リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十四節 奸計の時・セイル編

第259幕 尋問される男

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 とりあえず一度どこか落ち着ける場所で話そう……ということになって、近場のカフェでお茶をすることになった。とりあえず適当に飲み物と甘い物を頼むんだけど……その間もくずはの視線がものすごく痛い。心の奥深くに刺さるような鋭さがある。

「……くずは、誤解してるって」
「何がどう誤解してるのかしらね」

 つーんとした態度でそっぽを向いてしまうくずは。これは大分手強い。不機嫌そうに睨む視線に何をどう言えばいいのかわからなくなってきた。真実は単純なのに、実際言葉にするのが難しいっていうのはこういう事を言うのだろう。くずはは俺が使っている起動式について何も知らないしな。
 ……仕方ない。まずは順を追って説明するのが一番だろう。ちょっと強引に話を持っていかないといつまでたっても先に進まなさそうだ。

「くずは、ラグズエル――ラグナスの事、覚えてるか?」
「……そうやって話を逸らす」
「あいつの事を話すのに関係のあることなんだよ」

 ため息が出そうになるけど、予想出来たことだ。だけどラグズエルの事を話題に上げると、くずはは苦々しい表情で顔を背けていた。記憶を操られていたっていた事もあるから、あまり触れてほしくないことなのかも知れない。

「……一応ある程度は。あんま覚えてないけど、最初の頃のことは覚えてる」
「それじゃ、まずはあいつについて少し話そうか」

 ――

 それから俺はラグズエルと戦った後の事を嘘偽りなく話した。鍛錬に明け暮れ、様々な魔物と戦った事。ラグズエルが拠点として使っていたところを捜索していた事。そこで出会った死にかけの少年を助け、彼をスパルナと名付けた事を。

 色々と言いたそうにしていたくずはだったけど、一応は(多分)納得してくれたようで……さっきのようなつんけんした態度は消えてしまっていた。

「……本当にそのスパルナとは何もないのね?」
「あいつは弟のように可愛い。だけどそれだけだ。流石に同じ男を好きになるわけないだろ?」
「そりゃまあ、あたしが知ってるセイルはそうだけどさ。あんなに女の子っぽかったらそうも思えないわ」
「それあんまり本人の前で言うなよ? 少し気にしてるから」

 そりゃあ、あのロンギルス皇帝にすら少女だと間違えられたからな。スパルナの女の子としての力はさぞかし高い事だろう。

「で、本当に…….ほんっとうに何にもないのよね?」
「しつこいなぁ。ない。スパルナはいも――弟だ」

 一瞬『妹だ』と言いかけたのがばっちり聞こえたようで、くずははまた不満そうに俺のことを責める視線を向けていた。
 疑り深い目に晒されながら、適当に頼んだ紅茶を飲んでると、意外と美味しいことに気付いた。それでもスラヴァグラードで飲んだコーヒーには負けるな……なんて現実逃避を試みても、くずはの視線がそれを許してくれない。

「……まあいいわ。あたしもあんたについて行けなかったし。足引っ張ってばっかだから、許してあげる」

 ようやくお許しが出て、視線が和らいでいくのを感じて、ほっと一息つくことが出来た。
 他にもなにかごにょごにょと言ってたようだけど、よく聞き取れなかった。ま、文句を言ってるわけじゃないから気にしなくてもいいか。

「それで、兄貴はどこに行ってるんだ?」
「彼はシアロルが攻めてきたからって、そっちの方面に行ってる。エセルカとシエラは首都の守り」

 これは妥当なところだろう。兄貴がいれば、向こうはなんとかなるし、騎士は出来るだけ自国の守りに回したいんだろう。

「ねえ」
「ん?」
「セイルは…….これからどうするの?」

 どこか思い詰めたような顔をして俺のことをじっと見ている。そこには『行かないで』と言ってるようにも、『行くなら連れていって』と言ってるようにも見えた。

 俺は……くずはに会うまで、どうするか悩んでた。
 これはもう国同士でなんとか出来る状態を超えてる。グランセストは周囲に存在する五つの国から同時に攻撃を受けてしまうかもしれない。そうなったら、跡形もなく吹き飛ぶだろう。

 戦車をなんとか出来ても、ゴーレムを倒せても……魔力が尽きればそれで終わりだ。
 それでもきっと兄貴は最後まで戦うだろう。そこにはエセルカやシエラ……そしてくずはも必ずいる。

 俺の大事にしているみんながいるなら……やることは一つだった。

「スパルナとでジパーニグに行くよ」

 グランセストには悪いが、人の国が全部ここに注意を向けている間に直接元凶を叩く。
 五つの国の王を倒し、頭を抑えれば、敵もきっと混乱する。全ての人の国にあるであろう地下都市を抑えるか……そこの軍事施設を叩けば、これ以上戦争を続けることも出来ない。

 それがどれほど難しいかわかっているつもりだけど、もうやらないといけないところまで来てるんだと思う。そして、こんな危険な事にくずはを巻き込むわけにはいかない。だからあえて『二人』という部分を強調するように言った。
 それだけでくずはは俺が何を言っても連れて行く気がないことを悟ったのか……顔を伏せてしまった。

「……悔しいわね。わかってるけど、こんなときに何も出来ないなんて……ね」

 その声は悲しげに地面に吸い込まれていって、彼女はそれ以上何かを言うことはなかった。
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