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第二十三節・最終決戦
第392幕 最古の英雄VS最新の英雄
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兄貴と戦う約束をして十日後。万全の体調に整えた俺は、町から離れた場所で兄貴が来るのを静かに待っていた。『防御』の魔方陣が刻み込まれたレザーアーマーを身に着けて、レザーグリーブと靴には『速』。レザーガントレットには『力』……と、魔方陣で能力を向上させる装備で身を固めていた。内側の服には『防寒』『防熱』の魔方陣が刻まれていて、快適に過ごせるようになっている。鉄や金属の鎧じゃ動き辛くなるだけだから、これくらいが丁度良い。
腰にグラムレーヴァを提げて、ただじっと……目を閉じて待っていた。これが、兄貴との最後の戦いになるだろう。どんな結果になったとしても……恨む気はない。
「セイル」
名前を呼ばれて、静かに目を開けたそこに立っていたのは……いつもと同じ、俺よりも軽装の兄貴だった。
ゆっくりと近づいてくる兄貴は、今まで戦った誰よりも――ロンギルスよりも、威圧感を放っていた。濃厚で、圧し潰されそうな殺気。重圧。強者としての佇まいがそこにはあった。
「あに――」
「待て」
兄貴、と呼ぼうとした俺を、真剣な表情で制してきた兄貴は、ゆっくりと首を振った。
「今からするのは本当の戦いだ。もう……お前の『兄貴』じゃない」
「……グレリア」
あに――グレリアの言葉を聞いて、俺も納得した。俺たちが今からするのは殺し合いなんだ。それなのに……。
「ははっ、やっぱり、俺は、どこか甘えていたみたいだ。もう……大丈夫。グレリア、決着を……付けよう」
「いいだろう」
グレリアは静かに剣を抜いて、俺もまた……それに合わせてグラムレーヴァを抜く。一瞬の静寂。息が止まりそうなほどの重圧を抜け出すように斬りかかっていった。
『英』『身体』の魔方陣に加え、防具に刻まれている魔方陣が俺の身体能力を高めてくれる。一直線に懐に潜り込み、内側からまっすぐ斬りつけるように斬撃を放つけれど、グレリアにはなんなく受け止められてしまった。
「そう焦るな。戦いは……始まったばかりだ」
魔方陣が展開されて、俺がいた付近に炎の矢が雨となって降り注いでくる。それを大げさに回避しながら、すぐさまグレリアの左隣に回り込む。
「見えているぞ」
ギリギリ相手に剣筋が見えないように、再び剣を内側に潜り込ませていたんだけれど……やっぱり効かない、みたいだな。だけど……それくらい、考えきれない俺じゃない!
「それくらい、わかっているさ!」
空いている方の手で魔方陣を発動させる。『雷』『槍』『速』の三つの起動式で発動されたそれは、風を切る音が聞こえるほどの鋭さを宿して雷の槍を解き放った。
「ちっ」
グレリアは咄嗟に後方に下がりながら『神』『防』の魔方陣を発動させる。バチバチィッ! と激しい音が聞こえたと同時に、俺はグラムレーヴァに『英』『魔』『断』の魔方陣を纏わせて、グレリアの魔方陣を斬り捨てる。
「やっぱりそれは厄介な魔方陣だな……!」
届くかどうか不安だったけど、あの強固な魔方陣を突破出来た。それだけでも自分が強くなっているっていう実感が湧いてくる。だけれど、それだけじゃ駄目なんだ。俺の目的は……目の前の男を超える事なんだ!
「グレリア! あんたを超える! 今日こそ!!」
自分の魔方陣が斬り裂かれても、あまり動じることのないグレリア目掛けて斬撃を繰り出す。それを受けたグレリアは、余裕そうな笑みを浮かべて俺と相対していた。
「それは……お前が英雄になる為か?」
「違う! 俺は――」
最初、俺は英雄になりたかった。そこにグレリアが現れて……彼に憧れるようになった。彼のようになりたいって、そう思ってた。だけど……今は違う。英雄になりたいんじゃない。グレリアのようになりたいんじゃない。俺は……俺は……!!
「男として、あんたを超える!」
「はっ、ははっ、よく言った!!」
グレリアの獰猛な笑いが俺の心が高鳴っていく。一度距離を取って、構える。グレリアも俺との距離を保ったまま、静かに佇んでいる。
やっぱり……流石グレリアだ。俺が兄貴と慕っていただけはある。全く動かないでこっちの動きを窺っているのは、俺の出方を見ようとしているからだろう。
「どうした? 威勢が良い事言って、攻めてこないのか?」
挑発するように鼻で笑うグレリアに乗せられないよう、冷静さを保つ。彼は動いていないけれど、殺気が俺の一挙手一投足に向けられていて、どんな攻撃にも対応して来られそうで迂闊に攻めにくい。それなら――
「我が内なる魔力よ。炎を不死鳥と化し、遍く敵を焼き払え――【フレアフェニクス】!」
ロンギルスが使っていた魔方陣と詠唱魔法の合わせ技。俺の魔力をかなり持っていって出現したのは、巨大な鳥を象った炎。それはまるで、スパルナの鳥の形態の時のようだった。
正直、ここまで魔力を使うとは思わなかった。ロンギルスがこれを乱発しなかったのがわかる気がする。よくルーシーが扱えたものだ。
「行け! フレアフェニクス」
大きな鳴き声を上げると同時に、フレアフェニクスはグレリアに向かって飛んでいく。俺の活路を切り開くために。この手に、勝利を掴むために。
腰にグラムレーヴァを提げて、ただじっと……目を閉じて待っていた。これが、兄貴との最後の戦いになるだろう。どんな結果になったとしても……恨む気はない。
「セイル」
名前を呼ばれて、静かに目を開けたそこに立っていたのは……いつもと同じ、俺よりも軽装の兄貴だった。
ゆっくりと近づいてくる兄貴は、今まで戦った誰よりも――ロンギルスよりも、威圧感を放っていた。濃厚で、圧し潰されそうな殺気。重圧。強者としての佇まいがそこにはあった。
「あに――」
「待て」
兄貴、と呼ぼうとした俺を、真剣な表情で制してきた兄貴は、ゆっくりと首を振った。
「今からするのは本当の戦いだ。もう……お前の『兄貴』じゃない」
「……グレリア」
あに――グレリアの言葉を聞いて、俺も納得した。俺たちが今からするのは殺し合いなんだ。それなのに……。
「ははっ、やっぱり、俺は、どこか甘えていたみたいだ。もう……大丈夫。グレリア、決着を……付けよう」
「いいだろう」
グレリアは静かに剣を抜いて、俺もまた……それに合わせてグラムレーヴァを抜く。一瞬の静寂。息が止まりそうなほどの重圧を抜け出すように斬りかかっていった。
『英』『身体』の魔方陣に加え、防具に刻まれている魔方陣が俺の身体能力を高めてくれる。一直線に懐に潜り込み、内側からまっすぐ斬りつけるように斬撃を放つけれど、グレリアにはなんなく受け止められてしまった。
「そう焦るな。戦いは……始まったばかりだ」
魔方陣が展開されて、俺がいた付近に炎の矢が雨となって降り注いでくる。それを大げさに回避しながら、すぐさまグレリアの左隣に回り込む。
「見えているぞ」
ギリギリ相手に剣筋が見えないように、再び剣を内側に潜り込ませていたんだけれど……やっぱり効かない、みたいだな。だけど……それくらい、考えきれない俺じゃない!
「それくらい、わかっているさ!」
空いている方の手で魔方陣を発動させる。『雷』『槍』『速』の三つの起動式で発動されたそれは、風を切る音が聞こえるほどの鋭さを宿して雷の槍を解き放った。
「ちっ」
グレリアは咄嗟に後方に下がりながら『神』『防』の魔方陣を発動させる。バチバチィッ! と激しい音が聞こえたと同時に、俺はグラムレーヴァに『英』『魔』『断』の魔方陣を纏わせて、グレリアの魔方陣を斬り捨てる。
「やっぱりそれは厄介な魔方陣だな……!」
届くかどうか不安だったけど、あの強固な魔方陣を突破出来た。それだけでも自分が強くなっているっていう実感が湧いてくる。だけれど、それだけじゃ駄目なんだ。俺の目的は……目の前の男を超える事なんだ!
「グレリア! あんたを超える! 今日こそ!!」
自分の魔方陣が斬り裂かれても、あまり動じることのないグレリア目掛けて斬撃を繰り出す。それを受けたグレリアは、余裕そうな笑みを浮かべて俺と相対していた。
「それは……お前が英雄になる為か?」
「違う! 俺は――」
最初、俺は英雄になりたかった。そこにグレリアが現れて……彼に憧れるようになった。彼のようになりたいって、そう思ってた。だけど……今は違う。英雄になりたいんじゃない。グレリアのようになりたいんじゃない。俺は……俺は……!!
「男として、あんたを超える!」
「はっ、ははっ、よく言った!!」
グレリアの獰猛な笑いが俺の心が高鳴っていく。一度距離を取って、構える。グレリアも俺との距離を保ったまま、静かに佇んでいる。
やっぱり……流石グレリアだ。俺が兄貴と慕っていただけはある。全く動かないでこっちの動きを窺っているのは、俺の出方を見ようとしているからだろう。
「どうした? 威勢が良い事言って、攻めてこないのか?」
挑発するように鼻で笑うグレリアに乗せられないよう、冷静さを保つ。彼は動いていないけれど、殺気が俺の一挙手一投足に向けられていて、どんな攻撃にも対応して来られそうで迂闊に攻めにくい。それなら――
「我が内なる魔力よ。炎を不死鳥と化し、遍く敵を焼き払え――【フレアフェニクス】!」
ロンギルスが使っていた魔方陣と詠唱魔法の合わせ技。俺の魔力をかなり持っていって出現したのは、巨大な鳥を象った炎。それはまるで、スパルナの鳥の形態の時のようだった。
正直、ここまで魔力を使うとは思わなかった。ロンギルスがこれを乱発しなかったのがわかる気がする。よくルーシーが扱えたものだ。
「行け! フレアフェニクス」
大きな鳴き声を上げると同時に、フレアフェニクスはグレリアに向かって飛んでいく。俺の活路を切り開くために。この手に、勝利を掴むために。
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