リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
313 / 415
第十七節・落日の国編

第296幕 道の途中

しおりを挟む
 全ての基地を一斉に壊滅させてから数日。地下都市シンゼルスは突如起こった地震によって多少の混乱はあるものの、大勢がいつもの日常を送っていた。
 夜に出現させた神焔の剣を見た者もいるらしく、彼らは「神が兵器を嫌い、焼き払っていった」という噂話をしていた。

 死んだ兵士の家族らしき人物が悲しそうに俯いているのには少々心が痛む。誰も死ななければ、本当はそれに越した事はないのだ。それがどんなに甘い理想だとわかっていても、な。

 ヘンリーとシエラも率先して情報を集めてくれた。他に残されていたり、隠されている兵器があるかもしれない……と、注意深く色々探ってくれてはいたが、そこら辺はどうやら問題ないらしく、シンゼルスに存在していた兵器は跡形もなく一掃された形となった。

「これ以上、ここにいても大した情報は得られませんね。どうしますか? 新しい都市に行きますか?」

  しばらく情報収集に勤しんでいた俺たちは、改めて三人で集まり、今後の予定について話し合う事になった。

「 そうだな……シエラの方も、それで問題ないか?」
「……うん。そうだね。でも――」
「でも?」
「……またあそこを通ることになるんだよね」

 シエラも別の都市に行くこと自体は同意してくれたが、これからもう一度あの長い暗闇を通ることにうんざりしているような声を上げていた。
 それもそうかなんと言ってもあそこは長い。薄明るいから完全に道が見えないわけじゃないが、ほとんど暗いせいで時間が曖昧になるような錯覚さえあるしな。

「……こればっかりは仕方ありませんね。電車を使えればそういう苦労も軽減するのでしょうが、生憎と私もアレは運転出来ませんからね」

 思わずため息が漏れるが、こればっかりはどうしようもない。なんとか出来ないのなら、またあそこを上るしかないのだ。

「はぁ……仕方ない、よね」
「そうだな。どうせ後二回は似た道を通るんだ。決断するかしないか、だ」
「それ言われると鈍るからやめて」

 頭を抱えて嫌そうな顔をしていたシエラも、最後には覚悟を決めて地上に帰る事を承諾した。どうやらこの数日で基地襲撃の件は振り切ったようだった。

「よし。それじゃあ一日だけ英気を養って、明後日にはここを出よう。それでいいな?」

 二人の頷いてる様子を確認した俺は、話し合いを終える事にした。正直なところ、今すぐにでもここから出て行った方が良いと考えてはいる。だけど、俺に合わせて二人が疲労した状態で戦闘に入るのは出来る限り避けたいのが本音だ。精神的な疲れを癒す意味でも完全に休みの日を設け、意識を切り替えて欲しい。

 幸い、敵の方にはあまり動きが見られないしな。休める時に休むのもまた、戦士の務めってやつだろう。

 ――さて、だったら俺も……久しぶりに羽を伸ばすとするか。しっかりと休んで、明日に備えておかないとな。

 ――

 そして一日明けた次の日の朝から、俺たちは再び通ってきた道を使って地上へと戻っていた。『身体強化』をかけてひたすら上に行くだけの単純な道のりを苦痛に感じながら、ただ黙々と足を動かし続ける。
 初めて降りていた時は少しでも気を紛らわせるために喋りながらだったが、出口がある事がはっきりとわかってる今では、時折休憩を挟んで、そこでいくつか話しながら張り詰めすぎないようにすることにした。

 そういう時はシエラが買っていた菓子などを進めてくるから、適当に摘んでリラックスしたり……行きとは全く違う少し緩やかな空気を保ったまま、どんどん先へと進んでいく。

 長い間走り続け、ソフィアと戦ったあの場所まで辿り着いた。待ち伏せされるなら間違いなくここだろう……なんて自然と身構えていたが、そんなことは一切なく、普通にぽっかりと広がる空間が存在するだけだった。拍子抜けな事になった俺たちは、妙に肩透かしを喰らったような状態で再び上へと進んだ。

 もし、俺たちの侵入を気づいていて、何かを仕掛けてくるとしたら間違いなくここだと思ったのだけれど……どうやら見当違いのようで、ソフィアとの一戦のせいで少し過剰に反応しているのかも知れないな。

「ここまで来ればもう少しですね」

 ヘンリーが息を吐きながら安堵するように呟いていた。彼もここに入るまではかなり警戒していたが、実際誰もいないとなると少し気が抜けたようだった。

「……もしかして、下の騒ぎを知らないのかな?」
「そんなことはないでしょう。基地を襲撃して、既に何日も経っている。それでも動きがないということは――」
「ここは放棄されたか……もしくは俺たちの気の緩みを待っているか」

 真実はどちらかわからない。が、このまま無事に進むとは思わない方が良いだろう。既にここを立ち去り、別の国の防衛を強固にしているかも知れないんだからな。

「とりあえず、先に進むしかないってことかな」

 シエラの呟きに頷き、俺たちは再び先へと進み……しばらくした後、ようやく出入り口に天井に到着して、魔方陣を発動させて扉を開いた。

 光が射すその瞬間、ようやく辿り着いたとうんざりするように思っていた時に何かが投げ込まれ、俺たちは……爆風に包まれるのだった――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...