい。当たり前だ。
 だが、カーターを討ち、ソフィアを撤退させた戦力を、アンヒュルは間違いなく放っておかないだろう。

 俺の方も確実に色々とやりすぎた結果だったが、後悔はしていない。
 あの時はあれが最善だったのだ。それを恥じる、ということは自分を否定する、ということだ。

「今はこうして燻ってるしかない、か……」

 アリッカルに……ヒュルマの領域に戻る訳にはいかない。
 今ここで下手をすれば、人と魔人……両方を敵に回すことになる可能性が高いからだ。
 だから……例え何を思ったとしても、俺はここに留まらなければならなかった。

 一時の感情に身を任せてしまいたい思いを抱えながら――グランセストの王命が下るその時をただひたすら……待つばかりだった。


 ――


 学校長との話が終わり、既に数日が経過していた。
 俺たちは相変わらず待機、ということで部屋の方にいることになった。

「はぁ……退屈ねぇ……」

 シエラはあの時の緊張感を完全に砕かれてしまい、だらだらとベッドにごろごろしている始末。

「おい、シエラ。もう少し人目を気にしろ。
 誰か来たらどうするんだ」
「誰も来てないから良いじゃない。どうせ授業にも出られないんだし……」

 ごろんと寝返りを打ちながら脳天気な返事をしているが、シエラがこうなったのには原因がある。
 まず、余計なことを言わないように、俺・ミシェラ・レグル・シエラ・シャルラン・ルルリナの六人は授業に出なくていい、ということになった。

 ついでに学校の敷地内を歩くにも、どこに行くか先生に報告する必要があったし、唯一自由に動けるのはこの寮内と寮の中にある食堂ぐらいなもんだ。
 そして……それも俺たちは夕方以降――生徒が帰ってくる時間帯の利用を極力避けていた。

 授業に出ない理由なんかを聞かれたって先生の都合でちょっと……ぐらいの曖昧な返事しか出来ないんだから、下手なことを言ってバレるよりはずっとマシってやつだった。

 ……とまあ、そんな理由で必然的にだらけることになったんだが、どうにもよろしくない。
 本当に誰か来たらどうするんだ……と思わずため息を付きそうになったていると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。

 その時のシエラのはババッと起き上がって髪や服を整えて……こういう時だけしっかりしようとしている姿は、まるで手のかかる妹のようだった。

「ちょっと待っててくれよ」

 そんなシエラの様子に苦笑しながら、俺は扉の方まで歩いていくんだが……そういえば今は授業中で、人もいないはずなのに、誰が訪ねてくるんだろう?

 なんて思いながら扉を開けると――そこにいたのはルルリナだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...