410 / 415
第二十三節・最終決戦
第391幕 終戦の結末
しおりを挟む
「ありがとう兄貴。おかげで少し落ち着いた」
二階の部屋に戻って食事を摂った俺は、わざわざ持ってきてくれた兄貴に礼を言った。
流石に食堂のあの状況で、何かを食べるなんて気にもなれなかったから、こういう気遣いは本当に嬉しかった。
それと……スラヴァグラードで倒れた後の事も色々と聞いた。ロンギルスとヘルガが倒れた後、兄貴はゴーレムの生産工場を潰しに行ったそうだ。あの巨大な炎の剣を作り出す魔方陣がある以上、それくらい出来て当然といったところだろうな。
意識を取り戻したルッセルが俺を担いでくれたようで、後で礼を言っておけと兄貴は言っていた。だけど、ロンギルスと戦った時にあれだけ嫌っていたあいつがそんな事をしてくれるなんて思ってもみなかった。初めて会った時から気が合わないと思っていたんだけれど……案外いい奴なのかもしれない。
「戦争は……やっぱり終わったんだな」
「そうだな。エンデハルト王、ロンギルス皇帝という二大指導者を失ったのだからな。それに……あのゴーレムも作れない。脱出した後はグランセストの軍と一緒にシアロル軍を叩いて終わりだ」
「そうか……」
「今はシアロルを押さえたグランセストはイギランスの制圧に向けて準備中だ。問題は……シアロルの貴族共がかなり抵抗している、といったところだろうな。それももう少ししたら鎮圧出来るだろう」
――長かった。色んなものを失った戦いだった。いや、正確に言ったらまだ戦いは終わってないんだけど、それも時間の問題だろう。少なくとも、あれだけの大きな戦争はもう起きないはずだ。
四日くらい眠っていて、気が付いたら終わってた……というのは少し締まらないような気がしたけれど、それは仕方ないだろう。
未来の事を考えると、頭の中によぎったのはやっぱりスパルナの事だった。それを兄貴は見抜いたようで、少し悲しげな顔をしていた。
「セイル。スパルナの事は……残念だったな」
「……いや、あれは俺のせいだ。兄貴の責任じゃないさ」
兄貴の申し訳なさそうな顔をして頭を下げてるから、ゆっくりと頭を左右に振った。
……あの時は確かに兄貴がもう少し早く来てくれたら、と思った。それでも……兄貴がそれを背負うのは間違ってる。
「俺は……あいつに託されたんだ。あいつの分まで生きる。だから……」
「……わかった」
兄貴はそれ以上何も言うことはなかった。しばらくどうにも重たい雰囲気が立ち込めてる中、俺は……意を決して前から考えていた事を口にした。
「兄貴。一つだけ……頼みがあるんだ」
「……どうした?」
俺の真剣な表情を見た兄貴は、鋭い目で俺の事をみていた。その顔は凄く真面目で、威圧感に飲まれそうになる。
「俺と、戦って欲しい」
「……それは、本気で、って事で良いんだな?」
「ああ」
「どっちかが死ぬかもしれない。それでも……良いんだな?」
兄貴の濃密な殺気に気圧されてしまう。だけど――
「ああ。本気で、戦ってくれ」
――俺は、はっきりと宣言した。本気の……殺し合いをしたい、と。
「わかった。やるなら早い方が良い。そうだな……お前の万全を期して、十日後にしよう」
「貴族はまだ抵抗を続けてるんじゃなかったのか?」
「その程度の小競り合いで、俺を使うわけにはいかないんだとさ。ミルティナ女王からは拠点のあるこの町を守るように言われているし、余裕はある」
そんな話になっていたのか……だけど、丁度いい。本当なら今すぐにでも始めたいところだけれど、流石に体力の回復しきっていない内にやっても仕方ない。最高の状態で最強の敵と戦う――それが今の俺の望みだった。
「ふ、ふふっ」
「どうした?」
「いや、スパルナの分まで生きると言った割に、命がけの戦いをしようとするのだからな」
「仕方ないだろ。それが俺の望みなんだから。それに……死ぬつもりは全くない」
「ははっ、自信あるみたいだな。それじゃあ……十日後にな」
「ああ。十日後に」
兄貴はそれだけ言って、部屋から出ていった。本気で戦う以上、馴れ合いはしたくない――そういうニュアンスを込めた言葉だけを残して。
兄貴もいなくなって……俺はどっと疲れが噴き出してきた。ベッドに横たわって、宿の天井を眺める。
――俺が、兄貴を超える。
ずっと考えていた。何度もそんな事は出来ないと思っていた。誰かと会う度、誰かと戦う度……そんな気持ちが湧き上がって、そういう風に消えていった。
……だけど、やっぱり、俺には……諦めきれなかったみたいだ。
「スパルナ。見ていてくれ。俺の……最高の生き方を……!」
ただ『生きて欲しい』って願いを込めて言ったわけじゃない。あいつは……俺にあいつの分まで『楽しんで』生きてくれと願ったんだ。いつかスパルナと出会った時に、力の限り人生を生き抜いて、戦い抜いたんだと誇れるような自分でありたい。流石『ぼくのお兄ちゃんだね!』って笑顔で迎えられるように。
だから……これはその一歩だ。十日後、兄貴を超えて……俺は――!
二階の部屋に戻って食事を摂った俺は、わざわざ持ってきてくれた兄貴に礼を言った。
流石に食堂のあの状況で、何かを食べるなんて気にもなれなかったから、こういう気遣いは本当に嬉しかった。
それと……スラヴァグラードで倒れた後の事も色々と聞いた。ロンギルスとヘルガが倒れた後、兄貴はゴーレムの生産工場を潰しに行ったそうだ。あの巨大な炎の剣を作り出す魔方陣がある以上、それくらい出来て当然といったところだろうな。
意識を取り戻したルッセルが俺を担いでくれたようで、後で礼を言っておけと兄貴は言っていた。だけど、ロンギルスと戦った時にあれだけ嫌っていたあいつがそんな事をしてくれるなんて思ってもみなかった。初めて会った時から気が合わないと思っていたんだけれど……案外いい奴なのかもしれない。
「戦争は……やっぱり終わったんだな」
「そうだな。エンデハルト王、ロンギルス皇帝という二大指導者を失ったのだからな。それに……あのゴーレムも作れない。脱出した後はグランセストの軍と一緒にシアロル軍を叩いて終わりだ」
「そうか……」
「今はシアロルを押さえたグランセストはイギランスの制圧に向けて準備中だ。問題は……シアロルの貴族共がかなり抵抗している、といったところだろうな。それももう少ししたら鎮圧出来るだろう」
――長かった。色んなものを失った戦いだった。いや、正確に言ったらまだ戦いは終わってないんだけど、それも時間の問題だろう。少なくとも、あれだけの大きな戦争はもう起きないはずだ。
四日くらい眠っていて、気が付いたら終わってた……というのは少し締まらないような気がしたけれど、それは仕方ないだろう。
未来の事を考えると、頭の中によぎったのはやっぱりスパルナの事だった。それを兄貴は見抜いたようで、少し悲しげな顔をしていた。
「セイル。スパルナの事は……残念だったな」
「……いや、あれは俺のせいだ。兄貴の責任じゃないさ」
兄貴の申し訳なさそうな顔をして頭を下げてるから、ゆっくりと頭を左右に振った。
……あの時は確かに兄貴がもう少し早く来てくれたら、と思った。それでも……兄貴がそれを背負うのは間違ってる。
「俺は……あいつに託されたんだ。あいつの分まで生きる。だから……」
「……わかった」
兄貴はそれ以上何も言うことはなかった。しばらくどうにも重たい雰囲気が立ち込めてる中、俺は……意を決して前から考えていた事を口にした。
「兄貴。一つだけ……頼みがあるんだ」
「……どうした?」
俺の真剣な表情を見た兄貴は、鋭い目で俺の事をみていた。その顔は凄く真面目で、威圧感に飲まれそうになる。
「俺と、戦って欲しい」
「……それは、本気で、って事で良いんだな?」
「ああ」
「どっちかが死ぬかもしれない。それでも……良いんだな?」
兄貴の濃密な殺気に気圧されてしまう。だけど――
「ああ。本気で、戦ってくれ」
――俺は、はっきりと宣言した。本気の……殺し合いをしたい、と。
「わかった。やるなら早い方が良い。そうだな……お前の万全を期して、十日後にしよう」
「貴族はまだ抵抗を続けてるんじゃなかったのか?」
「その程度の小競り合いで、俺を使うわけにはいかないんだとさ。ミルティナ女王からは拠点のあるこの町を守るように言われているし、余裕はある」
そんな話になっていたのか……だけど、丁度いい。本当なら今すぐにでも始めたいところだけれど、流石に体力の回復しきっていない内にやっても仕方ない。最高の状態で最強の敵と戦う――それが今の俺の望みだった。
「ふ、ふふっ」
「どうした?」
「いや、スパルナの分まで生きると言った割に、命がけの戦いをしようとするのだからな」
「仕方ないだろ。それが俺の望みなんだから。それに……死ぬつもりは全くない」
「ははっ、自信あるみたいだな。それじゃあ……十日後にな」
「ああ。十日後に」
兄貴はそれだけ言って、部屋から出ていった。本気で戦う以上、馴れ合いはしたくない――そういうニュアンスを込めた言葉だけを残して。
兄貴もいなくなって……俺はどっと疲れが噴き出してきた。ベッドに横たわって、宿の天井を眺める。
――俺が、兄貴を超える。
ずっと考えていた。何度もそんな事は出来ないと思っていた。誰かと会う度、誰かと戦う度……そんな気持ちが湧き上がって、そういう風に消えていった。
……だけど、やっぱり、俺には……諦めきれなかったみたいだ。
「スパルナ。見ていてくれ。俺の……最高の生き方を……!」
ただ『生きて欲しい』って願いを込めて言ったわけじゃない。あいつは……俺にあいつの分まで『楽しんで』生きてくれと願ったんだ。いつかスパルナと出会った時に、力の限り人生を生き抜いて、戦い抜いたんだと誇れるような自分でありたい。流石『ぼくのお兄ちゃんだね!』って笑顔で迎えられるように。
だから……これはその一歩だ。十日後、兄貴を超えて……俺は――!
0
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる