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第十五節・再び相見える二人
第263幕 不意を突かれた者たち
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休憩がてら、しばらく箱の様子を見ていたけど、動く気配が全くない。
『索敵』の精度を上げると、残っているのはこの箱自体が帯びているであろう大きな魔力一つだけで、固まって乗っていた三つの魔力の反応はなかった。
一体どうやって動かしてるのだろうか? そんな好奇心が少し湧いてくる。多分この箱のどこかに馬車のように乗り込める場所があるのだろう。これがゴーレムのように魔力で動かすのであれば、わざわざ誰かが入る必要もないし、兵士たちは外でお供としてついて回ればいい。
それを三人も使って動かしてるんだ。相当大掛かりに違いない。
興味は尽きないがこれ以上ここにいるのも不味い。一応兵士に伝達してはいるけど、あまり離れすぎて心配掛けるのも良くはないだろう。
――ドォォォォッッン!!
いきなり遠くから大きな音が響いて、思わず魔方陣を展開する。しかし『索敵』『地図』の起動式で魔方陣を発動させても何の反応もない。魔力の反応も、ここにある戦車だけだ。
……心当たりがあるとしたら、『妨害』か『隠蔽』のどちらかだ。上手く魔力を隠して接近してきたというわけだ。
つまり……こいつらは俺を含めた兵士たちをおびき寄せる為にわざとゆっくりと行軍してきたことになる。それにしても、動きが早すぎる。こういうのは事前に時間や日を決めて、そのとおりに行動するのがセオリーだ。一体どんな手段を使っているのか……? そこも気になるが、今はそれよりも町に戻るほうが先だ。
考えることは後で出来る。そこまで思考がたどり着いた俺は『身体強化』を発動させて一気に町の方へと戻っていった。
――
なるべく早く戻ってきたそこには……火の海があった。周囲は所々地面が抉られていて、建物が吹き飛んだかのように瓦礫の山と化していた。世界に黒煙が立ち込め、赤と黒が光景ばかりが目につく。
「……なんだ? どうなってる?」
「グレファ!」
息を切らせてやってきたカッシェは少し煤で汚れていた。俺の姿を見て多少安堵したように息を吐いた。
呆然としていた俺は、片膝をついて疲れた顔をしているカッシェの方に駆け寄った。
「何があった?」
「て、敵だ。上から何かが降ってきて……それが地面に触れると、全部吹っ飛んで……!」
「落ち着け!」
少し冷静さを失ったカッシェを叱りつけるように声を張り上げると、彼はビクッと一際大きく震え、まじまじと俺の顔を見てきた。
未知への恐怖。現状についていけてない困惑。様々な負の色が、カッシェの目から読み取れる。それでもこれだけで済んでいるのだから騎士として訓練の賜物と言えるだろう。
「わ、悪い」
「それで、どうなった? 戦況は!?」
「ま、まだ戦闘中だ。今は止んでいるが、いつまた攻撃してくるかわかったものじゃない。後……」
言いづらそうに顔を伏せたカッシェの仕草で騎士の誰かが死んでしまったことを察してしまった。戦闘をしているということは、辛うじて軍は機能しているということだろう。ということはシグゼスはまだ生きているはずだ。
「残ってる騎士は俺とお前と……シグゼスさんだけだ。それだけじゃない。ここに住んでいただけの魔人も大勢。敵の目標が民家から離れていたおかげで難を逃れた奴も多い。今は町から避難中なんだけど、このままじゃ……」
「わかった。カッシェはシグゼスの指示を仰いでくれ」
「……お前はどうする?」
「俺は……ここに残って敵を迎え撃つ」
「その必要はないぜぇ」
俺とカッシェの会話に割り込むように聞いたことのある声が響いた。その方向へと顔を向けると、そこにいたのは……司だった。
「久しぶりだな。グレリアよ。俺の事、覚えてるか?」
「司……」
「ははっ! 覚えてくれて嬉しいぜ!」
腹を抱えて笑うその様は、こんな血と煙の世界では酷く歪んで見えた。というか、奴が俺の事を『グレリア』と呼んだせいでカッシェは目を見開いて俺の事を見ている。またこいつは……頭を悩ませることをしてくれやがって、と内心で軽く文句を言っておく。口に出しても、喜ぶだけだろうからな。
「必要はないってのはどういう事だ」
「はっ、知りたいのか? なあ?」
しばらく見ない間に随分と鬱陶しい成長を遂げてくれたものだ。大げさに両腕を広げている姿なんて本当に酷い。
俺の顔は知らずと嫌な物を見るような表情を浮かべていたようで、期待通りの反応をしてくれたと言わんばかりの満足げな顔をしているところなど、更に苛立たせてくれる。
「……いい加減、言ったらどうだ?」
「はっはっはっ、もう少し楽しませてくれよ。久しぶりの再会じゃあないか。……ま、いいか。教えてやるよ。俺がここにいるからさ」
「何の冗談だ?」
この男がここにいるから攻撃が止んだ、なんて頭がおかしくなったのか? とも思ったが、そう言えばこの男は人の国の勇者だったな……と思い出した。言動や行動が全く合ってないけどな。
「今は別の場所に待機してるってわけだ。俺の指示か……魔力反応が途切れたらまた爆撃を再開する手はずになっている。わかるか? お前と戦う為に、わざわざ手配してやったんだよ」
ありがたく思えと恩着せがましい事を言ってるが、たかだかそれだけの為に戦いを中断しているとは思えない。仕方ない。この男の言葉一つで再びこのような事になるというのなら、今は受けてやるしかないだろう。それで状況が好転するとは思えないが、何の力も持たない町民を巻き添えにすることだけはしてはいけない。避難が済むまで存分にやってやるさ。
『索敵』の精度を上げると、残っているのはこの箱自体が帯びているであろう大きな魔力一つだけで、固まって乗っていた三つの魔力の反応はなかった。
一体どうやって動かしてるのだろうか? そんな好奇心が少し湧いてくる。多分この箱のどこかに馬車のように乗り込める場所があるのだろう。これがゴーレムのように魔力で動かすのであれば、わざわざ誰かが入る必要もないし、兵士たちは外でお供としてついて回ればいい。
それを三人も使って動かしてるんだ。相当大掛かりに違いない。
興味は尽きないがこれ以上ここにいるのも不味い。一応兵士に伝達してはいるけど、あまり離れすぎて心配掛けるのも良くはないだろう。
――ドォォォォッッン!!
いきなり遠くから大きな音が響いて、思わず魔方陣を展開する。しかし『索敵』『地図』の起動式で魔方陣を発動させても何の反応もない。魔力の反応も、ここにある戦車だけだ。
……心当たりがあるとしたら、『妨害』か『隠蔽』のどちらかだ。上手く魔力を隠して接近してきたというわけだ。
つまり……こいつらは俺を含めた兵士たちをおびき寄せる為にわざとゆっくりと行軍してきたことになる。それにしても、動きが早すぎる。こういうのは事前に時間や日を決めて、そのとおりに行動するのがセオリーだ。一体どんな手段を使っているのか……? そこも気になるが、今はそれよりも町に戻るほうが先だ。
考えることは後で出来る。そこまで思考がたどり着いた俺は『身体強化』を発動させて一気に町の方へと戻っていった。
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なるべく早く戻ってきたそこには……火の海があった。周囲は所々地面が抉られていて、建物が吹き飛んだかのように瓦礫の山と化していた。世界に黒煙が立ち込め、赤と黒が光景ばかりが目につく。
「……なんだ? どうなってる?」
「グレファ!」
息を切らせてやってきたカッシェは少し煤で汚れていた。俺の姿を見て多少安堵したように息を吐いた。
呆然としていた俺は、片膝をついて疲れた顔をしているカッシェの方に駆け寄った。
「何があった?」
「て、敵だ。上から何かが降ってきて……それが地面に触れると、全部吹っ飛んで……!」
「落ち着け!」
少し冷静さを失ったカッシェを叱りつけるように声を張り上げると、彼はビクッと一際大きく震え、まじまじと俺の顔を見てきた。
未知への恐怖。現状についていけてない困惑。様々な負の色が、カッシェの目から読み取れる。それでもこれだけで済んでいるのだから騎士として訓練の賜物と言えるだろう。
「わ、悪い」
「それで、どうなった? 戦況は!?」
「ま、まだ戦闘中だ。今は止んでいるが、いつまた攻撃してくるかわかったものじゃない。後……」
言いづらそうに顔を伏せたカッシェの仕草で騎士の誰かが死んでしまったことを察してしまった。戦闘をしているということは、辛うじて軍は機能しているということだろう。ということはシグゼスはまだ生きているはずだ。
「残ってる騎士は俺とお前と……シグゼスさんだけだ。それだけじゃない。ここに住んでいただけの魔人も大勢。敵の目標が民家から離れていたおかげで難を逃れた奴も多い。今は町から避難中なんだけど、このままじゃ……」
「わかった。カッシェはシグゼスの指示を仰いでくれ」
「……お前はどうする?」
「俺は……ここに残って敵を迎え撃つ」
「その必要はないぜぇ」
俺とカッシェの会話に割り込むように聞いたことのある声が響いた。その方向へと顔を向けると、そこにいたのは……司だった。
「久しぶりだな。グレリアよ。俺の事、覚えてるか?」
「司……」
「ははっ! 覚えてくれて嬉しいぜ!」
腹を抱えて笑うその様は、こんな血と煙の世界では酷く歪んで見えた。というか、奴が俺の事を『グレリア』と呼んだせいでカッシェは目を見開いて俺の事を見ている。またこいつは……頭を悩ませることをしてくれやがって、と内心で軽く文句を言っておく。口に出しても、喜ぶだけだろうからな。
「必要はないってのはどういう事だ」
「はっ、知りたいのか? なあ?」
しばらく見ない間に随分と鬱陶しい成長を遂げてくれたものだ。大げさに両腕を広げている姿なんて本当に酷い。
俺の顔は知らずと嫌な物を見るような表情を浮かべていたようで、期待通りの反応をしてくれたと言わんばかりの満足げな顔をしているところなど、更に苛立たせてくれる。
「……いい加減、言ったらどうだ?」
「はっはっはっ、もう少し楽しませてくれよ。久しぶりの再会じゃあないか。……ま、いいか。教えてやるよ。俺がここにいるからさ」
「何の冗談だ?」
この男がここにいるから攻撃が止んだ、なんて頭がおかしくなったのか? とも思ったが、そう言えばこの男は人の国の勇者だったな……と思い出した。言動や行動が全く合ってないけどな。
「今は別の場所に待機してるってわけだ。俺の指示か……魔力反応が途切れたらまた爆撃を再開する手はずになっている。わかるか? お前と戦う為に、わざわざ手配してやったんだよ」
ありがたく思えと恩着せがましい事を言ってるが、たかだかそれだけの為に戦いを中断しているとは思えない。仕方ない。この男の言葉一つで再びこのような事になるというのなら、今は受けてやるしかないだろう。それで状況が好転するとは思えないが、何の力も持たない町民を巻き添えにすることだけはしてはいけない。避難が済むまで存分にやってやるさ。
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