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お前さ、俺のどこがいいの
しおりを挟む運ばれて来たワインと食事はどれも上品で、普段安酒と、ただ味が濃いだけのつまみばかり食べてる俺には、正直良し悪しは分からなかった。
ただ美味いのは間違いない。
隣で俺を観察しては顔を綻ばせている早川に尋ねる。
「お前さ、俺のどこがいいの。お前なら可愛い女の子からも引く手数多なんじゃねぇの?」
「伊織さんは、俺の…癒しだから」
「癒し?」
えへへ、と笑った早川は、前髪をちょっと弄ると、照れた様子で話し始めた。
「俺、本屋でバイトしてたとき、伊織さんに助けられてるんです。」
「…?いや、お前と会ったことなんてねぇぞ」
「その時は髪も黒くて、メガネもしてたし。俺、初めてのバイトで、緊張して倒れちゃって。それを、伊織さんに助けてもらったんです。」
「あ!」
思い出した。1年前、暇つぶしに入った本屋で、偶然、目の前で倒れた青年がいたことを。
俺の記憶では、目の前のイケメンとは、とても似ても似つかない、なんだかモサッとした男の子だったイメージだったが…。
「意識が朦朧とする中で、伊織さんの声を聞いて、すごく安心したんです。伊織さんの、繊細な優しい声。」
「…」
「それで、ぼやける視界に、伊織さんが映って。あー俺の天使だって。」
「天使…」
何言ってんだコイツ…。
と思いつつも、早川の強い眼差しに、胸の奥がジリジリして、言い返す気力が失われる。男に天使はないだろ、ましてや俺に。とは思うが、不思議と悪い気はしなかった。
「それから伊織さんにまた会いたくて、バイトも頑張ったんですけど…」
「あの本屋、あんま行かねぇからな」
「うん。会えなかった。でも俺、次会った時は伊織さんに釣り合う男になろうって、美容院なんか行ったりして」
「それで金髪?」
「絶対似合うって勧められてやったんだけど、やっぱ俺には派手だし、バイトもクビになっちゃったし、散々でした。」
いや、似合ってるよ。
目の前の男は黒髪でも金髪でも、なんならピンクやブルーでも似合ってしまいそうだ。素材が違う。
「スーパーで会ったあの日は、サークルの仲間と喧嘩しちゃって。結構落ち込んでたんです。そんな時にまた偶然伊織さんと会えて。」
「…あれで落ち込んでたのか?」
あの日の意味不明なやり取りを思い出す。
めちゃくちゃ上機嫌だったような気がしなくもないような…
「伊織さんと会えたら、落ち込んでたこととか全部吹っ飛びました!」
「ああ、そう」
「もう絶対逃がさない!って思って、そのまま告白しちゃって」
「…」
単純なやつ。
早川は、そのままうっとりとした表情で俺を見つめる。
「ずっと、好きだったんです」
トクンと、胸が鳴った。
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