【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐

文字の大きさ
1 / 6

どうでもいいから早く寝かせてくれ

しおりを挟む




不規則な生活を送る俺に、出会いは突然やってきた。

「「あ」」

閉店間際のスーパー。
最後の1つの半額おにぎりの上で重なる手。

「どうぞ」

おにぎりを掴んでいた手を離して譲ろうとしたのに、俺の手は握られたまま。
おにぎりいらねぇのかよ。

「好きです」
「は?」

思わず怪訝な声がでる。
まじまじと相手を見ると、印象的な強い目に、綺麗な鼻立ち。脱色したサラサラの金髪にも、レモンイエローのパーカーにも負けない顔面の強さ。イケメンだ。

「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」

じっと見つめてくる眼力に気圧される。
急に何言ってんだコイツ?
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ。

「俺、離しません」
「はぁ…勝手にしろ」

考えることを放棄した俺は、早々にコイツとの会話を諦めた。
ため息混じりに答えると、イケメンは無邪気に笑う。
ニヒッと笑う口から、綺麗に並んだ歯が見える。

「おれ、早川蓮っていいます!」

勝手に自己紹介を始めるイケメンに軽く目眩がする。
どうでもいいから早く寝かせてくれ。

謎のイケメンに手を掴まれたまま、適当に酒とつまみだけ掴んで会計に向かう。
周りから見ればさぞかし珍妙な光景だっただろう。酒をカゴに入れるフラフラ歩く男と、そいつに手を引かれるようにして満面の笑みで歩く金髪美青年。
あー…最近ろくな飯食ってねえな。


スーパーを出ると、秋らしい冷たい風が眠気を少しさらっていった。
俺の手をずっと握っていた謎のイケメンは、俺の正面に周り込み行く手を阻む。

「名前、教えてください」
「……睦月。何?お前何が目的なの?」

俺より少しだけ高い位置にあるイケメンの顔を見上げる。

「…っ、俺、睦月さんが好きです。付き合ってください」
「俺はお前が好きじゃない。悪いな。」

話は終了だ。そう伝わるように淡々と話を切り上げると、イケメンの横を通り抜け、停めていた原付に跨る。

「あ……」

酷く悲しそうな顔が見えたが、知ったことか。

「睦月さん!」
「何だよしつけぇな」

今度は発進しようとしていた原付の前に立ちはだかる。
いい加減イライラしてきた。

「じゃぁ友達から!お願い!一生のお願い!」
「分かったからどけ、俺は家に帰りたいんだよ」

早く帰りたい一心で適当に返事をする。
パァっと顔を輝かせたそいつは、俺のスマホを勝手にいじり、連絡先を交換する。

「睦月…伊織さんっていうんですね!俺、毎日連絡します!」
「はいはい、じゃあな」
「またね!伊織さん」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

その言葉を聞かせて

ユーリ
BL
「好きだよ、都。たとえお前がどんな姿になっても愛してる」 夢の中へ入り化け物退治をする双子の長谷部兄弟は、あるものを探していた。それは弟の都が奪われたものでーー 「どんな状況でもどんな状態でも都だけを愛してる」奪われた弟のとあるものを探す兄×壊れ続ける中で微笑む弟「僕は体の機能を失うことが兄さんへの愛情表現だよ」ーーキミへ向けるたった二文字の言葉。

ミモザの恋が実る時

天埜鳩愛
BL
『だからさ、八広の第一第三日曜日、俺にくれない?』 クールな美形秀才(激おも執着)× 陽気でキュートな元バスケ部員 寡黙で勉強家の大窪瑞貴(おおくぼみずき)とお洒落大好き!桜場八広(さくらばやひろ)。 二人は保育園から中学校までずーっと一緒の幼馴染み。 高校からは別の学校に分かれてしまったけど、毎月、第一第三日曜日は朝から晩まで二人っきりで遊ぶ約束をしている。 ところがアルバイト先の先輩が愛する彼女の為に土日のシフトを削ると言い出して、その分八広に日曜のシフトを増やしてほしいと言われてしまう。 八広だって大好きな幼馴染との約束を優先してもらいたいけど、世間じゃ当然「恋人>幼馴染」みたいなのだ。 そのことを瑞貴に伝えると、「友達じゃないなら、いいの?」と熱い眼差しを向けられながら、手をぎゅうっと握られて……。   イケメン幼馴染からの突然の愛の猛攻に、八広はとまどい&ドキドキを隠せない! 瑞貴との関係を変えるのはこわい! でももっとずっと。俺が一番、瑞貴と一緒に居たい! 距離感のバグった幼馴染の二人を、読んでいるあなたもきっと推したくなる!   もだキュン可愛い、とってもお似合いなニコイチDKの爽やか初恋物語です。 ☆受の八広は『イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした』の燈真と小学生時代 同じミニバスケチームに所属してた友達です。 こちらもよろしくです 全年齢青春BLです https://www.alphapolis.co.jp/novel/203913875/999985997 というわけでこのお話の舞台は、時間軸的にはイケ拾の一年前のお話です。 ノベマ!第1回ずっと見守りたい❤BL短編コンテスト最終選考作品です。 加筆します✨

無表情な後輩に脅されて、付き合うことになりました

万里
BL
生徒会長・石川誠司は、真面目で不愛想。 誰にでも厳しく、笑顔を見せるのは限られた人間だけ。 そんな彼に突然告白してきたのは、無表情で何を考えているのかわからない後輩・大上啓介。 「先輩が好きです。俺と付き合ってください。付き合ってくれないなら、あの人にバラします」 脅しのような告白に、誠司は困惑しながらも“仮の恋人”として付き合うことに。

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

【完結】元勇者の俺に、死んだ使い魔が美少年になって帰ってきた話

ずー子
BL
1年前くらいに書いた、ほのぼの話です。 魔王討伐で疲れた勇者のスローライフにかつて自分を庇って死んだ使い魔くんが生まれ変わって遊びに来てくれました!だけどその姿は人間の美少年で… 明るいほのぼのラブコメです。銀狐の美少年くんが可愛く感じて貰えたらとっても嬉しいです! 攻→勇者エラン 受→使い魔ミウ 一旦完結しました!冒険編も思いついたら書きたいなと思っています。応援ありがとうございました!

四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。 とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて── 「運命だ。結婚しよう」 「……敵だよ?」 「ああ。障壁は付き物だな」 勇者×ゴブリン 超短編BLです。

災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!

椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。 ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。 平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。 天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。 「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」 平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。

処理中です...