無自覚チートの俺、追放されたけど実は神の代理でした〜ざまぁ連続、気づけば世界最強ハーレム〜

eringi

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第2話 森で出会った不思議な少女

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村が救われた翌朝。レオンは宿の一室で目を覚ました。木造の天井に差し込む朝日がやけに眩しい。隣では、相変わらずスライムが丸くなって眠っている。柔らかくぷにぷにと動きながら、ちいさく「ピィ……」と寝言のような音を立てた。

「お前、名前つけたほうがいいかもな。いつまでも『スライム』じゃ呼びづらいし」

ピィ、と短く鳴いた。まるで「そうしてくれ」と言っているかのようだ。レオンは少し考えて、「…じゃあ、ルミナ。光の粒みたいにきれいだったから」と呟く。スライムは嬉しそうに弾み、体を淡く光らせた。

「気に入ったってことでいいのかな。よし、ルミナ、今日からよろしくな」

村の宿を出て外に出ると、空気が新鮮だった。危機が去って安心したのか、村人たちの顔には笑みが戻っている。パン屋の前に立つおばさんが手を振った。

「旅の方、昨日は本当にありがとう!村を救ってくれて!」

「いえ、偶然ですよ。ただ運がよかっただけです」

そう答えると、彼女はパンを一つ渡してきた。「お礼にこれでも受け取っておくれ。焼きたてだよ」

レオンは遠慮しつつも受け取り、軽く頭を下げて村の外へ向かった。ここに長く留まっても、居心地が良すぎてまた甘えてしまいそうだった。自分はもう勇者でも冒険者でもない。たったひとりの旅人だ。

森に戻る道を歩きながら、レオンは昨日の出来事を何度も思い返した。スライムが跪き、Aランクの魔獣が塵と化した。どう考えても普通じゃない。だが、力の正体を問うても答えは出ない。

「理紡ぎ……一体何なんだ。神の理って、まさか本当に神の力と関係してたりしてな」

そんな独り言を言ったその時、森の奥から微かな泣き声が聞こえた。少女のものだ。レオンは一瞬、耳を疑ったが、確かに聞き間違いではない。木々の間を抜けて進むと、そこには白いローブを着た小柄な少女が倒れていた。

年の頃は十五、六。腰まで伸びた銀髪が土に散らばり、服は破れて泥だらけ。頬も擦り傷だらけだ。スライム──ルミナが心配そうに跳ねて近寄る。

「おい、大丈夫か」

少女の身体を支え、呼びかけると、かすかに瞳が動いた。透き通るような水色が印象的な瞳だった。

「…あなたは……人……?」

「ああ。ただの旅人だ。怪我してる、動かない方がいい」

「森で……追われてて……魔物が……」

言葉の途中で、少女は息を詰まらせた。レオンが周囲を見渡すと、木陰の向こうで粘つくような低い唸り声が響いた。三体の狼型の魔物が、ゆっくりと姿を現す。灰銀の毛並み、異様に赤い目。通常のウルフではない、魔素を帯びた“黒狼種”だった。

「なるほど、こいつらか。ルミナ、いくぞ」

スライムが元気よく鳴き、レオンの足元に移動する。黒狼の一体が低く唸り、飛びかかってきた。レオンは短剣を構えるものの、振り上げるより早く光が走る。ルミナの身体から放たれた金色の波が、襲いかかった魔物を一瞬で粉砕した。

「……まただ。俺、何もしてないのに……」

残りの二体も、怯えたように後ずさる。レオンが軽く目を逸らしただけで、地面の根が絡まるように伸び、黒狼たちを締め上げた。呻き声を上げる間もなく、彼らは黒い霧となって溶けていく。

「理が反応しました──」  
誰かが囁いたような声が、風の中に混じった。誰もいないはずの森なのに。レオンは一瞬、振り向いたが、誰の姿も見えなかった。

「……気のせいか」

倒れていた少女のもとへ戻ると、彼女は目を見開き、震える声で言った。

「あなた、今……魔王ですか?」

「は?違うよ!ただの通りすがりだって!」

「でも……あの光……魔素を消した……一族にもできないのに……」

「一族?」

少女はかすかに頷き、力なく微笑んだ。「私は、精霊の巫女……この地を守る血筋の者です。名はエリシア。あの黒狼は神殿を襲った魔族の追手……逃げてきたところで……」

「追手?そんな危ないのが、ただの村の近くまで?」

「ええ、神殿の封印が緩み……“理の破片”を狙う者が現れました。私がそれを保護して逃げようとしたのですが……」

それ以上言う前に、彼女は意識を失った。レオンは慌てて抱き上げ、ルミナを肩に乗せると、森の奥にある廃屋のような小屋へ身を寄せた。

焚き火を起こし、彼女を休ませる。額には熱がある。レオンは村で受け取った癒し草を煎じ、水に混ぜて彼女の口元に近づけた。

「飲めるか?」

うっすらと目を開けたエリシアが、わずかに頷く。少しずつ薬草茶を飲ませると、表情が穏やかになった。

「助けてくださって……ありがとうございます。あなたの名前を……」

「レオン。たぶん、ただの無名の旅人だよ」

「無名の人などいません。あなたは……“理”に選ばれた方です」

レオンは首を傾げた。「理、って……」

彼女は小さく笑った。「この世界のすべてを動かす基盤。神々が手を加えられぬ究極の力。昔の伝承では、世界を編んだ者の残した“糸”と呼ばれています。その糸を紡ぐことができる者は――神の代理」

一瞬、焚き火の炎が揺らめいた。夜の帳が落ちはじめ、微かな風が吹く。ルミナの体が柔らかく光った。

「……理紡ぎ」

レオンがつぶやくと、彼女は驚いたように目を見開いた。

「その名を、あなたが……やはり……!」

「知ってるのか、そのスキルの意味を?」

「はい。本来、その力は神族の血にのみ受け継がれる禁断のもの。理を織り直し、世界の法則すら上書きできる。そんな力、持つだけで存在自体が奇跡です」

「俺が……そんなものを?」

エリシアは真剣な眼差しでうなずいた。「もしかすると、あなたがこの混乱の時代を救う“器”なのかもしれません。どうか、神殿へ来てください。巫女として、あなたに伝えるべきことがあります」

レオンはしばらく黙っていた。神殿、理、神の代理。どれも現実味がない。けれど、ここまで偶然が重なるのは、もはや偶然ではない気もしていた。

「わかった。体を休めたら案内してくれ。俺にできることがあるなら、やってみたい」

そう言うと、エリシアは微笑み、安堵のため息をついた。外では虫の鳴き声が響き、火の粉が静かに舞い上がる。

ルミナが寝息を立て、レオンはその頭を軽く撫でた。  
奇妙な出会いだったが、この出会いが、彼の運命を大きく変える――そのことをまだ彼は知らなかった。

森の奥、黒狼の死骸が消えた場所では、黒い霧のような影が蠢いていた。  
「神の理が……動いたか。面白い……」

誰かの低い声が、静まり返った森に響いた。  
そして、風が止んだ。  
夜の底から、不吉な月が、血のように赤く輝き始めていた。
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