2 / 5
…友達も悪くないかもな
しおりを挟む早川というあのイケメンは、本当に毎日メッセージを送ってきた。
内容はとてもくだらない。
野良猫を見つけただの、新しい服をゲットしただの、サークルで飲み会があっただの…
基本的に早川が一方的に送ってくるだけで、俺からは特に返事をしない。たまーに気が向いた時だけ、返信する。どんな短文でも、たった2~3文字の返信だったとしても、早川は大層喜んで、はしゃぎっぷりが文面に滲み出たメッセージが返ってくる。それを読むたび、俺の心はじんわり温められるように感じた。
仕事と睡眠だけだった俺の生活の中で、早川とのやりとりは、ちょっとした息抜きになっていた。
…友達も悪くないかもな。
なんて思っていた時。
早川からメッセージが届いた。珍しく疑問文。
〈土曜日仕事ですか?〉
〈午前だけ〉
〈じゃぁ土曜の午後、俺にください〉
約束の土曜日。
やはり昼までには終わらず、会社を出ると辺りは真っ暗だった。
「伊織さん!」
「お前、」
俺を見つけるなり走り寄ってくる早川に瞠目する。
「行けなくなったって連絡したよな」
「でも、俺が会いたかった。から、来た」
心底嬉しそうに笑う、犬みたいなヤツ。
「伊織さん、お腹すいてる?」
「…あぁ」
「じゃ、いこ!」
ニカッと笑い早川が手を握る。
その手の温度にハッとする。
お前どれだけ待ってたんだよ。
手、冷たすぎ。
「…1杯くらいなら、奢ってやる」
小さな呟きだったけど、早川はサッと振り返った。
眩しい笑顔。
少し、愛しさを感じた。
早川に連れられて来た店は、個人経営の小洒落たベーカリー。
広めのイートインスペースが併設されていて、夜はキャンドルが飾り付けられ、ワインとパン、料理が提供されるらしい。
俺の家の近くなのに、こんな店があるなんて全く知らなかった。
「早川って、こういう店好きなの?」
「好きっていうか、バイト先!」
なるほど、見た目のイメージには合う。
こんなイケメンがいるパン屋なら、連日女性客が絶えないだろう。
「前のバイト先は、髪の色変えたらダメって言われちゃった」
「へえ」
「この近くの、本屋」
「ああ。俺も行ったことある」
「知ってるよ」
「え?」
パッと笑う早川は、夏の強い日の中に咲く、ひまわりを連想させる。
それより知ってるって?
聞き返そうとするも、目の前にメニュー表が差し出される。
「ね、伊織さん、好きなの選んで。」
柔らかく微笑む様は、一転して、深海に射す一縷の陽の光のような、優しく儚い印象を受ける。
「お前のオススメで。」
「任せて。」
メニューに視線を落とす早川。キャンドルのゆらめく光で、頬に長いまつ毛の影が落ちる。
店の雰囲気のせいだろうか、メニュー表を滑る指がなんだか艶かしくて、思わず目を逸らしてしまった。
103
あなたにおすすめの小説
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
【幼馴染DK】至って、普通。
りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる