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第十四節 奸計の時・セイル編
第250幕 油断の時間
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ゴーレムとの戦いで、ほとんど被害を出さずに終えることが出来て予想以上の戦果を上げる事が出来た俺たちは、町の方へと戻ると、兵士たちの中には気を緩めているやつもいた。
それもまあ、仕方のないところがあるだろう。ヘンリーの情報のおかげでゴーレムは今も沼の中。救出した敵の兵士は捕縛され、今は牢屋の中だ。これからこいつらにも色々と聞き出す作業が始まるだろうが、少なくともあそこで自滅を選んだ兵士たちよりはマシだろう。多少は辛いだろうが、アルディの指示の元だったらヒュルマとしての差別を受ける事はないだろう。
そういう事もあってか、多少浮かれ気味になっている者も多いというわけだ。魔力を吸収するゴーレムというのはそれだけで脅威になるし、それがこうも容易く処理できたのならこうもなるだろう。
アルディの方はそれを度々注意しているようで、徐々にそういう空気はなくなってはいるけど、それでもしばらくはこうした緩い感じはなくならないだろう。
ヘンリーの方も情報提供者ということで、この町の魔人のみんなにはある程度受け入れられていた。これは勇者ということを隠している事もあるからだろう。
流石に勇者だという事実が広まったら、やはり問題を起こす魔人が出るだろうということでイギランスの軍から脱走した一般兵ということにしようと決まったようだ。だからこの町でヘンリーが勇者ということを知っているのは俺たちとアルディと口の固い一部の兵士たちだけとなった。とはいえ、女王に報告しないわけにはいかないから、アッテルヒアのミルティナ女王と銀狼騎士団には知られる事になるだろう。
ヘンリー自身もそれは仕方のないことだと受け入れていたし、納得していた。元々最悪牢屋に閉じ込められて飼い殺しにされる可能性だってあったんだから監視が付くとは言え、自由に行動させてもらっている現状に不満などありはしないということらしい。
そういうわけでヘンリーとも別れ、俺たちはまた二人で過ごすことになった。七日、十日と時間が過ぎる毎にシアロルの方面からも同じゴーレムが現れ、甚大な被害を与えられたとかいう話もこっちに伝わってきた。
確かにあれは事前の情報なしで対策出来るものじゃない。真正面から戦いを始めればそうもなるだろう。
兵士たちを全員引かせ、銀狼騎士団員だけで対処したそうだ。その騎士の一人で最大の戦果を上げたのが新人騎士のグレファ・エルデ。巨大な白い炎の剣を生み出し、ゴーレムたちを全て溶かしてしまったことから、『神剣の担い手』なんて呼ばれているそうだ。
なんとも大層な呼び名だけど、兄貴らしい。今一番活躍している騎士として知名度を上げていってるそうだ。
スパルナは兄貴の事を全く知らないから――
「へー、すごいんだね。お兄ちゃんと同じ?」
とか言ってくるんだよな。いくらなんでも俺が兄貴と同じくらいなんてありえないだろう。
けど、スパルナは俺の妹……じゃなかった。弟分だからそういう事を目の前で言うのもどうかと思ってとりあえず黙っておくことにした。
いやだって、あんなにきらきらした目で見られながら『いや、俺の方が弱いな。戦ったらまず勝てない』なんて言える訳もない。
とにかく、兄貴の方も元気でやっているようで安心した。他の三人の事は全く聞かないけど、アッテルヒアに行けば知ってる人はいるだろうし、会えるだろう。というかそろそろ一度行くのもありかもしれないな。
なんて事を考えながらもだらだらと数日を過ごしていたある日。俺たちも少し気が緩んでいたのかも知れないと思っていた時だ。
「セイル殿はいらっしゃいますか?」
「あ、ああ。俺がそうだけど……」
宿屋の店主に兵士が俺の事を聞いているのを見て、近寄っていくと、ようやく見つけた……というような顔で安堵のため息をついていた。
「良かった。宿に泊まっているとは伺っておりましたが、どこの宿かまでは聞くのを忘れておりましたので、こうして色んな所を探す事になりました……」
なんだか、随分と間抜けな事を言ってるけど……一体どうしたのだろうか?
「それで、俺になにか……?」
「ええ。実は再び新しいゴーレム部隊がこちらに侵攻を開始しましたので、アルディ指揮官よりセイル殿たちを連れてくるように、と」
「なるほど……わかった。準備したらすぐ行くよ」
「お願いしますね。私の方はまだやらなければならないことがありますので、これで失礼します」
ビシッと敬礼した兵士は、そのまま慌ただしく行ってしまった。
……あの濃霧に乗じて逃げ出したのが何人かいるのは知っていたが、とても再び侵攻出来る状態とは思えなかった。
兵糧の方は回収できなかったとはいえ、武器も兵士も大半を失ってるんだから、まだ準備に時間がいると思うのだけれど……嫌な予感もするし、アルディのところに行って、一緒に戦ったほうが良いだろう。
この調子だったらヘンリーの方も呼ばれてるだろうし、またあのときのように『沼』の魔方陣で沈めることになるだろう。
とりあえずまずやることは……スパルナを起こすことか。
それもまあ、仕方のないところがあるだろう。ヘンリーの情報のおかげでゴーレムは今も沼の中。救出した敵の兵士は捕縛され、今は牢屋の中だ。これからこいつらにも色々と聞き出す作業が始まるだろうが、少なくともあそこで自滅を選んだ兵士たちよりはマシだろう。多少は辛いだろうが、アルディの指示の元だったらヒュルマとしての差別を受ける事はないだろう。
そういう事もあってか、多少浮かれ気味になっている者も多いというわけだ。魔力を吸収するゴーレムというのはそれだけで脅威になるし、それがこうも容易く処理できたのならこうもなるだろう。
アルディの方はそれを度々注意しているようで、徐々にそういう空気はなくなってはいるけど、それでもしばらくはこうした緩い感じはなくならないだろう。
ヘンリーの方も情報提供者ということで、この町の魔人のみんなにはある程度受け入れられていた。これは勇者ということを隠している事もあるからだろう。
流石に勇者だという事実が広まったら、やはり問題を起こす魔人が出るだろうということでイギランスの軍から脱走した一般兵ということにしようと決まったようだ。だからこの町でヘンリーが勇者ということを知っているのは俺たちとアルディと口の固い一部の兵士たちだけとなった。とはいえ、女王に報告しないわけにはいかないから、アッテルヒアのミルティナ女王と銀狼騎士団には知られる事になるだろう。
ヘンリー自身もそれは仕方のないことだと受け入れていたし、納得していた。元々最悪牢屋に閉じ込められて飼い殺しにされる可能性だってあったんだから監視が付くとは言え、自由に行動させてもらっている現状に不満などありはしないということらしい。
そういうわけでヘンリーとも別れ、俺たちはまた二人で過ごすことになった。七日、十日と時間が過ぎる毎にシアロルの方面からも同じゴーレムが現れ、甚大な被害を与えられたとかいう話もこっちに伝わってきた。
確かにあれは事前の情報なしで対策出来るものじゃない。真正面から戦いを始めればそうもなるだろう。
兵士たちを全員引かせ、銀狼騎士団員だけで対処したそうだ。その騎士の一人で最大の戦果を上げたのが新人騎士のグレファ・エルデ。巨大な白い炎の剣を生み出し、ゴーレムたちを全て溶かしてしまったことから、『神剣の担い手』なんて呼ばれているそうだ。
なんとも大層な呼び名だけど、兄貴らしい。今一番活躍している騎士として知名度を上げていってるそうだ。
スパルナは兄貴の事を全く知らないから――
「へー、すごいんだね。お兄ちゃんと同じ?」
とか言ってくるんだよな。いくらなんでも俺が兄貴と同じくらいなんてありえないだろう。
けど、スパルナは俺の妹……じゃなかった。弟分だからそういう事を目の前で言うのもどうかと思ってとりあえず黙っておくことにした。
いやだって、あんなにきらきらした目で見られながら『いや、俺の方が弱いな。戦ったらまず勝てない』なんて言える訳もない。
とにかく、兄貴の方も元気でやっているようで安心した。他の三人の事は全く聞かないけど、アッテルヒアに行けば知ってる人はいるだろうし、会えるだろう。というかそろそろ一度行くのもありかもしれないな。
なんて事を考えながらもだらだらと数日を過ごしていたある日。俺たちも少し気が緩んでいたのかも知れないと思っていた時だ。
「セイル殿はいらっしゃいますか?」
「あ、ああ。俺がそうだけど……」
宿屋の店主に兵士が俺の事を聞いているのを見て、近寄っていくと、ようやく見つけた……というような顔で安堵のため息をついていた。
「良かった。宿に泊まっているとは伺っておりましたが、どこの宿かまでは聞くのを忘れておりましたので、こうして色んな所を探す事になりました……」
なんだか、随分と間抜けな事を言ってるけど……一体どうしたのだろうか?
「それで、俺になにか……?」
「ええ。実は再び新しいゴーレム部隊がこちらに侵攻を開始しましたので、アルディ指揮官よりセイル殿たちを連れてくるように、と」
「なるほど……わかった。準備したらすぐ行くよ」
「お願いしますね。私の方はまだやらなければならないことがありますので、これで失礼します」
ビシッと敬礼した兵士は、そのまま慌ただしく行ってしまった。
……あの濃霧に乗じて逃げ出したのが何人かいるのは知っていたが、とても再び侵攻出来る状態とは思えなかった。
兵糧の方は回収できなかったとはいえ、武器も兵士も大半を失ってるんだから、まだ準備に時間がいると思うのだけれど……嫌な予感もするし、アルディのところに行って、一緒に戦ったほうが良いだろう。
この調子だったらヘンリーの方も呼ばれてるだろうし、またあのときのように『沼』の魔方陣で沈めることになるだろう。
とりあえずまずやることは……スパルナを起こすことか。
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