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どうでもいいから早く寝かせてくれ
しおりを挟む不規則な生活を送る俺に、出会いは突然やってきた。
「「あ」」
閉店間際のスーパー。
最後の1つの半額おにぎりの上で重なる手。
「どうぞ」
おにぎりを掴んでいた手を離して譲ろうとしたのに、俺の手は握られたまま。
おにぎりいらねぇのかよ。
「好きです」
「は?」
思わず怪訝な声がでる。
まじまじと相手を見ると、印象的な強い目に、綺麗な鼻立ち。脱色したサラサラの金髪にも、レモンイエローのパーカーにも負けない顔面の強さ。イケメンだ。
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
急に何言ってんだコイツ?
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ。
「俺、離しません」
「はぁ…勝手にしろ」
考えることを放棄した俺は、早々にコイツとの会話を諦めた。
ため息混じりに答えると、イケメンは無邪気に笑う。
ニヒッと笑う口から、綺麗に並んだ歯が見える。
「おれ、早川蓮っていいます!」
勝手に自己紹介を始めるイケメンに軽く目眩がする。
どうでもいいから早く寝かせてくれ。
謎のイケメンに手を掴まれたまま、適当に酒とつまみだけ掴んで会計に向かう。
周りから見ればさぞかし珍妙な光景だっただろう。酒をカゴに入れるフラフラ歩く男と、そいつに手を引かれるようにして満面の笑みで歩く金髪美青年。
あー…最近ろくな飯食ってねえな。
スーパーを出ると、秋らしい冷たい風が眠気を少しさらっていった。
俺の手をずっと握っていた謎のイケメンは、俺の正面に周り込み行く手を阻む。
「名前、教えてください」
「……睦月。何?お前何が目的なの?」
俺より少しだけ高い位置にあるイケメンの顔を見上げる。
「…っ、俺、睦月さんが好きです。付き合ってください」
「俺はお前が好きじゃない。悪いな。」
話は終了だ。そう伝わるように淡々と話を切り上げると、イケメンの横を通り抜け、停めていた原付に跨る。
「あ……」
酷く悲しそうな顔が見えたが、知ったことか。
「睦月さん!」
「何だよしつけぇな」
今度は発進しようとしていた原付の前に立ちはだかる。
いい加減イライラしてきた。
「じゃぁ友達から!お願い!一生のお願い!」
「分かったからどけ、俺は家に帰りたいんだよ」
早く帰りたい一心で適当に返事をする。
パァっと顔を輝かせたそいつは、俺のスマホを勝手にいじり、連絡先を交換する。
「睦月…伊織さんっていうんですね!俺、毎日連絡します!」
「はいはい、じゃあな」
「またね!伊織さん」
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