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第十四節 奸計の時・セイル編
第258幕 悲しき再会
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女王と真剣な話し合いをしてから数日……俺たちは相変わらず彼女が取ってくれていた宿屋で身体を休めていた。
正直、何をすればいいのかわからないというのが本音だ。くずはを押し付けるように預けて数年。今更彼女にどんな顔して会えばいいかわからないし、どうにも部屋から出るのがもどかしい。たまにスパルナが外に連れ出せってせがむから外に出る……そんな日々が続いていた。
束の間の平和。いつ崩れるかわからない崖の上に立っているような感覚。これは実際に戦車を目にした者にしかわからない絶望だろう。
この国の命は吹けば飛ぶようなもので、俺たちはそれをどうにかしたい。だけどどうすれば? そういう問答を繰り返しながら時間は過ぎていった……。
――
「お兄ちゃーん、遊びに行こうよー」
「相変わらず元気良いな。スパルナは」
のんびりとスラヴァグラードで手に入れた本を読んでいるところに、退屈そうな顔をしたスパルナが乱入してきた。
部屋の扉を勢いよく開けて、大きく手を振りながら駆けてくる彼はまるで子犬だ。尻尾があったらぶんぶん振り回していただろう……という考えまでして、頭の中に思い浮かんだのは鳥の状態のスパルナが尾を振ってる姿なのだから笑えてくる。
「? どーしたの?」
「なんでもない。行くぞ」
ぽんぽん、と軽く頭を撫でるように叩いた後、本を閉じて袋の中にしまう。
スラヴァグラードの事は話したけど、そこで手に入れた服や本なんかについては、女王との話し合いの時に一切話題にはしなかった。話せば間違いなく欲しがる…….というか何かしらの口実をつけられて没収されることは目に見えている。まだ読んだことのない本を取られるなんて嫌だし、スパルナのお気に入りの絵本や服まで没収されるのは可哀想だ。
というわけで俺やスパルナ自身が見聞きしたことは全て話しはしたけど、手に入れたものについては黙秘を貫いて、大事なものは大体持ち歩くようにしている。流石に服やかさばる物は置いていってるけどな。
そんなわけで本はまた適当な場所で読むことにして、俺はスパルナに手を引っ張られるように外に出ていった。相変わらず天気がよく、散歩するにはいい感じだ。
スパルナは遊びに行きたいとは言ってたけど、特に行きたい場所はなかったらしく、適当にぶらぶらすることになった。屋台のホットドッグを買ってやると、スパルナは喜んで食べるんだけど、口にトマトソースを付けながら嬉しそうに食べていた。
「ほら、口」
「んっ!」
返事だけは一人前だけど、行動が全く伴ってないところはこの子らしい。しょうがないから食べ終わったのを見計らって拭ってやると、更に嬉しそうにしていた。
……全く、世話が焼けるな。なんて思っていると、不意に視線を感じてそっちの方を向くと……そこにいたのはくずはだった。
「……セイル?」
「く、くずはか?」
久しぶりに会ったくずはは、なんというか成長してより綺麗になってる気がする。昔は軽鎧を付けてる姿ばっかり見ていた気がするけど、今は普通に私服だ。
「……お兄ちゃん? 知ってる女の人?」
「ん、ああ。スパルナ、ちょっと一人で遊んでくれないか?」
「はーい」
「悪い魔人には気をつけろよ」
「うん!」
たったったっと音がしそうなほど元気よく掛けていくスパルナを手を振って見送ると、くずはは複雑そうな顔をしていた。
「それにしても本当に久しぶりだな。元気にしてたか?」
「……うん。セイルも元気そうね」
どこか……というか、ラグズエルとの戦い以降会ってないからすごく気まずい。こういう時、どんな顔をしたらいいのかわからない。
それはくずはも同じようで、なんとも言えない顔をしている。
「……えーっと」
「あたし、今、城の兵士としてここにいるの。と言っても、一人っきりなんだけどね。一応、人の国の勇者だし」
くずはは、どこか寂しそうに現状を語ってくれた。これは多分勇者だと知られないように、そして知られた時の為の対策だろう。そういうところに気を使ってくれてるのはわかるのだけれど、これじゃあくずはが仲間外れにされてるような感じもする。
「そ、そうか。俺はもっと強くなる為に色んな場所を巡ったよ。人の国にも行ったしな」
「……それで、新しい彼女を見つけたの? 随分幼いけど」
ぶすっとした顔でそんな事を言われてしまった。それが一瞬誰の事を言ってるのかさっぱりわからなかった。すぐにスパルナの事だとわかったんだけど、くずははそれで更に不機嫌な顔をしてしまった。
「ああ、今一緒にいたスパルナの事か?」
「へー、スパルナっていうの。可愛い子じゃない」
「あのさ、何を勘違いしてるのか知らないけど……」
「勘違い!? そう、セイルは知らない子にあんな風に出来るってわけ? そりゃあ子どもと大人くらいの差があるけど、エセルカよりは高いし、あり得ないことないわよね?」
ああ、駄目だ。完全にスパルナが俺の恋人かなにかだと思ってる。というかエセルカと比べてやったら結構可哀想な気がするんだけどな。
彼女は俺から見ても小さかったし、くずはの口ぶりからもあんまり成長してないようにしか聞こえない。
正直スパルナは明らかに俺の好みから外れてる……というか彼は男だ。
それを言っても聞き入れる雰囲気じゃないし、さてどうしたものか……。
相当悪いタイミングに出会ってしまったものだと頭を抱えてしまいたくなるけど、それもすることは出来ない。とりあえずなんとかこの場を切り抜けなければならないだろう。
正直、何をすればいいのかわからないというのが本音だ。くずはを押し付けるように預けて数年。今更彼女にどんな顔して会えばいいかわからないし、どうにも部屋から出るのがもどかしい。たまにスパルナが外に連れ出せってせがむから外に出る……そんな日々が続いていた。
束の間の平和。いつ崩れるかわからない崖の上に立っているような感覚。これは実際に戦車を目にした者にしかわからない絶望だろう。
この国の命は吹けば飛ぶようなもので、俺たちはそれをどうにかしたい。だけどどうすれば? そういう問答を繰り返しながら時間は過ぎていった……。
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「お兄ちゃーん、遊びに行こうよー」
「相変わらず元気良いな。スパルナは」
のんびりとスラヴァグラードで手に入れた本を読んでいるところに、退屈そうな顔をしたスパルナが乱入してきた。
部屋の扉を勢いよく開けて、大きく手を振りながら駆けてくる彼はまるで子犬だ。尻尾があったらぶんぶん振り回していただろう……という考えまでして、頭の中に思い浮かんだのは鳥の状態のスパルナが尾を振ってる姿なのだから笑えてくる。
「? どーしたの?」
「なんでもない。行くぞ」
ぽんぽん、と軽く頭を撫でるように叩いた後、本を閉じて袋の中にしまう。
スラヴァグラードの事は話したけど、そこで手に入れた服や本なんかについては、女王との話し合いの時に一切話題にはしなかった。話せば間違いなく欲しがる…….というか何かしらの口実をつけられて没収されることは目に見えている。まだ読んだことのない本を取られるなんて嫌だし、スパルナのお気に入りの絵本や服まで没収されるのは可哀想だ。
というわけで俺やスパルナ自身が見聞きしたことは全て話しはしたけど、手に入れたものについては黙秘を貫いて、大事なものは大体持ち歩くようにしている。流石に服やかさばる物は置いていってるけどな。
そんなわけで本はまた適当な場所で読むことにして、俺はスパルナに手を引っ張られるように外に出ていった。相変わらず天気がよく、散歩するにはいい感じだ。
スパルナは遊びに行きたいとは言ってたけど、特に行きたい場所はなかったらしく、適当にぶらぶらすることになった。屋台のホットドッグを買ってやると、スパルナは喜んで食べるんだけど、口にトマトソースを付けながら嬉しそうに食べていた。
「ほら、口」
「んっ!」
返事だけは一人前だけど、行動が全く伴ってないところはこの子らしい。しょうがないから食べ終わったのを見計らって拭ってやると、更に嬉しそうにしていた。
……全く、世話が焼けるな。なんて思っていると、不意に視線を感じてそっちの方を向くと……そこにいたのはくずはだった。
「……セイル?」
「く、くずはか?」
久しぶりに会ったくずはは、なんというか成長してより綺麗になってる気がする。昔は軽鎧を付けてる姿ばっかり見ていた気がするけど、今は普通に私服だ。
「……お兄ちゃん? 知ってる女の人?」
「ん、ああ。スパルナ、ちょっと一人で遊んでくれないか?」
「はーい」
「悪い魔人には気をつけろよ」
「うん!」
たったったっと音がしそうなほど元気よく掛けていくスパルナを手を振って見送ると、くずはは複雑そうな顔をしていた。
「それにしても本当に久しぶりだな。元気にしてたか?」
「……うん。セイルも元気そうね」
どこか……というか、ラグズエルとの戦い以降会ってないからすごく気まずい。こういう時、どんな顔をしたらいいのかわからない。
それはくずはも同じようで、なんとも言えない顔をしている。
「……えーっと」
「あたし、今、城の兵士としてここにいるの。と言っても、一人っきりなんだけどね。一応、人の国の勇者だし」
くずはは、どこか寂しそうに現状を語ってくれた。これは多分勇者だと知られないように、そして知られた時の為の対策だろう。そういうところに気を使ってくれてるのはわかるのだけれど、これじゃあくずはが仲間外れにされてるような感じもする。
「そ、そうか。俺はもっと強くなる為に色んな場所を巡ったよ。人の国にも行ったしな」
「……それで、新しい彼女を見つけたの? 随分幼いけど」
ぶすっとした顔でそんな事を言われてしまった。それが一瞬誰の事を言ってるのかさっぱりわからなかった。すぐにスパルナの事だとわかったんだけど、くずははそれで更に不機嫌な顔をしてしまった。
「ああ、今一緒にいたスパルナの事か?」
「へー、スパルナっていうの。可愛い子じゃない」
「あのさ、何を勘違いしてるのか知らないけど……」
「勘違い!? そう、セイルは知らない子にあんな風に出来るってわけ? そりゃあ子どもと大人くらいの差があるけど、エセルカよりは高いし、あり得ないことないわよね?」
ああ、駄目だ。完全にスパルナが俺の恋人かなにかだと思ってる。というかエセルカと比べてやったら結構可哀想な気がするんだけどな。
彼女は俺から見ても小さかったし、くずはの口ぶりからもあんまり成長してないようにしか聞こえない。
正直スパルナは明らかに俺の好みから外れてる……というか彼は男だ。
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