312 / 415
第十七節・落日の国編
第295幕 神焔の剣
しおりを挟む
最初の魔方陣を発動させてから少し経った時、基地の上空から巨大な魔方陣が描かれ、大きな『神焔』の剣がゆっくりと地面へと向かって降りていった。
地響きと共に遠くで何かが爆発するような音が聞こえて、最初の魔方陣で喚び出された剣が、地面へと到達したんだろうと思っていると……俺たちが見守る中、二つ目の剣が基地へと突き刺さり、周囲を白い焔が焼き尽くしていく。
「……これは、凄いですね。ここまでのものとは思いもしませんでしたよ」
シエラが言葉を失った様子で目の前の光景を茫然と眺めている中、ヘンリーもこの地獄を眺めながら自然と言葉を口にしていた。
俺の方は四つの魔方陣を制御しながらこの光景を見ているせいで、あまり言葉を紡ぐ事はできない。が、彼らがそんな風に驚くのも無理はないだろう。
遠くから見ているからまだこれだけで済んでいるが、これが間近に見たものだったら……恐怖の方を先に覚えてしまうだろう。それだけ、この魔方陣が圧倒的だと言う事だ。恐らく、同じ『神』の文字を使った防御の魔方陣ですら、これを防ぐ事はできないだろう。
それだけこの魔方陣の威力が圧倒的だと言う訳だがな。
「……いつまで、続けるの?」
少し震えた声で恐る恐ると言った様子で、俺の方を向いてきたシエラにゆっくりと首を振って『まだだ』と意思表示をした。
今、あの基地がどうなってるかはわからない。だけど中途半端で済ませてしまえば、それがどんな結果に転がるかわかったものじゃない。やる時は徹底的にやる。
情けをかけるなら、自分がしっかり責任を持たなければならない。
シエラの顔を見れないまま、俺はひたすら魔方陣を発動し続けた――
――
それからしばらくして、魔方陣に魔力を供給する事をやめた俺は、二人と共に近場の基地の様子を見に行った。
それは……とてもじゃないが、言葉にできない程悲惨な有様だった。
「これが、私たちがやった結果……」
シエラが呟いた言葉を噛みしめながら、その光景を目に焼き付ける。そこにあったのはどろどろに溶けた痕が残った拠点だった場所だった。硝子のようなものが地面には出来ていて、そこには跡形もない。
あれだけいた兵士も、恐らく存在しただろう様々な兵器も全て何も残らず消えてしまった。一切残らず。
「ここがこの様子では、他の基地も同じような状態でしょう。グレリアさん、お疲れ様でした」
「……な、なんでそんなに冷静なの!? 兵器をなんとか出来れば……ここまでしなくても……」
「それではここで悲しめと? 言いたくはないですけどね、シエラさんはきちんと現実が見えてますか?」
「……どういうこと?」
シエラの言葉に我慢の限界を迎えかけているヘンリーが、少し苛立つように『どうするのか?』と視線を俺に向けてきていたが、俺は何も言わずに黙ったまま……ヘンリーに全てを任せることにした。
「私たちは戦争をしているんです。良いですか? 人殺しをしているんですよ。綺麗事では解決できないから……だからこうやって先に戦力を潰しているんじゃないですか」
「それは……わかってるけど……」
「いいえ、わかってません。あれが地上に出れば、戦車は町を壊し、あの戦闘機は町を焼くでしょう。わかりますか? 今、少しでも判断を鈍らせたり、誤れば、その矛先は確実に私たちに――なんの罪のない魔人の皆さんに向くんですよ」
今までの――戦車などを用いない戦いならばここまで非情に徹することはないだろう。だが……
「わかってるよ! でも、実際目にすると……」
「怖気付いた、という訳ですか。私たちは遊びや冗談でこんな事をしに来たんじゃないですよ。このままでは魔人が全て死に絶えてしまう。かといってどちらが滅びるまで争うのも間違えている……だからこそ、それらを止めるためにここにいるんじゃないですか」
「……うん。そう、だよね」
「グレリアさんはここで普通に生活している――戦いとは無縁の者には極力被害が及ばないように努めてくださいました。褒める事はあれど、怒ったり貶したりするのは間違っています。あそこにいるのは……戦いで糧を得ていた人たちなのですから」
ヘンリーの説得が功を奏したのか、シエラは握っていた拳を弱め、力をなくしたように頷いていた。俺の言いたい事を大体言ってくれた彼は、少し疲れたように息を吐いていた。
「……ごめんなさい。いきなりあんな光景を見ちゃったせいで、ちょっとどうかしてた。そうだよね。私たちがここに来たのは……戦争の被害を、少しでも食い止めるためなん、だものね」
「仕方ないさ。あんな光景を見たら、誰でも動揺する」
俺とヘンリーに視線を向け、謝る彼女を責める事はしなかった。
「……しばらくはここで情報収集をしてから、大丈夫だと判断できたら次の都市へと向かおう。二人共、それでいいな?」
「ええ。それで良いと思います」
「うん。わかったよ」
短い戦いの火蓋は、蹂躙の一撃であっさりと終わってしまった。どこか後味の悪い結末を残して――
地響きと共に遠くで何かが爆発するような音が聞こえて、最初の魔方陣で喚び出された剣が、地面へと到達したんだろうと思っていると……俺たちが見守る中、二つ目の剣が基地へと突き刺さり、周囲を白い焔が焼き尽くしていく。
「……これは、凄いですね。ここまでのものとは思いもしませんでしたよ」
シエラが言葉を失った様子で目の前の光景を茫然と眺めている中、ヘンリーもこの地獄を眺めながら自然と言葉を口にしていた。
俺の方は四つの魔方陣を制御しながらこの光景を見ているせいで、あまり言葉を紡ぐ事はできない。が、彼らがそんな風に驚くのも無理はないだろう。
遠くから見ているからまだこれだけで済んでいるが、これが間近に見たものだったら……恐怖の方を先に覚えてしまうだろう。それだけ、この魔方陣が圧倒的だと言う事だ。恐らく、同じ『神』の文字を使った防御の魔方陣ですら、これを防ぐ事はできないだろう。
それだけこの魔方陣の威力が圧倒的だと言う訳だがな。
「……いつまで、続けるの?」
少し震えた声で恐る恐ると言った様子で、俺の方を向いてきたシエラにゆっくりと首を振って『まだだ』と意思表示をした。
今、あの基地がどうなってるかはわからない。だけど中途半端で済ませてしまえば、それがどんな結果に転がるかわかったものじゃない。やる時は徹底的にやる。
情けをかけるなら、自分がしっかり責任を持たなければならない。
シエラの顔を見れないまま、俺はひたすら魔方陣を発動し続けた――
――
それからしばらくして、魔方陣に魔力を供給する事をやめた俺は、二人と共に近場の基地の様子を見に行った。
それは……とてもじゃないが、言葉にできない程悲惨な有様だった。
「これが、私たちがやった結果……」
シエラが呟いた言葉を噛みしめながら、その光景を目に焼き付ける。そこにあったのはどろどろに溶けた痕が残った拠点だった場所だった。硝子のようなものが地面には出来ていて、そこには跡形もない。
あれだけいた兵士も、恐らく存在しただろう様々な兵器も全て何も残らず消えてしまった。一切残らず。
「ここがこの様子では、他の基地も同じような状態でしょう。グレリアさん、お疲れ様でした」
「……な、なんでそんなに冷静なの!? 兵器をなんとか出来れば……ここまでしなくても……」
「それではここで悲しめと? 言いたくはないですけどね、シエラさんはきちんと現実が見えてますか?」
「……どういうこと?」
シエラの言葉に我慢の限界を迎えかけているヘンリーが、少し苛立つように『どうするのか?』と視線を俺に向けてきていたが、俺は何も言わずに黙ったまま……ヘンリーに全てを任せることにした。
「私たちは戦争をしているんです。良いですか? 人殺しをしているんですよ。綺麗事では解決できないから……だからこうやって先に戦力を潰しているんじゃないですか」
「それは……わかってるけど……」
「いいえ、わかってません。あれが地上に出れば、戦車は町を壊し、あの戦闘機は町を焼くでしょう。わかりますか? 今、少しでも判断を鈍らせたり、誤れば、その矛先は確実に私たちに――なんの罪のない魔人の皆さんに向くんですよ」
今までの――戦車などを用いない戦いならばここまで非情に徹することはないだろう。だが……
「わかってるよ! でも、実際目にすると……」
「怖気付いた、という訳ですか。私たちは遊びや冗談でこんな事をしに来たんじゃないですよ。このままでは魔人が全て死に絶えてしまう。かといってどちらが滅びるまで争うのも間違えている……だからこそ、それらを止めるためにここにいるんじゃないですか」
「……うん。そう、だよね」
「グレリアさんはここで普通に生活している――戦いとは無縁の者には極力被害が及ばないように努めてくださいました。褒める事はあれど、怒ったり貶したりするのは間違っています。あそこにいるのは……戦いで糧を得ていた人たちなのですから」
ヘンリーの説得が功を奏したのか、シエラは握っていた拳を弱め、力をなくしたように頷いていた。俺の言いたい事を大体言ってくれた彼は、少し疲れたように息を吐いていた。
「……ごめんなさい。いきなりあんな光景を見ちゃったせいで、ちょっとどうかしてた。そうだよね。私たちがここに来たのは……戦争の被害を、少しでも食い止めるためなん、だものね」
「仕方ないさ。あんな光景を見たら、誰でも動揺する」
俺とヘンリーに視線を向け、謝る彼女を責める事はしなかった。
「……しばらくはここで情報収集をしてから、大丈夫だと判断できたら次の都市へと向かおう。二人共、それでいいな?」
「ええ。それで良いと思います」
「うん。わかったよ」
短い戦いの火蓋は、蹂躙の一撃であっさりと終わってしまった。どこか後味の悪い結末を残して――
0
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる