278 / 415
第十五節・再び相見える二人
第261幕 絶えない人形
しおりを挟む
あの宴会の席からどれだけ時間が経っただろうか?
初めてゴーレムと一戦を交えた事を皮切りに頻繁にそれらは侵略を繰り返していた。
朝早くやってきたり、夜遅くに現れたり……絶えずこちらにプレッシャーを与え続けてくる。向こう側は数人の兵士に数多くのゴーレムという編成でこちらに侵攻してくるものだから、その勢いは衰える事を知らない。
徐々に後退していった俺たちは、いよいよ拠点にしている町を防衛することで精一杯になった……そんなある日のことだった。
――
連日の侵攻で兵士たちはすっかり参ってしまった。幸い、ゴーレムは自身へ向いた魔力は吸収するが、それ以外は防ぐ事が出来ない。穴を作って落とすようになったのは初めてゴーレムが現れてから三日後の夜だった。
それからというもの、敵兵を俺や他の騎士が抑えている間にゴーレムを無力化するという方法が取られたのだけど……それでも向こうは昼夜問わず攻めてきては散発的に攻撃を繰り返して撤退をしている。人的被害がないせいか、完全にやりたい放題やっている。
町には壁もなく、防衛する為に少し離れた場所に四方にテントを張って駐留しているのも原因の一つだろう。ただでさえ少ない兵力を分散するのは得策ではないのだが、相手はどこから侵攻してきても良い上にこっちは対応する為に戦力を分散させるという負のスパイラルに陥ってしまっている。
それを打開しようと、一度俺だけ離れて彼らの拠点を叩いたのだが、向こうも複数中継用の拠点を設けているようで、一つ二つ潰したところでなんの効果もなかった。
もっと遠くにある場所を潰しに行かなければと単独行動を提案したのだが、シグゼスはそれに対して否定的だった。
彼が言うには、そうやって俺をここから遠ざけて隔離する為なのかも知れないという事だった。
しかし、そうやって足止めしている可能性だって十分考えられると進言すると、どうにも渋った顔をしてしまった。
結局女王からの援軍が届くまでの間は現状維持という事になった。幸い、こちらも人的被害はほとんどない。強いて言えば精神的疲れで倒れた者が出始めたくらいだ。
そんな中、俺は……少し鬱憤が溜まっていた。一人だったらもっと迅速に処理できたはずだと。シグゼスは俺を頼る事があっても、頼りきりになる事はない。他の兵士たちと同じようにローテーションを組み、なるべく体を休め、ゴーレムとの戦いも決して無茶をさせない。拠点潰しだって相当否定的だった。
騎士として、彼はかなり出来た男なのだろう。だが……それではこの戦い、決して勝てはしないだろう。あれだけの力を見せた俺を持て余している彼では。
それでもここでは彼が指揮官だ。上官の命令に逆らえるほど、この国は緩くない。女王を守護する騎士であるからこそ、上下関係ははっきりさせなければならない。
下の者にも示しがつかないし、一度これを破れば、他の兵士も命令を聞かなくなる恐れがある。
だからこそ、進言はするが、反対されれば大人しく引き下がった。自分の中に嫌な気持ちが溜まっていくのを感じても、だ。
そして――徐々に疲弊していく中、『索敵』『地図』の起動式で魔方陣を展開して周囲を監視していたある日のこと。この町からかなり離れたところで妙な敵の動きがあった。
普通ならゴーレム数体と兵士が三~四人くらい。多くてもその倍といったところだった。
だけど今回は…….三つの生き物が一つのところに固まって、ゆっくりとこちら向かって進んできているのだ。
反応からして兵士なのには間違いないけど……今までこんな事はなかった。それも十数体くらいあって、馬車で移動している可能性をそれだけで潰している事がわかった。
ぞわっとした悪寒を感じ、なにか嫌な汗が流れるのも、それを助長している。これをシグゼス指揮官に報告した方がいいだろうか?
「……いや、それでは遅いかも知れない。準備を待っていたら不味い事になりそうだ」
一瞬だけ湧き上がった感情を難なく斬り捨て、自分に言い聞かせるように呟いた言葉を噛みしめ、納得していた。
シグゼスならば、これから他の騎士に招集をかけ、一通り魔方陣で検証し、俺の言ってることが正しいとわかった時のみ動く事だろう。
彼は仲間を一人で行かせるような事はほとんどしない。特例を認める事はあるが、この状況ではそれも望めないだろう。かと言って何も知らせないというのも不味い。
さてどうしようかと思っていた時、一人の兵士が通りかかったのを発見して、チャンスだと思った。
「ちょっといいか?」
「……? はい。どうされましたか?」
鎧のない軽装の魔方兵と比べ、彼はしっかり着込んでいる。『索敵』関連の魔方陣の精度はあまり高くないと見てまず間違いないだろう。
「俺の『索敵』に怪しい物が引っかかった。確かめに行くからシグゼスに報告を頼む」
「それは構いませんが……危なくはないですか? 斥候でしたら近くの魔方兵にでも……」
「大丈夫だ。ちょっと気になっただけだし、それであまり大事にはしたくない。危険なことはしないから、俺が長いこと戻らなかった時の事を考えて、だからさ」
「……わかりました」
とりあえず後から適当に言い訳できそうな体裁を取ってから、あまり返事を聞かずにさっさと行くことにした。
奇妙な動き……これが一体何を意味するのか? それを確かめるために。
初めてゴーレムと一戦を交えた事を皮切りに頻繁にそれらは侵略を繰り返していた。
朝早くやってきたり、夜遅くに現れたり……絶えずこちらにプレッシャーを与え続けてくる。向こう側は数人の兵士に数多くのゴーレムという編成でこちらに侵攻してくるものだから、その勢いは衰える事を知らない。
徐々に後退していった俺たちは、いよいよ拠点にしている町を防衛することで精一杯になった……そんなある日のことだった。
――
連日の侵攻で兵士たちはすっかり参ってしまった。幸い、ゴーレムは自身へ向いた魔力は吸収するが、それ以外は防ぐ事が出来ない。穴を作って落とすようになったのは初めてゴーレムが現れてから三日後の夜だった。
それからというもの、敵兵を俺や他の騎士が抑えている間にゴーレムを無力化するという方法が取られたのだけど……それでも向こうは昼夜問わず攻めてきては散発的に攻撃を繰り返して撤退をしている。人的被害がないせいか、完全にやりたい放題やっている。
町には壁もなく、防衛する為に少し離れた場所に四方にテントを張って駐留しているのも原因の一つだろう。ただでさえ少ない兵力を分散するのは得策ではないのだが、相手はどこから侵攻してきても良い上にこっちは対応する為に戦力を分散させるという負のスパイラルに陥ってしまっている。
それを打開しようと、一度俺だけ離れて彼らの拠点を叩いたのだが、向こうも複数中継用の拠点を設けているようで、一つ二つ潰したところでなんの効果もなかった。
もっと遠くにある場所を潰しに行かなければと単独行動を提案したのだが、シグゼスはそれに対して否定的だった。
彼が言うには、そうやって俺をここから遠ざけて隔離する為なのかも知れないという事だった。
しかし、そうやって足止めしている可能性だって十分考えられると進言すると、どうにも渋った顔をしてしまった。
結局女王からの援軍が届くまでの間は現状維持という事になった。幸い、こちらも人的被害はほとんどない。強いて言えば精神的疲れで倒れた者が出始めたくらいだ。
そんな中、俺は……少し鬱憤が溜まっていた。一人だったらもっと迅速に処理できたはずだと。シグゼスは俺を頼る事があっても、頼りきりになる事はない。他の兵士たちと同じようにローテーションを組み、なるべく体を休め、ゴーレムとの戦いも決して無茶をさせない。拠点潰しだって相当否定的だった。
騎士として、彼はかなり出来た男なのだろう。だが……それではこの戦い、決して勝てはしないだろう。あれだけの力を見せた俺を持て余している彼では。
それでもここでは彼が指揮官だ。上官の命令に逆らえるほど、この国は緩くない。女王を守護する騎士であるからこそ、上下関係ははっきりさせなければならない。
下の者にも示しがつかないし、一度これを破れば、他の兵士も命令を聞かなくなる恐れがある。
だからこそ、進言はするが、反対されれば大人しく引き下がった。自分の中に嫌な気持ちが溜まっていくのを感じても、だ。
そして――徐々に疲弊していく中、『索敵』『地図』の起動式で魔方陣を展開して周囲を監視していたある日のこと。この町からかなり離れたところで妙な敵の動きがあった。
普通ならゴーレム数体と兵士が三~四人くらい。多くてもその倍といったところだった。
だけど今回は…….三つの生き物が一つのところに固まって、ゆっくりとこちら向かって進んできているのだ。
反応からして兵士なのには間違いないけど……今までこんな事はなかった。それも十数体くらいあって、馬車で移動している可能性をそれだけで潰している事がわかった。
ぞわっとした悪寒を感じ、なにか嫌な汗が流れるのも、それを助長している。これをシグゼス指揮官に報告した方がいいだろうか?
「……いや、それでは遅いかも知れない。準備を待っていたら不味い事になりそうだ」
一瞬だけ湧き上がった感情を難なく斬り捨て、自分に言い聞かせるように呟いた言葉を噛みしめ、納得していた。
シグゼスならば、これから他の騎士に招集をかけ、一通り魔方陣で検証し、俺の言ってることが正しいとわかった時のみ動く事だろう。
彼は仲間を一人で行かせるような事はほとんどしない。特例を認める事はあるが、この状況ではそれも望めないだろう。かと言って何も知らせないというのも不味い。
さてどうしようかと思っていた時、一人の兵士が通りかかったのを発見して、チャンスだと思った。
「ちょっといいか?」
「……? はい。どうされましたか?」
鎧のない軽装の魔方兵と比べ、彼はしっかり着込んでいる。『索敵』関連の魔方陣の精度はあまり高くないと見てまず間違いないだろう。
「俺の『索敵』に怪しい物が引っかかった。確かめに行くからシグゼスに報告を頼む」
「それは構いませんが……危なくはないですか? 斥候でしたら近くの魔方兵にでも……」
「大丈夫だ。ちょっと気になっただけだし、それであまり大事にはしたくない。危険なことはしないから、俺が長いこと戻らなかった時の事を考えて、だからさ」
「……わかりました」
とりあえず後から適当に言い訳できそうな体裁を取ってから、あまり返事を聞かずにさっさと行くことにした。
奇妙な動き……これが一体何を意味するのか? それを確かめるために。
0
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる