リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十七節・落日の国編

第295幕 神焔の剣

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 最初の魔方陣を発動させてから少し経った時、基地の上空から巨大な魔方陣が描かれ、大きな『神焔』の剣がゆっくりと地面へと向かって降りていった。

 地響きと共に遠くで何かが爆発するような音が聞こえて、最初の魔方陣で喚び出された剣が、地面へと到達したんだろうと思っていると……俺たちが見守る中、二つ目の剣が基地へと突き刺さり、周囲を白い焔が焼き尽くしていく。

「……これは、凄いですね。ここまでのものとは思いもしませんでしたよ」

 シエラが言葉を失った様子で目の前の光景を茫然と眺めている中、ヘンリーもこの地獄を眺めながら自然と言葉を口にしていた。

 俺の方は四つの魔方陣を制御しながらこの光景を見ているせいで、あまり言葉を紡ぐ事はできない。が、彼らがそんな風に驚くのも無理はないだろう。
 遠くから見ているからまだこれだけで済んでいるが、これが間近に見たものだったら……恐怖の方を先に覚えてしまうだろう。それだけ、この魔方陣が圧倒的だと言う事だ。恐らく、同じ『神』の文字を使った防御の魔方陣ですら、これを防ぐ事はできないだろう。

 それだけこの魔方陣の威力が圧倒的だと言う訳だがな。

「……いつまで、続けるの?」

 少し震えた声で恐る恐ると言った様子で、俺の方を向いてきたシエラにゆっくりと首を振って『まだだ』と意思表示をした。
 今、あの基地がどうなってるかはわからない。だけど中途半端で済ませてしまえば、それがどんな結果に転がるかわかったものじゃない。やる時は徹底的にやる。
 情けをかけるなら、自分がしっかり責任を持たなければならない。

 シエラの顔を見れないまま、俺はひたすら魔方陣を発動し続けた――

 ――

 それからしばらくして、魔方陣に魔力を供給する事をやめた俺は、二人と共に近場の基地の様子を見に行った。
 それは……とてもじゃないが、言葉にできない程悲惨な有様だった。

「これが、私たちがやった結果……」

 シエラが呟いた言葉を噛みしめながら、その光景を目に焼き付ける。そこにあったのはどろどろに溶けた痕が残った拠点だった場所だった。硝子のようなものが地面には出来ていて、そこには跡形もない。

 あれだけいた兵士も、恐らく存在しただろう様々な兵器も全て何も残らず消えてしまった。一切残らず。

「ここがこの様子では、他の基地も同じような状態でしょう。グレリアさん、お疲れ様でした」
「……な、なんでそんなに冷静なの!? 兵器をなんとか出来れば……ここまでしなくても……」
「それではここで悲しめと? 言いたくはないですけどね、シエラさんはきちんと現実が見えてますか?」
「……どういうこと?」

 シエラの言葉に我慢の限界を迎えかけているヘンリーが、少し苛立つように『どうするのか?』と視線を俺に向けてきていたが、俺は何も言わずに黙ったまま……ヘンリーに全てを任せることにした。

「私たちは戦争をしているんです。良いですか? 人殺しをしているんですよ。綺麗事では解決できないから……だからこうやって先に戦力を潰しているんじゃないですか」
「それは……わかってるけど……」
「いいえ、わかってません。あれが地上に出れば、戦車は町を壊し、あの戦闘機は町を焼くでしょう。わかりますか? 今、少しでも判断を鈍らせたり、誤れば、その矛先は確実に私たちに――なんの罪のない魔人の皆さんに向くんですよ」

 今までの――戦車などを用いない戦いならばここまで非情に徹することはないだろう。だが……

「わかってるよ! でも、実際目にすると……」
「怖気付いた、という訳ですか。私たちは遊びや冗談でこんな事をしに来たんじゃないですよ。このままでは魔人が全て死に絶えてしまう。かといってどちらが滅びるまで争うのも間違えている……だからこそ、それらを止めるためにここにいるんじゃないですか」
「……うん。そう、だよね」
「グレリアさんはここで普通に生活している――戦いとは無縁の者には極力被害が及ばないように努めてくださいました。褒める事はあれど、怒ったり貶したりするのは間違っています。あそこにいるのは……戦いで糧を得ていた人たちなのですから」

 ヘンリーの説得が功を奏したのか、シエラは握っていた拳を弱め、力をなくしたように頷いていた。俺の言いたい事を大体言ってくれた彼は、少し疲れたように息を吐いていた。

「……ごめんなさい。いきなりあんな光景を見ちゃったせいで、ちょっとどうかしてた。そうだよね。私たちがここに来たのは……戦争の被害を、少しでも食い止めるためなん、だものね」
「仕方ないさ。あんな光景を見たら、誰でも動揺する」

 俺とヘンリーに視線を向け、謝る彼女を責める事はしなかった。

「……しばらくはここで情報収集をしてから、大丈夫だと判断できたら次の都市へと向かおう。二人共、それでいいな?」
「ええ。それで良いと思います」
「うん。わかったよ」

 短い戦いの火蓋は、蹂躙の一撃であっさりと終わってしまった。どこか後味の悪い結末を残して――
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