282 / 415
第十五節・再び相見える二人
第265幕 慢心故の逆転
しおりを挟む
改めて司と相対した俺は、機を見計らっていた。
ただでさえ今でも隙だらけなのだが、今俺が動いてこいつが気付いても困る。もう少し、引きつけてから行動に移りたいというのが本音だ。
そう、この男が後ろで形成されている魔方陣に気付かないようにしておきたいのだ。
カッシェの方に気を取られている内にこっそり奴の後ろに『神』『雷』『矢』の三つの起動式で構築した物だ。
彼が司の気を引いていなければ構築することすら出来なかっただろう。それでも手段はあっただろうが、もっと危険な事を強いることになっていただろう。
小細工を弄する事が出来ない俺は、純粋に力や技術で勝負することしか出来ないからな。最悪、カッシェの命を奪うことになってでも一気に決着を付けに行っていただろう。今の状況もあまりよろしくはないが、少なくとも彼は生きている。かなりボロボロにされてしまったが、あれなら命に別条はない。
多少の負い目はあるが、何の気兼ねもなく攻撃することが出来る。
「覚悟はいいか? 司……!」
「覚悟? はっ! お前には俺を倒せねぇよ!」
「随分と自信じゃないか。油断してると、痛い目に合うぞ?」
情報を聞き出すついでに挑発してみたが、司の奴は余計に大きな笑い声を上げていた。今すぐにでも仕留めてやりたい感情を抑える。こういう奴は大体自分の力を自慢したがるもんだからな。
「痛い目? 笑わせるなよ。前の俺とは違う。俺の『時間を止める力』は最強だ!」
粋がる司は予想通り、わざわざ自分の能力について教えてくれた。しかし……瞬間移動させるのではなく、時を止める能力か……。
恐らく範囲はかなり広いのだろう。司自身は動けるはずだから、奴の手に持っている物も動作する。
弾やナイフが直前に迫ってきていたのは、奴の手から離れてその能力の制限を受けたからだと考えれば色々と納得できる。
司の頭が弱かったおかげで、奴の能力が大体把握できた。その上弱点も検討がついたし、後は行動するだけだ。
なにかすれば間違いなく司は時を止めてくるだろう。自分は優位に立ちたいが、あまりリスクは犯したくない……こいつはそういう男だ。一切そういう素振りを見せずに攻撃しなくてはならない。
「司、そういう思い上がりが慢心に繋がるんだよ!」
勢いよく司に向けて手をかざすと、後ろの魔方陣から鋭い雷光が迸り、音を立てて一筋の矢が放たれるそれを皮切りに次々と無数の矢が俺と司の二人を襲ってくる。これを直撃してしまえば、俺も間違いなく死ぬだろう……。それほどの威力を感じさせる白と黄色が入り混じった神雷の矢。
普通ならば足が竦んで臆するところだろう。しかし司は後ろに出現したそれをちらりとだけ見て含むような笑い声を上げていた。
「くっ……くっくっくっ……はーっはっはっ!! 言っただろうが! 俺の能力は最強だってよ!」
司の高笑いも時間が止まることももちろんわかってる。奴は俺の足に銃弾を打ち込んで、その後に遠くへと離脱するつもりだろう。そこまで読めてなお、魔方陣を発動させてるという事に気付かない時点でお前の負けだよ。
奴が目の前からいなくなる前に剣を抜いて『風』の魔方陣を発動させる。
そして……司が消えると同時に風を纏わせた剣を振るい、どこから来るかわからなかった銃弾を防ぐ。同時に司の位置を確認して、魔方陣によって生み出された雷の矢を全く同じ起動式で迎え撃ちながら奴の死角になるように移動し『身体強化』の魔方陣を重ねて発動させて難を逃れる。
すぐさま『神』『速』で魔方陣を構築。雷の矢が全て出てしまい、通り過ぎたタイミングを見計らって発動させる。
何もかもを置き去りにするほどの加速。直進するだけなら、他の追随を決して許さない圧倒的な速さ。その代償に掛かる僅かな負荷を感じながら、俺は司の目の前に躍り出た。
「……なっ」
司の顔は驚愕に満ちた色に染まるが奴が散々自慢していた時を止める能力とやらが発動する形跡はない。
推測通り、奴の勇者としての力は、近距離では効果すら発揮できないようだ。慌てて『身体強化』の魔方陣を発動して俺から離れようとしているが、明らかに遅い。
こっちは直線距離なら最速だ。ナイフを抜かずにいた事が完全に裏目に出たな。
もはやなにも迷うことはない。俺は司に剣を振り下ろし……奴は回避し損ねた。
「がぁ……っ! ああああ!!」
地面に座るように倒れて、深々と斬られている胸を抑えていた。憎々しげに俺を睨んで銃口を俺の方に向けている。
なるほど、戦意はまだ失ってないようだな…….!
「グゥレェリィアァァ!!」
怨念を込めて俺の名前を叫びながら撃ってきたが、時を止められたわけじゃない。剣で難なく防いで、銃を持った腕に剣を突き刺して奴の攻撃手段を一つ断つ。
うめきながら痛みに銃を落として残った左手で魔方陣を展開してきたが、それよりも早く『爆』の魔方陣を発動させ、奴の左手ごと魔方陣に爆発と衝撃を与えてやる。
「がぁぁぁぁぁ!! くそ! くそぉぉぉ!」
喚きながら地面を転がる司のことを哀れに思う。もう少し本気で俺の事を殺しに来ていれば、低いなりにも可能性はあったろう。
カッシェの後押しがなかったら、もう少し決断を遅らせていただろう。
せめてこれ以上苦しまずに命を奪う事こそ、俺から司へ与えられる最後の慈悲だ。
ただでさえ今でも隙だらけなのだが、今俺が動いてこいつが気付いても困る。もう少し、引きつけてから行動に移りたいというのが本音だ。
そう、この男が後ろで形成されている魔方陣に気付かないようにしておきたいのだ。
カッシェの方に気を取られている内にこっそり奴の後ろに『神』『雷』『矢』の三つの起動式で構築した物だ。
彼が司の気を引いていなければ構築することすら出来なかっただろう。それでも手段はあっただろうが、もっと危険な事を強いることになっていただろう。
小細工を弄する事が出来ない俺は、純粋に力や技術で勝負することしか出来ないからな。最悪、カッシェの命を奪うことになってでも一気に決着を付けに行っていただろう。今の状況もあまりよろしくはないが、少なくとも彼は生きている。かなりボロボロにされてしまったが、あれなら命に別条はない。
多少の負い目はあるが、何の気兼ねもなく攻撃することが出来る。
「覚悟はいいか? 司……!」
「覚悟? はっ! お前には俺を倒せねぇよ!」
「随分と自信じゃないか。油断してると、痛い目に合うぞ?」
情報を聞き出すついでに挑発してみたが、司の奴は余計に大きな笑い声を上げていた。今すぐにでも仕留めてやりたい感情を抑える。こういう奴は大体自分の力を自慢したがるもんだからな。
「痛い目? 笑わせるなよ。前の俺とは違う。俺の『時間を止める力』は最強だ!」
粋がる司は予想通り、わざわざ自分の能力について教えてくれた。しかし……瞬間移動させるのではなく、時を止める能力か……。
恐らく範囲はかなり広いのだろう。司自身は動けるはずだから、奴の手に持っている物も動作する。
弾やナイフが直前に迫ってきていたのは、奴の手から離れてその能力の制限を受けたからだと考えれば色々と納得できる。
司の頭が弱かったおかげで、奴の能力が大体把握できた。その上弱点も検討がついたし、後は行動するだけだ。
なにかすれば間違いなく司は時を止めてくるだろう。自分は優位に立ちたいが、あまりリスクは犯したくない……こいつはそういう男だ。一切そういう素振りを見せずに攻撃しなくてはならない。
「司、そういう思い上がりが慢心に繋がるんだよ!」
勢いよく司に向けて手をかざすと、後ろの魔方陣から鋭い雷光が迸り、音を立てて一筋の矢が放たれるそれを皮切りに次々と無数の矢が俺と司の二人を襲ってくる。これを直撃してしまえば、俺も間違いなく死ぬだろう……。それほどの威力を感じさせる白と黄色が入り混じった神雷の矢。
普通ならば足が竦んで臆するところだろう。しかし司は後ろに出現したそれをちらりとだけ見て含むような笑い声を上げていた。
「くっ……くっくっくっ……はーっはっはっ!! 言っただろうが! 俺の能力は最強だってよ!」
司の高笑いも時間が止まることももちろんわかってる。奴は俺の足に銃弾を打ち込んで、その後に遠くへと離脱するつもりだろう。そこまで読めてなお、魔方陣を発動させてるという事に気付かない時点でお前の負けだよ。
奴が目の前からいなくなる前に剣を抜いて『風』の魔方陣を発動させる。
そして……司が消えると同時に風を纏わせた剣を振るい、どこから来るかわからなかった銃弾を防ぐ。同時に司の位置を確認して、魔方陣によって生み出された雷の矢を全く同じ起動式で迎え撃ちながら奴の死角になるように移動し『身体強化』の魔方陣を重ねて発動させて難を逃れる。
すぐさま『神』『速』で魔方陣を構築。雷の矢が全て出てしまい、通り過ぎたタイミングを見計らって発動させる。
何もかもを置き去りにするほどの加速。直進するだけなら、他の追随を決して許さない圧倒的な速さ。その代償に掛かる僅かな負荷を感じながら、俺は司の目の前に躍り出た。
「……なっ」
司の顔は驚愕に満ちた色に染まるが奴が散々自慢していた時を止める能力とやらが発動する形跡はない。
推測通り、奴の勇者としての力は、近距離では効果すら発揮できないようだ。慌てて『身体強化』の魔方陣を発動して俺から離れようとしているが、明らかに遅い。
こっちは直線距離なら最速だ。ナイフを抜かずにいた事が完全に裏目に出たな。
もはやなにも迷うことはない。俺は司に剣を振り下ろし……奴は回避し損ねた。
「がぁ……っ! ああああ!!」
地面に座るように倒れて、深々と斬られている胸を抑えていた。憎々しげに俺を睨んで銃口を俺の方に向けている。
なるほど、戦意はまだ失ってないようだな…….!
「グゥレェリィアァァ!!」
怨念を込めて俺の名前を叫びながら撃ってきたが、時を止められたわけじゃない。剣で難なく防いで、銃を持った腕に剣を突き刺して奴の攻撃手段を一つ断つ。
うめきながら痛みに銃を落として残った左手で魔方陣を展開してきたが、それよりも早く『爆』の魔方陣を発動させ、奴の左手ごと魔方陣に爆発と衝撃を与えてやる。
「がぁぁぁぁぁ!! くそ! くそぉぉぉ!」
喚きながら地面を転がる司のことを哀れに思う。もう少し本気で俺の事を殺しに来ていれば、低いなりにも可能性はあったろう。
カッシェの後押しがなかったら、もう少し決断を遅らせていただろう。
せめてこれ以上苦しまずに命を奪う事こそ、俺から司へ与えられる最後の慈悲だ。
0
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる