リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第七節 動き出す物語 セイル編

第127幕 今こそ悟る、勇者の意味

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 エセルカに後ろを任せたが、こっちも多少は気を配る必要があるかもしれない。
 何しろ俺たちが相手にするのは今までに見たことのない、全く知らない武器だ。

 少なくとも弓のように遠距離攻撃が出来るのはわかる。
 ……いざとなったらエセルカも魔方陣を使うだろう。

 今は……眼の前の敵に集中しないと。
 カーターは……俺なんかが誰かを気にしながら戦えるほど余裕のある相手じゃないからな。

 それに……俺は怒ってる。
 不意打ちを突かれた上に、くずはにこんな真似をしたこの野郎は……一発ぶん殴らなきゃ気が済まない!

「はっ! いつまで余所見してるんだよ! クソガキがぁぁぁぁ!」

 なんて考えてたらぶち切れ気味にカーターがその巨剣を振り上げていた。

「くっ……カァァァァタァァァァ!!」
「吠えるなよ! 雑魚がぁぁぁぁ!」

 その一撃を両腕に装着している篭手を交差させ、盾にするように受け止めるんだけど……重力の乗った奴の一撃はとても重く、ただ防いだだけなのに身体が少し沈んでしまうほどだ。

「くそっ……!」
「くひひっ、どうしたぁ! 俺様の……勇者の力を見せてやるよぉ!」

 そのまま軽々とその巨剣を振り回したカーターに防戦一方の俺は、今、確かに見た。
 この男が、使を。

「くっ……ぐっ……!」

 胴を切り裂こうとしていたその巨剣をなんとか防ぐけど、あまりに重い一撃に俺は吹き飛ばされてしまった。
 なんとか転がること無く、踏ん張りながら地面をしばらく滑ることになったけど、なんとか踏みとどまることが出来た。

 こっちも咄嗟に魔方陣で身体強化を図ったおかげだ。
 それがなかったら無様に転げ回っていたか……木にぶつかっていただろう。

「はっ……なんで人の勇者であるお前が……」
「あ? そんなもん、クズのお前が知る必要ねぇだろうがぁ!」

 カーターは魔方陣を展開して、炎の球を俺に向けて放ってきた。
 それを避けながら俺は一気に直進して、奴への距離を詰めていく。

「そうは……させるかよ!」

 そんな俺を嫌うかのように、カーターは右手をかざして……今度は俺が身体に重力で押し潰されそうになった。
 それを歯を食いしばって耐えながら、ただひたすらこんなことをするカーターを睨む。

「おーおー、怖いじゃねぇか。
 お前、誰のおかげでアンヒュルから人間様が守られてると思ってんだ?
 このカーター様だろうが! だったら! 勇者の命令を聞いてさっさと潰れちまえよ!
 あひゃ、ひゃは、ひゃははははは!!」

 タガが外れたように狂い笑うカーターにいい加減こっちもぶち切れそうになった。
 勇者だって? 冗談じゃない!

 最初、俺は勇者ってのはアンヒュルから俺たち人を守ってくれる奴のことを言うんだと思ってた。
 英雄ってのは要は勇者と同意義で、似たような言葉だから後者が広まったんだって。

 でも違う。こんなのは勇者なんて言わない……!

「お前が勇者? ふざけんなよ……!」

 本当の勇者ってのは、困難に勇気を持って歩く者のことを言うんだ……!
 誰かを助けるのに勇気を出す者のことを言うんだ!

 それを兄貴と一緒にいて、わかった。
 あの人はエセルカを守るときも、勇者会合の帰り道で襲撃にあった時も、自ら行動で示してくれていた!

 だから、俺は……!

「お前みたいな奴は勇者じゃねぇ! なんにも成そうとしない者に……勇敢でもないお前なんか! 俺は絶対認めねぇ!」

 今、一瞬でいい。この重力の網を一瞬、ぶち破れればそれでいい!
 ありったけの魔力を回せ! 俺の持つ全部を使え!

 血管が切れそうになっても構わない! 今ここで動かなきゃならないんだ!
 こいつを……この勇者を名乗る屑を……否定するために!

「うおおおおおあああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 身体が熱く沸騰するほど滾らせ、自分が今できる最善手……身体強化の魔方陣を何重にも展開させる。
 重力に負けず動ける身体を……! もっと! もっと!!!!

「な、なにぃ……? この俺様の能力を……!?」
「弾けろ!! カァァァァァァァタァァァァァァァァァ!!」

 満足に動けない身体を振り起すように、全身に力を入れ、俺は――その時風になった。

 ――ヒュン、ドゴォォッ! ガゴゴゴゴォォォォッ!

 何かを叩きつけるような、壊しながら進むような、そんな音が聞こえて……気付いたらカーターは家の中に埋まっていた。
 俺の拳が……奴に……届いた……!

「カ、カーター様!?」
「エセルカァァ!」
「うん!」

 いつの間にか俺とカーターの戦いを見守っていたエセルカだったけど、俺の声を聞いて、同じように硬直していた兵士たちに向けて雷の魔方陣を使っていた。

 あまりに咄嗟のことで避けようのなかった兵士たちはみんな痺れながら地面に倒れ伏して動けなくなっている。

「逃げるぞ!」
「え、で、でも……」
「俺もいつまでこの状態でいられるかわからない! くずはもまだ動けないし……今逃げなきゃ捕まるぞ!」

 くずはも俺も、重力から解放はされたけど、しばらく地面に押しつぶされていたくずはは気を失っていて、とてもじゃないけど今すぐ戦えるような状態じゃなかった。

「わ、わかった! でも、どこに……」
「今はどこでもいい! 早く!」

 俺はすぐさまくずはを担ぎ上げて、エセルカと一緒に適当に逃げることにした。
 例えアリッカル中を敵に回したとしても……カーターのような奴を黙認するような国にはいられない。

 だから、エセルカと共にただ走った。
 少しでもカーターたちの魔の手から逃げるために。
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