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10/10『甲虫偵察隊』
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公園で日光浴していたら、目の前になにかの虫が飛んできた。ホバリングして空中に留まって、なんだかこちらを観察しているようだ。
しばらく顔の前で停止したのち、私の周囲をぐるぐる飛んだ。
小さい虫だし刺したりしなさそうだなぁと思って指を出してみたら、爪の先に着地した。てんとう虫だった。
その虫の代名詞みたいな、赤地に黒の水玉模様。ナナホシテントウとかいうヤツだろうか。
爪にとまったまま、まだこちらを見ている様子。虫は苦手だけどこのくらいの大きさなら許容範囲。てんとう虫をこんなにじっくり見るなんて、子供の頃でもなかったかも。
羽根の表面ツヤッツヤだな、ニスでコーティングされてるみたい。甲虫ってちょっとメカニカルなんだよな。そういやなんかのドラマで、てんとう虫型の空飛ぶカメラで敵の陣地を偵察したりしてたなぁ。こいつもそうだったりして、監視されるような覚えないけど。
フフッと笑ったら、てんとう虫はパッと羽根を開いて羽ばたき、どこかへ飛んで行った。
達者でなーと見送って、また木陰で日光浴を続けた。
* * *
「どうですか? 親御さん候補として」
「悪いヒトじゃなさそうですけど、恋人がいるようには見えなかったですねぇ」
「あぁ、それはこれから出会うので……。そちらにも派遣しますか?」
「そうですね、ぜひ」
担当者がコントローラーを使って、てんとう虫型カメラを操作した。
「こんな風に見れるんですね」
「え? あ、地上に生まれるの初めてでしたっけね」
「はい、いままでは地球じゃない星に行ってました」
「ですよね。地球に生まれる方のときは派遣するんですよ、擬態カメラ」
「その虫だけですか?」
「いえ、季節や場所によって変えます。虫だけじゃなくて野鳥とかね。でも虫が一番多いですかね。狭いところも入れて便利だし、メカっぽい種が多いので作りやすいそうです」
「へぇー、面白い」
「近くで偵察できるからいいんですけど、虫が極度に苦手な方もいらっしゃるんでねー……あ、いらしたいらした」
モニターに映し出された女性は、カメラ――てんとう虫に気づいて『ひゃっ』と悲鳴をあげた。手に持っている紙束でてんとう虫を払おうとする。
「おっとっと」
担当者がコントローラーを駆使して、てんとう虫を避難させた。
「女性は虫が苦手な方が多くてー。ちょっと遠いですけど、こんな感じの方ですよ」
少し離れた場所から女性をとらえる。女性は書類を机の上に戻して勉強を始めた。
「真面目そうでらっしゃる」
「いまは医大の受験勉強をなされてますね。この先、人生計画で決められた道を進み、お医者さんになる予定です。順調にいけば小児科かな?」
「子供がお好きなんですね」
「みたいですね。先ほどの男性とは病院でお知り合いになります」
「小児病棟で?」
「たまたま居合わせた子供さんが急病になって、男性が救急車に同乗するんです。搬入先がこの女性が勤める病院で……それが出会うキッカケですね」
「すんごい良い人ですね。っていうか、そんなことまで決まってるんですか」
「この方々の場合は。生まれる前の計画でそう出会おうって決めたようですよ」
「そっかぁ」
「あなたのご希望である“子供好きな両親”の元で“医師の道に進む”という人生を送るには、よい環境になるかと思いますが」
「他に希望者さんがいないのでしたら、ぜひ」
「わかりました。じゃあそのように手続きしますね」
機械を操作する担当者を見つつ、ポツリと呟く。
「地球かぁ……」
「不安ですか?」
「不安半分、楽しみ半分……ってとこでしょうか」
担当者はウンウンと頷く。
「大変だったり辛いこともあるでしょうけど、頑張ってまっとうした先にはちゃんとご褒美が待ってますからね」
「はい。地球に生まれてみたいなと思っていたので、精一杯地球生活を楽しもうと思ってます」
「そうれはなにより。あなたみたいな方のお手伝いをできるの嬉しいんですよねー。そうしましたら、守護霊グループの方々をお連れしますので、計画の続きを一緒に考えましょう」
「はい!」
担当者が席を立つ。残されたモニターには地球の風景が映っていた。
観光案内チャンネルで紹介されていた地球。費用が足らずに旅行することができなかった憧れの星。
今度の転生でやっとその星へ行くことができる。
地球人としての適合性があるかは不安だけど……あの優しそうな両親の元に生まれれば大丈夫だろう。
「お待たせしましたー、ではまずはご紹介から……」
担当者と一緒にやって来た守護霊グループの方々と挨拶を交わす。
いよいよだぁ、と期待に胸を膨らませながら、長い地球人の人生をどう生きようか、計画していくのだ。
あぁ、生まれるのが楽しみだなぁ!
しばらく顔の前で停止したのち、私の周囲をぐるぐる飛んだ。
小さい虫だし刺したりしなさそうだなぁと思って指を出してみたら、爪の先に着地した。てんとう虫だった。
その虫の代名詞みたいな、赤地に黒の水玉模様。ナナホシテントウとかいうヤツだろうか。
爪にとまったまま、まだこちらを見ている様子。虫は苦手だけどこのくらいの大きさなら許容範囲。てんとう虫をこんなにじっくり見るなんて、子供の頃でもなかったかも。
羽根の表面ツヤッツヤだな、ニスでコーティングされてるみたい。甲虫ってちょっとメカニカルなんだよな。そういやなんかのドラマで、てんとう虫型の空飛ぶカメラで敵の陣地を偵察したりしてたなぁ。こいつもそうだったりして、監視されるような覚えないけど。
フフッと笑ったら、てんとう虫はパッと羽根を開いて羽ばたき、どこかへ飛んで行った。
達者でなーと見送って、また木陰で日光浴を続けた。
* * *
「どうですか? 親御さん候補として」
「悪いヒトじゃなさそうですけど、恋人がいるようには見えなかったですねぇ」
「あぁ、それはこれから出会うので……。そちらにも派遣しますか?」
「そうですね、ぜひ」
担当者がコントローラーを使って、てんとう虫型カメラを操作した。
「こんな風に見れるんですね」
「え? あ、地上に生まれるの初めてでしたっけね」
「はい、いままでは地球じゃない星に行ってました」
「ですよね。地球に生まれる方のときは派遣するんですよ、擬態カメラ」
「その虫だけですか?」
「いえ、季節や場所によって変えます。虫だけじゃなくて野鳥とかね。でも虫が一番多いですかね。狭いところも入れて便利だし、メカっぽい種が多いので作りやすいそうです」
「へぇー、面白い」
「近くで偵察できるからいいんですけど、虫が極度に苦手な方もいらっしゃるんでねー……あ、いらしたいらした」
モニターに映し出された女性は、カメラ――てんとう虫に気づいて『ひゃっ』と悲鳴をあげた。手に持っている紙束でてんとう虫を払おうとする。
「おっとっと」
担当者がコントローラーを駆使して、てんとう虫を避難させた。
「女性は虫が苦手な方が多くてー。ちょっと遠いですけど、こんな感じの方ですよ」
少し離れた場所から女性をとらえる。女性は書類を机の上に戻して勉強を始めた。
「真面目そうでらっしゃる」
「いまは医大の受験勉強をなされてますね。この先、人生計画で決められた道を進み、お医者さんになる予定です。順調にいけば小児科かな?」
「子供がお好きなんですね」
「みたいですね。先ほどの男性とは病院でお知り合いになります」
「小児病棟で?」
「たまたま居合わせた子供さんが急病になって、男性が救急車に同乗するんです。搬入先がこの女性が勤める病院で……それが出会うキッカケですね」
「すんごい良い人ですね。っていうか、そんなことまで決まってるんですか」
「この方々の場合は。生まれる前の計画でそう出会おうって決めたようですよ」
「そっかぁ」
「あなたのご希望である“子供好きな両親”の元で“医師の道に進む”という人生を送るには、よい環境になるかと思いますが」
「他に希望者さんがいないのでしたら、ぜひ」
「わかりました。じゃあそのように手続きしますね」
機械を操作する担当者を見つつ、ポツリと呟く。
「地球かぁ……」
「不安ですか?」
「不安半分、楽しみ半分……ってとこでしょうか」
担当者はウンウンと頷く。
「大変だったり辛いこともあるでしょうけど、頑張ってまっとうした先にはちゃんとご褒美が待ってますからね」
「はい。地球に生まれてみたいなと思っていたので、精一杯地球生活を楽しもうと思ってます」
「そうれはなにより。あなたみたいな方のお手伝いをできるの嬉しいんですよねー。そうしましたら、守護霊グループの方々をお連れしますので、計画の続きを一緒に考えましょう」
「はい!」
担当者が席を立つ。残されたモニターには地球の風景が映っていた。
観光案内チャンネルで紹介されていた地球。費用が足らずに旅行することができなかった憧れの星。
今度の転生でやっとその星へ行くことができる。
地球人としての適合性があるかは不安だけど……あの優しそうな両親の元に生まれれば大丈夫だろう。
「お待たせしましたー、ではまずはご紹介から……」
担当者と一緒にやって来た守護霊グループの方々と挨拶を交わす。
いよいよだぁ、と期待に胸を膨らませながら、長い地球人の人生をどう生きようか、計画していくのだ。
あぁ、生まれるのが楽しみだなぁ!
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