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第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第205幕 詠唱魔法の本領
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ルーシーの放った詠唱魔法【スラッシュサイクロン】が迫り来る中、すぐさま『土』『壁』『強固』の三つの起動式で魔方陣を展開して、発動させる。
俺の力に呼応するように地面から一人分を守れる程度の壁が生み出された。
そのまま竜巻とぶつかり合った壁は、ガリゴリと嫌な音を立てながら俺の身を辛うじて守ってくれた。
「……なるほど。ただ無為に過ごしていた訳ではないようですわね」
壁の破壊と同時に攻撃が止み、俺たちは再び向かい合う。
ルーシーは自身の体勢を低くして、鎌の刃が身体よりも上に来るように振り上げている。
その目にはさっきのような小馬鹿にしたようなものではない……殺意が込められていた。
「今の魔法……いや、魔方陣は……?」
俺の方は内心の驚きを隠す事が出来ず、構えてはいるもののどこか気の抜けた――隙を見せている状態に陥ってしまっていた。
そして、それを見逃してくれるほど敵も甘くはない。
力強くこちらに向かって踏み込んできたルーシーは、恐らく風の力を足に集めたのだろう。
ある程度は離れていたはずの距離をひとっ飛びで詰め寄り、その剣とも斧とも違う独特な刃を振り下ろした。
鈍い音が人気のない箱庭の道に響き渡り、俺は――いや、互いに魔方陣を展開させる。
ルーシーの起動式を見る余裕はないから、こっちも予測で対応するしかない。
今までの傾向と、彼女が以前どんな戦い方をしたか思い出した俺の選んだのは……『雷』『牙』の二文字。
「喰らえ……っ!」
魔方陣の発動と同時に吹き飛ばされた身体に痛みが奔る。
斬られたかのような鋭さを感じるそれは、恐らく先ほどと同じ【スラッシュサイクロン】による攻撃だろう。
防御をままならない状態でまともに受けたせいでだいぶ身体が傷ついたが、すぐに『再生』の起動式を展開して発動する。
またたく間に身体の傷が癒え、一息つくと同時にルーシーの方を見ると、彼女も随分と傷ついていた。
全身に痺れを感じているのか、地面に座り込んでいるような状態で俺の事を信じられないといった様子で見ていた。
「な……なんですの……? その魔方陣は……!」
驚くのも無理はないだろう。
身体の傷を癒やす魔方陣は存在するが、俺のはそのどれをも軽く上回る性能を発揮する。
簡単に言えば、一瞬だ。
他の魔方陣でも時間がかかる重傷ですら、まばたきをしてる間に完璧に治癒しているほどだ。
身体中から血が流れてて片腕や片足が変な方向に曲がっていても、発動すればあっという間だったからな。
「特別製ってわけだ」
にやりとちょっと悪役っぽい笑みを浮かべて、俺はグラムレーヴァを構え、少しずつにじり寄っていく。
我ながらどうかとも思うのだけれど、彼女は貴重な情報を与えてくれるかもしれないからな。
向こうは俺の演技を気付いているのかいないのか、焦った様子で回復の魔方陣を発動させようとしているが、彼女の傷が完全に癒えるにはまだ余裕がある。
「わ、わた、くしは……! まだ、まだ戦え、ますわっ……!」
立とうとしても足腰に力が入らない様子で余計に焦りを募らせているルーシーは、徐々に迫ってくる俺に対して再び魔方陣を展開する。
起動式は『風』『刃』の二文字。
発動と同時に俺に向かって薄い緑色の刃が飛んでくるのだけれど……グラムレーヴァを一振りすると、いともたやすく切り払われてしまった。
魔方陣に十分に魔力が行き届かなかったのだろう。
詠唱による底上げも、まともに口が回らない現状では言い終わる前に対処出来る。
ルーシーもその事を悟ったのか、がっくりとうなだれていた――その時。
不意に感じた殺気。
それと空中で何かが出現するのが見えた俺は、即座に防御の魔方陣を展開する。
「間に合うか……?」
空中の魔方陣から出現したのは……銃の一種だ。
大きな筒状のやつで、それが俺の方に向けられている。
少し冷や汗をかいたけど、なんとか発射と同時にこっちの魔方陣も発動した。
『防』『強固』の二文字で展開されたそれは、空中に出現したそれの放つ光を防いでいるけど……このままでは少しまずい。
パキパキと音を鳴らしながら少しずつ壊れていっている防御の魔方陣に対し、さらに魔力を込めてなんとかこらえる。
しばらくの間そんな攻防が続いて……やがて止んだことに胸を撫で下ろした俺は、ルーシーの事を探す。
彼女の身体の状態から考えれば、今すぐ遠くに逃げることも出来ないはずだと判断したんだけど、周辺を探しても彼女の姿はまったくなかった。
「……どこに逃げた?」
「ここよ」
上から声が聞こえ、俺は屋根の上に視線を向けると……そこにはかつて俺が敗れた少女が、以前と変わらない姿のまま立っていた。
後ろにはルーシーと、見覚えのあるなんてものじゃない、赤い髪の少年――スパルナが捕まっていた。
「……ヘルガ」
「……よく知ってるわね」
心底驚いてるその少女――ヘルガは俺のことなんて全く覚えてなかったのだろう。
相変わらず何の感情も宿していない冷酷が静かにこちらを見下ろしていた。
思わず身震いがした俺は、さっき作っていた悪役のような笑みとは違う……心の底からの笑顔を浮かべる。
ようやく、彼女と……ヘルガと再戦する機会が訪れたのだということに感謝を覚えながら。
俺の力に呼応するように地面から一人分を守れる程度の壁が生み出された。
そのまま竜巻とぶつかり合った壁は、ガリゴリと嫌な音を立てながら俺の身を辛うじて守ってくれた。
「……なるほど。ただ無為に過ごしていた訳ではないようですわね」
壁の破壊と同時に攻撃が止み、俺たちは再び向かい合う。
ルーシーは自身の体勢を低くして、鎌の刃が身体よりも上に来るように振り上げている。
その目にはさっきのような小馬鹿にしたようなものではない……殺意が込められていた。
「今の魔法……いや、魔方陣は……?」
俺の方は内心の驚きを隠す事が出来ず、構えてはいるもののどこか気の抜けた――隙を見せている状態に陥ってしまっていた。
そして、それを見逃してくれるほど敵も甘くはない。
力強くこちらに向かって踏み込んできたルーシーは、恐らく風の力を足に集めたのだろう。
ある程度は離れていたはずの距離をひとっ飛びで詰め寄り、その剣とも斧とも違う独特な刃を振り下ろした。
鈍い音が人気のない箱庭の道に響き渡り、俺は――いや、互いに魔方陣を展開させる。
ルーシーの起動式を見る余裕はないから、こっちも予測で対応するしかない。
今までの傾向と、彼女が以前どんな戦い方をしたか思い出した俺の選んだのは……『雷』『牙』の二文字。
「喰らえ……っ!」
魔方陣の発動と同時に吹き飛ばされた身体に痛みが奔る。
斬られたかのような鋭さを感じるそれは、恐らく先ほどと同じ【スラッシュサイクロン】による攻撃だろう。
防御をままならない状態でまともに受けたせいでだいぶ身体が傷ついたが、すぐに『再生』の起動式を展開して発動する。
またたく間に身体の傷が癒え、一息つくと同時にルーシーの方を見ると、彼女も随分と傷ついていた。
全身に痺れを感じているのか、地面に座り込んでいるような状態で俺の事を信じられないといった様子で見ていた。
「な……なんですの……? その魔方陣は……!」
驚くのも無理はないだろう。
身体の傷を癒やす魔方陣は存在するが、俺のはそのどれをも軽く上回る性能を発揮する。
簡単に言えば、一瞬だ。
他の魔方陣でも時間がかかる重傷ですら、まばたきをしてる間に完璧に治癒しているほどだ。
身体中から血が流れてて片腕や片足が変な方向に曲がっていても、発動すればあっという間だったからな。
「特別製ってわけだ」
にやりとちょっと悪役っぽい笑みを浮かべて、俺はグラムレーヴァを構え、少しずつにじり寄っていく。
我ながらどうかとも思うのだけれど、彼女は貴重な情報を与えてくれるかもしれないからな。
向こうは俺の演技を気付いているのかいないのか、焦った様子で回復の魔方陣を発動させようとしているが、彼女の傷が完全に癒えるにはまだ余裕がある。
「わ、わた、くしは……! まだ、まだ戦え、ますわっ……!」
立とうとしても足腰に力が入らない様子で余計に焦りを募らせているルーシーは、徐々に迫ってくる俺に対して再び魔方陣を展開する。
起動式は『風』『刃』の二文字。
発動と同時に俺に向かって薄い緑色の刃が飛んでくるのだけれど……グラムレーヴァを一振りすると、いともたやすく切り払われてしまった。
魔方陣に十分に魔力が行き届かなかったのだろう。
詠唱による底上げも、まともに口が回らない現状では言い終わる前に対処出来る。
ルーシーもその事を悟ったのか、がっくりとうなだれていた――その時。
不意に感じた殺気。
それと空中で何かが出現するのが見えた俺は、即座に防御の魔方陣を展開する。
「間に合うか……?」
空中の魔方陣から出現したのは……銃の一種だ。
大きな筒状のやつで、それが俺の方に向けられている。
少し冷や汗をかいたけど、なんとか発射と同時にこっちの魔方陣も発動した。
『防』『強固』の二文字で展開されたそれは、空中に出現したそれの放つ光を防いでいるけど……このままでは少しまずい。
パキパキと音を鳴らしながら少しずつ壊れていっている防御の魔方陣に対し、さらに魔力を込めてなんとかこらえる。
しばらくの間そんな攻防が続いて……やがて止んだことに胸を撫で下ろした俺は、ルーシーの事を探す。
彼女の身体の状態から考えれば、今すぐ遠くに逃げることも出来ないはずだと判断したんだけど、周辺を探しても彼女の姿はまったくなかった。
「……どこに逃げた?」
「ここよ」
上から声が聞こえ、俺は屋根の上に視線を向けると……そこにはかつて俺が敗れた少女が、以前と変わらない姿のまま立っていた。
後ろにはルーシーと、見覚えのあるなんてものじゃない、赤い髪の少年――スパルナが捕まっていた。
「……ヘルガ」
「……よく知ってるわね」
心底驚いてるその少女――ヘルガは俺のことなんて全く覚えてなかったのだろう。
相変わらず何の感情も宿していない冷酷が静かにこちらを見下ろしていた。
思わず身震いがした俺は、さっき作っていた悪役のような笑みとは違う……心の底からの笑顔を浮かべる。
ようやく、彼女と……ヘルガと再戦する機会が訪れたのだということに感謝を覚えながら。
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