リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
277 / 415
第十四節 奸計の時・セイル編

第260幕 旅立ちの日

しおりを挟む
 くずはと久しぶりに出会った次の日。俺はアルディにジパーニグに行くことを伝えることにした。本当は何も伝えずに行くつもりだったけど、あそこは兄貴やエセルカの生まれ故郷でもあるし、耳に入ればいいと思ったからだ。アルディは兄貴と知り合いなようだし、随分信頼しているようにも感じた。
 それに俺自身もこの短い期間の中、共に戦った事で信頼できると思ったからだ。

 城へ向かい、門兵に要件を伝えると、この時間の彼は庭の方にいるとわざわざ他の兵士たちに聞いてくれた。
 それに感謝しながら城の中に入って中庭の方へ向かうと、庭園と呼ぶに相応しい様々な木や花が植えられているそこでアルディはパン屑を放り投げて、小鳥たちに餌を与えていた。

 なんて言うか一々絵になる事をしてるなと思う。ちょっと気取っている……ような気がするけど、これが自然体なんだろう。
 行こうかどうしようかと躊躇している間に、アルディはこっちに気付いてにこやかに歩み寄ってきていた。

「これはこれは……ちょっとお待たせしましたか?」
「ああ、いや……今来たところだから」

 それは良かったと安堵してるアルディは残ったパン屑を全部鳥たちに分け与えてから、改めて向き直った。

「わざわざ私を訪ねてきた、ようですね。なにか御用ですか?」
「え、ああ。実は――」

 それから俺はジパーニグに行く事。これからは他の国から戦車が出てくるかもしれない。それを事前に潰しておきたいと伝えると、彼はどこか困ったような顔をしていた。
 まあ、それもある意味当然だろう。いきなり本拠地に乗り込んで、大将の首を獲ると言ってるようなものだ。反応に困るのは仕方ない。

「……でしたら、その前に一つ仕事をお願いしたいのですが」

 申し訳なさそうに頬を掻く彼の言葉は、俺が予想していたのとは全く違うものだった。あまりにも違いすぎて少し身構えていた自分が馬鹿らしく感じる程だ。

「その仕事って?」
「シアロルの方面にいるシグゼスさんにも同じ話をして欲しいのですよ。ヘンリーさんに話したらあっさり断られてしまいまして……困ったものですね」

 苦笑しながらアルディはやれやれと肩を竦めていた。
 確かに、あの会見で様々な事を話してくれたヘンリーが断るのは困った事だろう。実際異世界の事を知ってる最重要人物と言ってもいい。

「近々くずはさんにも同じような質問をして、信憑性を高めるつもりなのですが……イギランス側から戦車が現れた以上、各方面に特徴や攻撃方法を伝えなくてはなりません。ヘンリーさんはナッチャイス方面になら行っても良いと仰られてたので、シアロル方面にはセイルさんたちに向かってもらいたいのです」
「……わかった」

 アルディが『お願いできませんか?』と困ったような顔で訴えかけてくるものだから、つい頷いてしまった。
 方向的には対極に近いから、かなり遠回りになるけど……あまりに急いでもすぐになんとか出来るものじゃない。それより迫り来る脅威について周知させる方がいいだろう。

「ついでにグレファさんにもよろしくお伝えください」

 アルディの言葉に一瞬呆けるような顔をしてしまったけど、すぐに元に戻した。というか、今『グレファさん』って言ったよな……?

 どうやらアルディには俺がくずはたちを避けていた事がバレていたようで、状況報告のついでに兄貴に顔を見せてこいという事だった。

 ヘンリーの奴が行きたがらない理由がそこでようやくわかった。というか、兄貴がそっちにいる事をすっかり忘れてた。
 あいつも兄貴とは浅くない因縁があるようだし、そりゃあ避けるよな。

 今更拒否したところで何の意味もない。自分が負い目に感じてて、納得できる強さになるまで会わないなんて誓いをしてたのに、こうなったら行くしかない。
 一度口にした言葉をすぐに引っ込めるなんて男のする事じゃないからな。

「……わかった」

 皮肉の一つでも言ってやろうかと思ったけど、結局言葉として出てきたのはさっきと同じ一言だけだった。

「お願いしますね。向こうは少々、困ったことになっているようですから」
「困ったこと?」
「はい。こちらに来るまでは知りませんでしたが、向こうではゴーレムが度々侵攻しているようです。時間稼ぎをしているのかはわかりませんが、どうにも良くない流れであることは間違いありません」

 戦争ってのは生物なまものだからな。いつ状況が変わってもおかしくはない。
 ……まあ、一度変わった流れは中々まで戻らないって訳でもあるんだけどな。

 ゴーレムで押してるということは多分、向こうの戦車は準備中なのだろう。もしくは……機を伺っているか。
 なんにせよ、不利な事には変わりない。アルディも何か感じ取っているのだろう。その目には不安が見え隠れしていた。

「安心してくれ。だらだら行く気はないさ。出来るだけ早く情報を届けてみせるよ」

 アルディの返事を待たずに、さっさと庭園を抜け出して、旅に出る準備を整えることにした。戦いが今よりも激しくなる……そんな予感を胸に秘めながら。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...