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第十七節・落日の国編
第304幕 提示された贄
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それからまた数日。城の賓客としてのもてなしを受けながら、一向に進まない展開に頭を悩ませる事になった。
俺たちにとって、今一番大事なのはグランセストに侵攻してくる残りの国をどうするか……なのだが、外に出るのにも護衛という名の監視がつく現状ではそんな事を考える暇すらない。
「思ったよりずっと窮屈だけど……いつまでこうしていれば良いんだろう?」
シエラがわざわざ俺の部屋にやってきてだらけている程には深刻な事態と言えるだろう。ここにいてはグランセストからの情報が全く入ってこないのだから参ってしまう。
「今は耐えるしかないだろう。ただ、何が起こるか分からないんだから、気は抜くなよ?」
「うん、わかったー」
どうにも人の話を聞かない子のようで、シエラはやる気を見せる様子がない。
思わずため息を吐いて中庭でも見てこようかと思った矢先、扉をノックする音が響いた。その瞬間、今までのだらけ具合が嘘のようにしゃきっとした様子で座っているのだから呆れてしまう。
「本当に、猫被りは上手いんだな……」
「そんな事より、出なくて良いの?」
再びコンコンという音が響いた事で、シエラへの追及は後回しにすることにして扉を開いた。
「……貴方は」
そこにいたのは少しくたびれた顔をしていた代表の男だった。確かアリッカルで少し話した後聞いた名前は――ロイウスだったはずだ。
「窮屈な思いをさせてしまって申し訳ございません」
「いや、構わない。ここに来た時からある程度予想はしていたからな」
シエラが不満そうな顔をして何かを言おうとしていたのを、急いで遮って急ぎがちに捲し立てた。変にややこしくなっても困るし、話の腰を折りかねないからな。
「それで、今日はどうした?」
「はい。実は……グレリア殿にお願いしたいことがあるんですよ。ジパーニグでも上の地位の方に話をとおすことになりました。結論から言いますと、グレリア殿にはアリッカルの代表として戦ってもらいたいのです」
やはりというかなんというか、こんな事になるんじゃないかとなんとなく予想がついていた。それ程までに勝負に拘りそうな男を、俺は知ってるからな。
「それで、ただ戦うだけじゃないんだろう?」
「はい。こちらは改心した魔人を味方に引き入れている…….という事になっております。『グレリア殿一人』だけ、らしいです」
「……それだけなのか?」
「ええ」
そこのところが気になるのか、ロイウスは首を傾げていた。少なくとも、俺の実力を知っているであろう奴らがいる以上、どんな不利な状況になったって不思議じゃない。それがほとんど変化のない状態で戦う……となると何かしらの小細工をしていると考えた方がいいのかもしれない。
「またえらく簡素な条件だな。てっきり手首を縛って百人ぐらい相手にするのかと思ったぞ」
「ははっ、確かに似たような案は要求されましたよ。同盟を組みたかったら、これくらいしなければ……と、半ば処刑同然の内容でした。しかし、これからの事やアリッカルの戦力がジパーニグに向く可能性を軽く示唆してあげると、大人しくしてくれましたね」
話を聞く限り、随分無茶な事をしていたようだ。というか――
「倒していいなら処刑同然でも構わなかったのだが」
「貴方ならそう言うかも……とは思いましたが、万が一があっても困りますので……。今一番重要なのは、魔人――アンヒュルにどういう風に接するかです。また少数で城に攻め込まれて、王を殺されてしまう。そうならないようにする策が無ければ……」
「再び同じ事を繰り返してしまいかねない、と」
これについては大体その見解が正しいと言わざるを得ない。ジパーニグが敵対する限り、そうなるだろうからな。
「そういうわけです。向こうも渋々、こちらの擦り合わせて納得した形ですね。恐らく……一対多で殺しはなし、という事になりそうでます」
「そんな! それじゃ勝てないんじゃ……!」
まさか戦車を持ち込んではこないだろう。あれが出てきて死体を転がすなというのであれば、俺には不可能だ。元々攻撃向きの能力で、俺自身もそっちに特化している。弾を回避しただけで誰かが死ぬ事になるのは摂理みたいなものだ……が、逆にそれが無ければ丁度良い負荷なのかもしれないな。
「俺が奴らの攻撃を避けた時に、別の兵士に当たって死んだらどうなる?」
「そこについては自業自得です。あくまでグレリア殿の攻撃で死ななければ、何の問題もありません」
「そうか。それだけ聞ければいい」
後々騒ぎ立てられても迷惑だからな。避けても良いなら問題はない。
「グレリア、大丈夫?」
「ああ。ここでいつまでもぐずぐずしていられないからな」
シエラが心配そうに俺の顔を覗き込んでるが、少し気を回しすぎだ。今までの局面に比べれば楽な方だろうに。
それより、こうしている間にもセイルは先に進んでいる。あいつの兄貴分として、燻ってる場合じゃない。
さっさと片付けて、次の国が――ナッチャイスに向かわないとな。
俺たちにとって、今一番大事なのはグランセストに侵攻してくる残りの国をどうするか……なのだが、外に出るのにも護衛という名の監視がつく現状ではそんな事を考える暇すらない。
「思ったよりずっと窮屈だけど……いつまでこうしていれば良いんだろう?」
シエラがわざわざ俺の部屋にやってきてだらけている程には深刻な事態と言えるだろう。ここにいてはグランセストからの情報が全く入ってこないのだから参ってしまう。
「今は耐えるしかないだろう。ただ、何が起こるか分からないんだから、気は抜くなよ?」
「うん、わかったー」
どうにも人の話を聞かない子のようで、シエラはやる気を見せる様子がない。
思わずため息を吐いて中庭でも見てこようかと思った矢先、扉をノックする音が響いた。その瞬間、今までのだらけ具合が嘘のようにしゃきっとした様子で座っているのだから呆れてしまう。
「本当に、猫被りは上手いんだな……」
「そんな事より、出なくて良いの?」
再びコンコンという音が響いた事で、シエラへの追及は後回しにすることにして扉を開いた。
「……貴方は」
そこにいたのは少しくたびれた顔をしていた代表の男だった。確かアリッカルで少し話した後聞いた名前は――ロイウスだったはずだ。
「窮屈な思いをさせてしまって申し訳ございません」
「いや、構わない。ここに来た時からある程度予想はしていたからな」
シエラが不満そうな顔をして何かを言おうとしていたのを、急いで遮って急ぎがちに捲し立てた。変にややこしくなっても困るし、話の腰を折りかねないからな。
「それで、今日はどうした?」
「はい。実は……グレリア殿にお願いしたいことがあるんですよ。ジパーニグでも上の地位の方に話をとおすことになりました。結論から言いますと、グレリア殿にはアリッカルの代表として戦ってもらいたいのです」
やはりというかなんというか、こんな事になるんじゃないかとなんとなく予想がついていた。それ程までに勝負に拘りそうな男を、俺は知ってるからな。
「それで、ただ戦うだけじゃないんだろう?」
「はい。こちらは改心した魔人を味方に引き入れている…….という事になっております。『グレリア殿一人』だけ、らしいです」
「……それだけなのか?」
「ええ」
そこのところが気になるのか、ロイウスは首を傾げていた。少なくとも、俺の実力を知っているであろう奴らがいる以上、どんな不利な状況になったって不思議じゃない。それがほとんど変化のない状態で戦う……となると何かしらの小細工をしていると考えた方がいいのかもしれない。
「またえらく簡素な条件だな。てっきり手首を縛って百人ぐらい相手にするのかと思ったぞ」
「ははっ、確かに似たような案は要求されましたよ。同盟を組みたかったら、これくらいしなければ……と、半ば処刑同然の内容でした。しかし、これからの事やアリッカルの戦力がジパーニグに向く可能性を軽く示唆してあげると、大人しくしてくれましたね」
話を聞く限り、随分無茶な事をしていたようだ。というか――
「倒していいなら処刑同然でも構わなかったのだが」
「貴方ならそう言うかも……とは思いましたが、万が一があっても困りますので……。今一番重要なのは、魔人――アンヒュルにどういう風に接するかです。また少数で城に攻め込まれて、王を殺されてしまう。そうならないようにする策が無ければ……」
「再び同じ事を繰り返してしまいかねない、と」
これについては大体その見解が正しいと言わざるを得ない。ジパーニグが敵対する限り、そうなるだろうからな。
「そういうわけです。向こうも渋々、こちらの擦り合わせて納得した形ですね。恐らく……一対多で殺しはなし、という事になりそうでます」
「そんな! それじゃ勝てないんじゃ……!」
まさか戦車を持ち込んではこないだろう。あれが出てきて死体を転がすなというのであれば、俺には不可能だ。元々攻撃向きの能力で、俺自身もそっちに特化している。弾を回避しただけで誰かが死ぬ事になるのは摂理みたいなものだ……が、逆にそれが無ければ丁度良い負荷なのかもしれないな。
「俺が奴らの攻撃を避けた時に、別の兵士に当たって死んだらどうなる?」
「そこについては自業自得です。あくまでグレリア殿の攻撃で死ななければ、何の問題もありません」
「そうか。それだけ聞ければいい」
後々騒ぎ立てられても迷惑だからな。避けても良いなら問題はない。
「グレリア、大丈夫?」
「ああ。ここでいつまでもぐずぐずしていられないからな」
シエラが心配そうに俺の顔を覗き込んでるが、少し気を回しすぎだ。今までの局面に比べれば楽な方だろうに。
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